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会社設立 投資

法人に向く投資と向かない投資。会社設立の判断は対象で変わる

この記事の視点

投資のための会社設立を検討している会社員に向けて、投資の対象によって判断がどう変わるかを整理する記事です。

「投資の法人化」という言葉でひとくくりにされがちですが、上場株式と不動産では、個人と法人の差がまったく違います。同じ結論にはなりません。

ご自身が何に投資しているのかを確かめたうえで、該当する部分を読んでください。個別の判断は税理士にご相談ください。

なぜ対象で判断が変わるのか

なぜ対象で判断が変わるのかを表したイラスト

投資の法人化を考えるとき、判断は投資の対象によって変わります。理由から説明します。

法人の側の扱いは、対象によってあまり変わりません。株式の利益も不動産の賃料も、益金として合算し、法人税を計算します。

これに対して、個人の側の扱いは対象ごとに大きく違います。上場株式は申告分離課税、不動産の賃料は総合課税、というように分かれます。

つまり、個人の側の扱いが有利な対象では、法人化の効果が薄くなります。逆に、個人の側に不利がある対象では効果が出ます。

節税の効果は、この差から生じます。法人が有利なのではなく、個人の側の扱いによって差が生まれるという構造です。

したがって、まずご自身の投資対象を確かめてください。それによって、読むべき情報が変わります。

サラリーマンとして投資を続けている方の場合、複数の対象に分散していることが多いはずです。対象ごとに分けて考える必要があります。

会社設立を検討する前に、この整理を済ませておいてください。

一つの記事の結論をそのまま当てはめないでください「投資は法人化すべき」「法人化は不利」という結論だけが流通しがちですが、それぞれ特定の対象を前提にしています。前提が違えば結論も変わります。読むときは、何を対象にした話なのかを確かめてください。

会社設立が節税になるかどうかは、この個人側の扱いで決まります。サラリーマンの方は、まず対象を書き出してください。

会社設立の相談窓口では、事業を営む法人を前提にした説明を受けることが多くなります。投資だけを行う法人については、その前提が当てはまらない部分があるため、対象を伝えたうえで相談してください。

出典No.2260 所得税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

上場株式は効きにくい

上場株式は効きにくいを表したイラスト

上場株式への投資から見ていきます。

国税庁が示すところによれば、上場株式等を譲渡した場合の所得は申告分離課税とされ、他の所得と分けて課税されます。

給与所得がいくらあっても、この税率は変わりません。累進課税の影響を受けないということです。

そして、個人には非課税で投資できる制度があります。一定の枠内で得た譲渡益と配当に課税されません。法人ではこの制度を利用できません。

さらに、特定口座を使えば証券会社が損益を計算します。確定申告が不要になる場合もあります。

これらを合わせると、上場株式については個人の側がかなり有利だということになります。

法人化すると、非課税の枠を失い、記帳と決算の手間が増え、均等割の負担が加わります。利益が相当に大きくないと、差が固定費に埋もれます。

会社員が上場株式に投資している場合、まず非課税の枠を使い切るのが順序です。会社設立はそのあとの検討になります。

節税を目的とするなら、この順序を守ってください。

上場株式だけで会社設立をすると、節税どころか負担が増えることがあります。サラリーマンの方は、この点を確認してください。

会社設立を先に決めてしまうと、非課税の枠を戻すことはできません。

会社設立をして法人で株式を保有すると、配当の扱いも変わります。一定の場合に益金に算入しない規定がありますが、持株の割合などの要件があります。個人の配当控除とは仕組みが異なりますので、単純な比較はできません。

出典No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税) (国税庁/2026年8月22日確認)

不動産は効きやすい

不動産は効きやすいを表したイラスト

次に、不動産への投資です。上場株式とは状況が違います。

国税庁が示すところによれば、不動産の賃貸による所得は不動産所得として、他の所得と合算して総合課税されます。

つまり、会社員であれば本業の給与と合算されます。給与が高いほど、賃料収入に高い税率が乗ります。

ここに、法人化の余地が生まれます。法人に移せば、累進課税から外れるためです。

投資の対象と、個人の課税の仕組み、法人化の効きやすさ
投資の対象 個人の課税 法人化の効きやすさ
上場株式(譲渡益・配当) 申告分離課税 効きにくい。非課税制度も失います
不動産(賃料) 総合課税・給与と合算 効きやすい。給与が高いほど差が出ます
不動産(売却益) 分離課税(保有期間で税率が変わります) 保有期間により判断が分かれます

※ 2026年8月22日に国税庁のページで確認した内容にもとづく整理です。適用の可否は事実関係により異なります。

表の二行目が、法人化が語られる典型的な場面です。給与所得の高いサラリーマンが不動産を持つと、賃料に高い税率が乗ります。

三行目には注意が必要です。不動産の売却益については、個人でも分離課税で、保有期間によって税率が変わります。

したがって、売却を予定しているかどうかで判断が変わります。保有し続けて賃料を得るなら法人が有利になりやすく、数年で売却するなら個人のほうが有利な場合もあります。

会社設立を検討する際は、この点を先に整理してください。

不動産を持つサラリーマンが会社設立を検討する場面が多いのは、この構造によります。節税の効果が数字に出やすい対象です。

会社設立をするかどうかは、売却の予定によっても変わります。

会社設立をして不動産を法人で持つ場合、すでに個人で所有している物件を移すのか、これから取得する物件を法人名義にするのかで、必要な費用が大きく変わります。移す場合は登録免許税と不動産取得税が生じます。

出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

それ以外の対象

それ以外の対象を表したイラスト

上場株式と不動産以外の対象については、個別に確認する必要があります。

個人の側の課税の仕組みが対象ごとに定められており、一般化できません。総合課税されるもの、分離課税されるもの、扱いが分かれます。

確認すべき点を整理します。

  • 個人の場合、給与と合算されるか、分離して課税されるか
  • 損失が出た場合、他の所得と通算できるか
  • 損失を翌年以降に繰り越せるか
  • 個人だけが使える非課税や軽減の仕組みがあるか
  • 法人で保有した場合、期末の評価が必要か

一つめが最も重要です。給与と合算されるなら、会社員にとって法人化の効果が出やすくなります。分離課税なら効果は薄くなります。

四つめも見落とせません。個人だけが使える仕組みがあれば、法人化でそれを失います。

これらは国税庁のページで確認できますが、対象によっては判断が難しい部分があります。税理士に確認してください。

サラリーマンとして複数の対象に投資している場合、すべてを法人に移す必要はありません。効果の出る対象だけを法人で持ち、それ以外は個人で持つという設計も可能です。

ただし、対象を分ければ管理する口座が増えます。手間との兼ね合いで判断してください。

対象ごとに節税の効果が違う以上、会社設立の判断も対象ごとに行うことになります。

会社設立の判断材料としては、この五つを対象ごとに書き出すのが早道です。書き出してみると、効果が出そうな対象と、そうでない対象がはっきりします。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

複数の対象を持つ場合の設計

複数の対象を持つ場合の設計を表したイラスト

複数の対象に投資している場合の設計を考えます。

基本の考え方は、効果の出る対象だけを法人で持つことです。不動産は法人、上場株式は個人、という分け方が一例です。

ただし、分けると損益の通算ができなくなります。個人の損失と法人の利益は通算されません。

法人の中でまとめれば、国税庁が示すところによれば、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は一定の期間にわたり繰り越して控除することが認められています。

投資対象を分ける場合とまとめる場合の違いを比べた図
損益の通算を重視するか、非課税枠を重視するかで分かれます。

損失の出やすい運用を含むなら、まとめて法人で持つほうが通算の面で有利になることがあります。

逆に、安定して利益が出ている運用であれば、個人の非課税枠を活かすほうが効果的です。

会社員が判断する場合、管理の手間も評価に入れてください。口座が増えれば、確認する対象も増えます。

節税額の差が小さいなら、手間の少ない設計を選ぶという判断も合理的です。

会社設立をしても、すべての資産を移す義務はありません。サラリーマンとして管理できる範囲で設計してください。

会社設立をして法人と個人の両方で投資を続ける場合、資金の移動にも注意が必要です。法人の資金を個人が使えば、役員への貸付けか報酬として処理することになります。混同しないよう、口座を明確に分けてください。

出典No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除 (国税庁/2026年8月22日確認)

会社員に共通する確認事項

会社員に共通する確認事項を表したイラスト

投資の対象が何であっても、会社員には共通の確認事項があります。

一つめが就業規則です。投資そのものは副業に該当しないと扱われることが多いのですが、法人の代表者になることは別の論点です。役員兼務の可否を確認してください。

公務員の方は、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業が原則として禁止されています。不動産の賃貸についても一定の規模を超える場合には承認が必要とされることがあります。

二つめが社会保険です。法人は役員一人でも適用事業所になります。役員報酬を受け取れば被保険者になります。

日本年金機構の案内によれば、被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったときは届出が必要とされ、保険料は各事業所の報酬月額を合算して決定した標準報酬月額にもとづき按分されます。

この二点は、投資の対象と関係なく生じます。上場株式でも不動産でも同じです。

役員報酬をゼロにすれば、社会保険の手続きは生じません。投資を目的とした法人では、この設計が取られることも少なくありません。

サラリーマンとして本業の給与で生活が成り立っているなら、法人に利益を残す設計にも意味があります。

なお、当サイトでは勤務先に知られない方法は扱いません。就業規則を確認し、必要なら勤務先に相談してください。

会社設立をして代表者になる以上、この二点は避けて通れません。節税の話より先に確認してください。

出典2-4:被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったとき (日本年金機構/2026年8月22日確認)

対象別の判断の目安

対象別の判断の目安を表したイラスト

対象ごとの判断の目安を整理します。

固定費は、投資の対象にかかわらず共通です。法人住民税の均等割が年7万円、これに決算と申告の費用が加わり、合計で年30万円前後になります。

変わるのは、節税額の大きさです。

投資対象ごとに会社設立を検討する際の要点を示したチェックリスト
一つめを飛ばして法人化すると、使えたはずの枠を失います。

いずれの場合も、節税額から年30万円前後の固定費を引いた残りで判断してください。

そして、投資の利益は年によって変動します。好調な年の数字ではなく、低い年を基準に見てください。

会社員が判断する場合、本業の給与で固定費を吸収できてしまうため、検証が甘くなりがちです。数字で確かめてください。

会社設立の固定費は、節税額を測る際の基準線になります。サラリーマンの方は、この線を先に引いてください。

会社設立の初年度は、設立の費用も加わります。合同会社であれば数万円から十数万円、株式会社であれば定款認証の費用が加わりますので、初年度の判断はより慎重に行ってください。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

投資の対象と会社設立について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 法人の側の扱いは対象によってあまり変わりませんが、個人の側は大きく違います。この差が判断を分けます
  2. 上場株式は個人でも分離課税で、非課税の制度も使えます。法人化の効果は出にくい対象です
  3. 不動産の賃料は個人では総合課税で給与と合算されます。会社員にとって効果が出やすい対象です
  4. 不動産でも売却益は分離課税ですので、売却を予定しているなら別の判断になります
  5. 複数の対象を持つなら、効果の出る対象だけを法人にする設計もあります
  6. 固定費は対象にかかわらず年30万円前後。節税額から引いた残りで判断してください

投資の法人化について書かれた記事を読むときは、何を対象にした話なのかを確かめてください。前提が違えば結論も変わります。

そして、個人の側に有利な仕組みがある対象では、まずそれを使い切るのが順序です。会社設立はそのあとです。

サラリーマンとして投資を続けている方は、対象ごとに整理してから判断してください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・総務省・日本年金機構のページで確認したものです。制度は改正されます。投資の課税は対象となる商品や取引の形態によって扱いが細かく分かれ、この記事で扱えていない対象も多くあります。実際の判断にあたっては必ず税理士にご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、個別の税務相談ではありません。

会社設立を検討する前に、節税の効果が出る対象かどうかを確かめてください。

出典No.1476 特定口座制度 (国税庁/2026年8月22日確認)

対象を確かめてから判断してください

投資の法人化について書かれた記事を読むときは、何を対象にした話なのかを確かめてください。上場株式の話と不動産の話では、結論が変わります。

個人の側に有利な仕組みが用意されている対象では、法人化の効果が出にくくなります。逆に、個人の側に不利がある対象では、法人化が効きます。

ご自身が何に投資しているのかを整理してから、会社設立を検討してください。判断に迷う部分は、保有資産の内訳を持って税理士にご相談ください。

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