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就業規則の読み方と、勤務先への相談の進め方。会社設立の前にやること

この記事の使いどころ

会社設立を考えている会社員の方が、実際に就業規則を開いて何を確認すればよいかを知るための記事です。前の記事で「まず就業規則を読んでください」と書きましたが、では具体的にどこを読むのか、という部分を扱います。

あわせて、届出や相談が必要になった場合の進め方も整理します。伝え方によって受け取られ方が変わる部分がありますので、何を説明できる状態にしておくかを具体的に示します。

サラリーマンにとって、ここは会社設立の手続きそのものより気が重い部分かもしれません。ただ、順番を守れば避けられる問題ですので、先に済ませることをおすすめします。

就業規則はどこにあるか

就業規則はどこにあるかを表したイラスト

就業規則を確認するには、まず現物が必要です。どこにあるかから確認しましょう。

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働者に周知することが求められています。周知の方法としては、見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付、電子的な方法での閲覧などがあります。

実務上は、社内のイントラネットや共有フォルダに置かれていることが多いはずです。見当たらない場合は、人事や総務に「就業規則を確認したい」と伝えれば入手できます。この段階では、副業の話をする必要はありません。

あわせて、入社時に署名した書類も確認してください。労働契約書、誓約書、機密保持に関する同意書。就業規則に定めがなくても、これらに別の取り決めがあることがあります。

サラリーマンとして長く勤めていると、入社時の書類を保管していないこともあります。その場合は、就業規則と、現在有効な労働条件通知書を確認することになります。

規則は改定されます就業規則は改定されることがあります。数年前に読んだ記憶があっても、副業に関する規定が変わっている可能性があります。会社設立を考えるタイミングで、あらためて最新のものを確認してください。副業を認める方向で改定する企業が増えているという事情もあります。

サラリーマンが就業規則を読む機会は、実際にはあまり多くありません。入社時に一度目を通したきり、という方がほとんどだと思います。会社設立を考えるいまが、あらためて読む機会になります。

出典副業・兼業と労働条件 (厚生労働省/2026年8月21日確認)

読むべき四つの条文

読むべき四つの条文を表したイラスト

就業規則を手に入れたら、次の四つの規定を探してください。目次から該当箇所を見つけるのが早道です。

一つめ:副業・兼業に関する規定

「副業」「兼業」「二重就職」といった見出しで書かれています。全面禁止か、許可制か、届出制か。この三つのどれに当たるかを確認します。近年は届出制や許可制に緩和する企業が増えています。

二つめ:役員兼務に関する規定

会社設立をして代表者になる場合、こちらが直接効きます。「他の会社の役員に就任してはならない」「取締役等に就任する場合は許可を要する」といった規定です。副業の規定とは別に置かれていることがあるので、見落とさないでください。

三つめ:競業避止に関する規定

本業と競合する事業を行うことを制限する規定です。会社設立の際に登記する事業目的が、この範囲に触れないかを確認します。事業目的は広く書きたくなりますが、競業に該当しない範囲にとどめるほうが安全です。

四つめ:職務専念に関する規定

勤務時間中は職務に専念する義務を定めた規定です。副業を勤務時間外に行う限り問題になりにくいのですが、会社の設備や情報を使う場合には別の論点になります。

就業規則で確認する四つの規定を並べたチェックリスト
二つめを見落とすと、あとで問題になります。副業の規定だけでは不十分です。

サラリーマンが会社設立をする場合、この四つのうち二つめの役員兼務がとくに重要です。副業として業務を受託するだけなら一つめで足りますが、法人の代表者になる以上、役員兼務の規定を避けて通れません。

出典副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説 (厚生労働省/2026年8月21日確認)

公務員の場合。法律で定められています

公務員の場合。法律で定められていますを表したイラスト

公務員の方については、前提がまったく異なります。就業規則の話ではなく、法律の話になります。

国家公務員については国家公務員法が、地方公務員については地方公務員法が、営利企業の役員を兼ねることや、自ら営利企業を営むことを原則として禁止しています。

したがって、公務員の方が会社設立をして代表者に就任するという形は、原則として取れません。民間企業の会社員のように、就業規則を確認すれば済むという話ではありません。

承認を要する手続きが定められている場合もありますので、所属先の規程と人事担当に必ず確認してください。人事院も国家公務員の服務に関する情報を公開しています。

一定の範囲の行為については、承認を得ることで認められる場合があります。ただし範囲は限定的で、手続きも定められています。会社設立による節税を検討する前に、まずご自身の立場で可能なのかを確認してください。

名義を家族にするという発想について公務員に限らず、「配偶者を代表者にすればよい」という説明を見かけることがあります。しかし、実質的に事業を行っているのが自分であれば、名義を変えても実態は変わりません。税務上も実質で判断されます。当サイトはこの形をおすすめしません。

出典国家公務員法(e-Gov 法令検索) (e-Gov/2026年8月21日確認)

厚生労働省のガイドラインと、企業側の動向

厚生労働省のガイドラインと、企業側の動向を表したイラスト

副業・兼業をめぐる状況は、この数年で変わってきています。

厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を示し、企業に対して副業・兼業を認める方向での対応を促しています。ガイドラインでは、労働時間の管理や健康管理についての考え方が整理されています。

また、副業・兼業を認めているかどうか、認める場合の条件について、企業が情報を公表することが望ましいとされています。就職や転職を考える人が判断できるようにするという趣旨です。

ただし、これは法律による義務づけではありません。すべての企業が無条件に認めるという意味ではないという点は押さえておいてください。実際には、届出を要件とする、競業にあたる場合は認めない、といった条件が付いていることが一般的です。

それでも、以前と比べれば認められやすくなっているのは確かです。就業規則を読んでみたら届出制になっていた、というケースは珍しくありません。確認せずに諦めるのは早いとも言えます。

会社員が会社設立をして節税を図る場合も、まずこの確認から始めてください。認められているのであれば、堂々と進めることができます。

就業規則の定め方に応じて会社員が取れる行動を整理した図
右側に入った場合は、確認を先に済ませてください。曖昧なまま進めないことが大切です。

出典副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説 (厚生労働省/2026年8月21日確認)

届出や相談をするときに伝えること

届出や相談をするときに伝えることを表したイラスト

届出や許可の申請が必要だと分かった場合、何を伝えるかを整理しておきましょう。

多くの場合、次の四つが問われます。あらかじめ答えられる状態にしておくと、話が早く進みます。

届出・相談の際に問われることと、準備しておく内容
問われること 準備しておく内容
どんな事業を行うのか 事業の内容を具体的に。登記する事業目的とも整合させます
本業と競合しないか 取引先や事業領域が重ならないことを説明できるように
勤務時間への影響はあるか 勤務時間外に行うこと、本業に支障が出ないことを
会社の情報や設備を使わないか 本業で得た情報を使わないことを明確に

※ 実際に問われる内容は勤務先の規定によります。所定の様式がある場合はそれに従ってください。

重要なのは、本業に影響がないことを説明できるという点です。会社設立をすること自体より、本業への支障を懸念されることが多いためです。

節税が目的であることを伝えるかどうかは、状況によります。事業の内容を説明する際に、副業の収入を法人で受けるという形になることは自然に伝わります。無理に伏せる必要はありませんが、必要以上に詳しく話す必要もありません。

なお、許可制の場合は承認が下りるまで会社設立を進めないでください。準備を並行して行うことは差し支えありませんが、登記を先に済ませてしまうと戻せません。

サラリーマンとして相談する際は、伝える相手を選ぶことも大切です。直属の上司に先に話すべきか、人事に直接確認するべきかは、社風によって変わります。所定の手続きが定められているなら、それに従うのが確実です。

出典副業・兼業と労働条件 (厚生労働省/2026年8月21日確認)

認められなかった場合の選択肢

認められなかった場合の選択肢を表したイラスト

確認した結果、会社設立が認められないという結論になることもあります。その場合の選択肢を整理します。

まず、個人のまま続けるという選択があります。副業そのものが認められているなら、法人にしないだけで問題は生じません。青色申告の承認を受けて特別控除を使う、経費の計上漏れを見直すといった形で、個人のままでもできる節税があります。

次に、規模が大きくなってから再検討するという考え方があります。副業の利益が固定費を大きく上回るようになれば、勤務先と改めて相談する材料にもなります。

そして、転職や独立を視野に入れるという選択もあり得ます。ただしこれは会社設立の話を超えますので、別の判断になります。

  • 個人のまま、青色申告や経費の見直しで対応する
  • 副業の規模が大きくなってから、改めて相談する
  • 本業と競合しない事業内容に変えて、再度確認する
  • 小規模企業共済やiDeCoなど、個人でできる制度を検討する

会社設立が節税の唯一の手段ではありません。固定費のかからない方法から先に検討するほうが、確実に効果が出ます。会社員として本業がある以上、無理に法人を持つ必要はありません。

なお、認められなかったにもかかわらず会社設立を進めることは、就業規則違反として扱われる可能性があります。当サイトはそうした進め方をおすすめしません。

サラリーマンの節税として、会社設立以外にも使える制度があります。iDeCoは掛金が全額所得控除の対象になりますし、ふるさと納税も選択肢です。法人を持たずにできることを先に確認しておくと、判断の幅が広がります。

出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月21日確認)

確認が済んだあとに進むこと

確認が済んだあとに進むことを表したイラスト

就業規則の確認が済み、必要な手続きも終えたら、ようやく会社設立の準備に入れます。

ここからは、形態の選択、資本金の額、事業年度の設定、そして役員報酬をどうするかという設計の話になります。節税の効果は、この設計で決まります。

とくに役員報酬は、会社員の場合に判断が難しい部分です。本業の給与と合算されて所得税がかかり、法人でも社会保険の被保険者になります。二以上事業所勤務の届出が必要になり、保険料は合算した報酬をもとに按分されます。

節税額を見積もるときは、税金だけでなく社会保険料も含めて計算してください。税だけを比べると有利に見えても、保険料を足すと逆転していることがあります。

そして、赤字でもかかる法人住民税の均等割があります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。税理士費用と合わせて、年間の固定費を把握しておいてください。

これらを差し引いてもなお節税額が残るのであれば、会社設立は選択肢になります。確認が済んでいれば、あとは数字の判断だけです。

サラリーマンが会社設立をしたあとは、本業の年末調整とは別に確定申告が必要になります。役員報酬を受け取れば二か所からの給与になるためです。手続きが増えることも、固定費と同じように負担として数えてください。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

就業規則の確認と勤務先への相談について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 就業規則は社内で閲覧できる状態にあるはずです。入社時の誓約書もあわせて確認します
  2. 読むべきは四つ。副業・兼業、役員兼務、競業避止、職務専念の規定です
  3. 会社設立で直接効くのは役員兼務の規定です。副業の規定だけを見ないでください
  4. 公務員は法律で営利企業の役員兼業が原則禁止されています。前提が異なります
  5. 厚生労働省のガイドラインにより、認める方向での対応が促されています。確認せずに諦めるのは早いです
  6. 届出の際は、事業内容・競業の有無・勤務時間への影響・会社の情報や設備の扱いを説明できるように

この確認は、会社設立の準備のなかでもっとも気が重い部分かもしれません。ただ、先に済ませれば、あとは節税の設計に集中できます。

サラリーマンとして本業を続けながら法人を運営するのであれば、勤務先との関係が整理されている状態のほうが、間違いなく続けやすくなります。順番を守って進めてください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月21日に厚生労働省・人事院・e-Gov・総務省・国税庁のページで確認したものです。就業規則の内容は企業ごとに異なります。実際の判断にあたっては、勤務先の規定を確認し、必要に応じて社会保険労務士や弁護士などの専門家にご相談ください。税務に関する個別の判断は税理士にご相談ください。

出典人事院 (人事院/2026年8月21日確認)

聞きにくいことほど、先に片づける

就業規則の確認と勤務先への相談は、会社設立の準備のなかでもっとも気の重い部分だと思います。ただ、これを後回しにすると、法人をつくったあとで問題が表面化することになります。そのときには、もう戻せません。

確認した結果、認められる範囲が分かれば、そのなかで節税の設計に集中できます。認められないと分かれば、いまは個人のまま続けるという判断ができます。どちらにしても、判断ができる状態になります。

会社設立と節税の話は、この確認が済んでからで十分間に合います。手続き自体は数週間で終わりますので、急ぐ必要はありません。制度の面で迷う部分は、税理士や社会保険労務士にご相談ください。

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