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会社員 会社設立

会社員が在籍したまま会社設立をすることはできるのか。法律・就業規則・登記の三つで確かめる

この記事が扱うこと

いま勤めている会社を辞めずに、自分の法人をつくれるのかを知りたい方に向けた記事です。副業の受け皿として、あるいは将来の独立に備えて、在籍のまま会社設立を考えている段階を想定しています。

この問いは、三つの層に分けると整理できます。法律上できるか、勤め先の規則で許されるか、そして登記した事実がどう扱われるか。この三つは別々の話で、混ざったまま考えると答えが出ません。順に見ていきます。

なお当サイトは、勤務先に知られない方法を扱いません。制度上どういう経路で情報が伝わるかは事実として説明しますが、それを避ける手段の指南はしません。会社設立と節税の判断は、規則を確認したうえで行っていただくのが前提です。

第一の層:法律は、会社員の会社設立を禁じていない

第一の層:法律は、会社員の会社設立を禁じていないを表したイラスト

まず、いちばん外側の層から確認します。法律は、会社員が会社設立をすることを禁じていません。

会社法には、発起人や設立時の役員について、職業による制限は設けられていません。会社に勤めていることを理由に、法人をつくれないという規定はないのです。法務省と法務局が案内する商業・法人登記の手続きにおいても、申請者が会社員であるかどうかは要件になっていません。

したがって、会社員が代表取締役や代表社員に就任すること自体も、法律上は妨げられていません。登記の場面で「勤務先の許可書」を求められることもありません。

ここが、多くの方が最初に確認したい点だと思います。答えとしては「できます」ということになります。ただし、これは三つの層のうちのいちばん外側にすぎません。

なお、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合など、一定の事由に該当する方については、役員に就任できない制限が設けられています。これは職業ではなく個別の事情による制限です。ご自身に該当する事由がないかは、会社設立の前に確認しておいてください。

「できる」と「していい」は別です法律が禁じていないことと、勤め先との関係で問題にならないことは、別の話です。会社設立を進める前に、次の層である就業規則を必ず確認してください。ここを飛ばすと、あとから取り返しがつきません。

会社設立が法律上可能だという前提を押さえたうえで、次の層に進みます。実際に会社員が判断に迷うのは、ここから先です。

サラリーマンとして働きながら法人を持つという形は、以前より珍しくなくなりました。副業を認める企業が増えたこと、そして会社設立の手続きがオンラインで進めやすくなったことが背景にあります。ただし、制度が追いついていない部分もありますので、確認すべきことは以前より増えているとも言えます。

出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月21日確認)

第二の層:就業規則は、会社ごとに違う

第二の層:就業規則は、会社ごとに違うを表したイラスト

二つめの層が、勤め先の就業規則です。ここが実際の分かれ目になります。

厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを示し、企業に対して副業・兼業を認める方向での対応を促しています。ただし、これは法律で義務づけているものではありません。実際の取り扱いは会社ごとに異なります。

就業規則を読むときは、次の四つの規定を探してください。

  • 副業・兼業に関する規定(全面禁止か、許可制か、届出制か)
  • 役員兼務に関する規定(他社の役員に就任することの可否)
  • 競業避止に関する規定(本業と同種の事業を行うことの制限)
  • 職務専念に関する規定(勤務時間中の他の業務の禁止)

会社設立をして代表者に就任するということは、役員兼務の規定に直接かかわります。副業の規定だけを見て「収入を得なければ問題ない」と判断すると、役員就任の部分を見落とすことになります。

競業避止についても確認が必要です。本業と同じ分野で会社設立をすると、たとえ勤務時間外の活動であっても、競業にあたると判断される可能性があります。事業目的をどう書くかにも関係してきます。

就業規則を確認する順番を示した図
四つめまで済ませてから、会社設立の手続きに入ってください。

規定を読んでも判断がつかない場合は、人事に確認するのがいちばん確実です。「副業を考えている」と伝えることに抵抗があるかもしれませんが、あとから問題になるより負担は小さく済みます。

サラリーマンが就業規則を確認するとき、見落とされやすいのが「許可制」と「届出制」の違いです。許可制であれば、承認を得るまで会社設立を進めるべきではありません。届出制であれば、出したうえで進められます。どちらなのかで、動き出せる時期が変わります。

また、就業規則そのものに定めがなくても、労働契約や誓約書で別途の取り決めがある場合があります。入社時に署名した書類を確認しておくと確実です。サラリーマンとして長く勤めていると、こうした書類の存在を忘れていることがあります。

出典副業・兼業と労働条件 (厚生労働省/2026年8月21日確認)

公務員の方は、前提が異なります

公務員の方は、前提が異なりますを表したイラスト

会社員全般の話とは別に、公務員の方については前提が異なります。ここははっきり書いておきます。

国家公務員については国家公務員法が、地方公務員については地方公務員法が、営利企業の役員を兼ねることや自ら営利企業を営むことを原則として禁止しています。民間企業の就業規則とは違い、法律による制限です。

したがって、公務員の方が会社設立をして代表者に就任するという形は、原則として取れません。承認を要する手続きが定められている場合もありますので、所属先の規程と人事担当に必ず確認してください。人事院も国家公務員の服務に関する情報を公開しています。

家族名義にするという発想について公務員に限らず、「配偶者を代表者にすれば問題ない」という説明を見かけることがあります。しかし、実質的に自分が経営している法人であれば、名義だけを変えても実態は変わりません。税務上も、実質的な支配関係が見られます。当サイトはこうした形をおすすめしません。規則の確認を先に行ってください。

会社設立による節税を検討する場合も、まず自分の立場でそれが可能なのかという確認が先になります。制度上できないことを前提に計算しても意味がありません。

なお、公務員の方であっても、不動産の賃貸など一定の範囲の行為については、承認を得ることで認められる場合があります。範囲と手続きは所属先の規程によりますので、そちらをご確認ください。

出典人事院 (人事院/2026年8月21日確認)

第三の層:登記した事実は、誰でも見られる

第三の層:登記した事実は、誰でも見られるを表したイラスト

三つめの層は、会社設立をしたあとの話です。登記された事項は、公開されます。

商業登記の制度では、登記事項証明書を誰でも取得できます。会社の商号、本店の所在地、事業目的、役員の氏名などが記載されます。これは会社の取引の安全を守るための仕組みで、誰かに見られないようにするという性質のものではありません。

つまり、会社設立をした事実そのものは、調べようと思えば誰でも調べられる状態になります。これは制度の設計であり、避ける方法があるという話ではありません。

商業登記で公開される主な事項
登記されるもの 内容 誰が見られるか
商号 会社の名称 誰でも
本店の所在地 登記上の住所 誰でも
事業目的 行う事業の内容 誰でも
役員の氏名 代表者などの氏名 誰でも
資本金の額 出資された金額 誰でも

※ 会社の種類や機関設計によって登記事項は異なります。詳細は法務局の案内でご確認ください。

本店の所在地について、自宅を登記すると自宅の住所が公開されることになります。これを避けたい場合の選択肢としてバーチャルオフィスなどがありますが、事業の実態との関係で慎重に判断する必要があります。実体のない場所を本店とすることが、あとで問題になる場合もあります。

会社員が会社設立を考えるとき、この公開性は前提として受け入れる必要があります。そのうえで、勤め先との関係をどう整理するかという順番になります。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月21日確認)

勤め先に伝わる経路を、事実として説明します

勤め先に伝わる経路を、事実として説明しますを表したイラスト

会社設立をしたことが勤め先に伝わる経路として、実際に挙げられるのは主に二つです。事実として説明します。

経路その一:住民税

会社員の住民税は、給与から天引きされる特別徴収という方法で納めるのが一般的です。副業などで所得が増えると住民税の額が変わり、勤め先に届く通知の金額が変わります。担当者がこれに気づく、という経路です。

ただし、法人をつくって法人に所得を移した場合、個人の所得が増えるとは限りません。役員報酬を取らなければ、個人の住民税に影響しない場合もあります。ここは形によって変わります。

経路その二:社会保険

こちらのほうが確実です。設立した法人から役員報酬を受け取ると、その法人でも社会保険の被保険者になります。本業ですでに加入している場合、二つの事業所で同時に被保険者となり、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出が必要になります。

保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額をもとに決まり、それぞれの報酬額に応じて按分されます。按分の手続きには両方の事業所が関わります。

この記事は、隠す方法を扱いません上の二つは制度の仕組みとして知られていることですので、事実として説明しました。ただし当サイトは、そこから「だからこうすれば隠せる」という方向には進みません。就業規則を確認し、必要なら勤め先に相談する。それが結果としていちばん安全で、会社設立後も落ち着いて運営できる形です。

なお、役員報酬を取らないという選択をすれば、社会保険の経路は生じません。ただしそれは節税の設計と表裏の関係にありますので、隠すためだけに報酬をゼロにするという判断はおすすめしません。

なお、サラリーマンの場合は本業の給与から住民税が天引きされているため、金額の変化が目に触れやすいという事情があります。個人事業主として活動している方とは、この点で条件が違います。

出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月21日確認)

在籍のまま会社設立をする場合の実務的な注意

在籍のまま会社設立をする場合の実務的な注意を表したイラスト

三つの層を確認したうえで、会社設立を進める場合の実務的な注意点を挙げます。

まず、平日の日中に動きにくいという制約があります。法務局、公証役場、年金事務所はいずれも平日に開いています。オンラインで進められる手続きを把握しておくと、有給を使う回数を減らせます。

次に、事業目的の書き方です。登記される事項ですから、本業と競合する内容を広く書くと、競業避止の観点で問題になる可能性があります。実際に行う事業に即して、必要な範囲で記載するのが無難です。

本店の所在地も検討事項です。自宅を本店にすると住所が公開されます。賃貸物件の場合、契約で事業利用が制限されていることもありますので、賃貸借契約を確認してください。

会社員が在籍のまま会社設立をするときの確認事項のチェックリスト
上から順に確認してください。下の二つだけ先に決めても、判断はできません。

会社設立の手続き自体は、書類が揃えば進みます。時間がかかるのはむしろ、これらの確認と調整の部分です。

サラリーマンが会社設立をする場合、手続きを進める時間そのものが制約になります。平日に半日空けるということが、職種によっては簡単ではありません。専門家に依頼するという選択は、費用と引き換えに時間を買う判断として合理的です。

依頼する場合でも、就業規則の確認だけはご自身で行ってください。ここは外部の専門家には分からない部分です。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)

節税の話は、確認が済んでから

節税の話は、確認が済んでからを表したイラスト

在籍のまま会社設立ができると分かったら、次に節税になるかどうかの検討に入ります。順番としては、ここが最後です。

会社設立をすると、赤字でも法人住民税の均等割がかかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。自治体によっては超過課税により異なる場合があります。

これに税理士費用が加わります。決算と法人税の申告は、会社員が本業のかたわらで独学で行うには負担が大きい部分です。依頼すれば費用がかかり、これも毎年の固定費になります。

節税額がこれらの固定費を上回ってはじめて、会社設立が金銭的に見合うことになります。固定費を差し引く前の節税額だけを見て判断しないでください。

さらに、役員報酬を取る場合は社会保険料が加わります。本業と合算した標準報酬月額で計算されるため、負担が増える場合があります。税金だけを比べて有利に見えても、保険料を足すと逆転していることがあります。

在籍のまま会社設立をする会社員の場合、この社会保険の重なりが節税の成否を左右する場面が多くなります。ここは自力で最適解を出すのが難しい部分ですので、専門家に相談しながら決めることをおすすめします。

サラリーマンの節税として会社設立が語られるとき、固定費の説明が省かれていることがあります。均等割と税理士費用を合わせると年間30万円前後になることが多く、これを上回る節税ができるかどうかが判断の基準になります。

また、サラリーマンは本業の給与所得控除をすでに使っている場合が多く、役員報酬を受け取っても控除が増えないことがあります。個人事業主が法人化する場合の説明をそのまま当てはめると、節税額を過大に見積もることになります。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月21日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

会社員が在籍したまま会社設立をできるかという問いについて、三つの層に分けて整理しました。

  1. 法律の層:会社法は会社員の会社設立を禁じていません。登記の場面で勤務先の許可も求められません。
  2. 就業規則の層:ここが実際の分かれ目です。副業・役員兼務・競業避止の規定を確認してください。公務員は法律で原則禁止されています。
  3. 登記の層:登記事項は誰でも見られます。これは制度の仕組みであり、避ける方法があるという話ではありません。

三つとも確認が済んでから、節税になるかどうかの計算に進みます。順番を逆にして、先に節税額を計算しても、そもそも会社設立ができなければ意味がありません。

サラリーマンが会社設立を考えるとき、情報の多くは独立して起業する人に向けて書かれています。在籍のまま法人を持つ場合は、就業規則と社会保険という二つの制約が加わることを前提に読んでください。

そして、勤め先に伝わる経路については、事実として知っておいてください。ただし当サイトはそれを避ける方法を扱いません。就業規則を確認し、必要なら相談する。この順番が、会社設立をしたあとも落ち着いて運営できる形につながります。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月21日に法務省・法務局・厚生労働省・人事院・日本年金機構・総務省などの案内で確認したものです。制度は改正されます。実際に会社設立を判断されるときは、リンクした各ページで最新の内容をご確認ください。当サイトは一般的な解説であり、個別の税務相談ではありません。個別の判断は税理士などの専門家にご相談ください。

出典No.1400 給与所得 (国税庁/2026年8月21日確認)

確認してから動けば、あとが楽です

会社員が在籍のまま会社設立をすることは、法律の側からは妨げられていません。問題になるとすれば、それは勤め先との関係においてです。だからこそ、就業規則の確認が最初の一歩になります。

確認した結果、届出が必要だと分かったなら、会社設立の前に出しておいてください。事後に報告する形にすると、規定に反する扱いになることがあります。順番を守るだけで避けられる問題です。

そのうえで、節税になるかどうかは別の検討になります。維持コスト、社会保険、役員報酬の設計。ここは数字の話ですので、ご自身の所得の内訳を持って税理士にご相談ください。

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