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会社設立 プライベートカンパニー

会社設立と家族・承継の話。相続対策として語られる部分を分けて考える

この記事の整理の仕方

資産管理を目的とした会社設立について、家族や承継に関わる部分を扱う記事です。相続対策という文脈で語られる内容を整理します。

ここで注意したいのは、所得税の節税と相続税の対策は、効く仕組みが違うということです。同じ「節税」という言葉で語られますが、別の制度の話です。

混ざったまま考えると判断できませんので、分けて整理します。なお、相続に関する判断は個別性が高く、当サイトでは一般的な考え方を示すにとどめます。実際の設計は税理士にご相談ください。

二つの「節税」を分ける

二つの「節税」を分けるを表したイラスト

最初に、混ざりやすい二つを分けます。

一つめが、所得税の節税です。毎年得る所得に対する税負担を減らすという話です。会社設立をして税率構造の差を使う、経費として認められる範囲を広げる。この記事の他の部分で扱ってきた内容です。

二つめが、相続税の対策です。将来、資産を次の世代に引き継ぐときの税負担に関わる話です。まったく別の制度であり、効く仕組みも違います。

会社設立に関する情報では、この二つが同じ「節税」という言葉でまとめて語られることがあります。しかし、両立するとは限りません。

たとえば、所得税の節税のために法人に利益を残す設計をすれば、法人の価値が上がります。相続の観点では、その分が評価の対象になります。

逆に、相続を見据えて資産を法人に集約すれば、毎年の所得税の負担は必ずしも減りません。目的によって最適な形が変わるということです。

したがって、会社設立を検討するときは、どちらを主な目的とするかをはっきりさせる必要があります。両方を求めることもできますが、優先順位が必要です。

サラリーマンとして本業がある方の場合、まず所得税の節税が動機になることが多いはずです。相続の話は、資産が一定の規模に達してからの検討になります。

相続の話は個別性が高くなります家族の構成、資産の内訳、承継の意向。これらによって最適な形が大きく変わります。一般的な記事で示せるのは考え方の枠組みまでです。実際の設計は、家族の状況を伝えたうえで税理士にご相談ください。

同じ「節税」という言葉が二つの意味で使われていることに気づかないまま情報を集めると、判断の材料が混ざってしまいます。所得税の話をしている記事と、相続税の話をしている記事とでは、前提も時間軸も違います。読むときにどちらの話かを確かめる習慣をつけると、混乱が減ります。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

家族を役員にする場合の論点

家族を役員にする場合の論点を表したイラスト

家族に関わる論点として、まず役員にする場合を扱います。

会社設立をして家族を役員にし、役員報酬を支払う。所得を分散することで、一人あたりの所得を下げて低い税率を適用するという考え方です。

理屈としては成り立ちます。所得税は累進ですから、同じ総額でも複数人で分けたほうが、それぞれに低い税率が適用されます。給与所得控除もそれぞれに適用されます。

ただし、会社員の世帯では次の点が問題になります。

  • 家族が社会保険の被保険者になれば、保険料の負担が生じます(労使折半のため法人側にも)
  • 配偶者の扶養から外れれば、配偶者控除などが受けられなくなります
  • 配偶者の勤務先から家族手当が支給されている場合、止まることがあります
  • 職務の実態がなければ、役員報酬は損金として認められない可能性があります

所得分散による節税額より、社会保険料の増加や扶養から外れることによる影響のほうが大きくなり、世帯全体では手取りが減るという結果になることがあります。

国税庁は役員給与について、不相当に高額な部分は損金にならないとしています。職務の内容、法人の収益の状況などが考慮されますので、実態のない役員に報酬を払うことはできません。

会社設立をして家族を役員にする場合、その家族が実際にどんな業務を担うのかを整理しておいてください。説明できなければ、否認される可能性があります。

サラリーマンの世帯でこの形を検討する場合、税額だけでなく世帯全体の手取りで比べてください。

家族を役員にするかどうかは、会社設立の段階で決めておく必要があります。あとから役員を追加することもできますが、その時点で社会保険や扶養の判定をやり直すことになります。世帯全体でどうなるかを、設立前に試算しておいてください。

出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月22日確認)

持分や株式をどう持つか

持分や株式をどう持つかを表したイラスト

次に、法人の持分や株式を誰が持つかという論点です。

会社設立の際、出資をした人が社員(合同会社の場合)または株主(株式会社の場合)になります。この持分や株式が、将来の相続の対象になります。

一人で全額を出資すれば、その人がすべての持分を持ちます。家族と共同で出資すれば、出資割合に応じて分かれます。

あとから持分を移すのは、容易ではありません。譲渡には対価の問題が生じますし、贈与とすれば贈与税の対象になります。合同会社では持分の譲渡に他の社員の承諾が必要です。

したがって、会社設立の段階で、誰がどれだけ出資するかを考えておく意味があります。ただし、これは相続を見据えた場合の話です。

サラリーマンが副業や資産運用の受け皿として会社設立をする場合、まず一人で出資するのが自然です。家族を巻き込む必要が生じるのは、資産の規模が一定以上になってからでしょう。

なお、持分を家族に持たせれば所得が分散されるわけではありません。利益の配分を受けるには、配当という形を取ることになり、その時点で課税されます。

合同会社では定款で出資割合と異なる配分を定めることもできますが、これも会社法上の話であり、税務上どう扱われるかは別に確認が必要です。

この部分は判断が複雑になりますので、家族を含めた設計を考える場合は、会社設立の前に税理士にご相談ください。

出資の形は、会社設立の登記事項にも関わります。合同会社であれば社員の氏名と住所が、株式会社であれば発起人の情報が書類に現れます。家族を含める場合、その情報も記録として残ることになります。プライバシーの面も含めて検討してください。

出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月22日確認)

資産を法人で持つことと相続の関係

資産を法人で持つことと相続の関係を表したイラスト

資産を法人で持つことが、相続にどう関わるかを整理します。

個人が不動産や有価証券を直接持っていれば、それらが相続財産になります。法人が持っていれば、相続の対象になるのはその法人の持分や株式です。

評価の対象が変わるということです。この点が、相続対策という文脈で語られる理由になります。

ただし、効果があるかどうかは個別に判断されます。法人の持分や株式の評価は、その法人が保有する資産の内容や収益の状況を踏まえて行われます。単純に有利になるとは限りません。

また、資産を法人に移す際には、前の記事で扱ったとおり移転コストがかかります。不動産であれば登録免許税、不動産取得税、譲渡による所得税。これらを負担したうえで、相続の段階で効果が出るかを見ることになります。

相続が実際に発生するのは、何年も先のことです。その間に制度が改正される可能性もあります。長期の見通しに基づく判断になるという点は、意識しておいてください。

会社設立をして資産を集約すれば、管理が一元化されるという実務上の利点はあります。複数の不動産を個別に相続するより、法人の持分として引き継ぐほうが手続きが整理しやすいという面です。

ただし、これは税負担とは別の話です。手続きの簡便さと、税額の有利不利を混ぜないでください。

サラリーマンが資産管理の会社設立を検討する段階では、まず所得税の節税で判断するのが自然です。相続の話は、資産が育ってからの検討になります。

相続の局面では、法人が保有する資産の内容が評価に影響します。収益を生んでいる資産と、そうでない資産とでは扱いが変わることもあります。会社設立をして何を法人に持たせるかという判断が、長期的な影響を持つということです。

出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

会社員に特有の制約

会社員に特有の制約を表したイラスト

会社員がこの形の会社設立を検討する場合、特有の制約があります。

一つめが社会保険です。法人は役員一人でも適用事業所になります。役員報酬を受け取れば被保険者になり、本業ですでに加入している方は二つの事業所で被保険者となります。

日本年金機構の案内によれば、この場合は「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、事実発生から10日以内に被保険者本人が提出することとされています。

保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、按分されます。合算により等級が上がれば、保険料の総額が増えます。

家族を役員にする場合も、その家族について同様の判定が必要になります。配偶者が別の勤務先で働いていれば、そちらとの合算という論点も生じます。

二つめが就業規則です。会社設立をして代表者になることは役員兼務にあたります。資産の運用そのものは副業に該当しないと扱われることが多いのですが、法人の代表者になることは別の論点です。

公務員の方は、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業が原則として禁止されています。所属先の規程を必ずご確認ください。

これらは、資産の話や相続の話より先に確認すべき事項です。会社設立ができる立場でなければ、以降の検討に意味がありません。

サラリーマンとして本業を持ちながら判断する以上、この順序を守ってください。

会社員が家族を役員にする場合、配偶者の勤務先の制度も確認してください。家族手当の支給要件や、副業に関する規定が影響することがあります。会社設立をする本人だけでなく、家族の側の条件も見る必要があります。

出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)

目的によって設計が変わる

目的によって設計が変わるを表したイラスト

所得税の節税と相続対策では、望ましい設計が違うことがあります。

所得税の節税を主な目的とするなら、役員報酬をどう置くか、どの所得を法人に移すかという設計が中心になります。法人と個人のあいだで所得をどう配分するかという問題です。

相続を見据えるなら、資産をどう保有するか、持分を誰が持つか、法人の価値をどう管理するかという設計になります。時間軸が長くなります。

所得税の節税を目的とする場合と相続対策を目的とする場合で設計がどう違うかを比べた図
時間軸が違います。同じ「節税」という言葉でも、考えることが変わります。

両方を求めることもできますが、優先順位を決めておかないと判断がぶれます。

たとえば、所得税の節税のために法人に利益を残せば、法人の価値が上がります。相続の観点では評価の対象になります。逆に、報酬として個人に出せば法人の価値は抑えられますが、所得税がかかります。

どちらを優先するかで、毎年の判断が変わるということです。会社設立の段階で、目的をはっきりさせておいてください。

サラリーマンとして本業がある段階では、所得税の節税を主な目的とするのが自然です。相続の設計は、資産が一定の規模に達してから加えることになります。

目的が定まらないまま会社設立をすると、毎年の判断がぶれます。役員報酬を増やすべきか減らすべきか、法人に利益を残すべきかどうか。判断の基準がなければ、そのつど迷うことになります。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)

会社員が確認する順番

会社員が確認する順番を表したイラスト

会社員がこの形の会社設立を検討する場合の順番を整理します。

会社員が資産管理の会社設立を検討する際に確認する六つの項目のチェックリスト
上から順に確認してください。相続の話は最後に来ます。

一つめと二つめは、会社設立ができる立場かどうかの確認です。ここが通らなければ、以降の検討に意味がありません。

三つめから五つめが、所得税の節税として成立するかの判定です。法人住民税の均等割は総務省の資料で標準税率を確認すると年7万円から。これに税理士費用が加わります。

六つめが相続の論点です。資産が一定の規模に達していなければ、この検討は不要です。まず所得税の節税で判断してください。

サラリーマンとして本業を持ちながら資産を育てている段階であれば、五つめまでで判断できることがほとんどだと思います。

そして、相続を見据える段階になったら、家族の状況を含めて税理士にご相談ください。個別性が高く、一般的な情報では判断できない領域です。

六つの確認は、順番に意味があります。前の項目が通らなければ、後ろの項目を検討しても実行できません。サラリーマンとして限られた時間で判断する以上、この順序を守るほうが効率的です。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

会社設立と家族・承継の関係について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 所得税の節税と相続税の対策は、別の制度の話です。同じ「節税」という言葉で語られますが、効く仕組みが違います
  2. 家族を役員にする形は、社会保険と扶養への影響を確認してください。世帯全体の手取りで比べます
  3. 持分や株式は将来の相続の対象になります。あとから移すのは容易ではありません
  4. 資産を法人で持つと評価の対象が変わりますが、有利になるかは個別に判断されます
  5. 会社員には社会保険と就業規則という制約が加わります。資産の話より先に確認してください
  6. 目的によって設計が変わります。優先順位を決めておいてください

会社設立をすればどちらの節税も自動的に効く、というものではありません。目的を分けて、優先順位をつけてください。

サラリーマンとして本業がある段階では、まず所得税の節税で判断するのが自然です。相続の設計は、資産が一定の規模に達してからの検討になります。

そして、相続に関わる部分は個別性が高く、家族の状況によって最適な形が変わります。一般的な情報だけで判断せず、必ず税理士にご相談ください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・日本年金機構・総務省・法務局のページで確認したものです。相続税に関する取り扱いは個別の事情によって大きく変わり、制度も改正されます。当サイトは一般的な考え方を示すにとどめますので、実際の設計は必ず税理士にご相談ください。個別の税務相談ではありません。

出典No.1400 給与所得 (国税庁/2026年8月22日確認)

二つを分けて、優先順位をつけてください

所得税の節税と相続税の対策は、別の制度の話です。会社設立をすればどちらも自動的に効く、というものではありません。

どちらを主な目的とするかで、設計が変わります。役員報酬をどう置くか、誰を役員にするか、資産をどう保有するか。目的が定まっていなければ、これらの判断もぶれます。

とくに相続に関わる部分は個別性が高く、家族の状況によって最適な形が変わります。一般的な情報だけで判断せず、必ず税理士にご相談ください。

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