会社設立後の税金対策にどんな手段があるか。会社員が使えるものを整理する
この記事の構成
会社設立をした会社員、あるいはこれから設立する方に向けて、税金対策として使える手段を一覧にする記事です。手段の性質と要件を並べます。
税金対策には、負担そのものを減らすものと、時期をずらすものがあります。この二つは性質が違いますので、分けて考える必要があります。
また、手段によっては要件が厳しく、実際には使いにくいものもあります。制度として存在することと、自分が使えることは別です。個別の判断は税理士にご相談ください。
手段を二つに分けて考える

会社設立後の税金対策を考えるとき、手段を二つに分けると見通しがよくなります。
一つめが、税負担そのものを減らすものです。所得を法人と個人に分けて税率の差を使う、経費として認められる支出を正しく計上する。こうした手段は、納める税額の合計を減らします。
二つめが、課税の時期をずらすものです。法人に利益を残す、共済制度に掛金を払う。これらは当期の税額を減らしますが、将来受け取る段階で課税されます。
この二つを混同すると、判断を誤ります。時期をずらす手段は、いずれ課税されるという前提で考える必要があります。
たとえば経営セーフティ共済の掛金は損金になりますが、解約して受け取る解約手当金は益金になります。払うときに減らし、受け取るときに増えるという構造です。
したがって、時期をずらす手段は「いつ受け取るか」の設計とセットで考えることになります。受け取る年に大きな損失が出る見込みがあるなら意味がありますが、そうでなければ先送りにすぎません。
サラリーマンが会社設立をして税金対策を考える場合、まず一つめの「減らす手段」を確実に押さえてください。二つめは、余裕ができてから検討するもので構いません。
そして、どの手段を使うにしても、法人住民税の均等割は変わりません。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。

サラリーマンが会社設立をして税金対策を考える場合、この二つの区別が出発点になります。
節税という言葉が、この二つの意味で使われていることに注意してください。
会社設立をした直後は、使える手段が少ないことに戸惑うかもしれません。実績が積み上がるにつれて選択肢が増えます。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)
手段その一:役員報酬の設計

最初の手段が、役員報酬の設計です。会社設立後の税金対策で、最も影響が大きい項目になります。
報酬を増やせば法人の損金が増えて法人税が下がり、報酬を減らせば法人に利益が残ります。個人側では、報酬が本業の給与と合算されて所得税がかかります。
国税庁が示すところによれば、損金に算入できる役員給与は定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに該当するものです。事業年度の途中で自由に変えることはできません。
会社員の場合、二つの制約があります。一つめが給与所得控除の上限です。国税庁のページで確認すると、給与等の収入金額が850万円を超える場合の控除額は195万円が上限です。本業でこの水準を超えていれば、役員報酬を受け取っても控除は増えません。
二つめが社会保険です。日本年金機構の案内によれば、二以上事業所勤務の場合は両方の報酬を合算した月額により標準報酬月額を決定し、按分するとされています。合算により等級が上がれば保険料が増えます。
したがって、税額だけを見て報酬額を決めると、手取りが減ることがあります。税と社会保険料を合計して比べてください。
この設計は、期首に決めて一年動かせません。会社設立の準備段階で試算を済ませておくと、期限に追われずに決められます。
サラリーマンの場合、本業の給与は年間を通じてほぼ確定していますので、試算の前提が立てやすいという利点があります。
報酬をゼロにするという選択もあります。法人に利益が残り、社会保険の負担も生じませんが、個人はそのお金を使えません。目的によって判断が変わります。
サラリーマンの場合、本業の給与という動かせない前提があるため、報酬の設計は独立した方より制約を受けます。
節税の効果は、この報酬設計でほぼ決まります。他の手段を積み上げても、ここを外すと結果が変わりません。
会社設立の初年度は、報酬をゼロから始めて翌年度に設定するという進め方もあります。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月22日確認)
手段その二:経費を正しく計上する

二つめが、経費を正しく計上することです。地味ですが、確実に効く手段です。
事業に必要な支出を計上できていなければ、その分だけ法人の利益が過大に計算され、税額が増えます。計上漏れは、そのまま損になります。
会社設立によって新たに使えるようになる項目もあります。役員に対する報酬、退職金、出張日当、社宅。いずれも法人が別人格であることによって可能になるものです。
ただし、それぞれに要件があります。社宅であれば契約名義が法人であること、社宅規程があること、役員から適正な家賃を受け取っていること。出張日当であれば旅費規程が先にあることが前提です。
国税庁は役員等に対する経済的利益について考え方を示しています。適正な家賃を受け取っていない場合、その差額は役員に対する給与として扱われます。
会社員の副業法人では、本業の支出と法人の支出が混ざりやすいという事情があります。通信費、交通費、書籍代。どちらのためのものかを説明できるよう、記録を分けてください。
基本は、法人の支出を法人口座から行うことです。法人名義のカードを使えば、明細がそのまま記録になります。
なお、制度として使える項目でも、実際に使う場面がなければ意味がありません。社宅も出張日当も、実態が伴ってはじめて認められます。使わない規程を並べても効果はありません。
ご自身の事業で本当に必要なものだけを整備してください。
経費の計上漏れをなくすことは、地味ですが確実な節税です。会社設立の直後から記録の体制を整えてください。
会社設立によって新たに使えるようになる項目は、いずれも要件を伴います。
出典No.5202 役員等に対する経済的利益 (国税庁/2026年8月22日確認)
手段その三:経営セーフティ共済

三つめが、中小企業倒産防止共済、通称の経営セーフティ共済です。
中小企業基盤整備機構が運営する制度で、取引先の倒産による連鎖倒産等を防ぐことを目的としています。納付した掛金は、法人の場合は損金に算入できます。
掛金月額は5,000円から20万円まで、5,000円単位で設定できます。掛金残高が800万円に達するまで納付できます。
当期の税額を減らす効果はあります。ただし、これは先送りの性質を持ちます。解約して受け取る解約手当金は益金になり、その年の所得を増やすためです。
したがって、解約する時期の設計が重要になります。大きな損失が出る年に解約できれば相殺できますが、そうでなければ課税が繰り延べられるだけです。
会社員の副業法人でこの制度を使う場合、資金に余裕があることが前提になります。掛金として払った資金は、解約するまで手元に戻りません。
また、加入には要件があります。一定期間以上事業を継続していることなどが求められますので、会社設立の直後から使えるとは限りません。
要件と最新の内容は、中小機構のページでご確認ください。制度は変更されることがあります。
サラリーマンの副業法人では、掛金として払える資金があるかどうかが現実的な制約になります。
節税として紹介されることが多い制度ですが、性質としては先送りです。受け取る時期を考えずに加入すると、期待した節税になりません。
会社設立の直後は加入要件を満たさないことがありますので、時期を確認してください。
出典経営セーフティ共済 制度の概要 (中小企業基盤整備機構/2026年8月22日確認)
手段その四:小規模企業共済(個人の側)

四つめが、小規模企業共済です。前の制度と混同されやすいので、違いを押さえてください。
中小企業基盤整備機構が運営する制度である点は共通ですが、契約者が個人である点が違います。掛金は個人が払い、所得控除の対象になります。
経営セーフティ共済が法人税の対象を減らすのに対し、小規模企業共済は個人の所得税の対象を減らすという整理になります。
ただし、加入できる方には要件があります。小規模企業の個人事業主や会社等の役員などが対象とされていますので、ご自身が該当するかを確認する必要があります。
会社員が本業の給与を受け取っているという状態が、加入要件にどう影響するかは、個別の確認が必要な部分です。中小機構のページで要件をご確認ください。
この制度も、受け取る段階で課税されます。共済金を受け取るときの扱いは受取方法によって異なりますので、長期の設計が前提になります。
サラリーマンが会社設立をして役員になった場合に使えるかどうかは、要件次第です。使えるのであれば、個人の所得控除として効きます。
なお、iDeCoなど他の制度との併用や上限の関係もありますので、全体を見て判断してください。
いずれにせよ、掛金として払った資金は長期にわたって拘束されます。手元の資金繰りに余裕があることが前提です。
こちらも節税として紹介されますが、同じく先送りの性質を持ちます。長期の設計が前提です。
会社設立をして役員になった場合の加入可否は、要件を個別に確認する必要があります。
出典小規模企業共済とは (中小企業基盤整備機構/2026年8月22日確認)
手段その五:事業年度と決算期の設計

五つめが、事業年度の設計です。直接的な節税ではありませんが、結果として効いてきます。
法人の事業年度は自由に決められます。会社設立のときに決め、あとから変更することもできます。
本業の繁忙期と決算が重ならないようにするだけで、決算の作業を落ち着いて行えます。落ち着いて行えれば、計上漏れが減り、正しい処理につながります。
決算作業は決算日から2か月ほど続きます。申告期限は原則として事業年度の終了の日の翌日から2か月以内です。
加えて、個人の確定申告の時期も考慮に入れてください。役員報酬を受け取れば、本業の年末調整とは別に確定申告が必要になります。
事業年度を3月末にすると、法人の申告が5月末までとなり、その前の2月から3月には個人の確定申告があります。春先に作業が集中する形です。
これを避けるには、事業年度を別の月にずらすことになります。会社設立の段階で決められることですので、ここで設計しておいてください。
また、季節性のある事業であれば、繁忙期の直後に決算を置くことで、在庫や売掛金の状況が把握しやすくなることもあります。
サラリーマンとして本業を持ちながら運営する場合、この設計の意味は小さくありません。時間を確保できることが、正しい処理の前提になります。
サラリーマンにとって、決算の時期を本業とずらすことは、時間を確保するという意味でも重要です。
直接の節税ではありませんが、落ち着いて決算を行えることが正しい処理につながり、結果として節税になります。
会社設立のときに決めた事業年度は、あとから変更もできます。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)
使いにくい手段もあります

税金対策として紹介される手段のなかには、会社員の副業法人では使いにくいものもあります。
役員退職金は、長期にわたって法人を維持することが前提です。在任期間が短ければ認められる金額も限られ、不相当に高額な部分は損金になりません。会社設立から数年でたたむ前提では使えません。
生命保険を使った形は、保険の種類によって損金にできる割合が定められており、扱いが複雑です。また、いずれ受け取る段階で益金になりますので、先送りの性質を持ちます。
家族を役員にする形は、社会保険の負担と扶養への影響を確認する必要があります。所得分散による節税額より、保険料の増加や扶養から外れることによる影響のほうが大きくなることがあります。
大きな設備投資は、そもそも資金が必要です。副業の規模では現実的でないことがあります。
これらはいずれも、制度として存在することと、自分が使えることは別という例です。手段の一覧を見て「これだけ使える」と考えると、実態から離れます。
会社員が副業の受け皿として持つ法人で確実に使えるのは、役員報酬の設計と、経費を正しく計上することです。この二つを押さえるだけでも十分な場合があります。
そして、実体を伴わない処理は否認されます。節税のつもりが加算税の対象になれば、それまでの効果を上回る負担になります。
判断に迷う手段は、使う前に税理士に確認してください。

節税を目的に無理な処理をすると、否認されて逆効果になります。使える手段を確実に押さえるほうが安全です。
会社設立から日が浅いうちは、確実な手段に絞るほうが安全です。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月22日確認)
まとめ

会社設立後の税金対策について、この記事で整理したことをまとめます。
| 手段 | 性質 | 会社員にとって |
|---|---|---|
| 役員報酬の設計 | 減らす | 最も影響が大きい。給与所得控除の上限と社会保険に注意 |
| 経費を正しく計上 | 減らす | 確実に効きます。要件と記録が前提です |
| 経営セーフティ共済 | 先送り | 掛金は損金。解約時に益金。資金の余裕が前提 |
| 小規模企業共済 | 先送り | 個人の所得控除。加入要件の確認が必要です |
| 事業年度の設計 | 間接的 | 繁忙期を避けると正しい処理につながります |
| 退職金・保険など | 場合による | 長期の維持や資金が前提。使いにくいことも |
※ 一般的な整理です。制度の要件と最新の内容は各運営元でご確認ください。個別の判断は税理士にご相談ください。
減らす手段と、先送りにする手段を分けて考えてください。先送りは、いつ受け取るかの設計とセットで意味を持ちます。
会社員の副業法人で確実に使えるのは、上の二つです。派手さはありませんが、これが土台になります。共済制度などは、資金と期間に余裕ができてから検討するもので構いません。
そして、どの手段を使っても法人住民税の均等割は変わりません。節税額はこの固定費を差し引いた残りで測ってください。
節税額は固定費を差し引いた残りで測ってください。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)
使える手段は多くありません
手段を並べると多く見えますが、会社員の副業法人で実際に使えるものは限られます。規模が小さいこと、本業に時間を取られること、社会保険が本業と重なることが制約になります。
そのなかで確実に効くのは、役員報酬の設計と、必要な経費を正しく計上することです。派手さはありませんが、これが土台です。
共済制度などは、資金に余裕があり長期に続ける前提があってはじめて意味を持ちます。判断に迷う部分は、ご自身の状況を伝えたうえで税理士にご相談ください。
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