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会社設立 不動産投資

不動産投資を法人で持つ。会社設立が数字で見合う条件を確かめる

この記事で計算すること

不動産投資をしている会社員に向けて、会社設立が数字で見合う条件を整理する記事です。目安の数字ではなく、計算の手順を示します。

賃料収入は個人では総合課税で、本業の給与と合算されます。給与が高いほど、賃料に高い税率が乗る。ここに法人化の余地が生まれます。

ただし、個人にしかない仕組みもあります。両方を並べて計算します。個別の判断は税理士にご相談ください。

賃料が給与と合算される仕組み

賃料が給与と合算される仕組みを表したイラスト

不動産投資で会社設立が語られる理由から確認します。

国税庁が示すところによれば、不動産の貸付けによる所得は不動産所得とされ、他の所得と合算して総合課税されます。

会社員であれば、本業の給与所得と合算されます。給与だけで一定の税率帯にいる方が賃料収入を得ると、その賃料には給与の上に積み上がった税率が適用されます。

たとえば、給与だけで所得税の税率が20%の帯にいる方が賃料収入を得れば、その部分には20%あるいはそれ以上の税率が乗ります。

これが、上場株式への投資と決定的に違う点です。上場株式の譲渡益は分離課税ですので、給与の影響を受けません。

賃料は違います。給与が高いサラリーマンほど、賃料に対する税負担が重くなるという構造です。

したがって、法人に移して累進課税から外すという発想が出てきます。これが不動産投資の法人化です。

ただし、法人化には固定費と手間がかかります。差し引いて見合うかどうかが判断になります。

給与が低い方には効果が出にくいこの構造から分かるとおり、本業の給与が高いほど効果が出ます。逆に、給与が低い方や賃料収入が小さい方には、法人化の効果が固定費に埋もれます。同じ物件を持っていても、人によって結論が変わります。

サラリーマンが不動産投資を始めると、この合算の仕組みに最初に直面します。給与だけのときには意識しなかった税率帯が、賃料にそのまま乗ってくるためです。

会社設立を扱う記事の多くが不動産投資を例に挙げるのは、この総合課税の構造があるためです。事業を営む法人とは動機が違いますが、手続きそのものは同じ会社設立です。

出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

税率差から節税額を出す

税率差から節税額を出すを表したイラスト

節税額の計算に入ります。手順は三段階です。

一段階目が、現在の税率帯の確認です。給与所得と不動産所得を合算した課税所得がどの区分にあるかを見ます。国税庁の速算表で確認できます。

二段階目が、法人に移した場合の負担の計算です。法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税を合わせた水準で見ます。

三段階目が、差額の算出です。個人での負担から法人での負担を引いた金額が、粗い意味での節税額になります。

本業の給与水準と、賃料収入に対する法人化の効きやすさ
本業の給与収入 賃料に乗る税率帯の例 法人化の効きやすさ
500万円前後 所得税20%程度 差が小さく、固定費に埋もれやすい
800万円前後 所得税23%程度 検討の入口に入ります
1100万円以上 所得税33%程度 差が開き、効きやすくなります
1800万円以上 所得税40%程度 差が大きくなります

※ 概算です。実際の税率は各種控除を引いたあとの課税所得で決まります。個別の判定は税理士にご確認ください。

この表が示すのは、同じ賃料でも人によって節税額が違うということです。

記事や書籍で「賃料収入がいくらから法人化」という数字を見かけますが、本業の給与を前提としない目安は、会社員には当てはまりません。

サラリーマンが不動産投資の法人化を検討するなら、まず源泉徴収票で本業の課税所得を確認してください。そこから始まります。

会社設立の判断は、この数字を出したあとです。

サラリーマンの方は、給与から差し引かれている所得税の額を見ただけでは税率帯が分かりません。源泉徴収票の課税所得の欄で確認してください。

会社設立をした場合の負担を計算するときは、法人税だけを見ないでください。地方法人税、法人住民税、法人事業税を合わせた水準で比べる必要があります。単体の税率で比べると、差を大きく見積もることになります。

出典No.2260 所得税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

固定費を差し引く

固定費を差し引くを表したイラスト

節税額から固定費を差し引きます。

法人住民税の均等割が毎年かかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。

これに決算と申告の費用が加わり、合計で年30万円前後になることが多くなります。

不動産投資では、空室や修繕で収支が悪化する年があります。その年も、この負担は変わりません。

不動産投資を法人で行う場合の年間固定費の内訳を示した横棒グラフ
空室が出た年も、この負担は同じです。

そして、すでに個人で所有している物件を法人に移す場合は、移転コストが加わります。登録免許税、不動産取得税、そして個人側の譲渡所得への課税です。

これらは一度きりですので、保有する年数で割って年あたりに換算してください。

移転コストが300万円で、年あたりの節税額が固定費を引いて40万円なら、回収に約8年かかる計算になります。

これから取得する物件を法人名義にするのであれば、移転コストは生じません。会社設立を先に済ませるという順番です。

サラリーマンとして本業の収入があると、この固定費を給与から払えてしまいます。そのため、見合っているかの検証が甘くなりがちです。

会社設立の初期費用も、初年度の計算に加えてください。合同会社であれば数万円から十数万円、株式会社であれば定款認証の費用が加わります。初年度は回収できないことが普通です。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

損失が出た年に何が変わるか

損失が出た年に何が変わるかを表したイラスト

不動産投資では、損失が出る年があります。この扱いが個人と法人で違います。

個人の場合、不動産所得の損失は他の所得と損益通算できます。国税庁の案内によれば、不動産所得に損失が生じたときは一定の場合を除き他の所得と通算することができるとされています。

つまり、賃貸で赤字が出れば、本業の給与にかかる税金が減るという効果があります。

ただし、土地等を取得するための借入金の利子に相当する部分など、通算の対象から除かれるものがあります。すべてが通算できるわけではありません。

法人化すると、この効果は失われます。法人の損失は法人の中で処理され、個人の給与とは関係がなくなります。

これは見落とされやすい点です。節税額の計算では利益が出る年だけを見がちですが、損失が出る年の効果も比べる必要があります。

減価償却が大きい時期には、帳簿上の損失が出やすくなります。その時期に個人で持っていれば、給与と通算できるわけです。

したがって、減価償却が大きい初期は個人、それが小さくなってから法人という考え方も成り立ちます。

サラリーマンとして給与所得が大きい方ほど、この通算の効果も大きくなります。両方を並べて比べてください。

サラリーマンにとって、この通算の効果は無視できない大きさになることがあります。節税の計算では必ず両方を比べてください。

会社設立の時期を、減価償却の状況に合わせて考えるという発想もあります。帳簿上の損失が出やすい時期を個人で通過し、そのあとに法人へ移すという順序です。

会社設立の判断を、この一点だけで決めるのは避けてください。

出典No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算 (国税庁/2026年8月22日確認)

売却するときの税率差

売却するときの税率差を表したイラスト

出口についても、個人と法人で扱いが違います。

個人が不動産を売却した場合、譲渡所得は分離課税です。そして、保有期間によって税率が変わります。

国税庁が示すところによれば、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得とされ、5年以下の場合は短期譲渡所得とされます。長期のほうが税率が低く設定されています。

法人には、この区分がありません。売却益は他の益金と合算され、法人税が課されます。保有期間による軽減はありません。

不動産を売却する際の個人と法人の扱いの違いを比べた図
左の二行目が、個人で保有する場合の利点です。

つまり、売却を予定しているなら、個人のほうが有利になる場合があります。長期譲渡の税率が適用されるためです。

逆に、保有し続けて賃料を得るのであれば、法人が有利になりやすいという整理になります。

会社設立を検討する際は、保有し続けるのか、いずれ売却するのかを先に決めてください。ここで判断が分かれます。

なお、法人内に繰越欠損金があれば売却益と相殺できますので、状況によって結論が変わります。税理士に確認してください。

節税の効果は保有している期間に生じ、売却の時点でその一部が戻る形になることもあります。サラリーマンの方は、出口まで含めて計算してください。

会社設立をして法人で取得した物件は、はじめから法人の資産です。個人から移す手間も費用も生じませんので、出口の計算もそこから始まります。

出典No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 (国税庁/2026年8月22日確認)

会社員に特有の確認事項

会社員に特有の確認事項を表したイラスト

会社員が不動産投資で会社設立をする場合の確認事項です。

一つめが就業規則です。不動産の賃貸そのものは副業に該当しないと扱われることが多いのですが、法人の代表者になることは別の論点です。役員兼務の可否を確認してください。

公務員の方は、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業が原則として禁止されています。不動産の賃貸についても一定の規模を超える場合には承認が必要とされることがあります。

二つめが社会保険です。法人は役員一人でも適用事業所になります。役員報酬を受け取れば被保険者になります。

日本年金機構の案内によれば、被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったときは届出が必要とされ、保険料は各事業所の報酬月額を合算して決定した標準報酬月額にもとづき按分されます。

役員報酬をゼロにすれば、この手続きは生じません。ただし、法人に利益が残ったままになります。

三つめが融資への影響です。個人と法人では、金融機関の審査の考え方が異なります。すでに借入れがある物件を法人に移す場合は、金融機関の承諾が必要になることがあります。

借入金のある物件を勝手に移すことはできません。会社設立の前に、金融機関に相談してください。

なお、当サイトでは勤務先に知られない方法は扱いません。就業規則を確認し、必要なら勤務先に相談してください。

サラリーマンが不動産投資を法人で行う場合、融資の条件が変わる可能性があります。節税だけを見て動かないでください。

会社設立をして代表者になると、登記事項証明書は誰でも取得できる状態になります。これは制度上そうなっているという事実です。

会社設立の前に金融機関へ相談すれば、条件の見通しが立ちます。

出典2-4:被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったとき (日本年金機構/2026年8月22日確認)

判断の手順

判断の手順を表したイラスト

ここまでの内容を、判断の手順としてまとめます。

不動産投資の法人化を検討する七つの手順を示したチェックリスト
二つめが出発点です。目安の数字から入らないでください。

二つめの課税所得が、すべての計算の起点になります。源泉徴収票を手元に置いて確認してください。

四つめと五つめが、見落とされやすい項目です。利益が出る年だけを見ると、判断を誤ります。

そして、七つめで残った金額がプラスなら、法人化に数字の根拠があることになります。

判断がつかないなら、いまは会社設立をしないという選択も合理的です。物件が増えてから改めて検討しても間に合います。

サラリーマンとして本業を続けながら判断する以上、この順序を守ってください。節税額の計算は、立場の確認のあとです。

会社設立の手続きそのものは、書類が揃えば数週間で終わります。急いで決める理由はありませんので、計算を先に済ませてください。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

不動産投資と会社設立について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 賃料は個人では総合課税で、本業の給与と合算されます。ここに法人化の余地が生まれます
  2. 節税額は本業の給与水準によって変わります。目安の数字は会社員にはそのまま当てはまりません
  3. 固定費は年30万円前後。空室や修繕で収支が悪化した年も変わりません
  4. 個人では不動産所得の損失を給与と通算できる場合があります。法人化するとこの効果を失います
  5. 売却時は、個人なら保有期間5年超で長期譲渡の税率。法人にはこの区分がありません
  6. 借入金のある物件を法人に移すには、金融機関の承諾が必要になることがあります

不動産投資の法人化は、本業の給与水準によって結論が変わります。同じ賃料収入でも、給与が違えば節税額が違います。

そして、利益が出る年だけでなく、損失が出る年と売却する年の扱いも並べて比べてください。

サラリーマンとして本業がある方は、まず源泉徴収票で課税所得を確認してください。計算はそこから始まります。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・総務省・日本年金機構のページで確認したものです。制度は改正されます。不動産の譲渡や損益通算には除外される項目や特例が数多くあり、この記事で扱えていない部分があります。実際の判断にあたっては必ず税理士にご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、個別の税務相談ではありません。

会社設立をしないという判断も、常に選択肢に入れておいてください。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

ご自身の数字で計算してください

不動産投資の法人化は、本業の給与水準によって結論が変わります。同じ賃料収入でも、給与が違えば節税額が違います。

そして、損失が出る年の扱いも変わります。個人では給与と通算できる場面がありますが、法人ではその効果がありません。

目安の数字ではなく、ご自身の給与と賃料で計算してください。判断に迷う部分は、収支の内訳を持って税理士にご相談ください。

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