管理料はいくらが適正か。会社設立して不動産管理を任せる場合の水準
この記事が扱う問い
会社設立をして不動産管理会社を持つ場合、管理料をいくらに設定するかという問いを扱います。前の記事で三つの方式を扱いましたので、その具体的な水準の話です。
一般に、管理委託方式では賃料収入の数%程度、サブリース方式では10〜15%程度といった目安が語られます。ただし、これは業務の実態を前提とした水準です。
率だけを見て決めると、実態と合わなくなります。何をもってその水準が正当化されるのかを整理します。個別の判断は税理士にご相談ください。
一般に語られる水準

まず、一般に語られる管理料の水準を確認します。
管理委託方式では、賃料収入の数%程度が目安とされることが多いようです。多くても10%程度までという説明を見かけます。
サブリース方式(転貸方式)では、10〜15%程度が目安とされます。法人が空室のリスクを負う分、管理委託方式より高い水準が認められやすいという整理です。
この差は、法人が担う役割の違いから来ています。管理業務だけを行う場合と、リスクを負って転貸する場合とでは、対価の性質が違うためです。
ただし、これらはあくまで一般に語られる目安であり、法令で定められた基準ではありません。個別の事情によって、適正とされる水準は変わります。
また、外部の管理会社に支払う管理料の相場が参考にされることもあります。同じような業務を外部に委託した場合にいくらかかるか、という比較です。
会社設立をして不動産管理会社を持つ場合、この水準を上限として意識しておくことになります。大きく超える設定は、指摘を受けやすくなります。
サラリーマンが本業のかたわらで運営する場合、そもそも担える業務が限られますので、目安の下限に近い水準になることが多いはずです。
サラリーマンが不動産管理会社を持つ場合、この目安をそのまま当てはめられるとは限りません。
管理料の水準は、節税の効果を直接左右します。移せる金額そのものだからです。
会社設立をして不動産管理会社を持つ場合、この水準の設定が最初の実務的な判断になります。会社設立の手続きそのものより、こちらのほうが難しい部分です。
出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)
水準を正当化するのは業務の実態です

管理料の水準を正当化するのは、法人が実際に行っている業務です。
国税庁は役員給与について、不相当に高額な部分は損金にならないとしています。職務の内容、法人の収益の状況、同業他社の状況などが考慮されるという考え方です。管理料についても、同様の観点が働きます。
したがって、法人がどんな業務を行っているかを説明できる必要があります。
管理業務として想定されるものを挙げます。
- 入居者の募集と、契約の手続き
- 家賃の集金と入金の確認、滞納への対応
- 入居者からの問い合わせやクレームへの対応
- 建物の点検、清掃、修繕の手配
- 退去時の立会いと原状回復の手配
- 収支の記録と報告
これらのうち、法人が実際に行っているものはどれか。すべてを外部の管理会社に委託しているのであれば、自分の法人が担う業務はほとんど残りません。
その状態で高い管理料を設定すれば、実態と合わないことになります。外部に委託している分を差し引いて考えてください。
会社設立をする前に、法人が担う業務を具体的に決めておくことをおすすめします。それが管理料の水準を決める根拠になります。
そして、実際に行った業務の記録を残してください。いつ、どんな対応をしたか。この記録が、管理料の正当性を示す材料になります。
サラリーマンとして本業がある以上、担える業務を正直に見積もることが出発点になります。
節税を目的に水準を高く設定すると、実態との整合が問われます。
会社設立の前に、法人が担う業務を決めておいてください。それが水準の根拠になります。
出典No.5202 役員等に対する経済的利益 (国税庁/2026年8月22日確認)
会社員が担える業務の範囲

会社員が本業のかたわらで管理業務を行う場合、現実的な制約があります。
最も大きいのが時間です。平日の日中は本業に従事していますので、入居者からの問い合わせや業者との連絡に即座に対応することは難しくなります。
賃貸管理の業務には、時間帯を選べないものが含まれます。設備の故障、水漏れ、緊急の連絡。こうした対応を法人として担えるかを考えてください。
担えないのであれば、その部分は外部の管理会社に委託することになります。委託した分は、自分の法人の業務ではありません。
したがって、会社員が運営する不動産管理会社が担える業務は、時間の制約を受けない部分に限られやすくなります。収支の記録、契約書類の管理、修繕の判断、業者との調整など。
これらも実際の業務ですので、対価を受け取ることに問題はありません。ただし、担う業務が限られる分、管理料の水準も限られるということです。
会社設立を検討する段階で、この点を整理しておいてください。「何をするのか」が決まらなければ、「いくらか」も決まりません。
サラリーマンとして本業を持ちながら不動産管理会社を運営するのであれば、担える範囲を正直に見積もることが、結果として安全な設計につながります。
なお、家族が業務を担うという形もあり得ますが、その場合も実態が問われます。実際に業務を行っていることが前提です。

担える業務が限られれば、節税として移せる金額も限られます。
会社設立をしても、担える業務が増えるわけではありません。時間の制約は変わりません。
出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)
水準が問題になる場面

管理料の水準が問題になる場面を整理します。
一つめが、業務の実態に比して管理料が過大な場合です。外部に委託している業務が大半なのに、高い管理料を設定していれば、その差が問われます。
二つめが、サブリース方式で借上賃料を不当に低く設定した場合です。個人から法人への賃料を極端に低くすれば、その分だけ個人の所得が減り法人に移ります。
これが過度であれば、否認の対象になり得ます。この点については裁判で争われた例もあるとされています。差額の水準には限度があるということです。
三つめが、契約書と実際の資金の流れが一致していない場合です。契約書で管理料を定めていても、実際に支払われていなければ、その契約は形式だけということになります。
否認されると、本来納めるべきだった税額に加えて加算税や延滞税がかかります。同じ設定を数年続けていれば、その分がまとめて対象になります。
会社設立から数年分をまとめて指摘されれば、それまでの節税額を上回る負担になることもあります。
したがって、水準は保守的に設定するほうが安全です。目安の上限を狙うより、業務の実態に見合った水準にとどめるほうが、長い目で見て有利になります。
会社員が本業のかたわらで運営する場合、そもそも担える業務が限られますので、控えめな水準が自然ということになります。
判断に迷う部分は、業務の内容と金額を伝えたうえで税理士にご確認ください。
節税のつもりで設定した水準が否認されれば、負担が増えます。
会社設立から数年分をまとめて指摘されると、負担が大きくなります。
会社設立をしたあとも、水準の妥当性は毎年問われます。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月22日確認)
水準を決める手順

管理料の水準を決める手順を示します。業務から積み上げるという順序です。

一つめで、法人が実際に何をするかを決めます。会社員であれば、時間の制約を踏まえて現実的な範囲にとどめてください。
二つめで、外部の管理会社に委託している業務を確認します。委託した分は、自分の法人の業務ではありません。
三つめで、その業務量に見合う対価を考えます。同じ業務を外部に依頼した場合にいくらかかるかが、一つの参考になります。
四つめで、賃料収入に対する率を計算し、目安の範囲に収まるかを確認します。大きく超えるようであれば、業務の内容を見直すか、水準を下げることになります。
この順序で決めれば、水準の根拠が説明できる状態になります。「なぜこの金額なのか」と問われたときに、業務の内容から答えられます。
率から入って「10%以内だから大丈夫」と考えると、この説明ができません。会社設立の際に、業務の内容を先に決めておいてください。
サラリーマンの場合、この手順の一つめで多くが決まります。担える業務が限られれば、水準も限られます。
節税額を先に決めて、そこから率を逆算しないでください。
会社設立の準備段階で、この四つの段階を踏んでおいてください。
出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)
固定費との関係

管理料の水準が決まったら、固定費と比べることになります。
会社設立をすると、法人住民税の均等割が毎年かかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。
これに決算と申告の費用が加わり、合計で年30万円前後になることが多くなります。
管理料がこの固定費を上回らなければ、会社設立をしても手取りは増えません。
仮に管理料を賃料収入の5%とすると、年30万円の管理料を得るには賃料収入が年600万円必要という計算になります。10%なら年300万円です。
賃料収入の規模から、管理料がいくらになるかを概算してみてください。それが固定費に届かないのであれば、いまは会社設立を急ぐ理由がありません。
また、管理料は個人の不動産所得から差し引かれ、法人の収入になります。法人側でも法人税がかかりますので、丸ごと節税になるわけではありません。
個人の税率と法人の税率の差が、実際の節税額になります。会社員であれば、本業の給与と合算した税率帯が出発点です。
サラリーマンとして本業がある以上、不動産の規模が育ってから検討しても遅くありません。規模が小さいうちは、個人のまま経費を正しく計上するほうが確実です。
節税の効果は、個人と法人の税率差から生じます。管理料の全額が節税になるわけではありません。
会社設立の固定費は、賃料収入の規模にかかわらず一定です。
会社設立を判断する前に、管理料の概算を出してみてください。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)
水準を見直す機会

管理料の水準は、一度決めたら終わりではありません。
法人が行う業務が変われば、水準も見直すことになります。外部への委託を増やせば法人の業務は減りますし、逆に自分で担う範囲を広げれば増えます。
また、物件を増やせば業務量も増えます。賃料収入が増えれば、同じ率でも管理料の金額は上がります。
年に一度は、業務の内容と管理料の水準が対応しているかを確認してください。事業年度の切り替え時が、その機会になります。
会社員の場合、本業の状況も変わります。異動や昇進によって時間が取れなくなれば、法人が担える業務も減ります。その場合は水準を下げることになります。
逆に、時間に余裕ができて担える業務が増えたのであれば、水準を上げる根拠になります。
いずれにせよ、業務の実態と水準が対応していることが前提です。実態が変わったのに水準を据え置けば、そこにずれが生じます。
契約書の内容も、業務が変わったら見直してください。契約書と実態が食い違っていれば、説明が難しくなります。
サラリーマンとして本業を持ちながら運営する以上、状況の変化は避けられません。変化に応じて見直すという前提で運営してください。
サラリーマンとして異動や転勤があれば、担える業務も変わります。年に一度は確認してください。
業務が変われば節税として認められる水準も変わります。
会社設立から時間が経つほど、当初の前提と実態がずれやすくなります。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)
まとめ

管理料の水準について、この記事で整理したことをまとめます。
- 一般に語られる目安は、管理委託方式で数%程度、サブリース方式で10〜15%程度です
- ただし、これは業務の実態を前提とした水準です。法令で定められた基準ではありません
- 水準を正当化するのは、法人が実際に行っている業務です。記録が根拠になります
- 会社員は時間の制約から担える業務が限られます。控えめな水準が自然です
- 業務→外部委託の確認→対価→率の確認、という順序で決めてください
- 管理料が年30万円前後の固定費を上回るかが、最初の判定です
率から入らないでください。「10%以内なら大丈夫」という考え方では、水準の根拠を説明できません。
業務を決め、それに見合う対価を考え、結果として率が出てくる。この順序であれば、問われたときに答えられます。
そして、業務の記録を残してください。会社員が本業のかたわらで運営する場合、担える業務は限られます。その範囲に見合った水準にとどめることが、結果として安全です。
節税を確実にするには、水準の根拠を説明できることが前提です。
会社設立をして不動産管理を任せるなら、業務から水準を決めてください。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)
率ではなく、業務から決めてください
管理料の水準は、法人が実際に行う業務から決まります。一般に語られる率は結果であって、出発点ではありません。
会社員が本業のかたわらで運営する場合、法人が担える業務の範囲は限られます。その範囲に見合った水準にとどめることが、結果として安全です。
そして、業務の記録を残してください。記録が、その水準を正当化する材料になります。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。
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