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副業 合同会社設立

副業は個人事業主のままか、合同会社設立か。会社員が比べる六つの項目

この記事の前提

副業の収入がある会社員が、個人事業主のまま続けるか、合同会社を設立するかを判断するための記事です。株式会社との比較ではなく、法人にするかどうかという段階の話を扱います。

一般的な比較記事の多くは、独立して事業を行う個人事業主を想定しています。サラリーマンの場合、本業の給与があり、すでに社会保険にも加入しているため、比較の前提が変わる項目があります。

六つの項目に分けて、会社員の場合にどう読み替えるべきかを含めて整理します。節税の効果は前提によって変わりますので、個別の判断は税理士にご相談ください。

項目その一:かかる費用

項目その一:かかる費用を表したイラスト

最初の項目が費用です。ここが個人事業主と法人の最も分かりやすい違いになります。

個人事業主として事業を始めるのに、費用はかかりません。開業届を出すだけです。廃業するときも費用はかかりません。

合同会社を設立する場合、登録免許税がかかります。資本金の額の0.7%で、これが6万円に満たないときは6万円です。定款の認証は不要ですので、株式会社より軽く済みます。ほかに印鑑の作成費用や謄本の取得費用がかかります。

そして、設立後は毎年費用がかかります。法人住民税の均等割です。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。これは赤字でもかかります。

さらに、決算と法人税の申告を税理士に依頼すれば、その費用が加わります。サラリーマンが本業のかたわらで独学で行うには負担が大きい部分ですので、依頼することが多くなります。

個人事業主と合同会社の費用を比べた横棒グラフ
下の二つが毎年かかります。会社設立の判断は、この固定費を上回る節税ができるかで決まります。

会社員が副業で会社設立を考えるとき、この年30万円前後の固定費が判断の基準になります。節税額がこれを上回らなければ、手取りは増えません。

サラリーマンの場合、本業の給与があるためこの固定費を吸収できてしまいます。だからこそ、見合っているかを意識的に確認する必要があります。

会社設立の費用は一度きりですが、初年度には他の支出も重なります。法人の実印を作り、法人口座を開設し、会計ソフトを契約する。こうした細かい支出の合計は、思っているより大きくなります。サラリーマンが副業の資金から捻出するとなると、初年度は持ち出しが続く感覚になるかもしれません。

出典Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。 (日本公証人連合会/2026年8月21日確認)

項目その二:節税の効き方

項目その二:節税の効き方を表したイラスト

二つめが節税です。会社設立を検討する動機として最も多い項目だと思います。

個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進の仕組みです。法人税は、資本金1億円以下の普通法人であれば所得の金額に応じた区分で税率が定められており、個人のように青天井では上がりません。この差を使うのが、会社設立による節税の基本です。

ただし、サラリーマンの場合は前提が加わります。副業の所得は本業の給与所得と合算して課税されますので、本業の給与が高い方ほど、副業の所得に高い税率が乗っています。その部分を法人に移せば、税率の差が節税額になります。

逆に、本業の給与がそれほど高くない段階では、この差が小さくなります。副業の利益が同じでも、会社設立の効果は人によって変わるということです。

また、法人に利益を残した場合、そのお金は個人の手元には出てきません。納める税金の合計は減っても、使える現金が増えるとは限らない点は分けて考える必要があります。

役員報酬として受け取れば個人が使えますが、本業の給与と合算されて所得税がかかり、社会保険料も発生します。節税の設計は、この選択から始まります。

個人事業主のままであれば、こうした設計の余地はありません。事業の利益がそのまま事業所得になります。その分、判断は単純です。

会社設立をするかどうかは、この設計の余地を得ることが、固定費と手間に見合うかという問いになります。

法人に利益を残す形を選んだ場合、そのお金は将来の投資に回せます。設備を買う、外注を増やす、在庫を持つ。事業を育てる原資として使うのであれば、法人に置いておく意味があります。逆に、生活の足しにしたいのであれば、その目的には合いません。会社設立の目的をどこに置くかで、正解が変わります。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)

項目その三:社会保険

項目その三:社会保険を表したイラスト

三つめが社会保険です。ここが、会社員と独立した個人事業主とで最も大きく前提が違う項目です。

独立している個人事業主の場合、国民健康保険と国民年金に加入しています。法人をつくって役員報酬を受け取れば、健康保険と厚生年金に加入することになります。将来の年金という点では手厚くなりますので、法人化の利点として語られる項目です。

会社員の場合は違います。本業ですでに健康保険と厚生年金に加入していますので、法人から役員報酬を受け取ると、二つの事業所で被保険者になります。

日本年金機構の案内によれば、この場合は「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、事実発生から10日以内に被保険者本人が提出することとされています。保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、それぞれの報酬に基づいて按分されます。

つまり、サラリーマンにとって社会保険は新たな保障を得るものではなく、手続きと負担が増えるものとして現れます。一般的な比較記事で「法人化のメリット」として挙げられている項目が、会社員にはそのまま当てはまらないのです。

一般的な比較記事を読み替えてください「法人化すれば社会保険に加入できる」という説明は、国民健康保険と国民年金に加入している人を想定しています。会社員はすでに厚生年金と健康保険に加入していますので、この利点はありません。会社設立による節税を試算するときは、保険料の増加を費用として計上してください。

なお、役員報酬をゼロにすれば法人側で被保険者にはなりません。その場合、この項目は発生しませんが、法人に残った利益を個人が受け取れないという別の制約が生じます。

標準報酬月額には上限があります。本業の給与だけですでに上限付近にいる方の場合、役員報酬を加えても保険料がほとんど変わらないことがあります。逆に上限に達していない方は、報酬を加えることで等級が上がり、保険料が増えます。会社設立の判断をする前に、ご自身がどちらに当たるかを保険料額表で確認しておいてください。

出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月21日確認)

項目その四:責任の範囲

項目その四:責任の範囲を表したイラスト

四つめが、責任の範囲です。

個人事業主の場合、事業上の債務について事業主が責任を負います。事業と個人が一体ですので、事業の債務が個人の財産に及びます。

合同会社の社員は、出資した額を限度として責任を負うとされています。これを有限責任と呼びます。法人の債務が、原則として個人の財産に及ばないという仕組みです。

これは制度上の明確な違いです。ただし、副業の規模では差が出にくいという実態もあります。大きな借入れや在庫を抱えない事業であれば、そもそも大きな債務が生じません。

また、法人が金融機関から借入れをする際、代表者が個人保証を求められることがあります。その場合、有限責任という建て付けは実質的に機能しません。

会社員が副業の受け皿として会社設立をする場合、この項目は判断の中心にはなりにくいと思います。ただし、事業の内容によっては重みが変わります。

たとえば、在庫を持つ物販や、他人に損害を与える可能性のあるサービスであれば、責任の範囲を限定する意味が出てきます。ご自身の事業の性質に照らして判断してください。

なお、有限責任だからといって何をしても個人が守られるわけではありません。役員としての職務を怠った場合の責任は別に生じます。

個人事業主であっても、事業用の資産と個人の資産を帳簿上は区別します。ただし法的には一体ですので、事業の債務について個人の財産が引き当てになります。合同会社を設立すれば、この点は制度上分離されます。副業の内容によっては、この分離に意味が出てくる場面もあります。

出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月21日確認)

項目その五:対外的な信用

項目その五:対外的な信用を表したイラスト

五つめが、対外的な信用です。

法人であることで取引が進めやすくなる場面があります。企業によっては社内規程で取引相手の形態を定めていることがあり、与信の過程で登記事項証明書の提出を求められることもあります。

ただし、サラリーマンが副業で仕事を受ける規模では、形態を問われない場面も少なくありません。取引の相手が個人や小規模事業者であれば、実績のほうが見られます。

この項目は、想定している取引先に確認するのがいちばん早い部分です。「個人事業主でも取引できますか」と聞けば済む話で、これを確かめずに会社設立をすると、必要のない固定費を負うことになります。

また、法人であることの信用は、設立しただけで得られるものではありません。登記事項証明書に記載されるのは商号や本店の所在地といった形式的な情報で、事業の中身や実績は表れません。

合同会社と株式会社を比べた場合、株式会社のほうが認知度が高いという傾向はあります。ただし、これも取引先によります。

会社設立を信用のために行うのであれば、具体的にどの取引で必要になるのかを確かめてから判断してください。漠然とした期待だけで年30万円の固定費を負うのは、合理的とは言えません。

サラリーマンの副業であれば、まず個人事業主として実績を積み、必要が生じてから会社設立を検討するという順番も十分にあり得ます。

合同会社という名称に馴染みがない取引先もあります。株式会社と比べて認知度が低いことは事実ですので、名刺や請求書を見た相手が戸惑うことも考えられます。ただ、近年は合同会社の設立件数が増えており、以前ほど珍しい形態ではなくなっています。会社設立の際に過度に心配する必要はないと思います。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)

項目その六:手間の量

項目その六:手間の量を表したイラスト

六つめが、手間の量です。会社員にとっては費用と同じくらい重要な項目になります。

個人事業主の場合、年に一度の確定申告が中心です。青色申告であれば記帳が必要になりますが、会計ソフトを使えば負担は軽くなります。

会社設立をすると、法人の決算と申告が加わります。事業年度の終了の日の翌日から2か月以内が原則の期限です。別表の作成や税務調整が必要で、個人の確定申告とは性質が違います。

さらに、役員報酬を支払えば源泉徴収と納付が発生します。社会保険の算定基礎届も必要です。そして、二か所から給与を受ける形になるため、本業の年末調整だけでは完結せず、個人の確定申告も必要になります。

個人事業主のままの場合と合同会社を設立した場合の手間を比べた図
右側を毎年続けられるかが、会社設立の実質的な条件になります。

サラリーマンとして本業を持ちながら、これを何年も続けられるか。節税額が固定費を上回っていても、手間が続かなければ意味がありません。

依頼できる範囲を広げれば手間は減りますが、費用が上がります。時間と費用の交換をどう考えるかという判断になります。

手間の量は、慣れによっても変わります。会社設立の初年度は分からないことが続きますが、二年目以降は同じ作業の繰り返しになります。最初の一年を乗り切れるかどうかが、続けられるかの分かれ目になることが多いようです。サラリーマンとして本業がある以上、初年度は税理士に手厚く見てもらうという選択も合理的です。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)

六つを踏まえた判断の順番

六つを踏まえた判断の順番を表したイラスト

六つの項目を踏まえて、判断の順番を整理します。

まず、個人のままでできることを使い切っているかを確認してください。青色申告の承認を受けて特別控除を使う、経費の計上漏れと按分を見直す、所得控除の対象になる制度を確認する。いずれも固定費がかかりません。

次に、節税額が年30万円前後の固定費を上回るかを試算してください。税だけでなく、社会保険料の増減も含めた計算が必要です。

そして、就業規則の確認です。会社設立をして代表社員になることは役員兼務にあたりますので、規定を確認してください。ここが通らなければ、他の条件が整っていても進められません。

最後に、その利益が複数年続く見込みがあるかを考えてください。会社設立には入口と出口の費用がかかります。短期間でたたむ前提なら割に合いにくくなります。

合同会社の設立を判断する前に確認する項目のチェックリスト
五つとも「はい」になったら、会社設立を具体的に進める段階です。

会社員が副業で会社設立を考えるとき、この順番を守れば大きく外れることはありません。

会社設立を判断する順番は、固定費のかからないものから試すという原則に沿っています。節税の手段は法人化だけではありませんので、まず手元でできることを済ませてください。

出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月21日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

副業を個人事業主のまま続けるか、合同会社を設立するかについてまとめます。

  1. 費用:個人はゼロ、合同会社は設立時に6万円台から、毎年30万円前後の固定費がかかります
  2. 節税:税率構造の差を使えますが、本業の給与が土台になるため効き方は人によります
  3. 社会保険:会社員はすでに加入済み。法人化は負担と手続きの増加として現れます
  4. 責任:合同会社は有限責任ですが、副業の規模では差が出にくいことがあります
  5. 信用:取引先が形態を気にするかによります。事前に確認するのが早道です
  6. 手間:決算と申告、源泉徴収、社会保険の手続きが加わります

六つのうち、三つめの社会保険は一般的な比較記事とは逆方向に働きます。個人事業主にとっての利点が、会社員にとっては負担になるという点を読み替えてください。

そして、会社設立は固定費がかかる選択です。個人のままでできることを使い切り、節税額が固定費を上回り、就業規則の確認が済み、利益が続く見込みがある。この四つが揃ってから進めてください。

この記事の内容について制度と費用は2026年8月21日に法務省・総務省・日本年金機構・国税庁のページで確認したものです。制度は改正されます。実際の判断にあたっては、リンクした各ページで最新の内容をご確認いただき、個別の税額計算や節税の可否については税理士にご相談ください。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月21日確認)

六つのうち、効く項目は人によって違います

六つの項目を並べましたが、すべてが同じ重みを持つわけではありません。副業の内容、本業の給与水準、家族の状況によって、どの項目が効いてくるかが変わります。

会社員の場合、社会保険の項目が一般的な比較記事とは逆方向に働くという点だけは押さえておいてください。個人事業主にとって法人化は保障が手厚くなる話ですが、すでに本業で加入している会社員にとっては負担と手続きが増える話になります。

そして、いま急いで決める必要はありません。個人のままでできることを整えながら、利益が安定してきたら改めて検討する。この順番のほうが、サラリーマンには無理がありません。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。

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