サラリーマンが会社設立をするまでの手順。勤めながら進めるときの順番と落とし穴
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本業の勤務を続けながら会社設立を進めようとしている方に向けた記事です。手続きそのものより、会社員であるがゆえに順番を間違えやすいところを中心に書いています。
会社設立の手続きを紹介する記事は数多くありますが、その多くは独立して事業を始める人を想定しています。サラリーマンの場合は、就業規則の確認、本業の社会保険との関係、平日の日中に動けないという制約が加わります。ここを踏まえた順番でまとめました。
節税を目的に会社設立を考えている場合も、手続きの順番を誤ると想定した効果が得られないことがあります。当サイトは一般的な解説であり、個別の判断は税理士などの専門家にご相談ください。
手続きより先に、就業規則を読む

サラリーマンが会社設立を考えるとき、最初にやることは登記の準備ではありません。勤め先の就業規則を読むことです。
会社設立そのものを禁じる規定は多くありませんが、営利企業の役員に就任することを制限しているケースは珍しくありません。代表社員や代表取締役になるということは、まさに役員に就任するということですから、ここに引っかかる可能性があります。
- 副業・兼業に関する規定(許可制か、届出制か、禁止か)
- 役員兼務に関する規定(他社の役員になることの可否)
- 競業避止に関する規定(本業と同じ分野での事業の制限)
- 秘密保持に関する規定(本業で得た情報の取り扱い)
厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを示しており、企業に対して認める方向での対応を促しています。ただし、これはすべての企業が無条件に認めるという意味ではありません。届出を要件とする、競業にあたる場合は認めない、といった条件が付いているのが実情です。
就業規則を確認した結果、届出が必要だと分かった場合は、会社設立の前に出しておくほうが安全です。設立してから事後報告という形にすると、規定に反する扱いになることがあります。
出典副業・兼業と労働条件 (厚生労働省/2026年8月21日確認)
会社の形を決める。サラリーマンなら合同会社も選択肢

就業規則の確認が済んだら、会社の形を決めます。サラリーマンが一人で会社設立をする場合、現実的な選択肢は株式会社か合同会社のどちらかです。
合同会社は出資者が一人でも設立でき、定款の認証が不要です。そのぶん設立費用が抑えられ、手続きも短くなります。株式会社は定款の認証が必要で、登録免許税も高くなりますが、対外的な信用という点で選ばれることがあります。

会社設立の形態選びで節税額が大きく変わると説明されることがありますが、法人税の税率は形態ではなく所得の規模などで決まります。合同会社を選ぶ理由は、設立費用と運営の手間が軽いという点に求めるほうが実態に合っています。
そのうえで、決めるべき基本事項があります。商号、本店の所在地、事業目的、資本金の額、事業年度です。とくに事業年度は、サラリーマンにとって重要な意味を持ちます。次の節で触れます。
形態を選ぶ段階で、節税の観点から確認しておきたいことがあります。合同会社は設立費用が軽いぶん、初年度に出ていく現金が少なくて済みます。節税の効果が出るまでには時間がかかりますから、最初の持ち出しを抑えられるという点は、会社員にとって無視できない利点です。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月21日確認)
事業年度を、本業の繁忙期からずらす

会社設立のときに決める事項のうち、サラリーマンがとくに考えておきたいのが事業年度です。法人の事業年度は自由に決められます。個人事業主のように1月から12月と決まっているわけではありません。
決算を迎えると、帳簿を締めて決算書をつくり、法人税の申告をすることになります。申告期限は原則として事業年度の終わりから2か月以内です。この期間に本業の繁忙期が重なると、両方が同時に来ることになります。

あわせて、設立日をいつにするかも決めます。登記を申請した日が会社の成立日になりますので、申請日を選ぶことで設立日を調整できます。均等割は月割りで計算される部分がありますので、設立の時期によって初年度の負担が変わることがあります。
事業年度の設計は、節税とも関係します。決算の直前に慌てて支出を増やすような処理は、実態が伴わなければ否認の対象になります。落ち着いて決算を迎えられる時期に設定しておくことが、結果として無理のない節税につながります。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)
定款をつくり、登記を申請する

基本事項が決まったら、定款を作成します。定款には、商号、事業目的、本店の所在地、出資の額、社員や役員に関する事項などを記載します。
株式会社の場合は、作成した定款について公証人の認証を受ける必要があります。この認証には手数料がかかります。日本公証人連合会の案内によれば、資本金の額が100万円未満の場合は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、それ以外は5万円です。合同会社の場合、この認証は不要です。
紙の定款には収入印紙が必要ですが、電子定款にすればこれが不要になります。サラリーマンが自分で会社設立をする場合、電子定款に対応した手続きを選ぶかどうかで費用が変わります。
定款が整ったら、資本金を払い込み、登記申請書と添付書類を揃えて法務局に申請します。法務局は商業・法人登記の申請手続について様式と記載例を公開していますので、自分で進める場合はこれを参照することになります。

出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月21日確認)
設立後の届出。ここを忘れると後が面倒になる

登記が完了しても、会社設立の手続きは終わりではありません。税務署、都道府県、市区町村、そして年金事務所への届出が残っています。
国税庁は新設法人が提出する届出書類を案内しています。法人設立届出書のほか、給与支払事務所等の開設届出書、青色申告の承認申請書などがあります。青色申告の承認申請には期限があり、これを過ぎるとその事業年度は青色申告ができません。欠損金の繰越しなどに影響しますので、設立後すぐに確認してください。
| 提出先 | 主な書類 | 注意点 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書 | 青色申告の承認申請は期限があります |
| 都道府県・市区町村 | 法人設立届出書 | 様式と期限は自治体ごとに異なります |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 法人は原則として適用事業所になります |
| 年金事務所 | 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届 | 本業と重なる場合に必要です |
※ 提出書類と期限は状況によって異なります。詳細は各提出先の案内でご確認ください。
サラリーマンにとってとくに重要なのが、いちばん下の二以上事業所勤務届です。本業ですでに社会保険に加入している方が、設立した法人から役員報酬を受け取る場合、二つの事業所で同時に被保険者となるため、この届出が必要になります。次の節で詳しく見ます。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)
社会保険。本業との重なりをどう扱うか

法人は、役員が一人だけであっても社会保険の適用事業所になります。そして、その法人から役員報酬を受け取ると、法人でも被保険者になります。
本業で厚生年金と健康保険に加入しているサラリーマンがこの状態になると、二つの事業所で同時に被保険者となります。この場合、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出し、主たる事業所を選ぶことになります。
保険料は、両方の報酬を合算した標準報酬月額をもとに決まり、それぞれの報酬額に応じて按分されます。つまり、役員報酬を取ると、本業側の保険料にも影響が及びます。
役員報酬を取らないという選択もあります。その場合、法人側で被保険者にはなりませんので、この届出は不要です。ただし法人に残った利益を個人が受け取る手段は限られますし、節税の効果も変わってきます。どちらを選ぶかは、事前に税理士と相談して決めておくのがよい部分です。
役員報酬の額をどう置くかで、社会保険料と所得税の合計が変わります。ここは会社設立による節税の成否を左右する部分です。報酬を高くすれば法人の損金は増えますが、個人側の税と保険料が増えます。低くすれば法人に利益が残り、法人税がかかります。どこかに最適な点があるとしても、それは人によって違います。
出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月21日確認)
会社員が自分で進める場合の現実的な段取り

サラリーマンが会社設立を自分で進める場合、最大の制約は平日の日中に動けないことです。法務局、公証役場、年金事務所、いずれも平日に開いています。
この制約を前提に段取りを組むと、次のような進め方になります。
- 印鑑証明書など、市区町村で取得するものは休日窓口やコンビニ交付を使う
- 定款は電子定款にして、公証役場に出向く回数を減らす(株式会社の場合)
- 登記はオンライン申請を検討する(法務省が案内しています)
- 税務署への届出は電子申告を利用する
- 年金事務所の手続きは電子申請を検討する
すべてをオンラインで完結できるとは限りませんが、出向く回数を減らせるかどうかで負担がかなり変わります。会社設立の準備を始める前に、どの手続きがオンラインに対応しているかを調べておいてください。
なお、専門家に依頼するという選択肢もあります。司法書士に登記を、税理士に設立後の届出と決算を依頼する形です。費用はかかりますが、本業を持ちながらの手続きとしては現実的な方法です。節税の設計まで含めて相談できるという利点もあります。
出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月21日確認)
会社設立をしたあとに続くこと

会社設立は、手続きが終われば完了というものではありません。法人がある限り、毎年やることが続きます。
- 帳簿をつけ、決算を組み、法人税の申告をする(事業年度ごと)
- 法人住民税・法人事業税を自治体に申告する
- 役員報酬を払っている場合は源泉徴収と納付を行う
- 社会保険の算定基礎届などの手続きを行う
- 本業の年末調整とは別に、自分の確定申告をする
最後の項目は、会社員が見落としやすいところです。本業では年末調整で完結していた方も、法人から役員報酬を受け取ると、年末調整と確定申告の両方が必要になります。二か所から給与を受け取っている状態になるためです。
これらを本業のかたわらで続けられるかどうかが、会社設立を判断するうえでの現実的な論点になります。節税額が維持コストを上回っていても、手間が続かなければ意味がありません。
節税を目的に会社設立をしたのに、決算の手間や社会保険の事務に追われて本業に支障が出た、という形は避けたいところです。毎年の運用にどれだけ時間を割けるかを、設立前に見積もっておいてください。税理士に依頼すればその分の費用がかかりますが、節税額から差し引いてもなお残るかどうかで判断することになります。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)
まとめ

サラリーマンが会社設立をするまでの手順を、この記事では次の順番で整理しました。
- 就業規則を読み、会社設立と役員就任が可能かを確認する
- 会社の形(株式会社か合同会社か)と基本事項を決める
- 事業年度を、本業の繁忙期と重ならないように設計する
- 定款をつくり、登記を申請する
- 税務署・自治体・年金事務所へ届け出る
- 本業との社会保険の重なりを整理する
会社設立の手続きは、節税という目的に対する手段のひとつにすぎません。手続きを終えることが目的になってしまうと、設立後の設計がおろそかになります。サラリーマンの節税で結果が変わるのは、むしろ設立後の役員報酬と社会保険の扱いです。
この順番のうち、入れ替えてはいけないのは1番です。就業規則の確認を後回しにして手続きを進めてしまうと、あとから戻せません。
そして、会社設立が終わったあとに続く運用のほうが、期間としてはずっと長くなります。節税を目的に法人を持つのであれば、その運用を続けられる体制を先に考えておいてください。役員報酬と社会保険の設計は、会社員の場合とくに難しい部分ですので、専門家に相談しながら決めることをおすすめします。
出典No.1400 給与所得 (国税庁/2026年8月21日確認)
急がず、順番どおりに
会社設立の手続き自体は、書類を揃えて法務局に出せば終わります。難しいのは手続きではなく、その前後にある確認と設計です。就業規則を読み、社会保険の扱いを確かめ、役員報酬をどうするかを決める。ここに時間をかけてください。
サラリーマンとして働きながらの手続きは、平日の日中に動けないという制約があります。オンラインで済ませられる部分を把握しておくと、負担がかなり違います。
会社設立をしたあとは、毎年の決算と申告が続きます。節税のために法人を持つのであれば、その運用まで含めて続けられるかを見極めてから動いてください。判断に迷う部分は、税理士に相談しながら進めるのが確実です。
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