副業解禁を待つあいだにできること。会社設立の前に整えておく準備
この記事の趣旨
勤務先で副業が認められておらず、いまは会社設立に進めない会社員の方に向けた記事です。待つあいだにできることを整理します。
副業を認める方向で就業規則を改定する企業は増えています。厚生労働省もその方向での対応を促しています。いま認められなくても、数年後には状況が変わっているかもしれません。
そのときに動けるよう、準備を整えておくという考え方です。ここで挙げる準備は、いずれも規定に触れることなく進められるものに限っています。個別の判断は専門家にご相談ください。
規定は変わることがある

まず、前提として押さえておきたいことがあります。就業規則の副業に関する規定は、変わることがあります。
厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを策定し、企業に対して認める方向での対応を促しています。モデル就業規則でも、副業・兼業について原則容認の形が示されています。
労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができるとしたうえで、限られた場合にのみ会社が禁止または制限できるという構成です。この方向に沿って就業規則を改定する企業が増えています。
また、副業・兼業を認めているかどうかや、認める場合の条件について、企業が情報を公表することが望ましいとされています。
したがって、いま認められていなくても、数年後には状況が変わっている可能性があります。会社設立を考えているサラリーマンにとっては、待つという選択にも意味があります。
加えて、転職によって状況が変わることもあります。転職先が副業を認めていれば、そこで道が開けます。
節税を目的に会社設立を考えている場合、急いで規定を回避しようとするより、条件が整うのを待つほうが結果的に安全です。当サイトは抜け道を扱いません。
そのあいだに何ができるか。この記事ではそれを整理します。
規定が変わるのを待つあいだも、副業の環境そのものは変化しています。業務委託の受け皿となる仕組みや、法人設立の手続きのオンライン化も進んでいます。数年後に会社設立を考える際には、いまとは違う選択肢が用意されているかもしれません。準備をしながら動向を見ておくことにも意味があります。
出典副業・兼業 (厚生労働省/2026年8月22日確認)
準備その一:記帳の習慣をつける

最初の準備が、記帳の習慣です。
会社設立をするかどうかの判断には、利益がいくらかという数字が欠かせません。ところが、収入と支出を記録していなければ、その数字が出てきません。
副業が認められていない段階では、事業としての収入はないかもしれません。それでも、家計の把握や、資産運用の記録という形で、数字を管理する習慣は身につけられます。
会計ソフトを試してみるのもよいと思います。個人向けの家計簿アプリでも、口座やカードと連携して明細を取り込む仕組みは同じです。この操作に慣れておけば、実際に事業を始めたときに戸惑いません。
会社設立をしたあとは、法人の記帳が毎月発生します。この作業に慣れているかどうかで、負担の感じ方が変わります。
また、記帳の習慣があれば、経費として計上できるものの感覚も身につきます。何が事業に必要な支出で、何がそうでないか。この判断は、会社設立をしてから急に身につくものではありません。
サラリーマンとして本業を持ちながら記帳を続けるのは、それ自体が練習になります。月に一度、決まった時間に数字と向き合う。この習慣が、後々の運営を支えます。
節税の観点でも、記録があることが土台になります。経費の計上漏れは、記録がなければ気づけません。
この準備は、規定に一切触れません。いますぐ始められます。
サラリーマンとして本業を持ちながら記帳を続けることは、それ自体が会社設立後の練習になります。
記帳を続けていると、支出の傾向が見えてきます。どこにお金を使っているか、事業に必要なものは何か。この感覚は、会社設立をして経費を計上する段階でそのまま役に立ちます。逆に、記録がないまま法人をつくると、最初の一年は手探りになります。
出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月22日確認)
準備その二:本業の数字を把握する

二つめが、本業の数字を把握することです。
会社設立が節税になるかどうかは、本業の給与水準によって変わります。副業の所得は本業の給与所得と合算して課税されますので、本業の税率帯が土台になるためです。
確認すべきは、まず源泉徴収票です。給与収入、給与所得控除後の金額、所得控除の額、源泉徴収税額が記載されています。ここから課税所得を把握できます。
国税庁のページで確認すると、給与等の収入金額が850万円を超える場合の給与所得控除額は195万円が上限です。本業の給与収入がこの水準を超えていれば、役員報酬を受け取っても給与所得控除は増えません。
この一点を知っているかどうかで、会社設立の節税額の見積もりが変わります。多くの解説は独立した個人事業主を想定していますので、そのまま当てはめると過大に見積もることになります。
次に、給与明細から標準報酬月額の等級を確認してください。社会保険料の控除額と保険料額表を照らし合わせれば分かります。
上限に達していれば、役員報酬を受け取っても社会保険料は増えません。達していなければ増えます。ここでも判断が分かれます。
これらは、副業が認められていなくても確認できます。手元の書類を読むだけですので、規定とは無関係です。
サラリーマンとして毎年受け取っている書類を、一度きちんと読んでみてください。会社設立を考えるときの土台になります。

源泉徴収票と給与明細は、毎年手元に届きます。これを読む習慣をつけておくと、昇給によって税率帯が変わったことや、標準報酬月額の等級が上がったことに気づけます。会社設立の判断は本業の数字に左右されますので、その変化を追っておくことは準備そのものです。
出典No.1410 給与所得控除 (国税庁/2026年8月22日確認)
準備その三:制度を理解しておく

三つめが、制度の理解です。
会社設立をすると何が起きるのか。これを知らないまま、規定が変わった瞬間に動くと、判断を誤ります。
押さえておきたいのは、次の三点です。
- 固定費:法人住民税の均等割は赤字でもかかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。これに税理士費用が加わり、合計で年30万円前後になります
- 社会保険:役員報酬を受け取れば被保険者になり、本業と合わせて二以上事業所勤務の届出が必要になります。保険料は合算して等級を決め、按分されます
- 手続き:毎年の決算と申告、そして本業の年末調整とは別に個人の確定申告が必要になります
この三つを理解していれば、会社設立が見合うかどうかの骨格が分かります。節税額から固定費と保険料を差し引いた残りで判断するという考え方です。
制度を学ぶことは、規定に一切触れません。当サイトの記事も含めて、情報は公開されています。
そして、制度は改正されます。いま学んだ内容が数年後にそのまま使えるとは限りませんので、動く段階でもう一度確認することになります。それでも、骨格を知っておくことには意味があります。
サラリーマンとして時間が限られているなら、少しずつ読み進めるだけでも構いません。急いで全部を理解する必要はありません。
制度の理解は、一度で完成するものではありません。改正のたびに変わりますので、動く段階でもう一度確認することになります。それでも骨格を知っていれば、何が変わったのかを把握しやすくなります。会社設立の判断を急がされる場面でも、落ち着いて考えられます。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)
準備その四:個人でできる節税を試す

四つめが、個人でできる節税を試すことです。
会社設立は、節税の手段のひとつにすぎません。固定費のかからない手段から試すのが定石です。
副業が認められていない段階でも、次のようなものは検討できます。
- 所得控除の対象になる制度を確認する
- 医療費控除やふるさと納税など、確定申告で使える控除を確認する
- 資産運用について、経費として計上できるものを整理する
- 扶養や配偶者控除の適用状況を確認する
これらは会社設立と違って固定費がかかりません。効果も確実に出ます。
そして、実際に確定申告をしてみることには意味があります。会社設立をすると、本業の年末調整とは別に個人の確定申告が必要になります。その作業に慣れておくことは、そのまま準備になります。
サラリーマンとして年末調整だけで済ませてきた方にとって、確定申告は初めての作業かもしれません。ふるさと納税や医療費控除をきっかけに一度やってみると、感覚がつかめます。
節税の効果を実感できれば、会社設立をしたときの効果も見積もりやすくなります。
この準備も、規定とは無関係に進められます。
会社員が事業の構想を練る段階では、本業の技能をどこまで使えるかという整理も必要になります。
確定申告を自分でやってみると、税の仕組みが具体的に見えてきます。控除がどう効くのか、所得がどう計算されるのか。会社設立をすれば、この作業が毎年続きます。慣れておくことは、負担の見積もりにも役立ちます。
出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月22日確認)
準備その五:事業の構想を練る

五つめが、事業の構想です。
会社設立をするなら、その法人で何をやるのかが必要になります。実体のない法人は、税務調査で否認される可能性があります。
国税庁は役員給与について、不相当に高額な部分は損金にならないとしています。職務の内容、法人の収益の状況などが考慮されます。事業の実体がなければ、報酬を払う根拠も説明できません。
したがって、会社設立を考えるなら、まず事業の中身を考えることになります。何を提供して、誰から対価を得るのか。この構想がなければ、法人をつくる意味がありません。
副業が認められていない段階では、実際に活動することはできません。しかし、構想を練ることや、知識と技能を蓄えることは自由です。
本業で得た情報や技能を使うことについては、就業規則の秘密保持や競業避止の規定に注意が必要です。この点は確認しておいてください。
また、事業目的をどう書くかという論点もあります。事業目的は登記されて公開されますので、本業と競合しない範囲にとどめるのが安全です。
構想が固まっていれば、規定が変わったときにすぐ動けます。会社設立の手続き自体は数週間で終わりますので、準備が整っていることのほうが重要です。
サラリーマンとして本業を続けながら、少しずつ考えを整理しておいてください。
事業の構想を練るときは、本業と競合しない領域を選ぶことも意識しておいてください。就業規則の競業避止の規定に触れれば、規定が変わっても会社設立が認められないことがあります。構想の段階で、この点を確かめておくと無駄がありません。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)
準備その六:相談できる相手を見つける

六つめが、相談できる相手を見つけておくことです。
会社設立をすると、役員報酬の設計や社会保険の手続きという難しい判断が出てきます。会社員の場合、本業の給与と合算される所得税、二以上事業所勤務による保険料の按分という論点が絡み、一般的な解説がそのまま当てはまりません。
ここは専門家に相談する価値が高い部分です。ただし、いざ会社設立をする段階になってから探すと、時間がかかります。
税理士は税務、社会保険労務士は社会保険と労働保険を扱います。この二つは別の資格です。税理士に依頼したから社会保険の手続きも含まれる、とは限りません。
いまの段階でも、確定申告の相談などで接点を持つことはできます。相性や得意分野を知っておけば、会社設立のときに迷いません。
また、費用の相場を把握しておくことにも意味があります。決算と申告の依頼で年間十数万円から、顧問契約なら月額の顧問料が加わります。この費用は、会社設立による節税額から差し引かれる固定費です。
相場を知っていれば、会社設立が見合うかどうかの計算が具体的になります。
サラリーマンとして時間が限られているなら、依頼する範囲を広げることになります。そのぶん費用も上がりますので、早めに見積もりの感覚をつかんでおいてください。

相談先を探すときは、会社員の法人化を扱った経験があるかを確認してみてください。独立した個人事業主の法人化とは論点が違いますので、その違いを理解している相手のほうが話が早くなります。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月22日確認)
まとめ

副業解禁を待つあいだにできることについて、この記事で整理したことをまとめます。
- 就業規則は変わることがあります。厚生労働省も認める方向での対応を促しています
- 準備1:記帳の習慣をつける。数字がなければ判断できません
- 準備2:本業の数字を把握する。給与所得控除の上限と標準報酬月額の等級を確認します
- 準備3:制度を理解する。固定費・社会保険・手続きの三点が骨格です
- 準備4:個人でできる節税を試す。確定申告に慣れておくことも準備になります
- 準備5:事業の構想を練る。実体があることが前提です
- 準備6:相談できる相手を見つける。税理士と社会保険労務士は別の資格です
これらの準備は、いずれも規定に触れることなく進められます。そして、実際に会社設立をする段階で必ず効いてきます。
規定が変わったとき、あるいは転職などで状況が変わったとき、準備ができていれば迷わず動けます。サラリーマンとして本業がある以上、急ぐ必要はありません。
当サイトは抜け道を扱いません。規定を確認し、認められる形で進める。そのための準備を、いまのうちに整えておいてください。
出典副業・兼業の促進に関するガイドライン (厚生労働省/2026年8月22日確認)
準備は無駄になりません
解禁を待つあいだに整えた準備は、実際に会社設立をする段階で必ず効いてきます。数字を把握していれば判断が早くなり、制度を理解していれば選択を誤りません。
そして、準備そのものが規定に触れることはありません。記帳の習慣をつけることも、制度を学ぶことも、家計を整理することも、勤務先の規定とは無関係です。
規定が変わったとき、あるいは転職などで状況が変わったとき、準備ができていれば迷わず動けます。判断に迷う部分は、そのときに税理士にご相談ください。
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