本文へ移動する

会社設立 投資

投資を法人でやると何が変わるか。会社設立の前に個人との差を見る

この記事で確かめること

投資の利益に対して会社設立を検討している会社員に向けて、個人で受ける場合と法人で受ける場合の差を整理する記事です。

法人にすると税率が下がる、という説明をよく見かけます。ただし、投資の利益については税率以前に課税の仕組みが違います。そこを飛ばすと判断を誤ります。

上場株式の譲渡益と配当を中心に扱います。制度の内容は2026年8月22日に国税庁のページで確認したものです。個別の判断は税理士にご相談ください。

税率の比較から入ってはいけない理由

税率の比較から入ってはいけない理由を表したイラスト

投資の利益について会社設立を検討するとき、最初に確かめることがあります。

よく見かけるのは、個人の所得税は最高で45%、法人税は23.2%だから法人が有利という説明です。この比較は、事業の所得については意味があります。

ただし、上場株式の譲渡益や配当については、個人でも累進課税ではありません。申告分離課税という別の仕組みが適用されます。

国税庁が示すところによれば、上場株式等の譲渡による所得は申告分離課税とされ、所得税と復興特別所得税、住民税を合わせた税率が適用されます。

つまり、投資の利益に関しては、個人の側もはじめから低い税率で課税されているということです。累進課税との比較は成り立ちません。

この点を押さえずに会社設立を進めると、節税になるはずが逆に負担が増えるという結果になりかねません。

サラリーマンの方が投資の法人化を検討する場合、まずこの前提を確認してください。税率の比較ではなく、仕組みの違いから入るということです。

では、具体的に何がどう違うのか。次の節から見ていきます。

事業の所得と投資の所得は分けて考えてください副業の事業所得であれば、個人では給与と合算して累進課税されます。この場合は法人との税率差が生じます。一方、上場株式の譲渡益は分離課税ですので、状況がまったく違います。同じ「副収入」でも、扱いが分かれます。

節税を目的として法人化を考えるなら、この前提の確認が最初の作業になります。サラリーマンの方ほど、給与所得の税率と混同しやすい部分です。

会社設立を扱う情報の多くは、事業を営む法人を前提に書かれています。投資だけを行う法人は、そこから外れる部分があります。会社設立の一般的な説明をそのまま当てはめないでください。

出典No.2260 所得税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

個人の側の扱い

個人の側の扱いを表したイラスト

まず、個人が上場株式に投資した場合の扱いを確認します。

譲渡益は申告分離課税です。国税庁が示すところによれば、上場株式等を譲渡した場合の所得は他の所得と分けて課税されます。給与所得がいくらあっても、この税率は変わりません。

配当についても、申告分離課税を選択できます。総合課税を選ぶこともでき、その場合は配当控除の適用を受けられますが、給与と合算されるため税率帯によって有利不利が分かれます。

さらに、個人には非課税で投資できる制度があります。一定の枠内で得た譲渡益と配当に課税されません。

法人ではこの制度は使えません。個人に限られた仕組みです。

損失についても扱いがあります。上場株式等の譲渡損失は、一定の要件のもとで翌年以降に繰り越して控除することができます。

手続きの面でも、個人のほうが簡単です。特定口座で源泉徴収ありを選べば、証券会社が計算して納付まで行います。確定申告が不要になる場合もあります。

会社員にとって、この手軽さは無視できません。本業のかたわらで運用するなら、手間の少なさが実質的な価値になります。

節税だけを見ずに、こうした点も含めて比べてください。

個人のままでも節税の手段はあります。非課税の枠を使い切ることが、その中心です。サラリーマンとして本業の給与がある方でも、この枠は同じように使えます。

個人の口座で運用を続けたまま、会社設立を見送るという判断も十分に成り立ちます。手続きの軽さは、続けやすさに直結します。

出典No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税) (国税庁/2026年8月22日確認)

法人の側の扱い

法人の側の扱いを表したイラスト

次に、法人が投資した場合の扱いを確認します。

法人には分離課税という仕組みがありません。株式の譲渡益も配当も、他の益金と合わせて所得を計算し、法人税が課されます。

法人税の税率は所得の金額に応じて区分されており、中小法人については一定額以下の部分に軽減された税率が適用されます。これに地方法人税や法人住民税、事業税が加わります。

実効的な負担は、これらを合わせた水準で見ることになります。所得の規模によって、個人の分離課税より高くなることも低くなることもあります。

個人と法人で、投資の利益に対する扱いがどう違うか
項目 個人(上場株式) 法人
譲渡益 申告分離課税 他の所得と合算して法人税
配当 分離課税と総合課税を選択 益金に算入(一定の場合に不算入の規定あり)
損失 一定の要件で繰越しが可能 欠損金として繰越しが可能
非課税制度 一定の枠内で利用可能 利用できません
手続き 特定口座で簡略化できます 決算と申告が毎年必要

※ 2026年8月22日に国税庁のページで確認した内容にもとづく整理です。適用の可否は事実関係により異なります。

表の四行目が、法人化で失うものです。非課税で投資できる制度は個人に限られます。

五行目が、法人化で増える手間です。特定口座で完結していたものが、帳簿と決算と申告になります。

サラリーマンが会社設立をして投資を法人に移す場合、この二つを差し引いても有利かどうかが判断になります。

法人にすれば節税になるという説明は、投資の利益についてはそのまま当てはまりません。

会社設立をして投資を法人に移すと、証券口座も法人名義で開設し直すことになります。金融機関によっては、法人口座の開設に条件が付く場合があります。会社設立の前に、利用したい証券会社の取り扱いを確認してください。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

損失が出た年の違い

損失が出た年の違いを表したイラスト

投資には損失が出る年があります。この扱いも個人と法人で違います。

個人の場合、上場株式等の譲渡損失は、同じ年の上場株式等の譲渡益や申告分離課税を選択した配当と通算できます。控除しきれない部分は、確定申告を続けることで翌年以降に繰り越せます。

ただし、給与所得と通算することはできません。投資で損失が出ても、本業の給与にかかる税金が減るわけではありません。

法人の場合、投資の損失は他の益金と通算されます。法人の中に他の収益があれば、その分が減ります。

そして、控除しきれない部分は欠損金として繰り越せます。国税庁が示すところによれば、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、一定の期間にわたり繰り越して控除することが認められています。

この点は法人が有利になりやすい部分です。繰越しの期間が長く、他の収益と通算できるためです。

ただし、繰り越すには毎年申告を続ける必要があります。損失が出た年も、均等割と申告の費用はかかります。

会社員が投資の法人化を検討する場合、損失が出た年の負担も見積もってください。利益が出た年だけを見ると、判断を誤ります。

損失が出た年の節税効果も、個人と法人で違います。サラリーマンの方は、給与と通算できない点を押さえてください。

会社設立をした年に大きな損失が出た場合でも、均等割は変わりません。繰越しの仕組みがあるとはいえ、その年の資金は出ていきます。

出典No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除 (国税庁/2026年8月22日確認)

会社設立をして法人で投資する場合の固定費

会社設立をして法人で投資する場合の固定費を表したイラスト

法人で投資を行う場合の固定費を確認します。

法人住民税の均等割が毎年かかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。

これに決算と申告の費用が加わり、合計で年30万円前後になることが多くなります。

重要なのは、この負担が運用の成績と無関係だということです。損失が出た年も、利益がなかった年も、同じだけかかります。

投資の年間利益に対して個人と法人の負担がどこで入れ替わるかを示した折れ線グラフ
利益が小さいうちは、固定費の分だけ法人が不利になります。

この図が示すのは、利益が一定の水準を超えるまで法人が不利だということです。固定費が先に乗るためです。

そして、投資の利益は年によって変動します。平均ではなく、低い年を基準に考えてください。

サラリーマンとして本業の給与があると、この固定費を吸収できてしまいます。それが検証を甘くする原因にもなります。

節税額を計算するときは、必ずこの固定費を差し引いた残りで見てください。

節税額から固定費を引くと、残りはかなり小さくなります。サラリーマンの方は、この計算を必ず行ってください。

会社設立の初期費用も、この図には含まれていません。合同会社であれば数万円から十数万円、株式会社であれば定款認証の費用が加わります。初年度はその分だけ不利になります。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

会社員に特有の確認事項

会社員に特有の確認事項を表したイラスト

会社員が投資のために会社設立をする場合、投資とは別の論点があります。

一つめが就業規則です。投資そのものは副業に該当しないと扱われることが多いのですが、法人の代表者になることは別の話です。役員兼務の可否を確認してください。

公務員の方は、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業が原則として禁止されています。

二つめが社会保険です。法人は役員一人でも適用事業所になります。役員報酬を受け取れば被保険者になり、本業ですでに加入している方は二つの事業所で被保険者となります。

日本年金機構の案内によれば、この場合は二以上事業所勤務の届出が必要で、保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、按分されます。

役員報酬をゼロにすれば、この手続きは生じません。投資を目的とした法人では、この設計が取られることも少なくありません。

ただし、報酬をゼロにすれば、法人の中に利益が残ったままになります。個人が使うには、報酬か配当の形で出す必要があり、そこで課税が生じます。

サラリーマンとして本業の給与で生活が成り立っているなら、法人に残す設計にも意味があります。目的によって判断が変わります。

なお、当サイトでは勤務先に知られない方法は扱いません。就業規則を確認し、必要なら勤務先に相談してください。

節税の話より先に、この二点を確認してください。

会社設立をして代表者になる以上、登記事項証明書は誰でも取得できる状態になります。この点は事実として押さえておいてください。

出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)

判断の順序

判断の順序を表したイラスト

ここまでの内容を、判断の順序としてまとめます。

投資の法人化を検討する六つの順序を示したチェックリスト
三つめを飛ばす人が多い項目です。

三つめの非課税制度が、見落とされやすい項目です。個人の枠を使い切っていないのに法人化するのは、順序が違います。

四つめの変動の幅も重要です。投資の利益は年によって大きく変わります。好調な年の数字で判断しないでください。

この順序で確認すれば、税率の比較に飛びつかずに済みます。仕組みの違いから積み上げて判断するということです。

そして、判断がつかないなら、いまは会社設立をしないという選択も合理的です。運用を続けて、利益が安定してから考えても間に合います。

節税の効果は、この六つを確認したあとに計算します。サラリーマンとして働きながら判断するなら、手間の量も比較の対象に入れてください。

会社設立の手続き自体は数週間で終わります。急いで決める理由はありません。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

投資と会社設立について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 上場株式の譲渡益は、個人でも分離課税です。累進課税との比較は成り立ちません
  2. 配当の扱い、損失の繰越し、非課税制度の有無。仕組みが複数の点で違います
  3. 非課税で投資できる制度は個人に限られます。法人化すると使えなくなります
  4. 損失の通算と繰越しは、法人が有利になりやすい部分です
  5. 固定費は年30万円前後。運用の成績と無関係にかかります
  6. 会社員は就業規則と社会保険を、税の話より先に確認してください

投資の利益について会社設立を検討するなら、税率の比較から入らないでください。個人と法人では課税の仕組みそのものが違います。

そして、固定費を差し引いた残りが節税額です。利益が小さいうちは、法人にすると負担が増えます。

サラリーマンとして本業の給与がある方は、固定費を吸収できてしまうため検証が甘くなりがちです。数字で確かめてください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・総務省・日本年金機構のページで確認したものです。制度は改正されます。投資の課税は対象となる商品や取引の形態によって扱いが細かく分かれますので、実際の判断にあたっては必ず税理士にご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、個別の税務相談ではありません。

節税を目的とするなら、まず個人の枠を使い切ってからです。

会社設立をしない期間にできることを、先に使い切ってください。

出典No.1476 特定口座制度 (国税庁/2026年8月22日確認)

仕組みの違いから確かめてください

投資の利益について会社設立を検討するなら、税率の比較から入らないでください。個人の分離課税と法人の扱いは、仕組みそのものが違います。

個人では約20%の分離課税、法人では他の所得と合わせて課税される。この差が、判断の出発点です。

そのうえで、損失の扱い、非課税制度の有無、固定費を並べて比べてください。判断に迷う部分は、運用の内容を伝えたうえで税理士にご相談ください。

この記事は判断の材料になりましたか?

他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください

掲載順は優劣を示すものではありません。並び順にご注意ください。内容・料金・条件は各サイトの提供者が随時変更します。ご覧になる時点の最新情報は、必ずそれぞれの公式ページでご確認ください。

あわせて読みたい記事

同じテーマで、判断の材料になる記事です