資産管理会社の設立費用。会社設立でいくら出ていくかを積み上げる
この記事で積み上げるもの
資産管理を目的とした会社設立を検討している会社員に向けて、設立の段階で出ていく費用を積み上げる記事です。
「合同会社なら10万円」という説明をよく見かけます。ただし、それは登記までの費用です。実際にはその先があります。
登記の費用、書類の費用、口座開設までの費用、そして資産を移す場合の費用。全部を並べます。金額は2026年8月22日に確認したものです。
登記までにかかる費用

まず、登記が完了するまでの費用です。
合同会社と株式会社で差が出るのは、定款認証と登録免許税です。
合同会社は定款の認証が不要です。株式会社は公証人による定款の認証が必要になります。
日本公証人連合会の案内によれば、定款認証の手数料は資本金の額等に応じて区分されており、100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、その他は5万円とされています。
なお、2026年12月1日から改定されることが公表されています。資本金の額等が100万円未満で、発起人が3人以下の自然人であり、取締役会を設置しない場合などの要件を満たすときは1万5,000円とされます。
登録免許税は、株式会社が資本金の額の1000分の7(最低15万円)、合同会社が資本金の額の1000分の7(最低6万円)です。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 定款の認証 | 不要 | 必要(3万〜5万円) |
| 定款の印紙代 | 電子定款なら不要 | 電子定款なら不要 |
| 登録免許税 | 最低6万円 | 最低15万円 |
| 登記までの合計の目安 | 6万円前後から | 20万円前後から |
※ 2026年8月22日に日本公証人連合会・法務省のページで確認した内容にもとづきます。定款認証手数料は2026年12月1日から改定されます。
資産管理を目的とする法人では、合同会社が選ばれることが多くなります。対外的な取引が少なく、費用と手間が軽いためです。
サラリーマンが会社設立をする場合、この差額の十数万円は無視できません。形態の選択で先に検討してください。
サラリーマンが節税を目的に会社設立をする場合、この初期費用も節税額から回収することになります。
会社設立の費用として広告や記事で示される金額は、この登記までの範囲を指していることがほとんどです。範囲を確かめずに比べると、実際の負担を見誤ります。
出典Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。 (日本公証人連合会/2026年8月22日確認)
登記の周辺でかかる費用

登記の前後で、細かな費用が加わります。
次のようなものが生じます。
- 法人の実印の作成(数千円から数万円)
- 発起人や役員の印鑑証明書(一通あたり数百円)
- 登記事項証明書の取得(一通あたり数百円)
- 法人の印鑑証明書の取得(一通あたり数百円)
- 定款の謄本の交付(株式会社の場合)
一つひとつは小さい金額ですが、合計すると数万円になります。
そして、登記事項証明書と印鑑証明書は複数枚必要になります。銀行口座の開設、証券口座の開設、税務署への届出。それぞれで求められます。
専門家に依頼する場合は、その報酬が加わります。司法書士に登記を依頼すれば、数万円から十万円程度の報酬が生じるのが一般的です。
自分で手続きをすれば報酬は不要ですが、平日に法務局へ行く時間が必要になります。オンラインでの申請という選択肢もあります。
会社員が自分で進める場合、この時間の確保が最初の壁になります。
サラリーマンとして本業がある方は、報酬を払って時間を買うという判断も合理的です。
サラリーマンの方は、証明書の取得も平日の時間が必要になる点を見込んでおいてください。
会社設立を専門家に依頼するかどうかは、費用と時間のどちらを優先するかで決まります。報酬の相場を複数の事務所で確認してから判断してください。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)
設立直後にかかる費用

登記が終わってからも、費用と手間が続きます。
税務署、都道府県、市区町村への届出が必要です。国税庁の案内によれば、法人を設立した場合には法人設立届出書などを提出することとされています。
これらの届出自体に費用はかかりませんが、添付書類として登記事項証明書などが必要になります。
法人の銀行口座の開設も必要です。金融機関によっては、事業の内容の確認を求められ、審査に時間がかかることがあります。
資産管理を目的とする法人は、事業の実体が説明しにくい場合があります。資金の出どころ、運用の方針、想定する取引の規模。答えられるように準備してください。
証券口座を開設する場合も同様です。法人口座の取り扱いと必要書類を、事前に確認してください。
そして、会計ソフトの費用も生じます。法人向けのものは、個人向けより高くなるのが一般的です。
これらを合わせると、設立直後だけで数万円から十数万円が追加でかかることになります。
会社員が本業のかたわらで進める場合、登記から口座開設まで数週間かかることも見込んでおいてください。
節税の効果が出るのは、法人が動き始めてからです。サラリーマンの方は、この準備期間も見込んでください。
会社設立をしてから口座が使えるようになるまでの期間は、金融機関によって差があります。運用を止めたくない場合は、この期間を見込んで設立の時期を決めてください。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)
資産を移す場合の費用

すでに個人で資産を持っていて、それを法人に移す場合の費用です。
ここが、設立費用のなかで最も大きくなる部分です。
不動産を移す場合、次の費用が生じます。

有価証券を移す場合は、含み益があれば譲渡益に課税されます。移す時点で納税が生じます。
つまり、会社設立そのものの費用より、資産の移転にかかる費用のほうがはるかに大きいということです。
これから取得する資産を法人名義にするのであれば、この費用は生じません。会社設立を先に済ませ、その法人で取得するという順番です。
サラリーマンとして資産を持っている方は、移すのか、これから取得する分だけ法人にするのかを先に決めてください。
節税額の計算は、この判断のあとです。
節税額を計算する前に、この移転費用を確定させてください。
会社設立の順序を変えるだけで、この費用の大半を避けられます。すでに持つ資産は個人のまま、これから取得する分を法人名義にするという設計です。
会社設立の前に、移転する予定の資産について概算を出してもらってください。金額を見てから判断できます。
出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)
設立費用を抑える方法

設立費用を抑える方法を整理します。
一つめが、合同会社を選ぶことです。定款認証が不要で、登録免許税も低く抑えられます。
資産管理を目的とする法人であれば、対外的な信用が問われる場面は限られます。合同会社で不都合が生じにくい用途です。
二つめが、電子定款にすることです。紙の定款に必要な収入印紙4万円がかかりません。
三つめが、資本金の額を抑えることです。定款認証の手数料は資本金の額等によって区分され、登録免許税も資本金の額に連動します。
そして、資本金を1千万円未満にすれば、法人住民税の均等割の区分が低く保たれます。総務省の資料で確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。
四つめが、手続きを自分で行うことです。ただし、平日の時間が必要になります。
五つめが、資産を移さないことです。これから取得する分だけを法人名義にすれば、移転費用が生じません。
この五つめが、最も効果が大きい選択になります。数百万円の差になることもあります。
会社員が節税を目的に会社設立をする場合、この順序で検討してください。

節税の効果を得ながら費用を抑えられる点で、五つめはサラリーマンに向いた選択です。
会社設立の費用を抑えることばかりに目を向けると、あとで必要になる手続きの費用を見落とします。資本金を極端に少なくすれば、運転資金を役員からの借入れで賄うことになり、その管理の手間が生じます。
出典会社の定款手数料の改定 (日本公証人連合会/2026年8月22日確認)
費用を回収できるか

積み上げた費用を、節税額と比べます。
設立費用は一度きりですので、続ける年数で割って年あたりに換算します。
そして、毎年の維持費を差し引いたあとの節税額と比べます。
維持費は、法人住民税の均等割が年7万円、これに決算と申告の費用が加わり、合計で年30万円前後になることが多くなります。
計算の例を示します。
| 項目 | 金額の例 | 備考 |
|---|---|---|
| 設立費用(合同会社・移転なし) | 15万円 | 登記・印鑑・証明書・口座開設まで |
| 年間の維持費 | 30万円 | 均等割と決算・申告の費用 |
| 年間の節税額(見込み) | 50万円 | 本業の給与水準により変わります |
| 差し引きの年間効果 | 20万円 | 節税額から維持費を引いた金額 |
| 設立費用の回収年数 | 約1年 | 15万円 ÷ 20万円 |
※ 例示です。実際の金額はご自身の状況により大きく変わります。個別の試算は税理士にご依頼ください。
移転費用が生じる場合は、この計算が大きく変わります。移転費用300万円なら、回収に15年かかる計算です。
回収に必要な年数が、続ける予定の期間より長ければ、会社設立をする意味は薄くなります。
サラリーマンとして本業がある方は、転職や転勤で状況が変わる可能性も考えてください。長期の回収を前提にした判断はリスクを伴います。
節税額から維持費を引いた残りで、設立費用を回収します。
会社設立の判断は、この回収年数で見てください。数字が出れば、迷う余地は小さくなります。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)
会社員が見落としやすい費用

会社員が見落としやすい費用を挙げます。
一つめが社会保険料です。役員報酬を受け取れば法人でも被保険者になります。日本年金機構の案内によれば、被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったときは届出が必要とされ、保険料は各事業所の報酬月額を合算して決定した標準報酬月額にもとづき按分されます。
法人の側にも、保険料の負担が生じます。役員報酬の額に応じた金額です。
報酬をゼロにすれば、この負担は生じません。資産管理を目的とする法人では、この設計が取られることも少なくありません。
二つめが、時間という費用です。平日の日中に動く場面が複数回あります。法務局、金融機関、税務署。
有給休暇を使うのであれば、その分も費用として計算に入れることができます。
三つめが、毎年の記帳と決算にかかる時間です。税理士に依頼しても、資料の整理は自分で行うことになります。
四つめが、就業規則の確認にかかる手間です。役員兼務の可否を確認する必要があります。公務員の方は、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業が原則として禁止されています。
サラリーマンとして本業を持つ以上、これらは避けて通れません。費用として見込んでおいてください。
節税額を計算するときは、これらも差し引いてください。サラリーマンにとって時間は限られた資源です。
会社設立ができる立場かどうかは、費用の計算より先に確認してください。
出典2-4:被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったとき (日本年金機構/2026年8月22日確認)
まとめ

資産管理会社の設立費用について、この記事で整理したことをまとめます。
- 登記までの費用は、合同会社で6万円前後から、株式会社で20万円前後からです
- これに印鑑、証明書、口座開設などが加わり、設立直後までで十数万円になります
- すでに持つ資産を移す場合、その費用が最も大きくなります。数百万円になることもあります
- 費用を抑えるなら、合同会社、電子定款、資本金を抑える、そして資産を移さないこと
- 設立費用は続ける年数で割り、維持費を引いたあとの節税額と比べてください
- 会社員は社会保険料と時間も費用です。報酬をゼロにすれば保険料は生じません
資産管理会社の会社設立費用は、登記までの金額だけでは足りません。その先に、より大きな費用があります。
とくに、すでに持っている資産を移すかどうかで、桁が変わります。これから取得する分だけ法人にするなら、移転費用は生じません。
サラリーマンとして本業がある方は、時間という費用も計算に入れてください。そのうえで、節税額と比べて判断してください。
会社設立をしないという判断も、費用の面では合理的です。
出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月22日確認)
全部を並べてから判断してください
資産管理会社の会社設立費用は、登記までの金額だけでは足りません。印鑑、証明書、口座開設、そして資産の移転。
とくに、すでに持っている資産を移す場合の費用は、登記費用の何倍にもなることがあります。
全部を並べたうえで、年あたりの節税額と比べてください。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。
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