副業禁止の会社に勤めている場合、会社設立はどう考えるか。抜け道は書きません
最初に、この記事の立場を書きます
勤務先で副業が禁止されている、あるいは禁止されているように見える会社員の方に向けた記事です。当サイトは、規定を回避する方法を扱いません。その前提でお読みください。
扱うのは、規定の中身をどう読むか、厚生労働省がどういう考え方を示しているか、そして禁止されていた場合に何ができるかです。事実として知っておく価値のある内容に絞ります。
会社設立による節税に関心があっても、まず自分の立場で可能かどうかを確かめるのが順番です。できないことを前提に計算しても意味がありません。個別の判断は専門家にご相談ください。
「副業禁止」と書かれていても、範囲は一様ではない

就業規則に副業に関する規定があるとき、まずその中身を読むことから始めてください。「副業禁止」という言葉だけで判断しないことが大切です。
実際の規定は、次のようないくつかの形に分かれます。
- 全面的に禁止すると定めているもの
- 許可を得た場合に限り認めると定めているもの(許可制)
- 届出をすれば認めると定めているもの(届出制)
- 一定の場合に限り禁止・制限すると定めているもの
四つめの形が、近年増えています。厚生労働省が示すモデル就業規則では、副業・兼業について「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とされ、限られた場合にのみ会社が禁止または制限できるという構成になっています。
つまり、原則として認めたうえで、例外的に制限するという考え方です。この方向に沿って就業規則を改定する企業が増えています。
ご自身の勤務先の規定がどの形かによって、取れる行動が変わります。許可制であれば申請という道がありますし、届出制であれば出せば進められます。
会社設立をして節税を図りたいという動機があっても、まずここを確かめるのが順番です。規定の形が分からないまま進めることはできません。
なお、規定は改定されます。数年前に読んだ記憶があっても、いまは変わっているかもしれません。会社設立を考えるタイミングで、最新のものを確認してください。
サラリーマンとして長く勤めていると、入社時に読んだきりという方がほとんどだと思います。会社設立を考えるいまが、あらためて読む機会になります。
出典モデル就業規則 (厚生労働省/2026年8月22日確認)
会社設立で効いてくるのは、役員兼務の規定

副業の規定を確認したら、次に役員兼務に関する規定を探してください。会社設立を考える場合、こちらが直接効いてきます。
会社設立をして代表取締役や代表社員になるということは、他の会社の役員に就任するということです。副業の規定とは別に、役員兼務を制限する条項が置かれていることがあります。
「他の会社の役員に就任してはならない」「取締役等に就任する場合は許可を要する」といった書き方です。副業の規定だけを見て「収入を得なければ問題ない」と判断すると、この部分を見落とすことになります。
あわせて、競業避止に関する規定も確認してください。本業と同じ分野で会社設立をすると、たとえ勤務時間外の活動であっても競業にあたると判断される可能性があります。
事業目的をどう書くかにも関係します。事業目的は登記されて公開されますので、実際に行う事業に即して、必要な範囲にとどめるのが安全です。
四つめとして、職務専念に関する規定も見ておいてください。勤務時間中は職務に専念する義務を定めたものです。副業を勤務時間外に行う限り問題になりにくいのですが、会社の設備や情報を使う場合には別の論点になります。
サラリーマンが会社設立で節税を考えるとき、これら四つの規定をすべて確認したうえで判断することになります。

サラリーマンが会社設立をする場合、役員兼務の規定が最初の関門になります。副業の可否だけを確認して安心しないでください。
出典副業・兼業 (厚生労働省/2026年8月22日確認)
厚生労働省が示している考え方

副業・兼業をめぐる国の考え方を確認しておきます。
厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、企業に対して副業・兼業を認める方向での対応を促しています。ガイドラインでは、労働時間の管理や健康管理についての考え方が整理されています。
また、モデル就業規則においても、副業・兼業の条文が原則容認の形になっています。労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができるとしたうえで、限られた場合にのみ禁止または制限できるという構成です。
さらに、副業・兼業を認めているかどうかや、認める場合の条件について、企業が情報を公表することが望ましいとされています。
ただし、これらは法律による義務づけではありません。すべての企業が無条件に認めるという意味ではなく、実際の取り扱いは会社ごとに異なります。
裁判例においても、勤務時間外は本来労働者が自由に使える時間であるという考え方が示される一方、労務の提供に支障が生じる場合や企業秩序に影響する場合には制限が認められうるという整理がなされてきました。
したがって、「副業禁止の規定は無効だから気にしなくてよい」という単純な話にはなりません。規定の内容と、実際の事情によって判断が分かれます。
会社設立をして節税を図りたい場合でも、この点を踏まえて慎重に判断してください。当サイトは、規定を無視してよいという立場を取りません。
判断に迷う場合は、社会保険労務士や弁護士などの専門家にご相談ください。個別の規定の解釈は、専門家の領域です。

出典副業・兼業の促進に関するガイドライン (厚生労働省/2026年8月22日確認)
公務員は法律で定められています

公務員の方については、民間企業の会社員とは前提がまったく異なります。
国家公務員については国家公務員法が、地方公務員については地方公務員法が、営利企業の役員を兼ねることや自ら営利企業を営むことを原則として禁止しています。就業規則ではなく法律による制限です。
したがって、公務員の方が会社設立をして代表者に就任するという形は、原則として取れません。厚生労働省のガイドラインは民間の労働者を念頭に置いたものであり、公務員には直接当てはまりません。
承認を要する手続きが定められている場合もありますので、所属先の規程と人事担当に必ず確認してください。人事院も国家公務員の服務に関する情報を公開しています。
一定の範囲の行為については、承認を得ることで認められる場合があります。ただし範囲は限定的で、手続きも定められています。
会社設立による節税を検討する前に、まずご自身の立場でそれが可能なのかを確認してください。制度上できないことを前提に計算しても意味がありません。
サラリーマンとして民間企業に勤めている方も、この点は同じです。名義の工夫で規定を回避しようとすると、かえって説明が難しくなります。
出典人事院 (人事院/2026年8月22日確認)
禁止されていた場合にできること

確認した結果、会社設立が認められないという結論になった場合に何ができるかを整理します。
まず、副業そのものが認められているかを分けて考えてください。副業は認められているが役員兼務は制限されている、という場合があります。その場合、個人事業主として活動する道が残ります。
個人のままでできる節税として、次のようなものがあります。いずれも会社設立と違って固定費がかかりません。
- 青色申告の承認を受けて特別控除を使う(事業所得として認められる場合)
- 経費の計上漏れと按分を見直す
- 所得控除の対象になる制度を確認する
- 記帳を続けて、利益の推移を把握する
これらは会社設立より手間も小さく、確実に効きます。会社設立が唯一の節税手段ではありません。
次に、副業そのものが禁止されている場合です。この場合、事業として収入を得ること自体が規定に触れる可能性があります。無理に進めるべきではありません。
ただし、資産の運用など、事業に当たらない行為については扱いが異なることがあります。規定の中身によりますので、確認が必要です。
そして、規定は変わります。副業を認める方向で就業規則を改定する企業は増えています。いま認められなくても、数年後には変わっているかもしれません。
会社設立を急ぐ理由がないのであれば、状況が変わるのを待つという選択も十分に合理的です。サラリーマンとして本業がある以上、無理に法人を持つ必要はありません。
サラリーマンとして本業の収入がある以上、節税の手段を法人化に限る必要はありません。個人でできることから試すほうが、確実に効果が出ます。
出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月22日確認)
確認や相談をするときの進め方

規定を読んでも判断がつかない場合、勤務先に確認することになります。その進め方を整理します。
まず、所定の手続きが定められているならそれに従ってください。届出書や申請書の様式がある場合は、それを使います。
相談の際に問われることは、おおむね次の四つです。あらかじめ答えられる状態にしておくと、話が早く進みます。
| 問われること | 準備しておく内容 |
|---|---|
| どんな事業を行うのか | 事業の内容を具体的に。登記する事業目的とも整合させます |
| 本業と競合しないか | 取引先や事業領域が重ならないことを説明できるように |
| 勤務時間への影響はあるか | 勤務時間外に行うこと、本業に支障が出ないことを |
| 会社の情報や設備を使わないか | 本業で得た情報を使わないことを明確に |
※ 実際に問われる内容は勤務先の規定によります。所定の様式がある場合はそれに従ってください。
重要なのは、本業に影響がないことを説明できるという点です。会社設立をすること自体より、本業への支障を懸念されることが多いためです。
節税が目的であることを伝えるかどうかは状況によります。事業の内容を説明するなかで、副業の収入を法人で受ける形になることは自然に伝わります。必要以上に詳しく話す必要はありませんが、伏せる必要もありません。
許可制の場合は、承認が下りるまで会社設立を進めないでください。準備を並行して行うことは差し支えありませんが、登記を先に済ませてしまうと戻せません。
相談した結果、条件が付されることがあります。競合しない範囲に限る、勤務時間外に限る、といった条件です。その条件を守れる形で事業を設計してください。
出典副業・兼業と労働条件 (厚生労働省/2026年8月22日確認)
なぜ抜け道を書かないのか

当サイトが規定を回避する方法を扱わない理由を、あらためて述べます。
第一に、制度上できないからです。会社設立をして役員報酬を受け取れば、社会保険の被保険者になります。本業ですでに加入している会社員は二以上事業所勤務となり、届出が必要になります。
日本年金機構の案内によれば、この届出は事実発生から10日以内に被保険者本人が提出することとされています。保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、按分されます。按分には両方の事業所が関わります。
したがって、役員報酬を受け取りながら勤務先に伝わらないようにするという想定は、制度の仕組みの上で成り立ちません。
第二に、続かないからです。会社設立をして節税を図るなら、何年も運営を続けることになります。その間ずっと隠し続けるという前提は現実的ではありません。決算のたび、届出のたびに、その前提が揺らぎます。
第三に、確認するほうが早いからです。就業規則を読んでみたら届出制だった、というケースは珍しくありません。確認せずに諦めるのも、確認せずに隠れて進めるのも、どちらも合理的ではありません。
第四に、節税の効果を損なうからです。隠すことを優先すると、役員報酬をゼロにする、事業を小さく見せるといった判断につながりがちです。それは会社設立で得られるはずの節税を、自ら手放すことになります。
サラリーマンが法人を持つ意味は、所得の受け方を設計できるところにあります。その自由度を、隠すために放棄するのは合理的ではありません。
以上が、当サイトが抜け道を扱わない理由です。
サラリーマンが会社設立で得られるはずの節税を、隠すことを優先して手放してしまうのは本末転倒です。
出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)
まとめ

副業禁止の会社に勤めている場合の会社設立について、この記事で整理したことをまとめます。
- 「副業禁止」と書かれていても範囲は一様ではありません。まず規定の中身を読んでください
- 会社設立で直接効くのは役員兼務の規定です。副業の規定だけでは足りません
- 厚生労働省は認める方向での対応を促していますが、法律による義務づけではありません
- 公務員は法律により営利企業の役員兼業が原則禁止されています。前提が異なります
- 認められない場合は、個人のままでできることを整えるほうが確実です
- 確認や相談の際は、本業に影響がないことを説明できる状態にしておいてください
会社設立による節税に関心があっても、まず自分の立場で可能かどうかを確かめるのが順番です。できないことを前提に計算しても意味がありません。
そして、規定は変わります。いま認められなくても、数年後には状況が変わっているかもしれません。サラリーマンとして本業がある以上、無理に急ぐ必要はありません。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)
確かめてから、次を考えてください
副業禁止と書かれていても、その範囲は会社によって異なります。まず規定の中身を読み、分からなければ確認する。それが最初の一歩です。
確認した結果、会社設立が認められないという結論になることもあります。その場合は、個人のままでできることを整えるほうが確実です。固定費もかからず、手間も小さく済みます。
そして、規定が変わることもあります。副業を認める方向で就業規則を改定する企業は増えています。いま認められなくても、数年後には変わっているかもしれません。判断に迷う部分は、社会保険労務士や弁護士などの専門家にご相談ください。
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