資産管理会社の出口。会社設立のあとに来る解散・売却・承継
この記事が扱うこと
資産管理を目的とした会社設立を検討している会社員に向けて、やめるときに何が起きるかを整理する記事です。
始めるときの費用は調べやすいのですが、やめるときの費用と手間は情報が少ないという事情があります。そして、始めるより難しいのがやめるほうです。
解散の手続きと費用、資産を個人に戻すときの課税、承継させる場合の論点。この三つを扱います。個別の判断は税理士にご相談ください。
出口が語られない理由

資産管理会社の会社設立について書かれた記事の多くは、始めるところで終わっています。
設立費用、節税の仕組み、手続きの流れ。ここまでは詳しく説明されますが、やめるときの話はあまり出てきません。
理由の一つは、始める人のほうが多いということだと思われます。会社設立を検討している段階の人が読む記事ですので、そこに向けて書かれます。
もう一つは、やめるときの状況が人によって大きく違うことです。何をどれだけ持っているか、いつやめるか、誰に渡すか。条件によって扱いが変わります。
ただし、やめるときのほうが手続きも費用も重くなります。会社設立は数週間で終わりますが、解散から清算の結了までには通常もっと時間がかかります。
会社員が資産管理会社を検討する場合、本業の状況が変わる可能性があります。転勤、転職、退職。いずれも法人の運営に影響します。
そのときに、法人をどうするか。始める前に、この問いに答えを持っておいてください。
サラリーマンとして本業を持ちながら判断する以上、この点は特に重要です。この記事では、想定される三つの出口を順に見ていきます。
節税を目的として会社設立をした場合でも、出口の費用はその節税額を削ります。サラリーマンの方は特に、この点を先に確かめてください。
会社設立を扱う情報の多くが手続きの案内であることも、出口が語られにくい一因だと考えられます。設立を支援する立場からは、やめるときの話をする必然性が薄いためです。読む側が意識して確かめるしかありません。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)
解散と清算の手続き

一つめの出口が、解散して法人をなくすことです。
解散を決議し、清算人を選任し、債権者に対する手続きを行い、残った財産を分配し、清算の結了を登記する。これが大まかな流れです。
登記は複数回に分かれます。解散および清算人の登記、そして清算結了の登記です。それぞれに登録免許税がかかります。
債権者に対する手続きには一定の期間を置く必要があります。そのため、決めてすぐに終わるものではありません。
また、解散の事業年度と清算中の事業年度について、それぞれ申告が必要です。税理士に依頼すればその費用も生じます。
この間も、法人が存続している期間については均等割の扱いを確認する必要があります。やめると決めてから実際に終わるまで、負担が続くということです。
会社員が本業のかたわらでこの手続きを進めるのは、負担が小さくありません。平日の日中に動く場面も出てきます。
節税のために会社設立をしたのに、やめるときの費用でその分が減る。この可能性を織り込んでおいてください。
なお、解散せずに休眠という形を選ぶこともできますが、休眠中も均等割の扱いは自治体により異なりますので、確認が必要です。
節税のために始めたことが、やめるときの費用で相殺される。この構図を避けるには、続けられる期間を見積もっておくことです。
会社設立の登記は、書類が揃えばおおむね一日で申請できます。これに対して清算の手続きは、債権者に対する期間を置く必要があるため、決めてすぐには終わりません。この非対称性を理解しておいてください。
解散の登記と清算結了の登記は、それぞれ別の申請です。司法書士に依頼する場合は、二回分の報酬が生じると考えておいてください。自分で申請することもできますが、書式と添付書類の確認に時間がかかります。
出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月22日確認)
資産を個人に戻すときの課税

解散の際に、法人が持っている資産をどうするかが問題になります。
法人の財産を個人に移すことは、法人から見れば譲渡です。時価による取引として扱われますので、含み益があれば法人に課税が生じます。
そして、清算により株主に分配される財産のうち、資本金等の額を超える部分については配当所得として扱われる部分が生じます。個人の側でも課税が生じるということです。
つまり、法人に入れるときと出すときの二回、課税の機会があります。

したがって、短期間で出入りさせると、節税額より移転にともなう課税のほうが大きくなることがあります。
資産管理会社が長期の保有を前提とする形だと言われるのは、この事情によります。移転コストを、保有期間で薄めていくという構造です。
会社設立を検討する段階で、何年持ち続けるつもりかを考えてください。それが短ければ、法人にする意味が薄くなります。
不動産であれば、移転登記の費用と不動産取得税も往復で生じます。金額が大きくなりますので、事前に見積もってください。
節税額と移転にともなう課税を並べて比べてください。サラリーマンとして本業がある方は、本業の給与も含めた税率で計算することになります。
会社設立の直後に資産を移し、数年で戻すという流れを想定しているのであれば、その計画自体を見直したほうがよいと思われます。移転の費用が二回分かかるためです。
出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)
法人ごと売る場合

二つめの出口が、法人そのものを譲渡することです。
資産を法人から出すのではなく、法人の株式や持分を譲渡するという方法です。資産は法人の中に残ったまま、所有者だけが変わります。
この場合、資産の移転が生じませんので、移転登記や不動産取得税が発生しません。譲渡する側には株式等の譲渡による所得が生じます。
ただし、買い手が見つかるかどうかという問題があります。個人の資産管理会社を買いたい相手は限られます。
また、法人には過去の経緯がすべて残っています。買い手から見れば、過去の申告や債務を引き継ぐことになりますので、慎重に判断されます。
同族間での譲渡であれば、時価の算定が問題になります。低い価額で譲渡すれば、その差額について課税上の問題が生じる可能性があります。
会社員が個人で運営してきた資産管理会社について、この出口が使える場面は限られると考えておいたほうが現実的です。
それでも、選択肢として存在することは知っておいてください。資産の規模が大きく、収益が安定している場合には検討の余地があります。
譲渡による所得も、節税の計算の外にあるわけではありません。手元に残る金額で見てください。
会社設立から日が浅い法人ほど、譲渡の相手を見つけにくくなります。実績が乏しいためです。この出口を想定するなら、数年以上の運営を前提としてください。
出典No.5202 役員等に対する経済的利益 (国税庁/2026年8月22日確認)
承継させる場合

三つめの出口が、次の世代に承継させることです。
資産管理会社を持ち続け、株式や持分を承継させるという形です。資産管理会社が相続対策の文脈で語られるのは、この出口を前提としています。
個人で不動産を持っている場合、相続のたびに個々の資産を分ける必要があります。法人にしておけば、株式や持分という形で分けられるという違いがあります。
ただし、株式や持分にも相続税の評価があります。国税庁が示すところによれば、取引相場のない株式の評価は、会社の規模や資産の内容によって方法が定められています。
法人にすれば相続税がかからなくなるわけではありません。評価の方法が変わるだけです。有利になる場合もあれば、そうでない場合もあります。
そして、この出口を選ぶなら、会社設立の段階から持分の構成を設計する必要があります。あとから持分を移せば、そこで課税が生じます。
配偶者や子を最初から出資者に含めるという設計が取られることがありますが、贈与とみなされる可能性もありますので、専門家の関与なしに進めるのは避けてください。
サラリーマンとして本業を持ちながら、数十年先を見据えた設計をすることになります。税理士の関与が前提の領域だと考えてください。
なお、承継する側にも、法人の運営を続ける意思と能力が必要です。引き継いだ人が困らない形にしておいてください。
承継を前提とする場合、毎年の節税額よりも将来の評価のほうが大きな論点になります。サラリーマンの方が独力で判断できる範囲を超えます。
会社設立の時点で持分をどう分けるかは、あとから変更しにくい部分です。設立の書類を作る段階で、この点を確認しておいてください。
出典No.4638 取引相場のない株式の評価 (国税庁/2026年8月22日確認)
本業の状況が変わったとき

会社員に特有の事情として、本業の状況が変わる可能性があります。
転職した場合、新しい勤務先の就業規則を改めて確認する必要があります。前の勤務先で認められていた役員兼務が、新しい勤務先では認められないこともあります。
この場合、法人をどうするか。役員を退任して他の人が代表になるか、解散するか。選択を迫られます。
転勤で住所が変わる場合、本店の所在地が自宅であれば、本店移転の登記が必要になります。管轄の登記所が変われば費用も変わります。
退職した場合は、社会保険の扱いが変わります。本業の被保険者資格がなくなりますので、役員報酬を受けているなら法人のみでの被保険者となります。
日本年金機構の案内によれば、複数の事業所で被保険者となる場合には二以上事業所勤務の届出が必要とされています。状況が変われば、届出も見直すことになります。
こうした変化は、会社設立の時点では見通せません。だからこそ、変わったときにどうするかを決めておいてください。
サラリーマンとして働き続ける限り、こうした変化は避けられません。やめる選択肢を最初から持っておくことが、リスクを抑える方法です。
節税の効果が続くかどうかは、本業の状況に左右されます。会社員である以上、収入の構成が変わる可能性があります。
勤務先が副業や兼業の方針を変えることもあります。厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを示していますが、実際にどう扱うかは各社の判断です。方針が変われば、法人の扱いも見直すことになります。
出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)
始める前に確認すること

ここまでの内容を、会社設立の前に確認する項目としてまとめます。

一つめの保有期間が、判断の中心です。長く持ち続けられるなら、移転コストが薄まります。
逆に、数年で状況が変わる可能性が高いなら、個人のまま持つほうが身軽です。
会社設立をしないという判断も、常に選択肢に入れておいてください。やらないことのコストはゼロです。
そして、これらの見積もりは資産の内容によって大きく変わります。ご自身の資産の内訳を持って、税理士に確認してください。
節税額だけを見て判断すると、出口の費用で足が出ることがあります。
節税額から、出口の費用を年あたりに割った金額を差し引いてください。それが実質の効果です。
会社設立を見送るという判断は、いつでも撤回できます。逆に、設立してしまえば、やめるには費用と時間がかかります。この非対称性を踏まえて判断してください。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)
まとめ

資産管理会社の出口について、この記事で整理したことをまとめます。
- やめるときのほうが、手続きも費用も重くなります。解散から清算の結了までには時間がかかります
- 資産を法人から個人に戻せば、法人側と個人側の両方で課税が生じます
- 入れるときと出すときの二回、課税の機会があるため、短期の出入りは不利になります
- 法人ごと譲渡する方法もありますが、買い手が限られます
- 承継させるなら、会社設立の段階から持分の構成を設計してください
- 会社員は、転職・転勤・退職で法人の扱いを見直すことになります
資産管理会社は、資産を長く持ち続けることを前提とした形です。移転にともなう費用を、保有期間で薄めていく構造になっています。
数年で状況が変わる可能性があるなら、会社設立が合わない場合があります。個人のまま持つほうが身軽です。
サラリーマンとして本業がある以上、状況が変わる可能性は常にあります。始める前に、やめるときのことを確かめてください。節税だけを見て決めないでください。
節税の数字だけを追うと、出口で足が出ます。サラリーマンとして長く続けられる形かどうかで判断してください。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)
出口を確かめてから始めてください
資産管理会社は、資産を長く持ち続けることを前提とした形です。数年で状況が変わる可能性があるなら、会社設立が合わない場合があります。
解散には費用と時間がかかり、資産を個人に戻せば課税が生じます。始めるときの費用より大きくなることもあります。
だからこそ、始める前に出口を確かめてください。判断に迷う部分は、想定している保有期間を伝えたうえで税理士にご相談ください。
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