資産管理会社の維持費。会社設立のあと毎年いくら出ていくか
この記事で確かめること
資産管理を目的とした法人を持っている、あるいは会社設立を検討している会社員に向けて、毎年出ていく金額を積み上げる記事です。
設立費用は一度きりですが、維持費は続きます。そして、資産から収益が上がらない年も同じだけかかります。
何にいくらかかるのか。減らせる部分はどこか。この二つを扱います。金額は2026年8月22日に確認したものです。
収益がなくてもかかるもの

維持費のうち、収益の有無にかかわらずかかるものから確認します。
法人住民税の均等割です。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円とされています。
この金額は、法人の所得がゼロでも、赤字でもかかります。
資産管理を目的とする法人では、収益が上がらない年があります。空室が続いた年、修繕が重なった年、配当がなかった年。
そうした年も、この7万円は変わりません。
なお、税率は自治体によって異なります。標準税率とは違う税率を定めている自治体もありますので、本店の所在地の自治体で確認してください。
そして、資本金等の額が1千万円を超えると、区分が上がります。会社設立の際に資本金を1千万円未満に抑えるのは、この理由によります。
会社員が資産管理会社を持つ場合、この7万円が最低ラインの負担になります。
会社設立をする前に、この最低ラインを確認してください。サラリーマンの方は、本業の給与から毎年支払い続けられる金額かを考えることになります。
会社設立の際に資本金をいくらにするかは、この均等割の区分に直結します。節税の観点からも、1千万円未満に抑えるのが基本です。
会社設立の前に、本店を置く予定の自治体の税率を調べてください。標準税率と異なる税率を定めている自治体があり、その場合は年7万円という前提が変わります。自治体の税務担当の窓口や、その自治体が公開している税率の一覧で確認できます。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)
決算と申告の費用

次に、決算と申告にかかる費用です。
法人は毎年、決算を組んで申告する必要があります。国税庁の案内によれば、法人税の申告期限は原則として事業年度の終了の日の翌日から2か月以内です。
都道府県と市区町村への申告も必要になります。
これを税理士に依頼する場合の費用は、依頼する範囲によって変わります。
| 依頼する範囲 | 自分で行うこと | 年間費用の目安 |
|---|---|---|
| 決算と申告のみ | 記帳と資料の整理 | 10万円前後から |
| 記帳代行を含む | 証拠書類の受け渡し | 20万円前後から |
| 顧問契約 | 日常の相談のみ | 30万円前後から |
※ 目安です。取引の量、資産の内容、依頼先により大きく変わります。見積もりを取って比べてください。
資産管理を目的とする法人は、取引の件数が少ないことが多く、その分費用も抑えられる傾向があります。
ただし、有価証券の期末評価や、不動産の減価償却といった処理があれば、その分の作業が加わります。
自分で申告するという選択肢もあります。費用はかかりませんが、法人税の申告書は個人の確定申告より複雑です。
会社員が本業のかたわらで独力で行うのは、現実的とは言いにくいと考えてください。
サラリーマンとして時間が限られる以上、費用を払って任せる判断にも合理性があります。
会社設立をしたあと、この決算と申告は毎年続きます。節税額を計算するときは、必ずこの費用を差し引いてください。
会社設立の相談をする段階で、決算と申告の見積もりもあわせて取っておくと、判断が早くなります。設立を支援する事務所がそのまま顧問になることも多いため、設立費用と年間費用を分けて確認してください。
申告の期限を過ぎると、加算税や延滞税の対象になります。税理士に依頼していれば期限の管理も任せられますが、資料を渡す時期が遅れれば間に合わないこともあります。決算日から逆算して、いつまでに何を渡すかを決めておいてください。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)
役員報酬を出す場合の負担

役員報酬を出す場合、社会保険料が加わります。
法人は役員一人でも適用事業所になります。日本年金機構の案内によれば、法人の事業所は常時従業員を使用するものとして適用事業所になるとされています。
役員報酬を受け取れば被保険者になり、法人と本人の双方が保険料を負担します。
会社員の場合、本業ですでに加入していれば、二つの事業所で被保険者になります。日本年金機構の案内によれば、この場合は届出が必要とされ、保険料は合算した標準報酬月額により決定され、按分されます。

この図が示すのは、役員報酬を出すかどうかで維持費が大きく変わるということです。
報酬をゼロにすれば、維持費は年30万円前後に収まります。資産管理を目的とする法人で、この設計が取られることが多いのはこのためです。
会社員は本業の給与で生活が成り立っていることが多いため、法人に利益を残しておけるという事情もあります。
ただし、法人に残した利益を個人が使うには、報酬か配当の形で出す必要があり、そこで課税が生じます。目的によって判断が変わります。
会社設立の設計として役員報酬をどうするかは、節税額と維持費の両方に影響します。サラリーマンの方は、本業の社会保険との関係も確認してください。
会社設立の設計として役員報酬をゼロにする場合、法人に残った利益をどう使うかを決めておく必要があります。将来的に報酬や配当として出せば、その時点で課税が生じます。使わないまま法人に積み上げるだけでは、資金が動かせません。
出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月22日確認)
見落とされやすい費用

見落とされやすい細かな費用を挙げます。
- 法人の銀行口座の維持手数料(金融機関によります)
- 振込手数料(法人口座は個人より高いことがあります)
- 会計ソフトの利用料(法人向けは個人向けより高くなります)
- 登記事項証明書や印鑑証明書の取得(必要になるたびに)
- 役員の任期満了にともなう変更登記(株式会社の場合)
- 本店を移転する場合の変更登記
一つひとつは小さい金額ですが、合計すると年数万円になります。
とくに、株式会社の場合は役員の任期があります。任期が満了すれば、重任の登記が必要です。登録免許税がかかります。
合同会社には役員の任期という概念がありません。この点でも、維持の手間が軽くなります。
本店を自宅にしている場合、転居のたびに変更登記が必要になります。会社員は転勤の可能性がありますので、この点も見込んでおいてください。
そして、登記を怠れば過料の対象になりえます。忘れていた、では済みません。
サラリーマンとして本業がある方は、こうした手続きの期限を管理する仕組みを作ってください。
会社設立をして本店を自宅にする場合、転居のたびに費用が生じます。サラリーマンとして転勤の可能性がある方は、この点も見込んでください。
会社設立から数年たつと、こうした細かな手続きの期限を忘れがちになります。決算のタイミングで、任期や本店の状況をあわせて確認する習慣をつけてください。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月22日確認)
維持費を減らす方法

維持費を減らす方法を整理します。
一つめが、合同会社を選ぶことです。役員の任期がないため、重任の登記が生じません。
二つめが、資本金を1千万円未満にすることです。均等割の区分が低く保たれます。
三つめが、役員報酬をゼロにすることです。社会保険料が生じません。年間で数十万円の差になります。
四つめが、税理士に依頼する範囲を絞ることです。記帳を自分で行えば、費用が下がります。
ただし、四つめには注意が必要です。記帳を自分で行えば時間がかかり、処理を誤れば申告の内容が変わります。
資産管理を目的とする法人では、有価証券の期末評価や不動産の減価償却といった判断が生じます。独力での処理は避けたほうが無難です。
そして、費用を絞りすぎて実務が回らなくなれば、本末転倒です。申告が遅れれば加算税や延滞税の対象になります。
会社員が本業のかたわらで運営する以上、続けられる範囲で費用を決めることが現実的です。
節税額から維持費を引いた残りで判断するのですから、維持費を無理に削るより、節税額が十分かを見るほうが本質的です。
節税額から維持費を引いた残りで判断する以上、維持費を削ることには限界があります。会社設立の是非そのものを見直すほうが早い場合もあります。
会社設立をして数年たったあと、依頼する範囲を見直すという方法もあります。運用が安定して取引が減れば、必要な作業も減ります。契約の更新時に相談してみてください。
費用を抑える工夫として、複数の事務所から見積もりを取る方法があります。同じ作業でも金額に差が出ますので、資産の内容と取引の量を具体的に伝えたうえで比べてください。
出典Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。 (日本公証人連合会/2026年8月22日確認)
収益がない年をどう見るか

維持費を判断するうえで最も重要な視点を扱います。
資産からの収益は、年によって変動します。
不動産であれば、空室、家賃の下落、大規模な修繕。有価証券であれば、相場の下落、減配。いずれも収益を押し下げます。
収益がなければ、節税額もゼロです。一方、維持費は変わりません。
つまり、その年は維持費の分だけマイナスになります。
損失が出た場合、国税庁が示すところによれば、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は一定の期間にわたり繰り越して控除することが認められています。
ただし、繰り越すには申告を続ける必要があります。申告の費用も、その年に発生します。
したがって、平均的な年ではなく、収益の低い年を基準に判断してください。
好調な年の節税額だけを見て会社設立をすると、平年には見合わないという結果になります。
サラリーマンとして本業の給与があると、マイナスの年も給与から補填できてしまいます。それが判断を甘くする原因にもなります。
会社設立の判断は、収益が低い年の数字で行ってください。サラリーマンの方は、給与で補填できてしまう点に注意が必要です。
会社設立の判断材料として、過去数年の収益を書き出してみてください。もし個人で運用してきた実績があるなら、その変動の幅がそのまま参考になります。
出典No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除 (国税庁/2026年8月22日確認)
維持費の全体像

ここまでの内容を、三つの水準に整理します。

多くの場合、二つめの水準が現実的です。均等割と決算・申告の費用で、年30万円前後。
節税額がこの金額を安定して上回るか。これが、資産管理会社を持ち続ける条件になります。
上回らないのであれば、解散を検討するという判断もあります。ただし、解散にも費用がかかります。
会社員が本業のかたわらで運営する場合、この計算を毎年行う習慣をつけてください。決算のタイミングが自然です。
サラリーマンとして忙しくても、年に一度の確認なら続けられるはずです。
会社設立を続けるかどうかは、節税額がこの水準を上回るかで決まります。サラリーマンの方は、年に一度この計算をしてください。
会社設立をした法人を解散する場合、登記の費用と清算の手続きが必要になります。維持費が節税額を上回る状態が続くなら、その費用を払ってでもやめる判断が合理的な場合があります。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)
まとめ

資産管理会社の維持費について、この記事で整理したことをまとめます。
- 法人住民税の均等割は年7万円が基準。所得がゼロでも赤字でもかかります
- 決算と申告の費用が加わり、標準的には年30万円前後になります
- 役員報酬を出せば社会保険料が加わり、年60万円以上になることがあります
- 細かな費用も年数万円積み上がります。株式会社は役員の重任登記も生じます
- 減らす方法はありますが、絞りすぎて実務が回らなくなれば本末転倒です
- 収益がない年も維持費は同じ。低い年を基準に判断してください
資産管理会社の維持費は、収益の有無にかかわらず発生します。ここが、判断の中心です。
好調な年の節税額ではなく、低い年を基準に見てください。平均で判断すると、平年には見合わないという結果になります。
サラリーマンとして本業の給与があると、この負担を吸収できてしまいます。だからこそ、数字で確かめてください。
会社設立の判断も、維持の判断も、同じ計算で行えます。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)
収益がない年を基準に見てください
資産管理会社の維持費は、収益の有無にかかわらず発生します。空室が続いた年、相場が下がった年、配当がなかった年。いずれも同じです。
したがって、好調な年の節税額ではなく、低い年を基準に判断してください。
減らせる部分もあります。ただし、減らしすぎれば実務が回りません。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。
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