本文へ移動する

副業禁止 会社設立

副業禁止でも資産運用はどう扱われるか。事業と運用の線引きを考える

この記事の扱い方

副業が制限されている勤務先にいる会社員が、資産運用はどう扱われるのかを確認するための記事です。株式投資や不動産の賃貸などを想定しています。

先に申し上げると、規定の解釈は勤務先によります。この記事では一般的な考え方の整理と、確認すべき観点を示すにとどめます。断定的な結論は書きません。

また、規模が大きくなれば事業と見られる余地が生じ、会社設立を考える段階になれば役員兼務の論点も出てきます。そこまで含めて整理します。個別の判断は専門家にご相談ください。

運用と事業は、同じに扱われるとは限らない

運用と事業は、同じに扱われるとは限らないを表したイラスト

副業に関する規定は、多くの場合「他の会社等の業務に従事すること」や「事業を営むこと」を対象としています。

厚生労働省が示すモデル就業規則では、副業・兼業について労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができるとしたうえで、限られた場合にのみ禁止または制限できるという構成になっています。

制限が認められる場合として挙げられるのは、労務の提供に支障が生じる場合、企業秘密が漏洩する場合、企業の名誉や信用を損なう場合、競業により利益を害する場合といった観点です。

これらの観点から見ると、資産の運用は事業とは性格が異なります。株式を保有して配当を受け取ることや、相続した不動産を賃貸することは、労務の提供に支障を生じさせるものではないと考えられる余地があります。

実際、多くの企業では資産運用を副業として制限していません。就業規則にも、投資や資産運用を明示的に禁じる規定は多くありません。

ただし、これは規定の書き方によります。「一切の営利活動を禁じる」といった広い書き方がされていれば、解釈が変わる可能性があります。

したがって、まずご自身の勤務先の規定を読み、何が対象とされているかを確認してください。会社設立を考えるサラリーマンにとって、ここが出発点になります。

節税の観点から会社設立を検討する場合でも、この確認が先です。制度上できないことを前提に計算しても意味がありません。

公務員は前提が異なります公務員については、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業や自ら営利企業を営むことが原則として禁止されています。不動産の賃貸などについても、一定の規模を超える場合には承認が必要とされることがあります。所属先の規程を必ずご確認ください。

資産運用を法人化する動機は、多くの場合、節税にあります。ただし規定の確認が先です。

出典モデル就業規則 (厚生労働省/2026年8月22日確認)

規模が大きくなると、事業と見られる余地が生じる

規模が大きくなると、事業と見られる余地が生じるを表したイラスト

資産運用として始めたものでも、規模が大きくなれば扱いが変わることがあります。

税務の面では、不動産の賃貸について事業的規模かどうかという区分があります。国税庁は不動産所得について考え方を示しており、規模によって取り扱いが異なる部分があります。

税務上の区分と、就業規則上の扱いは別の話です。ただし、規模が大きくなれば「事業を営んでいる」と評価される余地が生じるという点では、共通する面があります。

株式投資についても、頻繁に売買を繰り返して事業といえる規模になれば、単なる資産運用とは見られなくなる可能性があります。

勤務先の規定が「事業を営むこと」を対象としている場合、規模が判断に影響することになります。就業規則に具体的な基準が書かれていないことも多いため、判断が難しい部分です。

会社員として資産運用を続けていて、規模が大きくなってきた段階では、あらためて規定を確認するか、勤務先に相談することを検討してください。

始めたときの扱いが、そのまま続くとは限らないという点を意識しておくことが大切です。

節税を目的に会社設立を考える段階になっているのであれば、それはすでに一定の規模に達しているということです。その時点で確認しておくのが安全です。

サラリーマンが資産運用を続けていると、規模の変化に自分では気づきにくいものです。年に一度、規定を読み返す機会を持ってください。

規模が大きくなると、節税の効果も大きくなります。同時に、規定上の確認事項も増えます。

出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

会社設立をすると、別の論点が加わる

会社設立をすると、別の論点が加わるを表したイラスト

資産運用が認められているとして、それを法人で行うために会社設立をする場合はどうか。ここで別の論点が加わります。

会社設立をして代表取締役や代表社員になるということは、他の会社の役員に就任するということです。就業規則に役員兼務を制限する規定があれば、そこに該当します。

つまり、個人として資産運用をすることが認められていても、法人をつくって代表者になることが同じように認められるとは限りません。この二つは別の規定で判断されます。

さらに、会社設立をして役員報酬を受け取れば、社会保険の被保険者になります。本業ですでに加入している会社員は二以上事業所勤務となり、届出が必要になります。

日本年金機構の案内によれば、この届出は事実発生から10日以内に被保険者本人が提出することとされています。保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、按分されます。

按分の手続きには両方の事業所が関わりますので、勤務先に伝わらないまま進めるという想定は成り立ちません。

したがって、会社設立を考えるのであれば、役員兼務の規定を確認したうえで進める必要があります。運用が認められているから会社設立も大丈夫、とはなりません。

なお、役員報酬をゼロにすれば社会保険の届出は生じませんが、法人に残った利益を個人が使えないという制約が生じます。節税の設計と手続きの量は連動しています。

資産運用から会社設立までに確認する流れを示した図
三つめで新しい論点が加わります。運用の可否とは別に確認してください。

会社設立による節税を狙う場合でも、役員兼務の規定を通らなければ進められません。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)

不動産を法人で持つ場合の論点

不動産を法人で持つ場合の論点を表したイラスト

資産運用のうち、法人化が検討されることが多いのが不動産です。

すでに個人で持っている不動産を法人に移す場合、譲渡という手続きが必要になります。登録免許税や不動産取得税が生じ、譲渡による所得が個人側で発生することもあります。

移すこと自体にコストがかかるという点が、他の資産と違います。したがって、すでに保有しているものを移すかどうかは、費用対効果の検証が必要です。

これに対して、これから取得する物件を法人名義にするという形であれば、移転のコストは生じません。会社設立を先に済ませ、その法人で取得するという順番です。

ただし、法人での取得には融資の問題が絡みます。会社設立の直後は事業の実績がありませんので、借入れの審査で不利になることがあります。代表者の個人保証を求められることもあります。

また、管理を法人に委託するという形もあります。所有は個人のまま、管理業務を法人が受託して管理料を受け取る形です。ただし、実体のない管理委託は否認される可能性があります。

国税庁は役員給与について、不相当に高額な部分は損金にならないとしています。管理料についても、業務の実態と金額が釣り合っているかが問われます。

節税を目的に形だけを整えると、税務調査で問題になります。会社設立をするのであれば、法人が実際に何をするのかを説明できる形にしてください。

サラリーマンが不動産を法人で持つ場合、規模と保有期間が判断の中心になります。長期にわたって保有し、規模も拡大していく見込みがあるなら、法人で持つ意味が出てきます。

サラリーマンが不動産を法人で持つ場合、融資の面で本業の給与が評価されることもあります。ただし会社設立の直後は法人としての実績がありませんので、その点は別に見られます。

管理委託の形で節税を図る場合、業務の実態が伴っているかが問われます。形だけを整えても認められません。

出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

株式などの運用を法人で行う場合

株式などの運用を法人で行う場合を表したイラスト

株式などの有価証券の運用を法人で行う場合はどうか。

ここは、個人と法人で税制の仕組みが異なるため、一概に有利とは言えません。個人の場合、上場株式の譲渡益や配当については分離課税などの仕組みがあります。

法人の場合、有価証券の損益は他の所得と合算して法人税の対象になります。損失が出た場合の扱いも、個人とは異なります。

したがって、運用の内容と損益の見込みによって、どちらが有利かが変わります。単純に法人のほうが税率が低いという話にはなりません。

また、個人で使える非課税の制度については、法人では使えません。会社設立をすることで、かえって使える制度が減る面もあります。

会社設立を考えるのであれば、いま使っている制度と、法人化後に使える制度を並べて比べてください。税理士に試算を依頼するのが確実です。

さらに、法人で運用を行う場合、事業としての実体が問われる場面もあります。単に資産を保有しているだけの法人について、どう評価されるかという論点です。

節税を目的に会社設立をする場合、この点も含めて検討する必要があります。形だけの法人にならないよう、事業の中身を考えておいてください。

サラリーマンが有価証券の運用のために会社設立をするのであれば、規模と運用方針を踏まえた個別の検討が欠かせません。

サラリーマンとして本業の給与がある以上、運用の損益を給与所得と相殺できるかどうかも判断材料になります。法人化すると、この形は使えなくなります。

有価証券の運用については、節税になるかどうかが運用の内容によって変わります。試算なしに判断しないでください。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

会社設立をしない選択肢

会社設立をしない選択肢を表したイラスト

資産運用について会社設立を考えている場合でも、個人のままでできることを先に確認してください。

会社設立をすると、法人住民税の均等割が毎年かかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。赤字でもかかります。

これに決算と申告の費用が加わり、合計で年30万円前後になることが多くなります。運用の収益がこの固定費を上回らなければ、手取りは減ります。

個人のままでできることとして、次のようなものがあります。

  • 不動産所得について、経費の計上漏れと按分を見直す
  • 青色申告の承認を受ける(事業的規模と認められる場合)
  • 所得控除の対象になる制度を確認する
  • 個人で使える非課税の制度を活用する

いずれも固定費がかからず、手間も会社設立より小さく済みます。会社設立より先に検討できることが残っていないかを確認してください。

そして、規定の面でも、個人のままであれば役員兼務の論点が生じません。副業禁止の勤務先にいる会社員にとっては、この点も判断材料になります。

節税の効果と、規定上の安全性。この二つを並べて考えると、いまは個人のまま続けるという結論になることもあります。

サラリーマンとして本業がある以上、無理に法人を持つ必要はありません。

節税の手段は法人化だけではありません。個人でできる制度を先に確認してください。

出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

確認しておく観点の整理

確認しておく観点の整理を表したイラスト

資産運用と会社設立について、確認しておく観点を整理します。

資産運用と会社設立について確認する五つの観点のチェックリスト
二つめが、会社設立を考える場合の分かれ目になります。

一つめと二つめは規定の話、三つめは規模の話、四つめと五つめは数字の話です。この順番で確認してください。

規定の面で通らなければ、数字の話に進む意味がありません。逆に、規定の面で問題がなくても、数字が合わなければ会社設立をする理由がありません。

公務員の方は、法律による制限がありますので、まずそちらを確認してください。不動産の賃貸などについても、一定の規模を超える場合には承認が必要とされることがあります。

サラリーマンとして本業を持ちながら資産を運用する場合、規模が大きくなるにつれて確認すべきことが増えていきます。定期的に見直す習慣を持っておくとよいと思います。

節税を目的に会社設立を考えるのであれば、これらを確認したうえで税理士に相談してください。

サラリーマンが会社設立を考える段階になったら、規定・規模・数字の三つを順に確認してください。

節税の効果と規定上の安全性を並べて、そのうえで判断することになります。

出典副業・兼業 (厚生労働省/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

副業禁止の場合の資産運用と会社設立について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 副業に関する規定は「事業を営むこと」を対象としていることが多く、資産運用は性格が異なる面があります
  2. ただし規定の書き方によります。「一切の営利活動を禁じる」といった広い書き方なら解釈が変わります
  3. 規模が大きくなれば、事業と見られる余地が生じます。始めたときの扱いが続くとは限りません
  4. 会社設立をすると役員兼務の論点が加わります。運用の可否とは別に確認が必要です
  5. 役員報酬を受け取れば社会保険の届出が必要になり、勤務先に伝わります
  6. 不動産は移転にコストがかかります。これから取得するほうが無駄が少なくなります
  7. 有価証券は個人と法人で税制が異なり、一概に有利とは言えません

資産運用として認められていることと、会社設立をして代表者になることが認められることは、別の話です。ここを混同しないでください。

そして、会社設立には年30万円前後の固定費がかかります。運用の収益がこれを上回らなければ、手取りは減ります。個人のままでできることを先に確認してください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に厚生労働省・国税庁・日本年金機構・総務省・人事院のページで確認したものです。就業規則の解釈は個別の規定と事実関係によって判断が分かれます。実際の判断にあたっては、勤務先の規定を確認し、必要に応じて社会保険労務士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説です。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

規模が変われば扱いも変わります

資産運用として始めたものが、規模が大きくなるにつれて事業としての性格を帯びてくることがあります。始めたときの扱いが、そのまま続くとは限りません。

とくに会社設立を考える段階になれば、役員兼務という別の論点が加わります。運用として認められていたとしても、法人をつくって代表者になることが同じように認められるとは限りません。

節税を目的に会社設立を考えるのであれば、まず勤務先の規定を確認してください。そのうえで、個人のままでできることと比べて判断することになります。判断に迷う部分は、社会保険労務士や税理士にご相談ください。

この記事は判断の材料になりましたか?

他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください

掲載順は優劣を示すものではありません。並び順にご注意ください。内容・料金・条件は各サイトの提供者が随時変更します。ご覧になる時点の最新情報は、必ずそれぞれの公式ページでご確認ください。

あわせて読みたい記事

同じテーマで、判断の材料になる記事です