副業の会社設立で社会保険料はいくら増えるか。試算の手順を示します
この記事でできるようになること
副業で会社設立をした場合に社会保険料がいくら増えるか、自分で見当をつけるための記事です。正確な計算は専門家に依頼するとしても、方向性を掴んでおくと判断が早くなります。
必要なのは、給与明細(または保険料額表)と、法人から受け取る予定の報酬額です。この二つがあれば、合算後の等級が分かり、増える保険料のおおよその額が見えてきます。
具体的な保険料率と等級は年度や加入先によって変わります。この記事では手順を示しますので、数字はご自身の加入先の最新の保険料額表でご確認ください。
試算に必要なもの

社会保険料がいくら増えるかを見積もるには、二つの情報があれば足ります。
一つめが、現在の標準報酬月額の等級です。給与明細に記載されていることがありますし、記載がなければ健康保険料や厚生年金保険料の控除額から逆算できます。加入先が公表している保険料額表と照らし合わせれば分かります。
二つめが、法人から受け取る予定の役員報酬の額です。月額で考えます。会社設立の準備段階であれば、候補となる金額をいくつか用意しておくとよいでしょう。
この二つが揃えば、合算した報酬月額がいくらになるかが分かり、その額で新しい等級が決まります。等級が分かれば、保険料額表から保険料の総額が読み取れます。
サラリーマンの場合、本業の給与は年間を通じてほぼ確定していますので、試算の前提が立てやすいという利点があります。独立して事業を始める方より、条件は整っています。
会社設立をして節税を図る場合、この試算は避けて通れません。税額だけを比べて有利に見えても、保険料を足すと逆転していることがあるためです。
なお、標準報酬月額は報酬の額そのものではなく、区分された等級で決まります。報酬が少し増えても等級が変わらなければ保険料は変わりませんし、区分の境目をまたげば一気に上がります。
では、具体的な手順を見ていきます。
出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月21日確認)
手順その一:いまの等級を確認する

最初に、現在の標準報酬月額の等級を確認します。
給与明細に「標準報酬月額」として記載されている場合は、そのまま使えます。記載がない場合は、健康保険料と厚生年金保険料の控除額から逆算します。
保険料額表には、等級ごとに標準報酬月額と保険料の額が並んでいます。ご自身の控除額と一致する行を探せば、等級が分かります。
標準報酬月額は、原則として毎年決まった時期に見直されます。したがって、いま確認した等級は今年度のものです。昇給があれば来年度は変わる可能性があります。
サラリーマンの場合、この等級が土台になります。副業の法人から報酬を受け取ると、この土台の上に積み上がる形で新しい等級が決まります。
ここで確認しておきたいのが、上限に達しているかどうかです。標準報酬月額には上限がありますので、すでに上限にいる方は、報酬を加えても等級が変わりません。
上限に達している方にとっては、役員報酬を受け取っても社会保険料が増えないことになります。会社設立による節税を考えるうえでは、有利な条件です。
逆に、上限に達していない方は、報酬を加えることで等級が上がり、保険料が増えます。この場合、節税額から保険料の増加分を差し引く必要があります。
まずご自身がどちらに当たるかを確認してください。ここで判断が大きく分かれます。
サラリーマンとして毎月受け取っている給与明細は、この試算の出発点になります。会社設立を考え始めたら、まず手元に用意してください。
出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月21日確認)
手順その二:合算後の等級を調べる

次に、法人から受け取る予定の報酬額を足して、合算後の等級を調べます。
日本年金機構の案内によれば、二以上事業所勤務の場合、それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定するとされています。
したがって、本業の報酬月額と、法人から受け取る予定の報酬月額を足した金額で、保険料額表を引きます。その金額が該当する等級が、新しい標準報酬月額の等級になります。
たとえば、本業の報酬月額が40万円で、法人から月10万円を受け取る予定であれば、合算すると50万円です。この50万円が該当する等級を表から探します。
等級が上がっていれば、保険料の総額が増えます。上がっていなければ、増えません。区分の境目との関係で、報酬を少し減らすだけで等級が変わらずに済むこともあります。

サラリーマンが会社設立をして節税を図る場合、この確認を先に済ませておくと、役員報酬をいくらにすべきかの見当がつきます。
出典2-4:被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったとき (日本年金機構/2026年8月21日確認)
手順その三:増えた分を計算する

等級が分かったら、増えた保険料を計算します。
新しい等級の保険料の総額から、いまの等級の保険料の総額を引きます。これが増えた分です。
ここで注意したいのが、労使折半という点です。保険料額表には、全額と折半額の両方が示されているのが一般的です。個人が負担するのは折半額ですが、法人も同額を負担します。
あなたが一人で会社設立をした場合、法人が負担する分も実質的にはご自身の負担です。したがって、節税の試算をするときは、個人負担分と法人負担分の合計で考えてください。
増えた保険料の総額を12倍すれば、年間で増える額のおおよその見当がつきます。この金額を、会社設立による節税額から差し引くことになります。
たとえば、月に2万円増えるとすれば年24万円です。法人住民税の均等割と税理士費用で年30万円前後かかることを考えると、合計で年54万円を上回る節税が必要という計算になります。
この計算をすると、会社設立が見合うかどうかの判断が変わることがあります。税額だけを比べていたときとは、結論が違ってくるためです。
節税を目的とするなら、この保険料の増加を織り込んだうえで報酬額を決めることになります。
会社員が会社設立で節税を狙う場合、この年間の増加額が判断を左右します。均等割と税理士費用に加えて、この額も固定費として数えることになります。
出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月21日確認)
報酬額の候補を並べて比べる

実際に判断するときは、報酬額の候補をいくつか並べて比べるのが効率的です。
たとえば、月ゼロ、月5万円、月10万円、月20万円といった候補を立て、それぞれについて合算後の等級と保険料を調べます。あわせて、法人税と所得税がどう動くかも見ます。
| 役員報酬(月額) | 社会保険 | 法人側 | 個人側 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 被保険者になりません | 利益が残り法人税がかかります | 所得は増えません |
| 5万円 | 等級が上がる場合があります | 損金が増えます | 給与所得が増えます |
| 10万円 | 等級が上がる可能性が高まります | 損金がさらに増えます | 所得税と住民税が増えます |
| 20万円 | 等級が上がることが多くなります | 損金が大きくなります | 税率帯によっては負担増になります |
※ 具体的な金額は示していません。等級・税率・保険料率は個別の状況と年度によって変わるためです。実際の試算は税理士または社会保険労務士にご依頼ください。
この表を、ご自身の数字で埋めてみてください。等級は保険料額表から、税率は課税所得から判断できます。
どこかに最適な点があるとしても、それは前提の組み合わせで動きます。本業の給与、家族の状況、法人の利益。これらが変われば答えも変わります。
会社設立を検討している段階であれば、複数のパターンで試算を依頼するのが確実です。設立前に依頼しておけば、報酬額を決める期限に追われずに済みます。
サラリーマンとして本業を持つ以上、この検討に割ける時間は限られます。見当をつけたうえで専門家に相談する、という進め方が現実的だと思います。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月21日確認)
保険料が増えることの意味

保険料が増えることは負担ですが、それだけではない面もあります。
社会保険は、保険料を負担する代わりに保障を受ける仕組みです。標準報酬月額が上がれば保険料が増えますが、同時に保障の計算基礎も上がります。
厚生年金は、加入期間とその間の標準報酬月額をもとに将来の年金額が計算されます。等級が上がった期間については、年金の計算基礎も上がることになります。
傷病手当金などの給付についても、標準報酬月額が計算の基礎になります。ただし、二以上事業所勤務の場合の取り扱いは個別性がありますので、実際に該当しそうなときは加入先にご確認ください。
節税の試算では保険料を費用として計上しますが、増えた保障の価値をどう評価するかはご自身の状況によります。若い方で将来の年金を重視するなら、増えた分に価値を見出せます。
一方、いま手元の現金を増やしたいという目的であれば、保険料の増加は素直に負担です。会社設立の目的をどこに置くかで、評価が変わります。
なお、標準報酬月額の上限に達している方の場合、報酬を増やしても保険料は増えず、保障も増えません。この場合、社会保険は判断材料から外れます。
サラリーマンが会社設立を考えるとき、まずご自身が上限に達しているかを確認するのは、この意味でも重要です。
サラリーマンとして長く働く予定であれば、厚生年金の計算基礎が上がることには意味があります。会社設立の判断材料として、負担の側だけでなくこちらも見てください。
出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月21日確認)
試算を依頼するときの伝え方

税理士に試算を依頼するとき、何を伝えればよいかを整理します。
まず、社会保険料を含めた計算を依頼することを明示してください。税額の計算だけでは、会社設立が見合うかどうかの判断材料として不十分です。
次に、本業の給与収入と標準報酬月額の等級を伝えてください。会社員の場合、これが試算の土台になります。源泉徴収票と給与明細があれば足ります。
そして、法人の利益の見込みを伝えます。役員報酬を差し引く前の金額です。
さらに、家族の状況も伝えてください。扶養している家族がいるか、配偶者が働いているか。扶養の判定に影響します。

会社設立の前にこれを揃えておけば、設立後に慌てずに済みます。役員報酬は事業年度の開始から一定期間内に決めるものですので、準備が早いほど余裕を持って判断できます。
節税の効果を正確に見積もるには、この準備が土台になります。サラリーマンとして限られた時間で進めるなら、資料を揃えて一度で相談するのが効率的です。
会社員が会社設立の相談をするとき、税理士に税額だけを依頼してしまうことがあります。社会保険まで含めた相談先を確保しておいてください。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)
まとめ

副業の会社設立で社会保険料がいくら増えるかについて、この記事で整理したことをまとめます。
- 必要なのは、現在の標準報酬月額の等級と、法人から受け取る予定の報酬額の二つです
- 手順1:給与明細または保険料額表から、いまの等級を確認します。上限に達しているかを見てください
- 手順2:本業と法人の報酬を合算した額で、新しい等級を調べます
- 手順3:新旧の保険料の総額の差を出します。労使折半の両方を足してください
- 上限に達している方は、報酬を加えても保険料は増えません。判断材料から外れます
- 保険料は負担であると同時に、給付の計算基礎でもあります
会社設立による節税を検討するとき、税額と保険料を並べて計算することが欠かせません。税だけを比べて有利に見えても、保険料を足すと逆転していることがあります。
この手順で見当をつけておけば、専門家に相談するときに具体的な問いが立てられます。サラリーマンとして本業を持つ以上、相談の時間も限られます。準備を整えてから臨んでください。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月21日確認)
見当をつけてから、専門家に相談してください
この手順で見当をつけておけば、税理士や社会保険労務士に相談するときに話が早くなります。「報酬を月◯万円にすると保険料がいくら増えるか」という具体的な問いが立てられるからです。
会社設立による節税を検討するとき、税額の試算だけを依頼して社会保険料が抜けていると、判断を誤ります。依頼するときは、保険料を含めた計算を明示的に求めてください。
そして、役員報酬は一度決めたら一年は動かせません。会社設立の前にこの試算を済ませておけば、期限に追われずに決められます。
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