会社員が会社設立をやめるときの手順と費用。つくる前に知っておきたい出口
この記事を書いた理由
会社設立を考えている会社員の方に、先に出口を見ておいていただきたいという趣旨の記事です。設立の手続きを紹介する情報は多いのですが、やめるときの話はあまり出てきません。
副業や投資の状況は変わります。数年後に法人を続ける理由がなくなったとき、どうやってたたむのか。そこにどれだけの時間と費用がかかるのか。これを知ったうえで会社設立をするのと、知らずに進めるのとでは、判断が変わることがあります。
節税を目的に法人を持つ場合はとくに、続ける期間の見通しが重要になります。短期間でたたむ前提なら、そもそも会社設立が見合わないこともあります。個別の判断は税理士にご相談ください。
なぜ出口の話を先にするのか

会社設立は、書類が揃えば数週間で完了します。法務局に申請した日が会社の成立日になりますから、準備さえできていれば早く進みます。
一方、法人をたたむ手続きは、そう簡単ではありません。解散を決議して登記し、清算の手続きを進め、債権債務を整理し、清算結了の登記をする。この間に決算と申告が挟まります。期間としては数か月から一年程度かかることが一般的とされています。
そして重要なのは、その間も固定費が発生し続けるという点です。法人住民税の均等割は、法人が存在する限り原則としてかかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。
会社員が副業の受け皿として会社設立をする場合、事業の状況は数年で変わることがあります。副業をやめる、転職する、本業が忙しくなる。そうしたときに法人だけが残ると、使わない法人の維持費を払い続けることになります。
この記事では、そのたたむ手順を順に見ていきます。会社設立の前に読んでいただくことを想定しています。
サラリーマンが会社設立をするとき、想定している期間は人によってさまざまです。将来の独立に向けた準備として持つ方もいれば、副業の節税を目的とする方もいます。前者であれば法人は続いていきますが、後者の場合は副業の状況しだいで役目が終わることがあります。
節税を目的とするサラリーマンほど、この出口の話を先に確認しておく意味があります。節税額と固定費の比較に、たたむときの費用まで含めるかどうかで、判断が変わってくるからです。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月21日確認)
第一段階:解散の決議と登記

法人をたたむ最初の段階が、解散です。
株式会社であれば株主総会の特別決議、合同会社であれば総社員の同意などによって解散を決議します。一人で会社設立をした法人であれば、意思決定そのものは難しくありません。
決議をしたら、解散の登記と、清算人の選任の登記を行います。これらには登録免許税がかかります。法務局が商業・法人登記の申請手続について案内していますので、様式と必要書類はそちらで確認することになります。
解散をすると、その時点で事業年度が区切られます。解散の日までの期間について決算を組み、申告をすることになります。通常の決算とは別に、この申告が発生します。
なお、解散をしても法人がすぐに消えるわけではありません。清算の目的の範囲内で存続するという扱いになります。したがって、この段階ではまだ均等割の対象になり得ます。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月21日確認)
第二段階:清算の手続き

解散の登記が済むと、清算の段階に入ります。ここで行うのは、法人の財産と債務を整理することです。
清算人は、法人の債権を取り立て、債務を弁済し、残った財産を出資者に分配します。この過程で、債権者に対する公告が必要になります。官報に掲載する形が一般的で、掲載料がかかります。
公告には一定の期間を設けることが求められます。この期間が経過するまで、清算を結了させることができません。手続きに時間がかかる主な理由がここにあります。
会社員が副業の受け皿としてつくった法人であれば、債権債務が複雑であることは少ないかもしれません。それでも、法人名義の口座を解約し、契約を整理し、残った資産をどうするかを決める必要があります。
清算の途中で事業年度が終わる場合、その期間についても申告が必要になります。清算が長引けば、そのぶん申告の回数も増えます。
すべての整理が終わったら、清算結了の決議をし、登記をします。この登記が完了して、ようやく法人が消滅します。
出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月21日確認)
かかる費用を並べてみる

法人をたたむのにかかる費用を整理します。

これに加えて、清算が終わるまでの期間に発生する均等割と、申告のための費用があります。清算に一年かかれば、そのぶん固定費も積み上がります。
会社設立のときにかかる費用と比べてみると、たたむほうが安いとは限りません。株式会社の設立費用が20万円台であることを考えると、同じくらいの費用がもう一度かかるという見方ができます。
節税を目的に会社設立をする場合、この出口の費用も計算に入れておくべきです。数年で節税額が固定費を上回ったとしても、たたむ費用を差し引くと残らないということがあり得ます。
サラリーマンにとっては、費用だけでなく手続きに割く時間も負担になります。解散と清算の登記、官報への公告手配、清算中の申告。いずれも平日に動く場面が出てきます。会社設立のときと同様、ここでも時間の制約が効いてきます。
出典Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。 (日本公証人連合会/2026年8月21日確認)
何年続ける想定なら見合うのか

入口と出口の費用を、続ける年数で割ってみると、判断の材料になります。
仮に、会社設立の費用が20万円、たたむ費用が20万円だとします。合わせて40万円です。これを3年で割れば年13万円、10年で割れば年4万円になります。続ける期間が短いほど、年あたりの負担が重くなります。
| 続ける年数 | 入口と出口の費用(年あたり) | 毎年の固定費 | 合計(年あたり) |
|---|---|---|---|
| 3年 | 約13万円 | 約30万円 | 約43万円 |
| 5年 | 約8万円 | 約30万円 | 約38万円 |
| 10年 | 約4万円 | 約30万円 | 約34万円 |
※ 入口20万円・出口20万円・毎年の固定費30万円という前提を置いた概算です。実際の額は形態・自治体・依頼範囲によって変わります。条件が変われば結果も変わります。
この表から言えるのは、短期間でたたむ前提なら、会社設立は割に合いにくいということです。年あたりの負担を上回る節税額が毎年出るのか、という問いに変わります。
会社員が副業の受け皿として法人を持つ場合、副業の継続性が読みにくいことがあります。今年たまたま利益が大きかったという理由だけで会社設立をすると、翌年以降に固定費だけが残ることになりかねません。
複数年にわたって安定した利益が見込めるか。それが、会社設立を判断するときの実質的な条件になります。
この表はあくまで前提を置いた概算です。節税額がどれだけ出るかは、サラリーマンご自身の本業の給与水準と副業の利益によって変わります。年あたりの負担を上回る節税が毎年続く見込みがあるかどうか、ご自身の数字で確かめてください。
なお、節税の効果は初年度から満額出るとは限りません。会社設立の初年度は費用が先行し、役員報酬の設計も試行錯誤になることがあります。二年目以降で見て判断するという視点を持っておくと、短絡的な結論を避けられます。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)
休眠という選択肢とその限界

たたむ手続きが大変なら、休眠にすればよいのではないか。そう考える方もいます。
休眠とは、事業活動を行っていない状態のことです。異動届出書を提出することで、税務署などに事業を休止している旨を届け出ることができます。
ただし、休眠にしても法人としての義務が完全になくなるわけではありません。決算と申告の義務は残るのが原則です。また、均等割が免除されるかどうかは自治体の取り扱いによります。免除の申請ができる自治体もありますが、一律ではありません。
さらに、登記についても注意が必要です。株式会社の場合、役員の任期が満了すれば重任の登記が必要で、これを長期間放置すると過料の対象になり得ます。休眠中であっても、この義務は続きます。
- 決算と申告の義務は原則として残ります
- 均等割の扱いは自治体によって異なります
- 役員の任期に伴う登記の義務は続きます(株式会社の場合)
- 再開する場合は届出が必要です
休眠は、一時的に事業を止めて再開の見込みがある場合の選択肢です。再開の予定がないのであれば、たたむ手続きを進めるほうが結果的に負担が小さくなります。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)
入口の設計で、出口を軽くしておく

たたむときの負担を軽くするために、会社設立の時点でできることがあります。
まず、形態の選択です。合同会社であれば役員の任期がなく、決算公告の義務もありません。設立費用も抑えられます。たたむときの手続きも、株式会社と比べて大きく変わるわけではありませんが、続けている間の負担は軽くなります。
次に、資本金の額です。1千万円以下に収めておけば、均等割は標準税率で年7万円の区分に収まります。清算が長引いた場合でも、固定費が抑えられます。
三つめは、法人と個人のお金を分けることです。役員貸付金が積み上がっていると、清算の段階でその処理が必要になります。会社設立のときから口座を分け、私的な支出を法人から出さないようにしておけば、たたむときの整理が簡単になります。
四つめは、記帳を続けることです。帳簿が整っていれば、清算時の財産の把握が容易になります。ためてしまうと、たたむと決めてから過去の整理に時間がかかります。

サラリーマンが会社設立をする段階では、たたむときのことまで考える余裕がないかもしれません。ただ、ここで挙げた四つはいずれも設立時に決めるだけのもので、追加の手間はほとんどかかりません。節税の設計と一緒に、この四点も決めておいてください。
出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月21日確認)
まとめ

会社員が会社設立をやめるときについて、この記事で整理したことをまとめます。
- たたむには解散と清算の二段階が必要で、登記が二回、申告が複数回発生します
- 官報公告の期間があるため、数か月から一年程度かかることが一般的です
- その間も均等割は原則としてかかり、清算が長引くほど固定費が積み上がります
- 自分で手続きをしても8万円ほど、専門家に依頼すれば20万円を超えることがあります
- 休眠にしても決算と申告の義務は原則として残ります
- 合同会社を選ぶ、資本金を1千万円以下にする、口座を分けるといった入口の設計で、出口の負担が変わります
会社設立の情報は、入口の話に偏りがちです。しかし、続ける期間の見通しがないまま法人をつくると、節税どころか固定費だけが残るということが起こります。
会社設立が節税につながるかどうかは、続ける期間を含めた総額で決まります。サラリーマンとして本業がある以上、法人にかけられる時間には限りがあります。その制約のなかで無理なく続けられる形かどうかを、入口の段階で見極めてください。
サラリーマンとして本業を持ちながら法人を運営する場合、状況の変化は避けられません。転職、異動、本業の繁忙。そうしたときにも維持できる形にしておくか、あるいは無理なくたためる設計にしておくか。会社設立を決める前に、そこまで考えておいてください。
出典No.1400 給与所得 (国税庁/2026年8月21日確認)
出口を見てから、入口を決めてください
法人をたたむには、解散と清算という二段階の手続きが必要で、それぞれに登記と費用がかかります。その間も決算と申告は続き、均等割も原則としてかかり続けます。つくるより、たたむほうが時間がかかります。
だからこそ、会社設立をする前に「何年続ける想定か」を考えておいてください。節税の効果が固定費を上回るには時間が必要ですし、たたむときにも費用がかかります。短い期間で区切る前提なら、個人のままのほうが有利なことがあります。
会社員として本業を持ちながらの判断ですから、時間の制約もあります。迷われる場合は、設立前の段階で税理士に相談し、続ける期間も含めて設計しておくことをおすすめします。
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