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会社設立 メリット 節税

会社設立の節税メリットは変動する。前提が変われば結論も変わる

この記事の視点

会社設立の節税メリットを一度試算した方、あるいはすでに法人を運営している会社員の方に向けた記事です。その結論が、いつまで通用するのかを扱います。

節税の試算は、いくつもの前提の上に成り立っています。本業の給与、副業の利益、社会保険の等級、家族の状況、そして制度そのもの。どれか一つが変われば、結論も変わります。

何が変われば見直しが必要かを整理し、その機会をどこに置くべきかを示します。個別の判断は税理士にご相談ください。

試算は前提の上に成り立っている

試算は前提の上に成り立っているを表したイラスト

会社設立の節税メリットを試算するとき、いくつもの前提を置いています。まず、その前提を意識してください。

主なものは次の五つです。

  1. 本業の給与収入と課税所得:適用される税率帯を決めます
  2. 副業の利益:法人に移す所得の額を決めます
  3. 標準報酬月額の等級:社会保険料の増減を決めます
  4. 家族の状況:扶養や配偶者控除の適用を決めます
  5. 制度そのもの:税率、控除額、保険料率など

このうち、上の四つはご自身の状況です。五つめは外部の要因です。いずれも時間とともに変わります。

たとえば本業で昇給があれば、課税所得の税率帯が上がるかもしれません。そうすると、副業の所得を法人に移す効果が大きくなります。

逆に、副業の利益が減れば、固定費を上回らなくなることもあります。会社設立をしたときには見合っていたものが、数年後には見合わなくなるということです。

一度出した結論が、いつまでも通用するわけではありません。この点を意識しておくと、定期的な見直しの必要性が理解できます。

サラリーマンの場合、本業の状況が毎年のように変わります。昇給、異動、転職。そのつど前提が動きます。

会社設立を検討している段階の方も、いつ試算したかを記録しておいてください。時間が経てば、やり直す必要が出てきます。

サラリーマンとして働いていれば、これらの前提は自然に動いていきます。意識していなくても変わるものだと考えてください。

試算をした日付を、資料と一緒に残しておいてください。数年後に見返したとき、どの時点の前提で計算したものかが分かります。制度改正があった場合も、いつの内容に基づいているかが判断できます。会社設立の判断は一度きりのものではありませんので、記録として残す意味があります。

出典No.2260 所得税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

変動要因その一:本業の給与

変動要因その一:本業の給与を表したイラスト

最初の変動要因が、本業の給与です。会社員にとって、これが最も動きやすい前提かもしれません。

昇給によって課税所得が増えれば、適用される税率帯が上がることがあります。そうすると、副業の所得に乗る税率も上がり、法人に移す効果が大きくなります。

会社設立の節税メリットは、本業の給与が高いほど大きくなるという関係にあります。したがって、昇給は会社設立の判断を後押しする方向に働きます。

一方で、給与所得控除の上限にも影響します。国税庁のページで確認すると、給与等の収入金額が850万円を超える場合の控除額は195万円が上限です。

昇給によってこの水準を超えると、それまで数えていた給与所得控除の増加分が、以後は数えられなくなります。役員報酬を受け取っても控除が増えないためです。

つまり、昇給は一つの経路では有利に、別の経路では不利に働きます。合計でどうなるかは、計算してみなければ分かりません。

また、標準報酬月額の等級も昇給によって変わります。上限に達していなかった方が達すれば、以後は役員報酬を受け取っても保険料が増えなくなります。

サラリーマンとして毎年の昇給がある方は、その都度これらを確認することになります。源泉徴収票と給与明細を並べれば判定できます。

転職の場合はさらに大きく動きます。給与水準も、健康保険の種類も、就業規則も変わる可能性があります。

本業の昇給が会社設立の節税メリットに与える影響を整理した図
同じ昇給が、経路によって逆方向に働きます。

転職を検討している場合は、その影響も見込んでおいてください。給与水準だけでなく、健康保険が協会けんぽか組合健保かによって手続きが変わりますし、就業規則の副業や役員兼務に関する規定も変わります。会社設立をしたあとの転職では、二以上事業所勤務届をあらためて提出することになります。

出典No.1410 給与所得控除 (国税庁/2026年8月22日確認)

変動要因その二:副業の利益

変動要因その二:副業の利益を表したイラスト

二つめが、副業の利益です。

会社設立の判断は、節税額が固定費を上回るかどうかで決まります。副業の利益が変われば、節税額も変わります。

利益が増えれば、法人に移せる所得が増え、税率差による効果も大きくなります。逆に減れば、効果が小さくなり、固定費に埋もれることもあります。

法人住民税の均等割は、利益がゼロでも赤字でもかかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。

副業の利益が落ち込んだ年でも、この均等割と税理士費用は変わりません。会社設立をしたときには見合っていたものが、見合わなくなるということが起こります。

サラリーマンの副業は、本業の忙しさに左右されることがあります。異動や昇進によって時間が取れなくなれば、利益も減ります。

利益の変動が大きい事業であれば、その幅も見込んで判断してください。好調な年だけを基準にすると、平均的な年には見合わないという結果になります。

複数年の実績があれば、その平均で考えるほうが実態に近くなります。会社設立を検討する段階では、少なくとも二年分の数字を並べてみてください。

そして、すでに法人を運営している場合は、毎年の決算で利益を確認することになります。数年続けて固定費を下回るようであれば、たたむことも選択肢に入ります。

会社設立をしたあとに副業の利益が落ち込むと、固定費だけが残ります。年に一度は確認してください。

利益の変動が大きい年が続くと、判断が難しくなります。三年分の平均で見る、あるいは最も低かった年を基準にするといった方法で、保守的に評価してください。好調な年だけを見て会社設立をすると、平年には見合わないという結果になりがちです。

出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

変動要因その三:社会保険の等級

変動要因その三:社会保険の等級を表したイラスト

三つめが、社会保険の標準報酬月額の等級です。

日本年金機構の案内によれば、二以上事業所勤務の場合は両方の報酬を合算した月額により標準報酬月額を決定し、それぞれの報酬に基づいて按分するとされています。

合算した額で等級が決まるため、本業の給与が上がれば等級も上がります。役員報酬を変えなくても、本業の変化で保険料が動くということです。

そして、標準報酬月額には上限があります。上限に達していない段階では、役員報酬を受け取ることで等級が上がり保険料が増えますが、達したあとは増えません。

したがって、上限に達する前と後では、会社設立の判断が変わります。達する前は保険料の増加を差し引く必要がありますが、達したあとはその必要がなくなります。

本業の昇給によって上限に達した場合、それまで不利だった条件が有利に変わることになります。この変化に気づかずにいると、より大きな節税の余地を見逃すことになります。

また、保険料率そのものも改定されることがあります。率が変われば、同じ等級でも保険料の額が変わります。

サラリーマンとして毎年の給与明細を確認する習慣があれば、等級の変化には気づけます。社会保険料の控除額が変わったら、等級が動いた可能性があります。

年に一度は、保険料額表と照らし合わせて確認してください。

等級の確認は、給与明細を数枚並べるだけでできます。社会保険料の控除額が前年と変わっていれば、等級が動いた可能性があります。年に一度、決まった時期に確認する習慣をつけておくと見落としがありません。

出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)

変動要因その四:家族の状況

変動要因その四:家族の状況を表したイラスト

四つめが、家族の状況です。

扶養している家族の人数が変われば、所得控除の額が変わります。配偶者が働き始めれば、配偶者控除の適用が変わることもあります。

これらは個人側の課税所得に影響しますので、副業の所得に乗る税率帯も変わり得ます。

また、家族を法人の役員にして報酬を支払っている場合、その家族の状況が変われば影響が及びます。配偶者が別の勤務先で社会保険に加入すれば、扶養の関係も変わります。

所得分散による節税を行っている場合、扶養から外れることの影響を毎年確認する必要があります。税額が減っても、社会保険料の増加や家族手当の停止で世帯の手取りが減ることがあります。

お子さんの就学や独立によっても、扶養の状況は変わります。控除の適用が変われば、課税所得も変わります。

これらは会社設立の節税メリットに直接影響する要因ではありませんが、個人側の税負担を通じて間接的に効いてきます。

サラリーマンの場合、年末調整の際に扶養の状況を申告します。その内容が変わった年は、会社設立の判断も見直す機会だと考えてください。

判断に迷う部分は、家族の状況を伝えたうえで税理士にご相談ください。

家族の状況が変わる年は、年末調整の申告内容も変わります。その内容を控えておけば、翌年の試算に使えます。扶養の人数や配偶者の所得は、個人側の課税所得に直接影響します。

出典No.1400 給与所得 (国税庁/2026年8月22日確認)

変動要因その五:制度改正

変動要因その五:制度改正を表したイラスト

五つめが、制度そのものの改正です。これはご自身の状況とは無関係に起こります。

所得税の税率、給与所得控除の額、法人税の税率、社会保険の保険料率。いずれも改正されることがあります。

たとえば、日本公証人連合会の案内によれば、株式会社の定款認証手数料について2026年12月1日からの改定が示されています。一定の要件を満たす場合に1万5,000円に引き下げられるというものです。

また、中小企業基盤整備機構の案内によれば、経営セーフティ共済について令和6年10月1日以降に解約し再度契約した場合、解約の日から2年を経過する日までの掛金は損金・必要経費に算入できないとされています。

制度が変われば、それまで有効だった手法が使えなくなることがあります。古い情報をそのまま使い続けると、誤った処理をすることになります。

したがって、税や社会保険に関する情報を読むときは、いつ時点の内容かを確認してください。当サイトの記事にも確認した日付を記載しています。

そして、実際に判断するときは、その時点で一次情報を確認し直すことになります。数年前に読んだ内容が、いまも同じとは限りません。

サラリーマンとして本業を持ちながら制度改正を追い続けるのは負担が大きい部分です。税理士に継続して見てもらう体制があれば、この点も任せられます。

会社設立の際に依頼先を決めるとき、そこまで含めて相談できるかを確認しておいてください。

会社設立の判断に使った情報が古くなっていないか、動く前にもう一度確かめてください。

制度改正の情報は、税理士から知らされることもありますが、依頼の範囲によっては届かないこともあります。契約の内容を確認しておいてください。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

見直しの機会をどこに置くか

見直しの機会をどこに置くかを表したイラスト

では、見直しの機会をどこに置くか。事業年度の切り替え時が自然です。

役員報酬は、事業年度の開始から一定期間内に決めることになります。国税庁が示すところによれば、損金に算入できる役員給与は定期同額給与などに該当するものです。期中に自由に変えられません。

したがって、年度が切り替わるときが、報酬額を見直せる唯一の機会になります。このタイミングで、前提が変わっていないかを確認してください。

事業年度の切り替え時に確認する項目のチェックリスト
六つとも確認してから、その年度の役員報酬を決めてください。

この確認を毎年行えば、前提のずれが小さいうちに気づけます。数年放置すると、実態と大きく離れることがあります。

そして、確認した結果、会社設立を続ける意味が薄れていると分かることもあります。その場合は、たたむことも選択肢に入ります。

会社設立から数年が経つと、惰性で続けてしまうことがあります。年に一度、支払っている固定費に見合う効果が出ているかを確認してください。

サラリーマンとして本業を持ちながら、この見直しを自分で行うのは負担が大きい部分です。税理士に継続して見てもらう体制があると楽になります。

見直しの結果、報酬額を変えることになれば、社会保険の手続きも必要になる場合があります。年度の切り替え時にまとめて処理できるよう、段取りを組んでおいてください。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

会社設立の節税メリットの変動について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 本業の給与:昇給で税率帯が上がれば効果が大きくなり、給与所得控除の上限に達すれば一部の経路が使えなくなります
  2. 副業の利益:増減で節税額が変わります。均等割は利益がゼロでもかかります
  3. 社会保険の等級:上限に達する前と後で判断が変わります。本業の昇給でも動きます
  4. 家族の状況:扶養と配偶者の勤務状況が控除と保険に影響します
  5. 制度改正:税率・控除額・保険料率は変わります。確認した日付を意識してください
  6. 見直しは事業年度の切り替え時に。役員報酬を決めるタイミングと重なります

会社設立の節税メリットは、動く数字です。一度出した結論を何年も使い回すと、実態から離れていきます。

サラリーマンとして本業がある以上、昇給や異動によって前提が変わります。年に一度、数字を並べ直す習慣をつけてください。

そして、確認した結果、続ける意味が薄れていると分かることもあります。それも有益な結論です。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・総務省・日本年金機構・日本公証人連合会・中小企業基盤整備機構のページで確認したものです。制度は改正されます。実際の判断にあたっては、その時点でリンクした各ページの最新の内容をご確認いただき、個別の判断は税理士にご相談ください。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

年に一度は見直してください

会社設立の節税メリットは、動く数字です。一度出した結論を何年も使い回すと、実態から離れていきます。

見直しの機会は、事業年度の切り替え時に置くのが自然です。役員報酬もそのタイミングで決めることになりますので、あわせて検討できます。

サラリーマンとして本業がある以上、昇給や異動によって前提が変わります。年に一度、数字を並べ直す習慣をつけてください。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。

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