税理士をどう選ぶか。会社設立を相談する前に用意する質問
この記事で用意すること
会社設立を相談しようとしている会社員に向けて、税理士を選ぶための質問を用意する記事です。
費用の比較だけでは判断がつきません。会社員が法人を持つという前提を理解しているか。ここが分かれ目になります。
何を聞けばそれが分かるのか。具体的な質問の形で示します。相談の準備としてお使いください。
費用だけでは判断できません

税理士を選ぶときの前提から確認します。
費用の比較だけでは判断がつきません。
理由は、含まれる範囲が事務所によって違うからです。
記帳代行、給与計算、年末調整、税務調査への対応。これらが含まれるかどうかで、実際の費用感が変わります。
安く見えても、必要な作業が別料金であれば総額は変わりません。
したがって、範囲を揃えて比べる必要があります。
そして、範囲以外にも判断すべき点があります。会社員が法人を持つという前提を理解しているか、という点です。
この前提が共有されていないと、独立した人向けの助言が返ってきます。
会社設立を検討するサラリーマンにとって、ここが最も重要な確認事項になります。
会社設立を相談する相手を探す段階で、節税の話ばかりが前面に出る事務所には注意してください。サラリーマンの場合、節税の効果が限定的になる場面が多いためです。数字を見てから話す相手を選んでください。
相談は無料で受け付けている事務所が多くあります。複数に行っても費用はかかりませんので、二社か三社は回ってみてください。比べる対象がなければ、提示された条件が妥当かどうかも判断できません。
出典税理士に関する情報 (国税庁/2026年8月22日確認)
会社員の前提を確かめる質問

会社員の前提を理解しているかを確かめる質問を示します。
まず、本業の給与があることを伝えてください。そのうえで、次のように聞きます。
- 役員報酬を取ると、本業の給与とどう関係しますか
- 給与所得控除は、それぞれで使えますか
- 社会保険はどうなりますか
- 役員報酬をゼロにするという選択はどう思われますか
二つめの質問が、特に有効です。
国税庁が示すところによれば、給与所得控除は収入金額に応じて計算され、上限が定められています。本業と法人の給与は合算して計算されます。
つまり、控除が二回適用されるわけではありません。
この点を明確に説明できる相手であれば、会社員の前提を理解していると考えられます。
逆に、独立した人向けの一般的な説明が返ってくるなら、前提が共有されていません。
四つめの質問も判断材料になります。報酬ゼロという選択肢を検討したうえで意見を述べるか、報酬を取ることを当然の前提としているか。
サラリーマンとして法人を持つ以上、この前提の共有が出発点です。
会社設立をして節税を狙うなら、この前提の共有が欠かせません。前提が違えば、示される節税額も違ってきます。
答えを聞くときは、その根拠まで尋ねてください。制度のどの部分にもとづく説明なのかを示せるかどうかで、理解の深さが分かります。曖昧な答えが返ってきた場合は、あらためて確認を求めてください。
会社設立をしたあとで前提の違いに気づくと、設計をやり直すことになります。役員報酬は事業年度の途中では変えられませんので、一年待つことになる場合もあります。最初の相談で確かめておいてください。
出典No.1410 給与所得控除 (国税庁/2026年8月22日確認)
社会保険についての質問

社会保険についての質問を示します。
日本年金機構の案内によれば、被保険者が同時に複数の適用事業所に使用されることになったときは、所定の届出を行う必要があります。
保険料は各事業所の報酬月額を合算して決定した標準報酬月額にもとづき按分されます。
次のように聞いてください。
- 本業でも加入していますが、法人で報酬を取ると手続きはどうなりますか
- その手続きは誰が行いますか
- 保険料はどう計算されますか
- 御事務所は社会保険の手続きも扱っていますか
四つめの質問が実務的に重要です。社会保険の手続きは、社会保険労務士の業務範囲にあたる部分があります。
税理士事務所によっては、提携先を紹介する形になります。
誰が何をやるのかを、依頼の前に確認してください。
「そこは自分で年金事務所に聞いてください」という答えでも構いません。範囲がはっきりしていれば問題ありません。
会社員が法人を持つ場合、この手続きは避けて通れません。担当が決まっていないと、後回しになります。
会社設立をして役員報酬を出す場合、この手続きは節税の設計と同時に発生します。担当が決まっていないと、節税どころか手続きの不備が生じます。
社会保険の手続きを自分で行う場合でも、いつ何を届け出るのかを把握しておく必要があります。相談の場でその流れを説明してもらえれば、自分で進める判断もしやすくなります。
届出の期限を過ぎると、あとからさかのぼって調整が必要になることがあります。手続きの担当がはっきりしていれば、こうした事態は避けられます。誰が期限を管理するのかまで決めておいてください。
出典2-4:被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったとき (日本年金機構/2026年8月22日確認)
経験を確かめる質問

経験を確かめる質問を示します。
ご自身と似た状況の顧客を扱った経験があるかを聞いてください。
- 会社員のまま法人を持っている方の顧問先はありますか
- その方々は役員報酬をどう設定していることが多いですか
- 不動産や有価証券を保有する法人の処理は扱われていますか
- 設立から解散までを通して担当された例はありますか
一つめが基本の質問です。経験があれば、具体的な話が返ってきます。
二つめの答え方で、実務の感覚が分かります。「多くはゼロにしています」「所得の水準によって変えています」といった具体的な答えであれば、実際に扱っている証拠です。
三つめは、資産管理を目的とする法人を考えている場合に重要です。有価証券の期末評価や不動産の減価償却は、一般の事業会社とは違う処理が必要になります。
四つめも聞いておく価値があります。やめるときのことまで見据えて助言できる相手かどうかが分かります。
なお、経験がないと言われた場合でも、それが悪いわけではありません。正直に答える相手のほうが信頼できることもあります。
サラリーマンとして判断する場合、答えの具体性を見てください。
会社設立から解散までを見据えた助言ができる相手であれば、節税の設計も長期の視点で組み立てられます。サラリーマンとして数十年続ける可能性があるなら、この点は重要です。
顧問先の状況を具体的に語れるかどうかは、経験の有無を測る手がかりになります。もちろん個別の情報は話せませんので、一般化した形での説明になりますが、それでも中身の濃さは伝わります。
会社設立から数年たって顧問先を変えることもできますが、引き継ぎの手間が生じます。最初に慎重に選んでおくほうが、結果として負担が軽くなります。
出典日本税理士会連合会公式ページ (日本税理士会連合会/2026年8月22日確認)
費用についての質問

費用についての質問を示します。
- 年間の費用に何が含まれますか
- 含まれないものは何ですか
- 取引の件数が増えたら費用は変わりますか
- 契約の期間と解約の条件はどうなっていますか
- 設立手数料が無料の場合、その条件は何ですか
二つめの質問が有効です。含まれるものを聞くより、含まれないものを聞くほうが実態が分かります。
五つめも確認してください。設立手数料が無料あるいは割引になる提案では、顧問契約が条件になっていることがあります。
その場合、設立時の費用は抑えられても、その後の顧問料が発生します。
数年分の総額で比べてください。

そして、これらは書面で確認してください。口頭の説明だけでは、あとで食い違いが生じます。
会社員が節税を目的に会社設立をする場合、この費用は節税額から差し引くことになります。
サラリーマンの方は、総額を把握してから判断してください。
会社設立の費用と節税額を比べるとき、この総額の把握が前提になります。サラリーマンの方は、家計として無理のない金額かも確認してください。
費用の見積もりは、想定する取引の件数を伝えたうえで出してもらってください。件数によって作業量が変わるため、前提を伝えないと後から金額が変わることになります。
会社設立の初年度は、設立に関する処理が加わるため費用が上がることがあります。初年度と二年目以降で金額が変わるかどうかも確認してください。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)
設立前に聞いておくこと

会社設立の前に相談すべき内容を示します。
設立の段階で決めることのなかに、あとから変えにくいものがあります。

五つめが重要です。「いまは個人のままがよい」という助言をしてくれる相手かどうか。
設立ありきで話を進める相手より、数字を見て判断してくれる相手のほうが信頼できます。
そして、これらは設立後には決まってしまっています。相談は設立前に行ってください。
会社員が本業のかたわらで相談の時間を取るのは負担ですが、設立前の相談には価値があります。
サラリーマンとして限られた時間で相談するなら、この五項目を紙に書いて持参してください。
会社設立をするかどうかの判断そのものを相談できる相手であれば、節税の設計も現実的なものになります。
会社設立の形態については、資産の管理を目的とするなら合同会社が選ばれることが多くなります。ただし、将来の承継や外部からの出資を想定する場合は判断が変わります。目的を伝えたうえで意見を求めてください。
形態の選択は、設立してからの変更に手間がかかります。合同会社から株式会社への組織変更という手続きはありますが、費用と時間を要します。最初の判断を慎重に行ってください。
出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月22日確認)
相談に持っていくもの

相談に持参する資料を示します。
- 本業の源泉徴収票(直近のもの)
- 資産の一覧(不動産、有価証券など)
- 直近の確定申告書(提出している場合)
- 就業規則の役員兼務に関する条文
- 会社設立で実現したいことを書いたメモ
一つめがないと、役員報酬の設計について具体的な話ができません。
四つめも重要です。会社設立ができる立場かどうかが確認できていなければ、設計の話に進めません。
公務員の方は、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業が原則として禁止されています。
五つめのメモは、目的を明確にするためです。節税なのか、資産の管理なのか、承継なのか。目的によって設計が変わります。
資料を揃えて行けば、一般論ではなく具体的な助言を受けられます。
揃えずに行けば、制度の説明で時間が終わります。
サラリーマンとして相談の時間が限られる以上、準備が効率を左右します。
なお、当サイトでは勤務先に知られない方法は扱いません。就業規則を確認し、必要なら勤務先に相談してください。
会社設立の目的が節税であれば、そう書いてください。サラリーマンとして何を実現したいのかが伝われば、助言も具体的になります。
持参する資料が個人情報を含むことに不安がある場合は、金額の部分だけを抜き出したメモでも構いません。おおよその水準が分かれば、具体的な話は進みます。
相談のあとは、聞いた内容をその日のうちにメモに残してください。複数の事務所を回ると、どこで何を聞いたかが混ざります。
会社設立の目的を書いたメモは、相談のたびに見直してください。話を聞くうちに、当初の目的が変わることもあります。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)
まとめ

税理士の選び方について、この記事で整理したことをまとめます。
- 費用だけでは判断できません。含まれる範囲を揃えて比べてください
- 会社員が法人を持つという前提を理解しているかを確かめてください
- 給与所得控除が合算して計算されることを説明できるか。これが判断の目安になります
- 社会保険の手続きを誰が担当するかを、依頼の前に確認してください
- 設立手数料が無料の場合、その条件を確認してください。数年分の総額で比べます
- 「いまは設立しないほうがよい」と言える相手を選んでください
税理士を選ぶとき、聞くことを決めてから行ってください。質問がなければ、説明を聞いて終わります。
そして、複数の事務所に同じ質問をしてください。答えの違いから、判断がつきます。
サラリーマンとして本業がある方は、資料を揃えてから相談に行くほうが効率的です。時間は限られています。
会社設立をして節税を目指すなら、相談する相手選びが最初の分かれ目です。
出典税理士情報検索サイト (日本税理士会連合会/2026年8月22日確認)
聞くことを決めてから行ってください
税理士を選ぶとき、費用だけで比べても判断がつきません。同じ費用でも、内容が違います。
会社員が法人を持つという前提を理解しているか。これを確かめる質問を用意してください。
そして、複数の事務所に同じ質問をすれば、答えの違いから判断できます。ご自身に合う相手を選んでください。
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