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会社設立 不動産管理

会社設立して不動産管理会社を運営する。会社員が続けるための実務

この記事の位置づけ

会社設立をして不動産管理会社を持った、あるいはこれから持つ会社員に向けて、設立後に続く実務を整理する記事です。

方式の選択と管理料の水準は前の記事で扱いましたので、ここではその先を扱います。毎年何が発生し、何を残す必要があるか。

不動産の管理という業務そのものに加えて、法人としての義務が生じます。本業と並行して回せるかを確かめてください。個別の判断は税理士にご相談ください。

設立後に発生することの全体像

設立後に発生することの全体像を表したイラスト

会社設立をして不動産管理会社を持つと、二つの流れが並行します。

一つめが、法人としての義務です。毎月の記帳、年に一度の決算と法人税の申告、社会保険の手続き。これはどんな法人でも共通して生じます。

二つめが、管理業務そのものです。入居者への対応、家賃の確認、修繕の手配。管理料を受け取る根拠となる業務です。

通常の副業法人であれば一つめだけですが、不動産管理会社の場合は二つめが加わります。これが、この形の特徴です。

そして、二つめの業務を実際に行っていなければ、管理料が認められません。やらなくてよい業務ではないということです。

会社員が本業のかたわらでこの二つを回せるか。これが実務上の最初の問いになります。

会社設立を検討する段階で、体制を考えておいてください。どこまでを自分でやり、どこからを外部に任せるか。

なお、法人としての義務を税理士に依頼することはできますが、管理業務は依頼できません。外部の管理会社に委託すれば、その分は自分の法人の業務ではなくなるためです。

二つを混同しないでください「税理士に任せているから大丈夫」というのは、法人としての義務の話です。管理業務の実体は、自分の法人が担う必要があります。この区別を意識しておいてください。

サラリーマンが不動産管理会社を持つ場合、本業・法人の義務・管理業務という三つを並行させることになります。

節税を目的に会社設立をしたのであれば、この二つを回すことがその前提になります。

会社設立をした直後は、この二つの流れがまだ見えていません。最初の一年を通すと全体像がつかめます。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)

毎月やること

毎月やることを表したイラスト

毎月発生することを整理します。

一つめが記帳です。管理料の入金、経費の支払い。法人口座の明細を会計ソフトに取り込めば、多くは自動的に整理されます。

不動産管理会社の場合、取引の件数はそれほど多くないことが一般的です。管理料の入金が月に一度、経費が数件。月に1時間程度で済むこともあります。

二つめが、管理業務の記録です。これが不動産管理会社に特有の作業になります。

いつ、どんな対応をしたか。入居者からの連絡、業者への手配、物件の確認。これらを記録として残してください。

形式は問いません。日付と内容が分かるメモで構いません。記録があることが、管理料の根拠になります。

会社員が本業のかたわらで運営する場合、この記録を後回しにしがちです。しかし、あとからまとめて思い出すのは困難です。対応したその日に残す習慣をつけてください。

役員報酬を支払っている場合は、源泉徴収と納付も加わります。納期の特例を申請すれば年2回にまとめられますので、会社設立の届出と一緒に申請しておくと負担が減ります。

これらを毎月続けることが、決算期の負担を決めます。ためれば苦しくなり、ためなければ軽く済みます。

サラリーマンとして平日の日中に動けない以上、記録を残す時間は夜間や休日になります。短時間で済む形にしておいてください。

管理業務の記録は、節税の根拠を守るための作業です。省略できません。

記帳を続けることは、節税の面でも意味があります。経費の計上漏れがあれば税額が増えます。

会社設立の当初から記録の習慣をつけておけば、以後は自動的に積み上がります。

出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

年に一度の決算と申告

年に一度の決算と申告を表したイラスト

年に一度、決算と法人税の申告が必要になります。

申告期限は、原則として事業年度の終了の日の翌日から2か月以内です。税務署に法人税を、都道府県と市区町村に法人住民税と法人事業税を申告します。

不動産管理会社の場合、所有方式であれば減価償却の処理が加わります。建物や設備の取得価額を耐用年数にわたって費用として配分する処理です。

管理委託方式やサブリース方式で不動産を所有していないのであれば、この処理は生じません。方式によって決算の内容が変わります。

また、サブリース方式であれば、個人への支払賃料と入居者からの受取賃料の両方が法人の帳簿に現れます。管理委託方式より取引の件数が増えます。

赤字であっても法人住民税の均等割はかかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。

空室が続いて管理料の収入が減った年でも、この負担は変わりません。収入の変動があっても固定費は一定という点は、意識しておいてください。

決算作業は決算日から2か月ほど続きます。会社設立の際に事業年度を決められますので、本業の繁忙期と重ならないよう設計しておいてください。

サラリーマンとして本業を持ちながら、この期間に作業時間を確保できるかが現実的な問題になります。

サラリーマンにとって、決算の2か月間に作業時間を確保できるかが現実的な問題になります。

赤字の年でも均等割はかかりますので、節税額はこの固定費を差し引いて測ってください。

会社設立の際に決めた事業年度が、決算の時期を決めます。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

個人側の申告も続きます

個人側の申告も続きますを表したイラスト

管理委託方式やサブリース方式の場合、不動産の所有は個人のままです。したがって、個人側でも不動産所得の確定申告が続きます。

賃料収入から、必要経費を差し引いて所得を計算します。法人に支払った管理料も、この必要経費に含まれます。

つまり、法人の申告と個人の申告の両方が必要になるということです。法人は事業年度ごと、個人は暦年ごとですので、時期も別になります。

さらに、法人から役員報酬を受け取っていれば、それも個人の給与所得になります。本業の給与と合わせて二か所からの給与になりますので、本業の年末調整だけでは完結しません。

整理すると、会社員が不動産管理会社を持つ場合、次の申告が生じます。

  • 法人の決算と法人税等の申告(事業年度ごと)
  • 個人の不動産所得の確定申告(暦年ごと)
  • 役員報酬を受け取る場合、給与所得を含めた確定申告

後の二つは同じ確定申告のなかで処理しますが、不動産所得と給与所得の両方を扱うことになります。

所有方式であれば、不動産の所有が法人に移りますので、個人側の不動産所得は生じません。その代わり、法人の申告の内容が複雑になります。

方式によって、申告の負担の分布が変わるということです。会社設立の前に、どの方式でどんな申告が必要になるかを確認しておいてください。

不動産管理会社を持つ会社員の一年間の申告と手続きを時系列で示した図
法人と個人で時期が別々に来ます。重ならないよう事業年度を設計してください。

個人側で管理料を経費として計上することが、節税の実体になります。計上漏れがあれば効果が出ません。

不動産所得の申告では、節税につながる経費の計上を漏らさないでください。

会社設立をしても、個人側の不動産所得の申告がなくなるわけではありません。

出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

社会保険の手続き

社会保険の手続きを表したイラスト

役員報酬を受け取る場合、社会保険の手続きが加わります。

法人は役員一人でも社会保険の適用事業所になります。会社設立をしたら新規適用の届出が必要です。

そして、報酬を受け取れば被保険者になります。本業ですでに加入している会社員は、二つの事業所で同時に被保険者となります。

日本年金機構の案内によれば、この場合は「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、事実発生から10日以内に被保険者本人が提出することとされています。

保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、それぞれの報酬に基づいて按分されます。合算により等級が上がれば、保険料の総額が増えます。

毎年、算定基礎届の提出も必要になります。標準報酬月額を見直すための手続きです。

役員報酬をゼロにすれば、これらの手続きは生じません。管理料を受け取った法人に利益が残る形になります。

不動産管理会社の場合、この選択が取りやすい面があります。本業の給与で生活が成り立っていれば、法人に資金を残しておけるためです。

ただし、法人に残った利益には法人税がかかり、個人が使うことはできません。目的によって判断が変わります。

サラリーマンの場合、役員報酬を取らずに法人へ資金を残す設計も取りやすくなります。

役員報酬を取るかどうかは、節税の設計と手続きの量の両方に関わります。

会社設立をした時点で、法人は社会保険の適用事業所になります。

出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)

回すための体制

回すための体制を表したイラスト

これらを回すための体制を整理します。

不動産管理会社を運営するために会社設立の前に決めておく項目のチェックリスト
三つめが、不動産管理会社に特有の項目です。

三つめの管理業務の記録が、この形に特有の作業になります。通常の副業法人にはない項目です。

この記録がなければ、管理料の根拠を示せません。否認されれば、それまでの節税額を上回る負担になることもあります。

記録の方法は簡単なもので構いません。スマートフォンのメモでも、表計算ソフトでも。日付と内容が分かれば足ります。

四つめの依頼先については、不動産管理会社の決算を扱った経験があるかを確認しておくとよいでしょう。減価償却や管理料の扱いなど、固有の論点があります。

五つめの事業年度は、本業の繁忙期を避けるだけでなく、個人の確定申告の時期とも重ならないように設計してください。不動産所得の申告もありますので、作業が集中しやすくなります。

サラリーマンとして本業を持ちながら、この五つを整えておけば、設立後の運営が落ち着きます。

サラリーマンとして本業を持ちながら運営するなら、この五つを設立前に決めておいてください。

体制が整っていなければ、節税の効果を確実にすることも難しくなります。

会社設立の前にこの五つを決めておけば、設立後の運営が落ち着きます。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)

続けられなくなった場合

続けられなくなった場合を表したイラスト

本業が忙しくなった、物件を売却した、規模が縮小した。こうした理由で続けられなくなることがあります。

法人をたたむには、解散と清算の手続きが必要です。数か月から一年程度かかり、費用も相応にかかります。

不動産管理会社の場合、契約の整理も加わります。管理委託契約やサブリース契約を終了させ、入居者との関係も整理する必要があります。

サブリース方式であれば、入居者との賃貸借契約は法人と入居者のあいだにありますので、これをどうするかという問題が生じます。個人に戻すのか、別の管理会社に引き継ぐのか。

所有方式であれば、法人が所有する不動産をどうするかという問題です。個人に戻すなら、そこでも移転コストと課税が生じます。

入口より出口のほうが複雑になるということです。会社設立を検討する段階で、この点も見通しておいてください。

放置という選択はおすすめしません。申告をしなければ加算税などの対象になり得ますし、登記についても放置すると過料が課される可能性があります。

会社員の場合、転職や異動によって状況が変わることがあります。変化に耐えられる形かどうかを、設立の段階で考えておいてください。

判断に迷う部分は、契約の内容と不動産の状況を伝えたうえで、税理士や司法書士にご相談ください。

サラリーマンは転職や異動によって状況が変わります。続けられる形かを設立時に考えてください。

たたむ費用も含めて、節税額が見合うかを考えてください。

会社設立をする段階で、たたむときのことまで見通しておいてください。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

不動産管理会社の運営について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 会社設立をすると、法人としての義務と管理業務の二つが並行します
  2. 毎月:記帳と、管理業務の記録。記録が管理料の根拠になります
  3. 年に一度:決算と法人税等の申告。所有方式なら減価償却の処理も加わります
  4. 個人側:不動産所得の確定申告が続きます。役員報酬があれば給与所得も加わります
  5. 社会保険:役員報酬を取れば二以上事業所勤務の届出が必要です
  6. 体制は会社設立の前に決められます。口座・会計ソフト・記録の方法・依頼先・事業年度の五つです

不動産管理会社に特有なのは、管理業務の記録です。これがなければ管理料の根拠を示せません。

会社員が本業のかたわらで運営する場合、法人の義務と管理業務の二重の負担になります。無理のない範囲で設計してください。

そして、入口より出口のほうが複雑になります。会社設立を検討する段階で、続けられる見通しを立てておいてください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・総務省・日本年金機構・法務局のページで確認したものです。制度は改正されます。不動産管理会社の会計処理には固有の論点がありますので、実際の運営にあたっては税理士にご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、個別の税務相談ではありません。

節税の効果は、続けられてはじめて積み上がります。

会社設立をして不動産管理会社を持つなら、続けられる体制を先に整えてください。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

回る体制をつくってから設立してください

会社設立をしてから体制を考えるのではなく、体制を決めてから設立するという順番をおすすめします。誰が何をやるのか、費用はいくらか。これらが決まっていれば、設立後に慌てません。

不動産管理会社の場合、法人としての義務に加えて、管理業務そのものも続きます。二重の負担になりますので、無理のない範囲で設計してください。

そして、業務の記録を残すことが管理料の根拠になります。続けられる形にすることが、結果として節税を守ることにつながります。

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