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会社設立 相続税対策

会社設立で相続税が減る仕組み。評価が変わるだけという前提から

この記事が扱う範囲

会社設立による相続税対策を検討している会社員に向けて、その仕組みを最初から整理する記事です。

「法人にすると相続税が減る」という説明が広く流通しています。ただし、相続税がかからなくなるわけではありません。変わるのは、何を相続するかです。

評価の仕組みと、法人化で失う特例。この二つを扱います。相続税の計算は複雑ですので、実際の判断は必ず税理士にご相談ください。

何が相続の対象になるのか

何が相続の対象になるのかを表したイラスト

最初に、仕組みの前提を確認します。

個人が不動産を持っていれば、相続の対象はその不動産です。評価は相続税評価額によって行われます。

法人が不動産を持っていれば、相続の対象はその法人の株式や持分です。不動産そのものは法人のものですので、相続財産には含まれません。

つまり、会社設立をしても相続税がなくなるわけではありません。評価する対象が変わるだけです。

この点を誤解したまま進めると、期待した効果が得られないことになります。

株式の評価が、不動産の評価より低くなる場合に、結果として相続税が減るという構造です。逆に、株式の評価が高くなる場合もあります。

したがって、会社設立が相続税対策になるかどうかは、評価の比較で決まります。一般論では答えが出ません。

サラリーマンとして資産を持つ方が検討する場合、まずこの前提を理解してください。

「法人には相続税がかからない」という表現について法人そのものは死亡しませんので、法人に相続は生じません。ただし、その法人の株式や持分を保有している個人が亡くなれば、その株式や持分が相続財産になります。相続税から逃れられるわけではありません。

相続税の節税を目的として会社設立を勧められた場合も、この前提を確認してください。サラリーマンの方は、資産の内訳を書き出すところから始めると整理しやすくなります。

相続の対象が変わるということは、遺産を分ける段階の話も変わるということです。不動産は分けにくい資産ですが、株式や持分であれば数量で分けられます。この点を利点として挙げる説明もありますが、分けたあとに複数の人が法人の運営に関わることになる点も見ておいてください。

出典No.4132 相続人の範囲と法定相続分 (国税庁/2026年8月22日確認)

株式の評価はどう決まるのか

株式の評価はどう決まるのかを表したイラスト

では、株式の評価はどう決まるのか。

国税庁が示すところによれば、取引相場のない株式の評価は、会社の規模や資産の内容に応じて方法が定められています。

大まかには、類似する業種の会社と比べる方法と、会社の純資産にもとづく方法があり、会社の規模区分によってどちらを用いるかが決まります。

資産管理を目的とした法人の場合、純資産にもとづく評価が用いられることが多くなります。会社の規模や資産の構成によって扱いが変わるためです。

この場合、法人が持つ不動産の評価が、そのまま株式の評価に反映されやすいことになります。

したがって、単純に法人にすれば評価が下がる、ということではありません。

評価の方法は細かく定められており、会社の規模の判定、資産の構成、株主の構成などによって適用される方法が変わります。

この判定を独力で行うのは現実的ではありません。会社設立の前に、税理士に試算を依頼してください。

会社員が節税を目的に会社設立を検討する場合、設立前の試算がないまま進めるのは避けてください。

節税の効果があるかどうかは、この評価の結果ではじめて分かります。試算のない提案は、根拠のない提案です。

会社設立の前に評価の試算を取れば、節税の効果があるかどうかを数字で確かめられます。

評価の方法は、会社の資産のうち株式や土地が占める割合によっても変わります。資産の構成が一定の要件に当てはまる会社については、別の取扱いが定められています。資産管理を目的とする法人はここに該当しやすいため、事前の確認が欠かせません。

出典No.4638 取引相場のない株式の評価 (国税庁/2026年8月22日確認)

評価が下がる場合の要因

評価が下がる場合の要因を表したイラスト

評価が下がる場合の要因を整理します。

一つめが、負債の存在です。純資産にもとづく評価では、資産から負債を引いた金額が基礎になります。借入れで不動産を取得していれば、その借入金が控除されます。

二つめが、不動産の評価そのものです。賃貸されている不動産は、自用の場合と比べて評価上の調整が行われます。これは個人で持つ場合も同じです。

三つめが、法人税相当額の控除です。純資産にもとづく評価では、資産の含み益に対応する法人税等に相当する金額を控除する取扱いが定められています。

この三つめが、個人で持つ場合との違いになります。

ただし、これらはいずれも要件と計算方法が細かく定められています。単純に適用されるものではありません。

そして、評価が下がることだけを目的とした形は、否認される可能性があります。実体のない法人、経済的な合理性を欠く取引は問題になりえます。

会社設立をする以上、その法人が実際に資産を管理し、運用しているという実体が必要です。

サラリーマンとして本業のかたわらで運営する場合でも、この点は変わりません。業務と判断の記録を残してください。

節税の効果を狙った形が実体を欠けば、そこが問題になります。サラリーマンとして本業を持ちながら運営する場合も、記録の水準は変わりません。

借入れで不動産を取得すれば評価上は負債が控除されますが、返済という現実の負担が生じます。相続の時点での評価を下げるために借入れを増やすという発想は、返済の見通しがあってはじめて成り立ちます。数字の上の効果だけで判断しないでください。

出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

法人化で失う特例

法人化で失う特例を表したイラスト

法人化で失うものについて、重要な点があります。

国税庁が示すところによれば、相続した事業の用や居住の用の宅地等について、一定の要件のもとで評価額を減額する特例が設けられています。

この特例は、個人が相続または遺贈により取得した宅地等に適用されます。法人が所有する宅地には適用されません。

つまり、宅地を法人に移せば、この特例を使えなくなります。

減額の割合は要件によって異なりますが、適用できれば評価額が大きく下がる仕組みです。これを失う影響は小さくありません。

宅地を個人で持つ場合と法人で持つ場合の相続時の扱いを比べた図
左の一行目を失うことが、法人化の大きな論点です。

したがって、この特例が使える資産を持っている場合、法人化がかえって不利になることがあります。

逆に、面積の上限を超える規模の資産を持っている場合には、法人化を検討する余地が生まれます。

会社設立を検討する前に、現在の資産にこの特例が適用できるかを確認してください。ここが判断を分けます。

この特例を失うことで、節税どころか評価が上がる場合もあります。サラリーマンの方は、自宅の宅地についても確認してください。

会社設立の判断は、この特例の適用可否を確認してからです。

この特例には、宅地の用途、面積の上限、取得する人の要件など、複数の条件が定められています。要件の一つでも欠ければ適用されません。適用できると思い込んだまま比較すると、判断を誤ります。税理士に確認してください。

出典No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例) (国税庁/2026年8月22日確認)

持分をどう分けるか

持分をどう分けるかを表したイラスト

会社設立による相続対策では、持分の構成が中心的な論点になります。

法人を作るとき、誰が出資するか。ここで、将来の相続の形がおおむね決まります。

設立の時点で配偶者や子を出資者に含めておけば、その分は最初からその人のものになります。あとから移す必要がありません。

逆に、いったん自分ひとりで出資して、あとから持分を移せば、その時点で贈与または譲渡として扱われます。課税が生じます。

したがって、承継を前提とするなら、会社設立の段階で設計することになります。

ただし、設立時の出資であっても、資金の出どころが問題になります。子の名義で出資しながら実際の資金を親が出せば、贈与とみなされる可能性があります。

この設計は、専門家の関与なしに進めないでください。判断を誤れば、対策のつもりが課税を招きます。

そして、承継する側の意思も必要です。法人を引き継げば、その運営も引き継ぐことになります。決算と申告が毎年続きます。

会社員が数十年先を見据えて設計する以上、税理士の関与が前提の領域だと考えてください。

持分の設計を誤ると、節税のつもりが贈与税の対象になります。

持分を複数の人に分けると、将来の意思決定に人数分の合意が必要になります。運営の方針が分かれたときに動けなくなることもありますので、分け方は税務だけでなく運営の観点からも検討してください。

出典No.4155 相続税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

会社員が確認すること

会社員が確認することを表したイラスト

会社員が相続対策で会社設立を検討する場合、先に確認することがあります。

一つめが就業規則です。法人の代表者になることは役員兼務にあたります。役員兼務の可否を確認してください。

公務員の方は、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業が原則として禁止されています。

代表者を親や配偶者にするという設計もあります。その場合、ご自身は出資者にとどまることになります。この形であれば、役員兼務の問題は生じません。

二つめが社会保険です。役員報酬を受け取れば法人でも被保険者になります。日本年金機構の案内によれば、被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったときは届出が必要とされ、保険料は各事業所の報酬月額を合算して決定した標準報酬月額にもとづき按分されます。

報酬をゼロにすれば、この手続きは生じません。相続対策を目的とする法人では、この設計も取られます。

三つめが、時間の制約です。相続対策は数十年にわたる話です。その間、毎年の決算と申告が続きます。

サラリーマンとして本業を続けながら、この運営を長期にわたって維持できるかを確認してください。

なお、当サイトでは勤務先に知られない方法は扱いません。就業規則を確認し、必要なら勤務先に相談してください。

節税の話より先に、会社設立ができる立場かを確認してください。

代表者を親や配偶者にする設計では、その人が高齢になったときの体制も考えておく必要があります。実際に法人を動かす人がいなくなれば、活動の実体を示せなくなります。

出典2-4:被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったとき (日本年金機構/2026年8月22日確認)

判断の前に確かめること

判断の前に確かめることを表したイラスト

会社設立を判断する前に確かめることを整理します。

相続対策で会社設立を検討する前に確かめる六項目のチェックリスト
一つめと三つめを並べないと、判断のしようがありません。

一つめと三つめの比較が、判断の中心です。この二つを出さずに会社設立を進めるのは、根拠のない判断になります。

二つめは、比較の結果を大きく左右します。特例が使えるのに法人化すれば、評価が上がる可能性もあります。

六つめも見落とせません。相続は数十年先かもしれません。その間、毎年30万円前後の維持費が積み上がります。

30年続けば900万円です。節税額がこれを上回るかどうかも、判断の要素になります。

サラリーマンとして本業がある方は、この長期の負担を続けられるかも確認してください。

節税額と維持費を数十年分並べてください。サラリーマンとして本業の給与があると、この負担を吸収できてしまうため検証が甘くなります。

会社設立をしないという判断も、節税の観点から合理的な場合があります。

これらの確認には、資産の一覧、登記事項証明書、直近の確定申告書などの資料が必要になります。相談の前に揃えておくと、試算までが早く進みます。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

会社設立と相続税対策について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 会社設立をしても相続税がなくなるわけではありません。相続の対象が不動産から株式に変わるだけです
  2. 株式の評価は、会社の規模や資産の内容に応じた方法で計算されます。単純に下がるとは限りません
  3. 負債の存在、賃貸の状況、含み益に対応する法人税等相当額の控除。これらが評価に影響します
  4. 小規模宅地等の特例は法人が持つ宅地には適用されません。法人化でこれを失います
  5. 持分の構成は設立時に設計します。あとから移せば課税が生じます
  6. 維持費は年30万円前後。数十年続けば相当な金額になります

会社設立による相続税対策は、税がなくなる仕組みではありません。評価の方法が変わるだけです。

有利になる場合もあれば、そうでない場合もあります。現在の評価額と、法人化した場合の評価額を並べてから判断してください。

サラリーマンとして本業がある方は、長期にわたる運営を維持できるかも確認してください。相続は数十年先かもしれません。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・総務省・日本年金機構のページで確認したものです。制度は改正されます。相続税の計算と株式の評価は極めて複雑で、この記事で扱えていない要件や特例が数多くあります。実際の判断にあたっては必ず税理士にご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、個別の税務相談ではありません。

節税額が維持費を上回るかどうか。判断はここに帰着します。

出典No.4638 取引相場のない株式の評価 (国税庁/2026年8月22日確認)

評価が変わるだけだと理解してください

会社設立による相続税対策は、税がなくなる仕組みではありません。相続する対象が不動産から株式に変わり、評価の方法が変わるだけです。

有利になる場合もあれば、そうでない場合もあります。とくに、個人でしか使えない特例を失う点を確認してください。

相続税の計算は複雑で、この記事で扱えていない要素が数多くあります。判断は必ず税理士にご相談ください。

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