合同会社で節税を続けるということ。長く維持するほど効いてくるもの
この記事の視点
会社設立をした、あるいはこれから設立する会社員に向けて、節税を年数の視点で捉える記事です。合同会社を想定していますが、考え方は形態を問いません。
会社設立による節税は、初年度に大きく出るものではありません。入口の費用があり、初年度は手続きに追われ、効果が見えてくるのは二年目以降というのが実際のところです。
何年続ければ見合うのか。続けるために何が必要か。年数を軸に整理します。個別の判断は税理士にご相談ください。
初年度に節税は出にくい

会社設立をした初年度に何が起きるかを、まず確認します。
費用が先に出ていきます。登記の費用、印鑑の作成費用、法人口座の開設に伴うもの、会計ソフトの契約。合同会社であれば登録免許税は最低6万円ですが、これに実費が加わります。
そして、法人住民税の均等割が発生します。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。設立の時期によっては月割りで計算されることがあります。
一方、節税の効果が現れるのは決算を迎えてからです。事業年度が終わり、法人税の申告をして、はじめて税額が確定します。
会社設立から決算までの期間は、設定した事業年度によって変わります。設立直後に決算日が来るように設定すれば数か月ですが、通常は一年近くかかります。
この時間差を知らないと、会社設立をしたこと自体が失敗だったように感じられます。費用ばかりが出ていき、効果が見えないためです。
加えて、初年度は手続きが集中します。税務署・自治体・年金事務所への届出、役員報酬の決定、記帳の体制づくり。慣れないことが続きます。
サラリーマンとして本業を持ちながらこれを進めるのは、相応の負担になります。初年度は節税の効果より、運営に慣れることに重点を置くくらいでちょうどよいかもしれません。
サラリーマンとして本業を持ちながら会社設立をすると、初年度は手続きの多さに驚くかもしれません。二年目以降は落ち着きます。
会社設立の初年度は、届出の期限が集中します。青色申告の承認申請、二以上事業所勤務届、給与支払事務所等の開設届出書。それぞれ期限が異なりますので、カレンダーに書き出しておくと漏れがありません。この作業自体は初年度だけのものです。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)
二年目以降で効果が見えてくる

二年目以降に何が変わるかを見ます。
まず、手続きが同じ作業の繰り返しになります。初年度に一度経験していますので、何をいつやるかが分かっています。記帳の体制も整っているはずです。
次に、判断の材料が揃います。一年分の実績があれば、翌年度の役員報酬を決める根拠になります。売上と経費の傾向も見えてきます。
役員報酬は事業年度の開始から一定期間内に決めるもので、途中で自由に変えられません。初年度は見通しが立たないまま決めることになりますが、二年目以降は実績を踏まえて決められます。
この設計の精度が上がることが、節税の効果に直結します。本業の給与と合算した税率帯、社会保険の等級、法人の利益見込み。これらを踏まえて報酬を決められるようになります。
また、初年度に生じた開業費の処理や減価償却の設定も、二年目以降は前年を踏襲できます。判断の場面が減ります。
一方、二年目以降も変わらないものがあります。法人住民税の均等割と、決算・申告の費用です。これらは毎年かかり続けます。
したがって、二年目以降の姿が「通常の年」ということになります。会社設立が見合うかどうかは、この通常の年で判断してください。初年度だけを見ると、実態より不利に見えます。
サラリーマンとして本業を持ちながら、この通常の年を何年続けられるか。それが実質的な判断になります。
二年目以降は、前年の決算書と申告書が参照できるようになります。同じ勘定科目を使い、同じ処理を繰り返せばよいため、判断に迷う場面が減ります。会社設立の初年度に丁寧に処理しておけば、その後の年が楽になるという関係にあります。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)
入口と出口の費用を年数で割る

入口と出口の費用を、年数で割って考える方法を示します。
会社設立の費用は一度きりです。合同会社であれば登録免許税6万円に実費を加えて、10万円前後というのが一つの目安です。株式会社であれば20万円台になります。
たたむときの費用も一度きりです。解散と清算の登記、官報への公告、専門家に依頼する場合の報酬。自分で手続きをしても8万円ほど、依頼すれば20万円を超えることがあります。
この合計を、続ける年数で割ります。
| 続ける年数 | 入口と出口の費用(年あたり) | 毎年の固定費 | 合計(年あたり) |
|---|---|---|---|
| 3年 | 約10万円 | 約30万円 | 約40万円 |
| 5年 | 約6万円 | 約30万円 | 約36万円 |
| 10年 | 約3万円 | 約30万円 | 約33万円 |
| 20年 | 約1.5万円 | 約30万円 | 約31.5万円 |
※ 入口10万円・出口20万円・毎年の固定費30万円という前提を置いた概算です。実際の額は形態・自治体・依頼範囲によって変わります。条件が変われば結果も変わります。
この表から分かるのは、長く続けるほど年あたりの負担が下がるということです。ただし、毎年の固定費30万円は変わりませんので、下がり方には限度があります。
逆に言えば、短期間でたたむ前提なら、入口と出口の費用が重くのしかかります。3年で40万円と20年で31.5万円では、年あたり8.5万円の差です。
会社設立を判断するときは、何年続ける見込みかを考えてください。見込みがないまま設立すると、この計算ができません。
合同会社を選べば入口の費用が軽くなりますので、この計算は少し有利になります。ただし毎年の固定費が中心ですので、影響は限定的です。
年数の見込みを立てるときは、副業の性質も考えてください。取引先が固定している事業であれば見通しが立ちやすく、単発の受注が中心であれば読みにくくなります。会社設立の判断は、この見通しの立てやすさにも左右されます。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)
長く続けることで効いてくるもの

長く続ける場合に、合同会社の利点が効いてきます。
一つめが役員の任期です。株式会社の取締役には任期があり、満了すると同じ人が続ける場合でも重任の登記が必要です。登録免許税がかかります。
合同会社の業務執行社員には任期の定めがありません。したがって、重任の登記も発生しません。
10年、20年と続けるなら、この差は回数として積み上がります。手続きの手間も、費用も、その分だけ違ってきます。
二つめが決算公告です。株式会社には決算を公告する義務があり、官報に掲載する場合は掲載料が発生します。毎年です。合同会社にはこの義務がありません。
仮に年6万円かかるとすれば、10年で60万円、20年で120万円の差になります。続けるほど差が開きます。
三つめが、登記を忘れるおそれです。サラリーマンとして本業を持ちながら10年後の登記の期限を覚えているのは、簡単ではありません。放置すれば過料の対象になり得ます。
合同会社であれば、この心配がありません。長く続けることを前提とするなら、この点は実務的な利点です。
会社設立の形態を選ぶ段階では設立費用に目が行きがちですが、長期の視点では公告と任期のほうが影響が大きくなります。
サラリーマンが副業や資産管理の受け皿として長く持つのであれば、合同会社が向いていると言えます。

これらの費用の差は、節税額とは別に手元に残る額を左右します。
合同会社と株式会社の差は、初年度だけを見ると設立費用の12万円程度にとどまります。しかし10年続ければ、公告と重任の登記の分が積み上がります。会社設立の形態を選ぶときは、続ける年数を想定して比べてください。
出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月22日確認)
続けるために必要な体制

長く続けるには、体制が要ります。四つ挙げます。

一つめの口座を分けることが、もっとも効果的です。法人の入出金が自動的に記録され、私的な支出の混入も防げます。
二つめの記帳は、月に一度でも構いません。ためなければ、それほど重い作業ではありません。取引が少ないうちは月に1〜2時間程度で済むことも多いはずです。
三つめの依頼先は、会社設立の前に決めておくと安心です。費用の見積もりを取っておけば、固定費の計算も正確になります。
四つめの事業年度は、会社設立の際に自由に決められます。決算作業は決算日から2か月ほど続きますので、本業の山と重ならないように設計してください。
この四つが整っていれば、毎年の運営は同じ作業の繰り返しになります。慣れれば負担も減ります。
逆に、体制が整わないまま続けると、毎年の決算期に苦労することになります。サラリーマンとして本業を持つ以上、負担が続けば運営そのものが難しくなります。
体制が整っていないと、節税の効果を確実にすることも難しくなります。
体制を整えるといっても、特別なことは要りません。法人口座を開設し、会計ソフトと連携させ、月に一度確認する。この程度で十分です。会社設立の直後にこれを済ませておけば、以後は自動的に記録が積み上がります。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)
続ける意味がなくなる場合

長く続けることを前提としてきましたが、続ける意味がなくなる場合もあります。
副業の利益が落ち込み、固定費を下回る状態が続く。本業が忙しくなり、法人の運営に時間を割けない。転職によって就業規則が変わる。こうした変化は起こり得ます。
年に一度は、支払っている固定費に見合う効果が出ているかを確認してください。会社設立から数年が経つと、惰性で続けてしまうことがあります。
確認の機会は、事業年度の切り替え時が自然です。役員報酬もそのタイミングで決めることになりますので、あわせて検討できます。
確認した結果、続ける意味が薄れていると分かれば、たたむことも選択肢に入ります。
ただし、たたむには解散と清算の手続きが必要で、数か月から一年程度かかります。費用も相応にかかります。思い立ってすぐには終わりません。
したがって、判断は早めに行うほうがよいことになります。数年放置してから決めると、その間の固定費が積み上がります。
また、放置という選択はおすすめしません。申告をしなければ加算税などの対象になり得ますし、登記についても放置すると過料が課される可能性があります。
サラリーマンとして本業がある以上、状況の変化は避けられません。変化に応じて判断を見直すという前提で運営してください。
会社員の場合、転職や異動によって前提が変わることがあります。年に一度の見直しで確認してください。
見直しの際には、直近の決算書を見てください。売上、利益、そして支払った固定費。これらを並べれば、続ける意味があるかが判断できます。会社設立から数年分を並べると、傾向も見えてきます。
出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月22日確認)
年数を軸にした判断のまとめ方

最後に、年数を軸にした判断の方法をまとめます。
並べる数字は三つです。
- 入口と出口の費用:会社設立の費用と、たたむときの費用の合計
- 毎年の固定費:均等割・税理士費用・社会保険料の増加分
- 毎年の節税額:税率構造の差と経費の範囲による効果
一つめを続ける年数で割り、二つめを足します。これが年あたりの負担です。三つめがこれを上回れば、会社設立が見合うことになります。
続ける年数を仮に置いて計算してください。3年、5年、10年。それぞれで年あたりの負担がどうなるかを見れば、何年続ける必要があるかが分かります。
そして、その年数を続けられる見込みがあるかを考えます。副業の利益が続くか、本業の状況が変わらないか、体制を維持できるか。
見込みが立たないのであれば、いまは会社設立を急ぐ理由がありません。個人のままでできることを整えながら、条件が揃うのを待つほうが確実です。
サラリーマンとして本業がある以上、無理に法人を持つ必要はありません。会社設立の手続き自体は数週間で終わりますので、条件が揃ってから動いても間に合います。
判断に迷う部分は、ご自身の数字を持って税理士にご相談ください。年数の見込みも含めて伝えれば、より具体的な助言が得られます。
会社員が判断するときは、本業の状況が続く見込みも含めて考えてください。
年あたりの負担と節税額を比べたうえで、差が小さい場合は手間も考慮に入れてください。数万円のために毎年の決算と申告を続けるのは、割に合わないこともあります。会社設立の判断には、この時間の価値も含めてください。
出典No.1400 給与所得 (国税庁/2026年8月22日確認)
まとめ

会社設立による節税を年数の視点で見ることについて、この記事で整理したことをまとめます。
- 初年度に節税は出にくい:費用が先行し、効果は決算後に現れます
- 二年目以降が通常の年:手続きが繰り返しになり、判断の材料も揃います
- 入口と出口の費用は、続ける年数で割ると年あたりの負担が見えます
- 長く続けるほど、合同会社の利点(任期なし・公告なし)が効いてきます
- 続けるには体制が要ります。口座の分離・毎月の記帳・依頼先・事業年度の四つです
- 年に一度は見直してください。続ける意味がなくなればたたむのも選択です
会社設立による節税は、初年度の結果で判断しないでください。費用が先行するため、実態より不利に見えます。
そして、続ける年数で割って考えることで、判断が具体的になります。何年続ける見込みがあるか。その年数を続けられる体制があるか。
サラリーマンとして本業を持ちながら、無理なく続けられる形を選んでください。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)
年数で割って考えてください
会社設立の費用も、たたむときの費用も、一度きりの支出です。続ける年数で割れば、年あたりの負担が見えてきます。
短期間でたたむ前提なら、年あたりの負担が重くなります。逆に長く続けるなら、入口と出口の費用は薄まっていきます。
そして、長く続けるには続けられる体制が要ります。記帳、決算、社会保険の手続き。節税額だけでなく、この体制を組めるかで判断してください。
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