会社設立後の節税は一年をどう使うか。時期ごとにできることの整理
この記事の視点
会社設立をしたサラリーマン、あるいはこれから設立する方に向けて、節税を一年の流れとして捉える記事です。
節税というと、決算前に何かをするというイメージがあるかもしれません。しかし、決算直前にできることは限られています。役員報酬は期首に決めるものですし、実体を伴わない駆け込みの支出は否認の対象になります。
時期ごとに何ができるのかを整理しておけば、無理のない形で効果を出せます。個別の判断は税理士にご相談ください。
節税は決算前の作業ではない

会社設立後の節税について、最初に押さえておきたいことがあります。決算直前にできることは限られています。
最も影響が大きい役員報酬は、事業年度の開始から一定期間内に決めるものです。国税庁が示すところによれば、損金に算入できる役員給与は定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに該当するものです。
定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、各支給時期における支給額が同額であるものを指します。したがって、期中に「利益が出たから報酬を増やす」といった調整は原則としてできません。
また、期末に慌てて支出を増やしても、実体が伴わなければ損金として認められない可能性があります。不自然な処理は税務調査で問題になります。
つまり、節税は一年をかけて行うものです。期首に設計し、期中に記録を残し、期末に整理する。この流れで進めることになります。
サラリーマンとして本業を持ちながら運営する場合、この流れを意識しておくと無理がありません。決算前に時間を取られるのではなく、日常のなかで少しずつ進める形になります。
会社設立の初年度は、この流れ自体に慣れていないため戸惑うことがあります。二年目以降は同じ作業の繰り返しになりますので、最初の一年を丁寧に進めてください。

会社設立をした直後は、この一年の流れがまだ見えていません。最初の一巡を経験すると、どの時期に何をすべきかが 身についてきます。
会社設立の初年度は、この一年の流れがまだ見えていません。最初の一巡を経験すると、どの時期に何をすべきかが分かってきます。サラリーマンとして本業を持ちながらでも、二年目からは見通しが立つようになります。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月22日確認)
期首:役員報酬を決める

期首にやることは、役員報酬を決めることです。会社設立の初年度であれば、設立から間もない時期に決めることになります。
決めるときに見る数字は三つです。本業の給与収入と課税所得、給与所得控除の状況、そして合算後の社会保険の等級。
国税庁のページで確認すると、給与等の収入金額が850万円を超える場合の給与所得控除額は195万円が上限です。本業でこの水準を超えていれば、役員報酬を受け取っても控除は増えません。
社会保険については、日本年金機構の案内によれば、二以上事業所勤務の場合は両方の報酬を合算した月額により標準報酬月額を決定し、按分するとされています。合算により等級が上がれば保険料が増えます。
報酬を増やせば法人の損金は増えますが、所得税と社会保険料が増えます。減らせば法人に利益が残り、法人税がかかります。三つが同時に動くという構造です。
この判断を誤ると、一年間その状態が続きます。会社設立の準備段階で試算を済ませておくと、期限に追われずに決められます。
サラリーマンの場合、本業の給与は年間を通じてほぼ確定していますので、試算の前提が立てやすいという利点があります。
なお、初年度は売上の見通しが立たないことが多いため、保守的に置いて実績を見てから翌年度に調整するという進め方もあります。報酬をゼロから始めることもできます。
節税の観点では、この期首の判断がその年の結果をほぼ決めます。ここに時間をかける価値があります。

会社設立の初年度は、設立の日から最初の決算日までが一年に満たないこともあります。その場合も、報酬を決める期限は同じように到来します。
出典No.1410 給与所得控除 (国税庁/2026年8月22日確認)
期中:記録を残す

期中にやることの一つめが、記録を残すことです。
経費として計上するには、その支出が事業に必要だったことを説明できる必要があります。領収書だけでなく、何のための支出だったかを示す記録があると確実です。
会社員の副業法人の場合、本業の支出と法人の支出が混ざりやすいという事情があります。通信費、交通費、書籍代。どちらのためのものかを説明できるようにしておいてください。
基本は、法人の支出は法人口座から行うことです。法人名義のカードを使えば、明細がそのまま記録になります。個人の口座と混ざると、あとから区別するのに時間がかかります。
また、事業の実体を示す記録も重要です。取引の記録、成果物、やり取りの履歴。これらがあれば、法人が実際に活動していることを示せます。
国税庁は役員給与について、不相当に高額な部分は損金にならないとしています。職務の内容や法人の収益の状況が考慮されますので、活動の記録は報酬の根拠にもなります。
記録を残すことは、節税を守ることにつながります。否認されれば、それまでの節税額を上回る負担が生じることもあります。
サラリーマンとして本業が忙しいと、記録を後回しにしがちです。ただ、あとからまとめて思い出すのは困難ですので、その都度残す習慣をつけてください。
会社設立の直後にこの体制を整えておくと、以後の負担が大きく減ります。
サラリーマンとして本業の領収書と法人の領収書が混ざらないよう、保管の場所から分けておくと確実です。
会社設立をして法人名義のカードを作っておくと、記録の分離が自動的に進みます。
出典No.5202 役員等に対する経済的利益 (国税庁/2026年8月22日確認)
期中:規程を整える

期中にやることの二つめが、規程の整備です。
会社設立によって使えるようになる経費の項目には、規程の整備が要件となるものがあります。代表的なのが、社宅と出張日当です。
社宅であれば、契約の名義が法人であること、社宅に関する規程があること、役員から適正な家賃を受け取っていることが必要です。適正な家賃を受け取っていない場合、その差額は役員に対する経済的利益として扱われます。
出張日当であれば、出張旅費規程が先にあることが前提です。規程がないまま「今月は出張が多かったから日当を出す」という処理をすると、根拠のない支給として給与に該当する可能性があります。
これらの整備は、期末に慌ててやるものではありません。規程を作成した日付と実際の支給の時期が整合していなければ、説明が難しくなります。
会社設立の直後、あるいは期首の段階で整えておくのが自然です。サラリーマンとして本業のかたわらで運営する場合、こうした書類の整備を後回しにしがちですが、先に済ませておくべき部分です。
なお、規程を整えても、実際に使う場面がなければ意味がありません。制度として使えることと、実際に使えることは別です。
ご自身の事業で本当に必要なものだけを整備してください。使わない規程を並べても、節税にはつながりません。
判断に迷う部分は、税理士に確認しながら進めてください。
会社設立の直後に規程を整えておけば、期中に迷う場面が減ります。
出典No.2508 給与所得となるもの (国税庁/2026年8月22日確認)
期中:毎月の記帳を続ける

期中にやることの三つめが、毎月の記帳です。
記帳を月ごとに済ませておくと、決算の作業が軽くなります。逆に一年分をためると、決算期に本業と重なって身動きが取れなくなります。
会計ソフトを使えば、法人口座やカードの明細を取り込んで仕訳を作れます。取引が少ないうちは、月に1〜2時間程度で済むことも多いはずです。
記帳を続けることは、節税の面でも意味があります。経費の計上漏れがあれば、その分だけ法人の利益が過大に計算され、税額が増えます。
また、記帳ができていれば、期中の段階で利益の見込みが分かります。期末になってから「思ったより利益が出ていた」と気づくのでは、対応が限られます。
見込みが早く分かれば、必要な設備投資の時期を調整するといった判断ができます。ただし、実体のない支出を作り出すことはできません。あくまで、必要なものをいつ行うかという調整です。
サラリーマンとして本業を持ちながら運営する場合、月に一度、決まった時間に数字と向き合う習慣をつけてください。この積み重ねが、期末の負担を決めます。
会社設立の初年度は、開業費の処理や減価償却の設定など、初回だけ発生する判断が入ります。ここを誤ると翌年以降にも影響しますので、初年度こそ専門家に見てもらう価値があります。
会社設立の初年度は判断が多く、記帳にも時間がかかります。二年目以降は軽くなります。
出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月22日確認)
期末:整理と確認

期末にやることは、整理と確認です。
棚卸がある事業であれば、在庫を数えて評価します。未払の費用があれば、その期に属するものとして計上します。前払いした費用があれば、期間に応じて配分します。
これらは正しく計上するための作業であって、節税のための操作ではありません。しかし、正しく計上すること自体が、結果として適正な税額につながります。
計上漏れがあれば利益が過大になり、税額が増えます。逆に、計上すべきでないものを入れれば否認の対象になります。どちらも避けたいところです。
期末に慌てて支出を増やすという発想は、おすすめしません。実体が伴わなければ損金として認められませんし、不自然な処理は税務調査で問題になります。
期末にできるのは、一年の結果を正しくまとめることです。節税の勝負は、期首の設計と期中の積み重ねでほぼ決まっています。
なお、決算の作業は決算日から2か月ほど続きます。この期間に本業の繁忙期が重なると、両方が同時に来ることになります。事業年度は会社設立のときに決められますので、そこで設計しておいてください。
サラリーマンとして本業を持ちながら決算を迎えるなら、落ち着いて作業できる時期に設定しておくことが、正しい処理につながります。
そして、決算が終われば申告です。期限は原則として事業年度の終了の日の翌日から2か月以内。税務署と自治体の両方に提出します。
会社員が期末に慌てないためには、事業年度の設定が効いてきます。本業の繁忙期を避けておいてください。
会社設立から一巡すると、翌年の見通しが立てやすくなります。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)
翌年に向けた見直し

申告が終わったら、次の事業年度の設計に入ります。
役員報酬は事業年度の開始から一定期間内に決めるものですので、年度の切り替え時が見直しの機会になります。
このタイミングで確認したいのは次の点です。本業の給与水準は変わったか。標準報酬月額の等級は変わったか。法人の利益の見込みはどうか。そして、運営を続けられる体制になっているか。
会社員のまま法人を持つ場合、本業の状況は毎年変わり得ます。昇給、異動、転職。そのつど最適な役員報酬の水準も変わります。
一度決めた設計を何年も使い回さないほうが、節税の効果を保てます。前年と同じでよいかを、毎年確かめてください。
また、制度も改正されます。税率や控除額が変われば、前提が変わります。年に一度は最新の情報を確認する機会を持ってください。
この見直しを自分で行うのは負担が大きいので、税理士に継続して見てもらう体制があると楽になります。顧問契約を結んでいれば、年度の切り替え時に相談する形が取れます。
会社設立の際に依頼先を決めるとき、こうした見直しも含めて相談できるかを確認しておいてください。設立の手続きだけを依頼して終わりにするより、長い目で見て負担が小さくなります。
サラリーマンとして限られた時間で運営する以上、判断を任せられる相手がいることの価値は大きくなります。
会社設立の際に顧問契約を結んでおけば、この見直しも相談できます。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)
まとめ

会社設立後の節税を一年の流れとして整理しました。
- 期首:役員報酬を決めます。一年動かせないため、最も影響が大きい判断です
- 期中:記録を残します。経費の根拠であり、事業の実体を示すものでもあります
- 期中:社宅や出張日当を使うなら、規程を先に整備します
- 期中:毎月の記帳を続けます。ためると期末に苦しくなります
- 期末:棚卸と未払の整理をします。駆け込みではなく、正しく計上する作業です
- 申告後:翌年度の設計を見直します。前提が変われば最適な形も変わります
節税というと決算前に何かをするイメージがあるかもしれませんが、決算直前にできることは限られています。役員報酬は期首に決めるものですし、実体のない支出は認められません。
一年をかけて、期首に設計し、期中に積み重ね、期末に整理する。この流れで進めれば、無理のない形で効果が出ます。
そして、法人住民税の均等割は赤字でもかかります。総務省の資料で標準税率を確認すると年7万円から。節税額はこの固定費を差し引いた残りで測ってください。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)
期首の設計が、その年を決めます
会社設立後の節税で最も影響が大きいのは、期首に役員報酬をいくらに決めるかです。ここは一度決めたら一年動かせません。
期中にできるのは、記録を残すことと、必要な支出を適切に計上することです。派手なことはできませんが、これが土台になります。
そして期末には、整理と確認をします。駆け込みで何かをするのではなく、一年の結果を正しくまとめる作業です。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。
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