サラリーマンが合同会社を選ぶ理由と、選ばないほうがよい場合
この記事の位置づけ
副業や投資の受け皿として会社設立を考えているサラリーマンが、合同会社という形を選ぶべきかを判断するための記事です。株式会社との比較は別の記事で扱いましたので、ここでは合同会社そのものの特徴を掘り下げます。
先に方向を書いておくと、会社員が一人で法人を持つ場合、合同会社で足りることが多くなります。ただし、選ばないほうがよい場面もあります。そこを見落とすと、あとから組織変更が必要になります。
節税の効果は形態によって変わりません。法人税の税率は会社の種類ではなく所得の規模などで決まるためです。合同会社を選ぶ理由は、費用と手間に求めることになります。
合同会社とは何か。呼び方から整理する

合同会社は、会社法によって設けられた会社の種類の一つです。持分会社に分類されます。
最初に混乱しやすいのが、用語です。会社法でいう「社員」は出資者を指します。日常会話で使う「社員=従業員」とは意味が違います。合同会社の社員は、株式会社でいえば株主に近い立場です。
そのうえで、業務を執行する社員を業務執行社員と呼びます。株式会社の取締役に近い位置づけです。さらに、そのなかから代表権を持つ者を代表社員として定めます。株式会社の代表取締役にあたります。
サラリーマンが一人で合同会社を設立する場合、その一人が社員であり、業務執行社員であり、代表社員でもあるという形になります。
| 合同会社 | 株式会社での近い立場 | 説明 |
|---|---|---|
| 社員 | 株主 | 出資した人。従業員という意味ではありません |
| 業務執行社員 | 取締役 | 会社の業務を執行する立場 |
| 代表社員 | 代表取締役 | 会社を代表する立場 |
※ 制度が異なるため厳密に同じではありません。位置づけの目安としてご覧ください。
この用語の整理ができると、以降の話が読みやすくなります。次から、会社員が合同会社を選ぶ理由を見ていきます。
会社設立の相談で「合同会社と株式会社のどちらがよいか」と問われることは多いのですが、判断材料は限られています。用語の違いを押さえたうえで、費用・手間・取引先の三点を確認すれば、おおむね結論は出ます。
出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月21日確認)
理由その一:設立費用が軽い

合同会社を選ぶ第一の理由が、設立費用です。
株式会社の場合、作成した定款について公証人の認証を受ける必要があります。日本公証人連合会の案内によれば、手数料は資本金の額が100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以外で5万円です。
合同会社には、この定款認証の手続きがありません。したがって、手数料もかかりません。
登録免許税も違います。株式会社は資本金の額の0.7%で最低15万円、合同会社は同じく0.7%で最低6万円です。会社員が副業の受け皿としてつくる規模であれば、いずれも最低額が適用されることがほとんどです。

節税を目的に会社設立をする場合、効果が出るまでには時間がかかります。初年度の持ち出しを抑えられることは、サラリーマンにとって実質的な意味があります。
会社設立にかかる費用は一度きりですが、初年度は他の支出も重なります。印鑑の作成、法人口座の開設、会計ソフトの契約。合同会社を選んで設立費用を抑えられれば、そのぶん他に回せます。
出典Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。 (日本公証人連合会/2026年8月21日確認)
理由その二:毎年の手間が軽い

第二の理由が、運営を続けるうえでの手間です。ここは設立費用より長く効いてきます。
株式会社には決算公告の義務があります。定時株主総会の終結後に決算を公告することが求められ、官報に掲載する場合は掲載料が発生します。合同会社にはこの義務がありません。
もう一つが役員の任期です。株式会社の取締役には任期があり、原則2年、非公開会社では定款で最長10年まで伸ばせます。任期が満了すると、同じ人が続ける場合でも重任の登記が必要で、登録免許税がかかります。
合同会社の業務執行社員には任期の定めがありません。したがって重任の登記も不要です。
サラリーマンとして本業を持ちながら運営する場合、この違いは小さくありません。10年後の登記の期限を覚えていられるか、という問題があります。登記懈怠として過料が課される可能性もあります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 決算公告 | 義務があります | 義務はありません |
| 役員の任期 | 原則2年(定款で最長10年) | 定めはありません |
| 任期満了時の登記 | 重任の登記が必要です | 不要です |
| 機関設計 | 株主総会などの規律があります | 比較的自由です |
※ 会社法の規定に基づく一般的な整理です。詳細は個別の定款の定めによります。
会社設立をしたあと何年も続けることを考えると、手続きの回数の差は実感として効いてきます。節税のために持つ法人であればなおさら、余計な手間は減らしておきたいところです。
会社設立から10年が経つ頃には、当初の記憶も薄れています。任期の登記が不要という点は、長く続けるほど効いてきます。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月21日確認)
理由その三:定款で自由に決められる範囲が広い

第三の理由として挙げられるのが、定款で定められる範囲の広さです。
株式会社では、剰余金の配当は原則として持株数に応じて行われます。合同会社では、定款で定めることにより、出資の割合と異なる配分をすることが認められています。
また、意思決定の手続きについても、株主総会や取締役会といった機関に関する規律がないため、比較的自由に設計できます。
ただし、サラリーマンが一人で会社設立をする場合、この利点は実感しにくいというのが実態です。配分を決める相手がおらず、意思決定も一人で行うためです。
この利点が効いてくるのは、複数人で出資して事業を行う場合です。出資額は少ないが技術やノウハウを提供する人に多く配分する、といった設計ができます。
会社員が副業の受け皿として一人で持つ法人であれば、合同会社を選ぶ理由は前の二つ(費用と手間)に求めるほうが実態に合っています。
会社設立の段階で複数人の出資を予定しているサラリーマンは多くありません。副業や投資の受け皿として一人で持つ場合、この定款自治の利点は判断材料から外して差し支えないでしょう。
出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月21日確認)
選ばないほうがよい場合

ここまで合同会社の利点を見てきましたが、選ばないほうがよい場合もあります。三つ挙げます。
その一:取引先が株式会社を条件にしている
企業によっては、社内規程で取引相手の形態を定めていることがあります。取引基本契約を結ぶ際に確認される場合もあります。想定している取引先があるなら、事前に「合同会社でも取引できますか」と確認しておいてください。
その二:将来的に出資を受ける予定がある
外部から出資を受けて事業を拡大する予定があるなら、株式会社のほうが適しています。合同会社では持分の譲渡に他の社員の承諾が必要になるなど、株式のような流通性がありません。
その三:許認可の要件になっている
事業によっては、許認可の要件として会社の形態が定められていることがあります。行おうとする事業に許認可が必要なら、その要件を先に確認してください。
会社設立の段階でこの三つを確認しておけば、あとで組織変更が必要になる場面はかなり減らせます。
会社設立の形態は、あとから変えられないわけではありません。ただし組織変更には手続きと費用がかかりますので、見込みがはっきりしているなら最初から合わせておくほうが合理的です。
出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月21日確認)
節税の効果は形態で変わらない

合同会社を選ぶ理由として「節税になるから」という説明を見かけることがあります。ここは正確に理解しておいてください。
法人税の税率は、株式会社か合同会社かでは変わりません。資本金の額や所得の金額といった区分によって決まります。同じ所得であれば、どちらの形態でも法人税額は基本的に同じです。
法人住民税の均等割も同様です。資本金等の額と従業者数の区分で決まります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。
会社設立によって使えるようになる節税の仕組み、たとえば役員報酬を損金にできること、社宅や出張日当の仕組み、退職金を出せることも、形態によって変わりません。
したがって、「合同会社のほうが節税になる」という説明を見たら、それが何を指しているかを確かめてください。多くの場合、設立費用や維持費が安いことを指しています。税率が違うという意味ではありません。
サラリーマンが会社設立で節税を図る場合、結果を左右するのは形態ではなく役員報酬と社会保険の設計です。そちらの検討に時間を使ってください。
会社設立による節税を検討するとき、形態の比較に時間をかけるより、役員報酬の水準を試算するほうが効果があります。節税額はそちらで決まるためです。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)
合同会社でも変わらないこと

形態を選んでも変わらないことを、あらためて整理しておきます。
まず、社会保険です。合同会社も法人ですので、社会保険の適用事業所になります。代表社員が一人だけであっても同じです。役員報酬を受け取れば被保険者になり、本業と合わせて二以上事業所勤務の届出が必要になります。
日本年金機構の案内によれば、この届出は事実発生から10日以内に被保険者本人が提出することとされています。保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、それぞれの報酬に基づいて按分されます。
次に、決算と申告です。合同会社も毎年決算を組み、法人税の申告をします。都道府県と市区町村への申告も必要です。手続きの量は株式会社とほぼ同じです。
そして、就業規則の確認です。合同会社の代表社員に就任することも、役員兼務にあたります。会社設立の前に、勤務先の規定を確認してください。
- 社会保険の適用事業所になります(役員一人でも同じ)
- 二以上事業所勤務の届出が必要になります(役員報酬を取る場合)
- 決算と法人税・法人住民税・法人事業税の申告が毎年あります
- 法人住民税の均等割は赤字でもかかります
- 就業規則の役員兼務の規定が適用されます
合同会社を選んだから軽くなるのは、設立費用と一部の登記・公告だけです。会社員が法人を持つうえでの本質的な論点は、形態を問わず残ります。

出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月21日確認)
まとめ

サラリーマンが合同会社を選ぶかどうかについて、この記事で整理したことをまとめます。
- 合同会社の「社員」は出資者を指します。一人で設立すればその人が代表社員になります
- 設立費用は定款認証が不要な分、株式会社よりおおむね12万円軽くなります(2026年12月1日の改定で差は縮まります)
- 決算公告の義務がなく、役員の任期もないため、毎年の手間が軽くなります
- 定款で自由に決められる範囲は広いものの、一人法人では実感しにくい面があります
- 取引先が株式会社を条件にする場合、出資を受ける予定がある場合、許認可の要件になっている場合は選ばないほうが無難です
- 法人税の税率と節税の仕組みは形態によって変わりません
会社設立の形態選びは、判断材料が出そろえば短時間で決められます。サラリーマンとして限られた時間で準備を進めるなら、ここは早めに決めて次に進んでください。
会社員が副業や投資の受け皿として一人で法人を持つのであれば、合同会社で足りることが多いというのが実態です。費用と手間が軽く、続けやすいためです。
そして、節税の成否を分けるのは形態ではありません。役員報酬をどう設計するか、本業の社会保険とどう重なるか。会社設立の形態選びに時間をかけすぎず、そちらの検討に進んでください。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月21日確認)
迷ったら軽いほうから
合同会社を選ぶか株式会社を選ぶかで、会社設立の可否が変わるわけではありません。節税の仕組みも同じです。違うのは、最初にかかる費用と、毎年の手間の量です。
サラリーマンとして本業を持ちながら運営することを考えれば、手続きが軽いほうが続けやすいのは確かです。必要になったら株式会社へ組織変更もできますので、迷ったら軽いほうから始めるという判断には合理性があります。
ただし、取引先や金融機関から株式会社であることを求められる見込みがはっきりしているなら、最初から株式会社にするほうが無駄がありません。判断に迷う部分は、税理士や司法書士にご相談ください。
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