副業で合同会社設立をするとき、定款と事業目的をどう書くか
この記事の対象
副業の受け皿として合同会社を設立する会社員が、定款をどう作るかを考えるための記事です。とくに事業目的の書き方に重点を置きます。
合同会社は定款の認証が不要なため、株式会社より手続きが軽くなります。ただし、内容の検討が不要になるわけではありません。事業目的は登記され、誰でも見られる状態になります。
サラリーマンの場合、本業との競合という論点が加わります。就業規則の競業避止の規定に触れないよう、範囲を考える必要があります。個別の判断は司法書士や税理士にご相談ください。
定款とは何を書くものか

定款は、会社の基本的な事項を定めた規則です。会社設立の際に作成し、登記の添付書類になります。
株式会社の場合、作成した定款について公証人の認証を受ける必要があります。合同会社にはこの手続きがありません。そのぶん、費用も手間も軽くなります。
ただし、認証が不要だからといって内容を適当に決めてよいわけではありません。定款は会社の運営の基礎になりますし、記載した事項の一部は登記されて公開されます。
合同会社の定款に必ず記載する事項として、次のようなものがあります。
- 目的(どのような事業を行うか)
- 商号(会社の名称。「合同会社」の文字を含める必要があります)
- 本店の所在地
- 社員の氏名または名称および住所
- 社員が有限責任社員であること
- 社員の出資の目的およびその価額または評価の標準
このうち、目的・商号・本店の所在地は登記されます。誰でも登記事項証明書を取得できますので、公開される情報だと考えてください。
サラリーマンが会社設立をする場合、この公開性が判断に影響することがあります。本店を自宅にすれば住所が公開されますし、事業目的から事業の内容が分かります。
節税を目的に会社設立をする場合でも、定款の内容は事業の実態と整合している必要があります。実際に行わない事業を並べても意味がありません。
定款の内容は、会社設立後の節税の設計にも関わってきます。事業年度をいつにするかによって、決算の時期が決まり、役員報酬を決める時期も決まるためです。
出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月21日確認)
事業目的の書き方

事業目的は、その会社が行う事業の内容を示すものです。定款に記載し、登記されます。
記載にあたっては、いくつかの要件が考慮されます。適法であること、内容が明確であること、営利を目的とするものであることなどです。
かつては類似商号の規制との関係で目的の記載が厳しく審査されていましたが、現在は以前ほど厳格ではないとされています。とはいえ、意味が不明瞭な記載や、法律上行えない事業を書くことはできません。
実務上よく見られるのは、実際に行う事業を具体的に書いたうえで、最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」という一文を加える形です。これにより、細かい付随業務まで目的の範囲に含めることができます。
サラリーマンが副業の受け皿として会社設立をする場合、行う事業はある程度限られているはずです。その内容を具体的に書けば足ります。
将来の展開を見越して幅広く書きたくなることがありますが、そこには注意が必要です。次の節で扱います。
なお、許認可が必要な事業を行う場合、その許認可の要件として目的に特定の文言が求められることがあります。該当する事業を予定しているなら、所管の窓口に確認してください。
節税の観点では、事業目的そのものが税額に影響することはありません。ただし、法人の経費として認められるかどうかは事業との関連性で判断されますので、間接的には関係します。
事業目的に書いた内容と、実際に計上している経費が整合していないと、節税の根拠を説明しにくくなります。実態に即した記載にしてください。
出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月21日確認)
会社員が注意すべき、競合の問題

ここが、サラリーマンが会社設立をする場合に特有の論点です。
多くの企業の就業規則には、競業避止に関する規定があります。本業と競合する事業を行うことを制限するものです。会社設立をして代表社員になる場合、この規定に触れないかを確認する必要があります。
事業目的を広く書きすぎると、実際には行っていない事業まで含まれてしまいます。登記されて公開されている以上、「目的に書いてあるが実際にはやっていない」という説明は通りにくくなります。
したがって、実際に行う事業に即して、必要な範囲にとどめるのが安全です。将来行うかもしれない事業まで盛り込む必要はありません。
事業目的は、あとから追加できます。定款を変更し、変更登記をすることになります。登録免許税がかかりますが、不可能ではありません。必要になってから追加すればよいと考えてください。
厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを示していますが、企業ごとに条件が付いているのが実情です。届出制であれば、届出の際に事業内容を伝えることになりますので、そこでも整合が問われます。
公務員の方は、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業が原則として禁止されています。そもそも会社設立が可能かどうかを、所属先の規程で確認してください。
競業避止の規定に触れてしまうと、会社設立そのものが問題になります。節税の効果を考える以前の話ですので、ここは慎重に確認してください。
出典副業・兼業と労働条件 (厚生労働省/2026年8月21日確認)
商号を決めるときの注意

商号、つまり会社の名称についても、いくつか決まりがあります。
まず、合同会社の場合は商号のなかに「合同会社」という文字を含める必要があります。前に付けるか後ろに付けるかは自由です。
次に、同一の所在場所に同一の商号の会社を登記することはできません。同じ住所に同じ名前の会社があると区別できないためです。
使える文字にも制限があります。日本語のほか、ローマ字や一部の符号は使えますが、使用できる記号は限られています。法務局の案内で確認してください。
また、他社の商標や著名な商号と紛らわしい名称を使うと、別の法律上の問題が生じることがあります。会社設立の前に、同じような名称の会社や商標がないかを調べておくと安心です。
サラリーマンが副業の受け皿として会社設立をする場合、本業の会社名と紛らわしい名称は避けるべきです。関係があると誤解される可能性があります。
商号は登記されて公開されます。本名を含めるかどうかも判断の一つです。屋号として使ってきた名称をそのまま使うこともできますし、新たに考えることもできます。
なお、商号の変更も定款の変更と変更登記によって可能です。ただし、名刺や取引先への案内をやり直すことになりますので、最初に決めておくほうが手間は少なくなります。
商号は節税に直接は関係しませんが、取引先との関係に影響します。会社設立の目的が信用の確保であれば、名称の印象も判断材料になります。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月21日確認)
本店の所在地をどこにするか

本店の所在地も、定款に記載し登記される事項です。
サラリーマンが副業の受け皿として会社設立をする場合、自宅を本店にすることが多くなります。事務所を借りるほどの規模ではないためです。
ただし、自宅を本店にすると住所が公開されます。登記事項証明書は誰でも取得できますので、これは避けられません。プライバシーの観点から気にされる方もいます。
賃貸物件の場合、契約で事業利用が制限されていることがあります。賃貸借契約を確認し、必要であれば貸主に相談してください。無断で本店登記をすると、契約違反になる可能性があります。
これを避ける方法としてバーチャルオフィスなどを利用することもありますが、事業の実態との関係で慎重に判断する必要があります。実体のない場所を本店とすることが、あとで問題になる場合もあります。
また、本店をどこに置くかによって、法人住民税の均等割の額が変わることがあります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円ですが、超過課税を採用している自治体では異なります。
節税の観点からは、この均等割の差も判断材料になり得ます。ただし、実態のない場所に本店を置くことは別の問題を生みますので、あくまで実際に事業を行う場所を基準に考えてください。
引っ越しによって本店を移転する場合は、定款の変更と変更登記が必要になります。サラリーマンとして転勤の可能性がある方は、その手間も見込んでおいてください。
本店の所在地によって均等割の額が変わることは、長い目で見れば節税に関わります。ただし実態のない場所を選ぶことはできません。
出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月21日確認)
事業年度をいつにするか

事業年度も、定款で定める事項です。会社設立の際に決めることになります。
法人の事業年度は自由に決められます。個人事業のように暦年と決まっているわけではありません。ここは、サラリーマンにとって重要な選択肢になります。
決算を迎えると、帳簿を締めて決算書をつくり、法人税の申告をします。申告期限は原則として事業年度の終了の日の翌日から2か月以内です。この期間に本業の繁忙期が重なると、両方が同時に来ることになります。
本業が落ち着いている時期に決算が来るように設計しておくと、続けやすくなります。会社設立の段階で決められることですので、ここで考えておいてください。
加えて、個人の確定申告の時期も考慮に入れる必要があります。役員報酬を受け取れば、本業の年末調整とは別に確定申告が必要になります。事業年度を3月末にすると、法人の申告が5月末までとなり、その前の2月から3月には個人の確定申告があるという形になります。
この集中を避けるには、事業年度を別の月にずらすことになります。たとえば9月末や12月末といった選択肢があります。
なお、設立日から最初の決算日までの期間は、1年を超えないように設定します。会社設立の時期と事業年度の関係で、初年度が数か月になることもあります。
節税の観点では、初年度の期間が短いと、その分だけ均等割が月割りで計算されることがあります。自治体の取り扱いを確認してください。

事業年度の設計は、節税というより運営の安定に関わります。落ち着いて決算を迎えられれば、無理のない処理ができます。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)
定款は設立後も使います

定款は、会社設立のときに作って終わりではありません。
事業年度を変更する、本店を移転する、事業目的を追加する、商号を変える。こうした場合には定款の変更が必要になります。そのつど、現行の定款を確認することになります。
また、金融機関で法人口座を開設する際や、取引先から求められた際に、定款の提出を求められることがあります。すぐに出せる状態で保管しておいてください。
合同会社の場合、定款の変更は原則として総社員の同意によります。一人で設立した法人であれば、自分の判断で変更できます。ただし、変更の記録として書面を残しておくことが望ましい形です。
定款の変更のうち、登記事項に関わるものは変更登記が必要です。登録免許税がかかります。登記事項でないもの(事業年度など)は、変更登記は不要ですが、税務署などへの届出が必要になることがあります。

会社設立の段階で丁寧に決めておけば、あとの変更の手間が減ります。節税の設計とあわせて、この部分も検討してください。
定款を丁寧に作っておくことは、結果として節税の土台になります。変更の手間が減れば、そのぶん本業と事業に時間を使えます。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月21日確認)
まとめ

合同会社の定款と事業目的について、この記事で整理したことをまとめます。
- 合同会社は定款の認証が不要です。ただし内容の検討が不要になるわけではありません
- 目的・商号・本店の所在地は登記され、誰でも見られる状態になります
- 事業目的は実際に行う事業に即して書きます。広く書きすぎると競業避止の規定に触れる可能性があります
- 商号には「合同会社」の文字が必要です。本業と紛らわしい名称は避けてください
- 本店を自宅にすると住所が公開されます。賃貸なら契約の確認が要ります
- 事業年度は自由に決められます。本業の繁忙期と個人の確定申告の時期を避けてください
サラリーマンが会社設立をする場合、就業規則の確認が定款の作成より前に来ます。競業避止の範囲が分かってから、事業目的の記載を決めるという順番です。
そして、事業目的はあとから追加できます。設立の時点で将来のすべてを盛り込む必要はありません。必要になってから変更すればよいと考えてください。
サラリーマンが会社設立をするとき、定款は最初に向き合う書類になります。節税の設計はそのあとに続きますので、まずここを固めてください。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月21日確認)
広く書きすぎないでください
事業目的は、あとから追加できます。変更登記が必要で費用はかかりますが、不可能ではありません。したがって、設立の時点で将来のすべてを盛り込む必要はありません。
とくにサラリーマンの場合、本業と競合する内容を広く書くと、就業規則の競業避止の規定に触れる可能性があります。実際に行う事業に即して、必要な範囲にとどめてください。
定款は会社設立の後も効いてきます。事業年度の変更や本店の移転をするときは、定款の変更が必要になります。最初に作る内容が、その後の手続きの手間を左右します。判断に迷う部分は専門家にご相談ください。
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