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会社設立 節税 なぜ

なぜ法人と個人で税の扱いが違うのか。会社設立が節税につながる根っこ

この記事の狙い

会社設立が節税になる理由を、制度の根っこから理解したい方に向けた記事です。個別の手法ではなく、なぜそういう仕組みになっているのかを扱います。

根っこを理解しておくと、個々の説明が正しいかどうかを自分で判断できるようになります。「なぜそうなるのか」が分かれば、当てはまらない場面も見分けられます。

会社員の場合に効き方が変わる理由も、この根っこから説明できます。個別の判断は税理士にご相談ください。

根っこにあるのは「別人格」という一点

根っこにあるのは「別人格」という一点を表したイラスト

会社設立が節税につながる理由を突き詰めると、法人が法律上の別人格であるという一点に行き着きます。

法人とは、法律によって権利や義務の主体となる能力を与えられた存在です。自然人である個人とは別に、契約を結び、財産を持ち、債務を負うことができます。

この別人格性があるために、課税の体系も分かれています。個人の所得には所得税が、法人の所得には法人税が課されます。それぞれ別の法律に基づいて計算されます。

国税庁の研究資料でも、法人所得の意義と法人税の納税義務者に関する基本的な考え方が論じられています。法人課税は個人所得課税と並んで、所得課税の一翼を担うものとして位置づけられています。

会社設立をすると、あなたとは別の人格が生まれます。そして、その人格に帰属する所得は、あなたの所得とは別に計算されることになります。

ここから、多くのことが導かれます。税率の体系が違うこと、経費として認められる範囲が違うこと、そしてあなた自身への支払いが可能になること。

サラリーマンが会社設立を考えるとき、この構造を理解しておくと、個々の説明が正しいかどうかを自分で判断できるようになります。

では、別人格であることから何が導かれるのかを、順に見ていきます。

別人格は、良いことばかりではありません別人格であるということは、その人格について独立して申告し、納税する義務が生じるということでもあります。赤字でも法人住民税の均等割がかかるのも、たたむときに手続きが要るのも、別人格だからこそです。

サラリーマンが会社設立を検討する場面でも、この構造の理解は役に立ちます。個別の手法を追いかけるより、根っこを押さえるほうが判断が早くなります。

節税の話に入る前に、この前提を押さえておいてください。

出典法人所得の意義と法人税の納税義務者に関する基本的な考え方(要約) (国税庁/2026年8月22日確認)

導かれること その一:税率の体系が分かれる

導かれること その一:税率の体系が分かれるを表したイラスト

最初に導かれるのが、税率の体系です。

個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進の仕組みです。国税庁のページで確認すると、課税所得の金額に応じて段階的に税率が定められています。

この累進の考え方は、担税力に応じた負担を求めるという発想に基づいています。所得の多い人ほど多く負担するという考え方です。

一方、法人税は所得の金額に応じた区分で税率が定められており、個人のように細かく段階が分かれてはいません。法人は担税力を測る対象としての性質が個人と異なると整理されています。

この体系の違いが、税率差を生みます。個人で高い税率がかかっている所得を法人に移せば、法人の税率で計算されることになります。

これが、会社設立が節税につながる最も基本的な経路です。制度が意図してこうなっているわけではなく、体系が別々であることの帰結として生じています。

したがって、税率の差がどれだけあるかは、個人側の税率帯によって変わります。個人の税率が低ければ差は小さく、高ければ大きくなります。

サラリーマンの場合、副業の所得は本業の給与所得と合算して課税されます。本業の給与が高いほど、副業の所得に高い税率が乗っているため、法人に移す効果が大きくなります。

この点は、独立している個人事業主とは条件が違います。会社員は本業の給与という土台の上で判断することになります。

この税率差が、節税の最も基本的な経路になります。

出典No.2260 所得税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

導かれること その二:自分に支払える

導かれること その二:自分に支払えるを表したイラスト

二つめが、あなた自身への支払いが可能になることです。

個人事業主の場合、事業主本人は事業と一体です。自分から自分へお金を移しても、それは経費になりません。自分に給与を払うことも、退職金を払うことも、出張日当を出すこともできません。

法人であれば、法人からあなたへの支払いが成立します。法人と役員は別人格ですから、法人が役員に対価を支払うという関係が成り立つのです。

役員報酬は法人の損金になり、受け取る側では給与所得になります。退職金も、出張日当も、同じ構造です。

これが、会社設立によって経費の範囲が広がると言われる理由の中心です。新しい経費の項目が創設されたわけではなく、別人格になったことで支払いが成立するようになったということです。

社宅も同じ仕組みです。法人が住居を借り上げ、役員に貸し付ける。法人と役員が別人格だからこそ、この関係が成り立ちます。

ただし、別人格であるからこそ、その支払いが適正かどうかが問われます。国税庁は役員給与について、不相当に高額な部分は損金にならないとしています。

身内どうしの取引であれば金額を自由に決められてしまいますので、そこに歯止めが置かれているという構造です。職務の内容や法人の規模との釣り合いが見られます。

サラリーマンが会社設立をする場合、法人の規模が小さくなりがちです。その規模に見合った報酬かどうかが問われることになります。

節税として語られる経費の広がりは、この構造から生じています。

出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月22日確認)

導かれること その三:所得が二段階になる

導かれること その三:所得が二段階になるを表したイラスト

三つめが、所得が二段階で扱われることです。

法人が利益を上げれば、まず法人税が課されます。その後、配当として個人に分配されれば、受け取る個人の段階でも課税されます。同じ利益に対して二回課税されるという構造です。

この点については、法人税と所得税の間の負担調整をどうするかという議論が古くからあります。配当を受け取った個人の側で一定の調整が設けられているのも、この問題への対応です。

会社設立をした個人にとって、この構造は実務上の判断に影響します。法人に利益を残せば法人税がかかり、それを個人が受け取る段階でまた課税されるためです。

役員報酬として受け取る形が使われるのは、この二段階を避ける意味もあります。役員報酬は法人の損金になりますので、法人段階での課税が減ります。

ただし、その分だけ個人の所得が増えて所得税がかかり、社会保険料も発生します。どこかで必ず負担が生じるという構造は変わりません。

したがって、会社設立による節税は「税金がかからなくなる」ことではなく、「どの段階で、どの税率で負担するかを設計できるようになる」ことだと理解するのが正確です。

サラリーマンの場合、個人側にはすでに本業の給与所得があります。そこに役員報酬を上乗せするか、法人に残すか。この選択が設計の中心になります。

会社設立の目的が節税であれば、この設計をどう組むかで結果が決まります。税理士に相談する価値が高いのは、まさにこの部分です。

節税の設計とは、この二段階のどこで負担するかを選ぶことです。

会社設立の目的が節税であれば、この設計をどう組むかで結果が決まります。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

導かれること その四:社会保険の適用が生じる

導かれること その四:社会保険の適用が生じるを表したイラスト

四つめが、社会保険の適用です。これも別人格であることから導かれます。

日本年金機構の案内によれば、法人の事業所は原則として強制適用事業所とされています。役員が一人だけであっても同じです。

法人という事業所が存在し、そこに使用される者がいるという関係が成立するため、社会保険の対象になります。個人事業主が自分自身を雇用することはできませんが、法人であれば役員として関係が成り立ちます。

役員報酬を受け取れば、その法人で被保険者になります。本業ですでに加入している会社員がこの状態になると、二つの事業所で同時に被保険者となります。

この場合、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、事実発生から10日以内に被保険者本人が提出することとされています。

保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、それぞれの報酬に基づいて按分されます。別人格である二つの事業所に、一人の被保険者が使用されているという整理です。

独立している個人事業主が法人化する場合、この適用は保障が手厚くなるという意味を持ちます。国民健康保険と国民年金から、健康保険と厚生年金に移るためです。

しかし会社員の場合は違います。すでに本業で加入していますので、負担と手続きが増えるという形になります。同じ制度の帰結が、立場によって逆の意味を持つのです。

この違いも、根っこを理解していれば説明できます。制度が会社員を不利に扱っているのではなく、すでに適用されている人に重ねて適用されるという構造の問題です。

社会保険は節税の計算に必ず含めてください。税だけでは判断できません。

出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月22日確認)

なぜ会社員には効きにくいと言われるのか

なぜ会社員には効きにくいと言われるのかを表したイラスト

ここまでの構造から、会社員に効きにくいと言われる理由も説明できます。三つあります。

一つめが、税率の土台です。副業の所得は本業の給与所得と合算されますので、低い税率帯から順に適用されるわけではありません。本業ですでに使っている帯の続きから適用されます。

これは不利にも有利にも働きます。本業の給与が高ければ税率差が大きくなりますが、法人に移す前の段階ですでに高い税率がかかっているという状態でもあります。

二つめが、給与所得控除です。国税庁のページで確認すると、給与等の収入金額が850万円を超える場合の控除額は195万円が上限です。

独立している個人事業主が法人化すると、事業所得が給与所得に変わり、新たに控除が生まれます。しかし会社員は本業ですでに使っていますので、上限に達していれば増えません。

三つめが、社会保険です。前の節で見たとおり、すでに加入している状態に重ねて適用されるため、負担と手続きが増える形になります。

この三つは、いずれも「土台がすでにある」ことから生じています。制度が会社員を不利に扱っているわけではなく、二重に使えないというだけのことです。

したがって、会社設立の解説を読むときは、それが土台のない人を前提としているかどうかを確かめてください。独立や起業を想定した説明は、そのままは当てはまりません。

サラリーマンとして会社設立を検討する場合、本業の源泉徴収票を手元に置いて読むことをおすすめします。数字を確認しながら読めば、当てはまるかどうかが判断できます。

土台がある場合とない場合で会社設立の効き方がどう違うかを比べた図
右側の三行が、会社員が読み替えるべきところです。

会社員にとって節税の効果が小さく見えるのは、この土台があるためです。

出典No.1410 給与所得控除 (国税庁/2026年8月22日確認)

別人格であることの負担

別人格であることの負担を表したイラスト

別人格であることは、負担の側にも働きます。ここも根っこから説明できます。

法人という人格が存在する以上、その人格について独立して申告し、納税する義務が生じます。利益がゼロでも、赤字でも、決算を組んで申告することになります。

法人住民税の均等割が赤字でもかかるのも、この考え方によります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。

法人がそこに存在していること自体に対する負担という位置づけです。所得の有無とは切り離されています。

また、法人をたたむには解散と清算の手続きが必要です。人格を消滅させる手続きですから、債権者への配慮も含めて所定の段階を踏むことになります。

個人事業であれば、廃業届を出せば終わります。法人にはそれができません。別人格を生み出した以上、消すにも手続きが要るということです。

さらに、登記事項が公開されるのも別人格であることの帰結です。取引の相手が誰と契約しているのかを確認できるようにするための制度設計です。

会社設立を考えるとき、こうした負担も別人格であることのセットだと理解しておいてください。良い面だけを取り出すことはできません。

サラリーマンとして本業を持ちながら、この負担を担い続けられるか。それが実質的な判断になります。

節税の効果と、これらの負担を並べて判断してください。

会社設立をするということは、この負担を引き受けるということでもあります。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)

根っこから応用する

根っこから応用するを表したイラスト

最後に、この構造をどう応用するかを示します。

会社設立に関する説明を読んだとき、次の三つの問いを当ててみてください。

  1. それは別人格であることから導かれるか:法人と個人が別だからこそ成り立つ話かを確かめます
  2. それは自分にも当てはまるか:土台がすでにある会社員でも同じか、独立を前提とした話かを見ます
  3. 負担の側は書かれているか:申告義務や均等割など、セットで生じるものに触れているかを確認します

たとえば「法人にすれば経費で落とせる」という説明であれば、一つめの問いで検証できます。法人が支払う相手が誰なのか、その支払いが事業に必要なのかを考えれば、認められる範囲が見えてきます。

「法人化すれば給与所得控除が使える」という説明であれば、二つめの問いです。本業ですでに使っているなら、当てはまりません。

「法人にすれば社会保険に加入できる」という説明も、二つめです。すでに加入している会社員には利点になりません。

根っこを理解していれば、個別の手法を覚えなくても判断できます。そして、当てはまらない説明を見分けられます。

会社設立を検討するサラリーマンにとって、この判断力は実用的です。情報が多いなかで、自分に関係するものだけを拾えるようになります。

そのうえで、具体的な数字の計算は税理士に依頼してください。構造の理解と、個別の試算は別のものです。

節税の説明を読むときは、この三つの問いを当ててみてください。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

会社設立が節税につながる理由について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 根っこにあるのは、法人が法律上の別人格であるという一点です
  2. 導出1:課税の体系が分かれ、税率の考え方が違います(累進と区分)
  3. 導出2:自分自身への支払いが成立します(報酬・退職金・日当・社宅)
  4. 導出3:所得が二段階で扱われます。どの段階で負担するかを設計できます
  5. 導出4:法人は社会保険の適用事業所になります
  6. 会社員に効きにくいのは、税率・控除・社会保険の土台がすでにあるためです

会社設立による節税は、「税金がかからなくなる」ことではありません。どの段階で、どの税率で負担するかを設計できるようになるということです。

そして、別人格であることは負担の側にも働きます。申告義務、赤字でもかかる均等割、たたむときの手続き。いずれも別人格だからこそ生じます。

根っこを理解しておけば、個別の説明が自分に当てはまるかを判断できます。そのうえで、具体的な計算は税理士にご相談ください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・総務省・日本年金機構・法務局のページで確認したものです。制度は改正されます。実際の判断にあたっては、リンクした各ページで最新の内容をご確認いただき、個別の税額計算や節税の可否については税理士にご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説です。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

根っこが分かれば、応用が効きます

法人は別人格である。この一点から、経費の範囲も、報酬の扱いも、社会保険の適用も導かれます。個別の手法を覚えるより、この構造を理解するほうが応用が効きます。

そして、別人格であることは負担の側にも働きます。法人としての申告義務、赤字でもかかる均等割、たたむときの手続き。いずれも別人格だからこそ生じるものです。

会社設立を判断するときは、この両面を見てください。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。

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