副業で会社設立をすると、確定申告と年末調整はどうなるか。サラリーマンの申告の流れ
この記事が扱うこと
副業で会社設立をしたサラリーマン、あるいはこれから設立を考えている方に向けて、申告がどう変わるかを整理する記事です。会社設立をすると、手続きが二本立てになります。
本業の年末調整で完結していた方にとって、この変化は小さくありません。節税を目的に会社設立をする場合でも、この手間は固定費と同じように負担として計算に入れる必要があります。
一年の流れとして順に見ていきます。期限のあるものが複数ありますので、そこを中心に押さえてください。個別の判断は税理士にご相談ください。
会社設立の前と後で、何が変わるか

まず、会社設立の前と後で申告がどう変わるかを整理します。
会社設立の前、副業の所得が一定の範囲であれば、サラリーマンは本業の年末調整で所得税の精算が完結していました。副業の所得が大きくなれば個人の確定申告が必要になりますが、それでも手続きは年に一度、個人の申告だけです。
会社設立の後は、これが二本立てになります。法人としての決算と申告、そして個人としての確定申告です。
法人の申告は、事業年度が終わってから行います。個人の確定申告は暦年で行います。事業年度を暦年以外に設定していれば、この二つは別の時期に来ることになります。
節税を目的に会社設立をする場合、この手続きの増加は避けて通れません。サラリーマンとして本業を持ちながら、年に二回、まとまった作業の時期が来ると考えてください。

会社設立による節税を検討するとき、税額の比較には熱心でも、この手続きの増加は軽く見られがちです。しかしサラリーマンにとっては、時間の確保という現実的な問題になります。
では、具体的に何をいつ行うのか。順に見ていきます。
会社設立をしたサラリーマンが最初の一年で戸惑うのは、この二本立ての感覚だと思います。法人の事業年度は自分で決めた日で区切られ、個人の所得税は暦年で区切られます。二つの異なる区切りが並行して走るため、いま何の準備をすべきかが分かりにくくなります。カレンダーに両方の期限を書き込んでおくと、この混乱はかなり減ります。
出典No.2665 年末調整の対象となる人 (国税庁/2026年8月21日確認)
法人の決算と申告

会社設立をすると、事業年度ごとに決算を組み、法人税の申告をすることになります。
申告期限は、原則として事業年度の終了の日の翌日から2か月以内です。この期間に決算書を作成し、税務上の調整を行い、申告書を提出します。
法人税の申告には、別表と呼ばれる書類が複数あります。会計上の利益から税務上の所得を計算する調整を行うためのものです。個人の確定申告とは性質が違い、サラリーマンが独学で行うには負担が大きい部分です。
申告先も一つではありません。税務署に法人税を、都道府県と市区町村に法人住民税と法人事業税を申告します。
ここで、赤字であっても法人住民税の均等割が発生します。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。
会社設立をして節税を図る場合、この均等割は毎年の固定費として節税額から差し引かれます。赤字の年でもかかることを忘れないでください。
サラリーマンにとって重要なのは、この2か月の期間に本業の繁忙期が重ならないようにすることです。事業年度は会社設立のときに自由に決められますので、そこで設計しておいてください。
この作業を税理士に依頼するのが一般的です。会社設立をしたサラリーマンの多くが、記帳は自分で行い、決算と申告を依頼するという形を取っています。
決算の作業量は、事業の規模というより取引の件数で決まります。会社設立をしたばかりで取引が少ないうちは、それほど時間はかかりません。ただし初年度は、開業費の処理や減価償却の設定など、初回だけ発生する判断が入ります。ここを誤ると翌年以降にも影響しますので、初年度こそ専門家に見てもらう価値があります。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)
役員報酬を払うなら、源泉徴収と納付

役員報酬を支払っている場合、源泉徴収と納付が加わります。
報酬から所得税を差し引いて預かり、これを国に納めます。納付は原則として支払った月の翌月10日までです。毎月これを行うことになります。
ただし、給与の支給人員が常時10人未満である場合、納期の特例を申請することで年2回にまとめることが認められます。会社設立の届出と一緒に申請しておくと、毎月の作業が減ります。
サラリーマンとして本業を持ちながら運営する場合、この特例の意味は小さくありません。月に一度の納付が年2回になるだけで、忘れるリスクも作業も減ります。
また、役員報酬を支払う法人は、その報酬について年末調整を行う立場にもなります。ただし、二か所から給与を受けている場合、年末調整を行うのは主たる給与の支払者です。
会社員の場合、通常は本業が主たる給与の支払者になります。したがって、設立した法人の側では年末調整を行わず、源泉徴収票を交付するという扱いになることが多くなります。
この点は状況によって異なりますので、会社設立をしたら税理士に確認してください。扱いを誤ると、源泉徴収の税額に過不足が生じます。
節税の観点では、役員報酬を取るかどうかで手続きの量が変わります。取らなければ源泉徴収も納付も発生しません。手間を抑えたいなら、報酬をゼロにする設計もあり得ます。
ただし、報酬をゼロにすれば法人に利益が残り、個人は受け取れません。節税の効果と手間の量は、ここで連動します。
源泉徴収の税額は、扶養親族の状況などによって変わります。法人から報酬を受け取る場合、その法人に対しても扶養控除等申告書を提出するかどうかという論点が出てきます。ただし、この申告書は主たる給与の支払者にのみ提出するものですので、本業に提出しているなら法人には提出しないことになります。扱いを誤ると税額が変わりますので、会社設立の際に確認しておいてください。
出典No.2508 給与所得となるもの (国税庁/2026年8月21日確認)
個人の確定申告が必要になる

会社設立をしたサラリーマンが見落としやすいのが、この点です。
国税庁は年末調整の対象となる人の範囲を示しています。年末調整は、その勤務先から支払われる給与について行われるものです。
法人から役員報酬を受け取っていれば、二か所から給与を受けていることになります。この場合、主たる勤務先で年末調整を受けたうえで、確定申告によって全体を精算することになります。
会社員だから年末調整で終わり、という前提が崩れるわけです。サラリーマンにとって、会社設立による変化として実感しやすい部分だと思います。
役員報酬を取っていない場合でも、法人の申告は別途必要です。個人としての確定申告が不要になるだけで、作業が消えるわけではありません。
確定申告が必要になることは負担ですが、節税の観点では機会でもあります。医療費控除やふるさと納税の申告など、年末調整では対応しきれない部分をまとめて処理できるようになります。
会社設立をきっかけに、ご自身の税の全体像を把握することにつながる面もあります。とはいえ、申告の内容は会社設立の前より複雑になります。
初年度は税理士に確認しながら進めるのが安全です。どの所得をどこに帰属させるかという判断が絡んでくるためです。
確定申告の際には、本業と法人の両方から源泉徴収票を受け取って添付することになります。法人の分は自分で作成することになりますので、会計ソフトや税理士に依頼して用意してください。会社設立の初年度は、この流れ自体に慣れていないため、余裕を持って準備を始めるほうが安全です。
出典No.2665 年末調整の対象となる人 (国税庁/2026年8月21日確認)
一年の流れとして並べる

ここまでの作業を、一年の流れとして並べます。事業年度をどこに置くかで時期は変わりますが、順番と間隔の感覚をつかむための整理です。

サラリーマンにとって重要なのは、決算と本業の繁忙期を重ねないことです。加えて、個人の確定申告の時期も考慮に入れる必要があります。
たとえば事業年度を3月末にすると、法人の申告が5月末までとなり、その前の2月から3月には個人の確定申告があります。春先に作業が集中するという形になります。
事業年度を別の月にずらせば、この集中を避けられます。会社設立のときに決められることですので、ここで設計しておいてください。
節税の効果を確実にするには、期限内に手続きを終えることが前提です。時間の確保は、それ自体が節税の条件になります。
事業年度を決めるときは、決算の2か月後という申告期限だけでなく、その前の準備期間も見込んでください。帳簿を締めて残高を確認し、資料を税理士に渡すまでに数週間かかることがあります。会社設立の段階でこの期間まで見込んで設計しておけば、毎年の負担が安定します。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)
社会保険の手続きも重なる

申告のほかに、社会保険の手続きも発生します。
役員報酬を支払っている場合、標準報酬月額を見直すための算定基礎届を、毎年決まった時期に提出します。
そして、サラリーマンが会社設立をした場合に特有の手続きとして、二以上事業所勤務届があります。本業ですでに社会保険に加入している方が法人からも役員報酬を受け取ると、二つの事業所で被保険者になるためです。
日本年金機構の案内によれば、この届出は事実発生から10日以内に被保険者本人が提出することとされています。保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、それぞれの報酬に基づいて按分されます。
会社設立の直後は、税務署・自治体・年金事務所への届出が集中します。期限が短いのはこの二以上事業所勤務届ですので、優先して片づけてください。
節税の試算をするときは、この社会保険料の増加も含めてください。税だけを比べて有利に見えても、保険料を足すと逆転していることがあります。
サラリーマンの会社設立では、税理士と社会保険労務士の両方に関わる場面が出てきます。誰に何を依頼するのかを、会社設立の前に整理しておくと漏れがありません。
社会保険の算定基礎届は、提出の時期が決まっています。二以上事業所勤務の場合、選択した事業所を管轄する事務センターから届出用紙が送られてきますので、自社の報酬のみを記載して提出することになります。会社設立をしたサラリーマンにとっては、本業とは別に自分で対応する手続きになりますので、時期を把握しておいてください。
出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月21日確認)
どこまで自分でやるか

これらの作業を、どこまで自分でやるか。会社設立の前に決めておきたい点です。
記帳は、会計ソフトを使えば自分で進められます。法人口座とカードを連携させ、取引をそこに集約すれば、手入力はほとんど不要になります。
決算と法人税の申告は、税理士に依頼するのが一般的です。別表の作成や税務調整は、サラリーマンが独学で行うには負担が大きい部分です。
個人の確定申告は、内容が複雑でなければ自分で進められます。ただし、会社設立の初年度は判断に迷う場面が出てきますので、確認しながら進めるほうが安全です。
費用としては、決算と申告の依頼で年間十数万円から。顧問契約を結べば月額の顧問料が加わります。この費用は、会社設立による節税額から差し引かれる固定費です。

節税額から、この費用と手間を差し引いた残りで判断してください。サラリーマンとして本業を持つ以上、時間の制約は費用と同じ重みを持ちます。
依頼の範囲を決めるときは、節税の相談を含めるかどうかも論点になります。記帳と申告だけを頼む形なら費用は抑えられますが、役員報酬の設計や社会保険との兼ね合いまでは踏み込んでもらえないことがあります。会社員が会社設立をする場合、まさにその部分が難しいところですから、契約の範囲を事前に確認しておいてください。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月21日確認)
まとめ

副業で会社設立をした場合の申告について、この記事で整理したことをまとめます。
- 会社設立をすると、法人の決算・申告と個人の確定申告の二本立てになります
- 法人の申告期限は、事業年度の終了の日の翌日から2か月以内が原則です
- 赤字でも法人住民税の均等割(標準税率で年7万円から)はかかります
- 役員報酬を払えば源泉徴収と納付が加わります。納期の特例で年2回にできます
- 二か所から給与を受ける形になるため、本業の年末調整だけでは完結しません
- 社会保険の算定基礎届と、二以上事業所勤務届も必要になります
会社設立による節税を計算するとき、税理士費用は差し引かれます。それに加えて、この手続きにかかる時間も負担として見てください。
そして、事業年度をいつにするかで作業の集中を避けられます。会社設立のときに決められることですので、本業の繁忙期と個人の確定申告の時期を避けて設計してください。
サラリーマンとして続けられる形になっているか。節税額が固定費を上回っていても、手間が続かなければ意味がありません。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月21日確認)
手間も、節税額から差し引いてください
会社設立をすると、法人の決算・申告と個人の確定申告という二本立てになります。サラリーマンとして本業を持ちながら、これを毎年続けることになります。
節税額を計算するときは、税理士費用だけでなく、この手間そのものも負担として見てください。時間には価値があります。本業に支障が出るようであれば、節税額が出ていても割に合いません。
税理士に依頼する範囲を決めるときは、法人の申告だけでなく個人の確定申告も含めるかを確認してください。会社設立の相談をする段階で、そこまで話しておくと見積もりが正確になります。
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