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合同会社設立 節税

合同会社の利益配分の自由度は節税になるのか。定款自治と税務の関係

この記事が扱う論点

合同会社の特徴として挙げられる利益配分の自由度が、節税につながるのかを検証する記事です。会社設立の形態を選ぶ段階で読んでいただくことを想定しています。

合同会社では、定款で定めることにより出資の割合と異なる利益配分をすることが認められています。これは会社法上の話です。税務上どう扱われるかは、別に確認が必要です。

会社法で認められている形が、そのまま税務上も認められるとは限りません。この点を混同すると、想定した節税にならないばかりか、否認される可能性もあります。個別の判断は税理士にご相談ください。

合同会社の利益配分とは何か

合同会社の利益配分とは何かを表したイラスト

まず、合同会社の利益配分の仕組みを確認します。

株式会社では、剰余金の配当は原則として持株数に応じて行われます。10%の株式を持つ株主は、配当の10%を受け取るという形です。

合同会社では、定款で定めることにより、出資の割合と異なる利益配分をすることが認められています。出資は少なくても、技術やノウハウを提供する社員に多く配分するといった設計ができます。

これが、合同会社の特徴として挙げられる定款自治の一例です。機関設計の自由度と並んで、株式会社との違いとして説明されます。

ただし、これは会社法上の話です。会社としてどう配分するかを決められるということであって、税務上の取り扱いを決められるわけではありません。

会社設立の形態を選ぶ段階で「合同会社なら利益配分を自由にできるから節税になる」という説明を見かけることがありますが、その根拠は確かめる必要があります。

そもそも、サラリーマンが一人で会社設立をする場合、配分を決める相手がいません。社員が自分一人であれば、配分の自由度は実務上の意味を持ちません。

この論点が効いてくるのは、複数人で出資して事業を行う場合です。会社設立の段階でその予定があるかを確認してください。

会社法と法人税法は別の法律です会社法は会社の組織や運営について定め、法人税法は法人の所得と税額について定めます。会社法で認められている形が、そのまま法人税法上も認められるとは限りません。この区別は、合同会社に限らず会社設立全般で重要です。

サラリーマンが会社設立を検討する段階では、この論点が判断に影響することは多くありません。

合同会社という形態が知られるようになったのは比較的最近のことです。設立件数も増えており、以前ほど珍しい形ではなくなりました。そのぶん情報も増えていますが、会社法上の特徴と税務上の取り扱いが混ざって語られることも多くなっています。サラリーマンが会社設立を検討する際は、この点を意識して読んでください。

出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月22日確認)

役員報酬は定款自治の対象外です

役員報酬は定款自治の対象外ですを表したイラスト

次に、役員報酬との関係を確認します。ここが混同されやすい部分です。

合同会社の代表社員や業務執行社員が会社から受け取る報酬は、税務上は役員報酬として扱われます。呼び方が違うだけで、株式会社の役員給与と同じです。

国税庁が示すところによれば、損金に算入できる役員給与は、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに該当するものです。

この要件に、会社の種類は関係しません。合同会社であっても、定期同額給与などの要件を満たさなければ損金になりません。

したがって、「合同会社は定款自治の範囲が広いから、役員報酬も自由に決められる」という理解は、税務上は正しくありません。

事業年度の途中で報酬額を増額すれば、増やした部分が損金にならないことがあります。合同会社であっても、この制約は同じです。

また、不相当に高額な部分は損金にならないという規定も同様に適用されます。職務の内容、法人の収益の状況などが考慮されます。

会社設立の形態を選んでも、役員報酬の設計の難しさは変わりません。会社員の場合は本業の給与と合算されるという事情も加わります。

サラリーマンが会社設立で節税を図る場合、この設計が成否を分けます。形態選びに時間をかけるより、こちらの検討に進んでください。

役員報酬を決める手続きについても、会社法上は合同会社のほうが簡素です。株主総会の決議を要しないためです。ただし、決定の記録を残すことは共通して必要になります。会社設立の後、報酬額を決めた根拠を書面として残しておいてください。税務上の説明を求められた際の材料になります。

出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月22日確認)

利益配分と役員報酬は別のものです

利益配分と役員報酬は別のものですを表したイラスト

利益配分と役員報酬は、しばしば混同されますが別のものです。

役員報酬は、法人の損金になります。要件を満たせば、法人の所得を計算する際に差し引かれます。受け取る側では給与所得として課税されます。

利益配分は、法人税を払ったあとの利益から行われます。損金にはなりません。受け取る側でも課税されます。

つまり、利益配分の形を取ると、法人段階で法人税がかかり、個人段階でも課税されることになります。二段階です。

この構造は、株式会社の配当と同じです。合同会社の利益配分も、税務上は同様の扱いになります。

したがって、利益配分を自由に設計できることが、そのまま節税になるわけではありません。配分の割合を変えても、法人段階の税額は変わらないためです。

節税という観点では、損金になる役員報酬をどう設計するかのほうが影響が大きくなります。そして、そちらには法人税法の要件が適用されます。

会社設立を検討するサラリーマンが「合同会社の配分の自由度」という説明を読んだら、それが役員報酬の話か、利益配分の話かを確かめてください。混同されていることがあります。

一人で会社設立をする場合、そもそも配分を分ける相手がいませんので、この論点は生じません。

役員報酬と利益配分の税務上の違いを比べた図
節税の観点で効くのは左側です。ただし要件があります。

配当や利益配分を受けた個人の側では、一定の調整の仕組みが設けられています。法人段階と個人段階で二重に課税されることへの対応です。ただし、この調整によって負担が完全になくなるわけではありません。会社設立をして利益配分の形で個人が受け取る場合、この構造を踏まえて計算することになります。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

家族を社員にする場合

家族を社員にする場合を表したイラスト

配分の自由度が意味を持つ場面として、家族を社員にする形が考えられます。

合同会社に家族が出資して社員となり、定款で配分を定める。出資は少なくても多く配分するという設計です。

ただし、ここにもいくつかの制約があります。

まず、前の節で見たとおり、利益配分は損金になりません。法人税を払ったあとの利益から行われますので、法人段階の節税にはなりません。

次に、家族に役員報酬を支払う形を取る場合は、社会保険の問題が生じます。その家族が被保険者になれば保険料の負担が発生し、労使折半のため法人側にも負担がかかります。

また、配偶者の扶養から外れれば、配偶者控除などが受けられなくなります。勤務先から家族手当が支給されている場合、止まることもあります。

所得分散による節税額より、社会保険料の増加や扶養から外れることによる影響のほうが大きくなり、世帯全体では手取りが減るという結果になることがあります。

さらに、職務の実態がない家族に報酬を払えば、その支出が事業に必要だったことを説明できません。国税庁は役員給与について、不相当に高額な部分は損金にならないとしています。

会社員の世帯でこの形を検討する場合、税額だけでなく世帯全体の手取りで比べてください。会社設立の前に試算しておくことをおすすめします。

家族を社員として会社設立をする場合、その家族の氏名と住所が登記事項として記録されます。合同会社では社員の情報が登記に現れますので、この点も確認しておいてください。プライバシーの面で気にされる方もいます。

出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)

会社法と税法を混同しないために

会社法と税法を混同しないためにを表したイラスト

会社法と税法を混同しないための確認方法を整理します。

説明を読んだときに、次の三つを確かめてください。

  1. 根拠がどちらの法律か:会社法の話か、法人税法の話か
  2. 損金になるかどうかに触れているか:税務上の効果を語るなら、この点が必要です
  3. 要件が示されているか:定期同額給与などの要件に触れているか

「定款で自由に定められる」という説明は、会社法の話です。それが損金になるかどうかは別に確認が必要です。

「節税になる」という説明であれば、税務上の効果を語っていることになります。その場合、要件が示されているかを確かめてください。要件の説明がない情報は、そのまま使わないほうが安全です。

会社設立に関する情報では、この二つが混ざって語られることがあります。書き手が意図的に混同しているとは限らず、説明を簡略化した結果であることも多いはずです。

いずれにせよ、読む側で区別する必要があります。会社法で認められている形が、そのまま税務上も認められるとは限らない。この原則を覚えておいてください。

サラリーマンが会社設立を検討する際、この区別ができると情報の取捨選択が早くなります。

判断に迷う部分は、その形が損金になるかを税理士に確認してください。会社法上の可否は司法書士、税務上の取り扱いは税理士という分担になります。

情報を読むときに根拠を確かめる習慣は、会社設立の判断だけでなく運営の場面でも役に立ちます。処理の可否に迷ったとき、それが会社法上の問題か税務上の問題かを切り分けられれば、誰に相談すべきかも決まります。

出典No.5202 役員等に対する経済的利益 (国税庁/2026年8月22日確認)

一人で設立する場合に残る論点

一人で設立する場合に残る論点を表したイラスト

サラリーマンが一人で会社設立をする場合、利益配分の自由度は判断材料になりません。配分を決める相手がいないためです。

では、合同会社を選ぶ理由は何か。費用と手間です。

設立費用については、株式会社は定款の認証が必要で手数料がかかりますが、合同会社にはこの手続きがありません。登録免許税も最低額が違います。

運営については、決算公告の義務がなく、役員の任期に伴う登記も発生しません。長く続けるほど、この差が積み上がります。

一方、税額は変わりません。法人税の税率も、法人住民税の均等割も、会社の種類による区分はありません。

総務省の資料で標準税率を確認すると、均等割は資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。合同会社でも株式会社でも同じです。

したがって、一人で会社設立をする会社員が合同会社を選ぶ理由は、費用と手間の軽さに求めるのが実態に合っています。

節税の効果を期待して形態を選ぶのであれば、その期待は満たされません。節税の成否を分けるのは、役員報酬と社会保険の設計です。

会社設立の準備段階では、形態を早めに決めて、設計の検討に時間を使ってください。

一人で会社設立をする場合に形態を選ぶ判断材料のチェックリスト
上の三つで判断してください。下の二つは差がありません。

一人で会社設立をする場合、定款の内容も標準的なもので足ります。法務局が様式と記載例を公開していますので、それを参照しながら作成できます。合同会社であれば公証人の認証も不要ですので、この段階の負担は軽くなります。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)

将来複数人になる場合の備え

将来複数人になる場合の備えを表したイラスト

いまは一人でも、将来複数人で事業を行う可能性がある場合はどうか。

定款は変更できます。合同会社であれば、原則として総社員の同意により変更します。新たに社員を加える場合も、定款の変更と登記が必要になります。

したがって、会社設立の時点で将来の配分まで定めておく必要はありません。必要になったときに変更すればよいということです。

むしろ、最初から複雑な定款をつくると、変更のたびに確認が必要になります。一人で会社設立をするのであれば、標準的な内容で始めるほうが無理がありません。

なお、合同会社の持分を譲渡するには、原則として他の社員全員の承諾が必要です。株式のような流通性はありません。外部から出資を受けて事業を拡大する予定があるなら、株式会社のほうが適しています。

会社設立の段階でその見込みがはっきりしているなら、最初から株式会社を選ぶほうが無駄がありません。合同会社から株式会社への組織変更は制度上可能ですが、手続きと費用がかかります。

サラリーマンが副業の受け皿として一人で持つ法人であれば、当面は合同会社で足りることが多いはずです。

将来の可能性を過度に見込んで複雑な設計をするより、いま必要な形で会社設立をして、必要になったときに変更する。この順番のほうが実際的です。

判断に迷う部分は、事業の見通しを伝えたうえで司法書士や税理士にご相談ください。

将来の可能性を見込んで複雑な設計をすると、変更のたびに確認が必要になります。会社設立の時点では、いま必要な形にとどめておくほうが、運営が軽くなります。サラリーマンとして本業を持ちながら管理する以上、簡素であることには価値があります。

出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

合同会社の利益配分の自由度について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 合同会社では定款で出資割合と異なる利益配分を定められます。これは会社法上の話です
  2. 役員報酬は税務上、定期同額給与などの要件が適用されます。形態は関係しません
  3. 利益配分と役員報酬は別のものです。前者は損金にならず、後者は要件を満たせば損金になります
  4. 家族を社員にする場合、社会保険と扶養への影響を確認してください
  5. 説明を読むときは、根拠が会社法か法人税法かを確かめてください
  6. 一人で会社設立をする場合、配分の自由度は判断材料になりません

会社法で認められている形が、そのまま税務上も認められるとは限りません。この区別を意識してください。

そして、サラリーマンが一人で会社設立をする場合、合同会社を選ぶ理由は費用と手間の軽さにあります。節税の効果を期待して形態を選ぶのであれば、その期待は満たされません。

節税の成否を分けるのは、役員報酬と社会保険の設計です。形態選びは早めに済ませて、そちらの検討に時間を使ってください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・総務省・法務局・日本年金機構のページで確認したものです。会社法上の取り扱いと税務上の取り扱いは別に確認が必要です。制度は改正されますので、実際の判断にあたっては最新の情報をご確認いただき、税務については税理士に、会社法上の手続きについては司法書士にご相談ください。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

会社法と税法を分けて考えてください

合同会社の定款自治は、会社法上の自由度です。税務上の取り扱いは、法人税法の要件によって決まります。この二つを混同しないでください。

そして、一人で会社設立をする会社員にとって、この自由度が実務上の意味を持つ場面は多くありません。配分を決める相手がいないためです。

合同会社を選ぶ理由は、費用と手間の軽さに求めるほうが実態に合っています。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。

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