サラリーマンは株式会社と合同会社のどちらで会社設立をするか。節税への影響で選ばない
この記事が想定している方
会社設立をすることは決めたものの、株式会社と合同会社のどちらにするかで迷っている会社員の方に向けた記事です。副業や投資の収入を法人で受けることを考えている段階を想定しています。
先に結論の方向を申し上げると、節税の効果で形態を選ぶという考え方は、あまり実態に合いません。法人税の税率は会社の形態ではなく所得の規模などで決まるためです。では何を基準に選ぶのか、という点をこの記事で整理します。
サラリーマンとして本業を続けながら法人を運営する前提で、費用と手間の違いを中心に書きます。個別の判断は税理士などの専門家にご相談ください。
先に押さえる。税額は会社の形態では変わらない

会社設立の形態を選ぶとき、「どちらが節税になるか」という観点で比べたくなります。ただ、この問いには先に答えを出しておいたほうが早いです。法人税の税率は、株式会社か合同会社かでは変わりません。
法人税の税率は、資本金の額や所得の金額といった区分によって決まります。会社の種類による区分ではありません。したがって、同じ所得であれば、株式会社でも合同会社でも法人税額は基本的に同じになります。
法人住民税の均等割も同様です。資本金等の額と従業者数の区分で決まりますので、形態そのものによる差はありません。標準税率であれば、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。
「合同会社のほうが節税になる」という説明を見かけたら、それが何を指しているのかを確かめてください。多くの場合、設立費用や維持費が安いことを指しています。税率が違うという意味ではありません。
よくある誤解を先に片づける
会社設立の形態について検索すると、「合同会社は節税に向く」「株式会社のほうが節税の幅が広い」といった説明が混在しています。どちらも、正確には形態の話ではありません。節税の幅を決めるのは、事業の中身と役員報酬の設計であって、登記された会社の種類ではないからです。
サラリーマンが会社設立を考えるとき、この点を先に整理しておくと、比較すべき項目がはっきりします。比べるのは税率ではなく、費用・手間・信用の三つです。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)
会社設立のときにかかる費用の差

会社設立の時点でかかる費用を比べます。ここが両者のいちばん大きな違いです。

株式会社の場合、作成した定款について公証人の認証を受ける必要があります。日本公証人連合会の案内によれば、手数料は資本金の額が100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以外で5万円です。合同会社にはこの手続きがありません。
サラリーマンが副業の受け皿として会社設立をする場合、初年度は節税の効果が出るより先に費用が出ていきます。最初の持ち出しが小さいことは、それ自体が判断材料になります。
なお、資本金の額をいくらにするかも会社設立時に決めます。資本金が1000万円以上になると、消費税の納税義務の判定や均等割の区分に影響します。サラリーマンの副業法人であれば1000万円未満に収まることがほとんどですが、出資額を決めるときに意識しておくとよい点です。
登録免許税は資本金の額の0.7%で計算され、それが最低額に満たない場合に最低額が適用されます。株式会社で資本金を大きくすると、この0.7%のほうが効いてきて、登録免許税が15万円を超えることがあります。節税の観点というより、初期費用を抑える観点からの検討事項です。
出典Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。 (日本公証人連合会/2026年8月21日確認)
毎年かかる維持コストの差

設立費用は一度きりですが、維持コストは毎年かかります。会社設立の判断としては、こちらのほうが長い目で効いてきます。
法人住民税の均等割は形態による差がありません。差が出るのは、決算公告の義務と、税理士に依頼する場合の費用です。

株式会社は、定時株主総会の終結後に決算を公告することが求められます。公告の方法は定款で定めますが、官報に掲載する場合は掲載料が発生します。自社のウェブサイトに掲載する方法を選ぶこともできます。
合同会社にはこの義務がありません。また、役員の任期に関する登記も不要です。株式会社の場合、取締役の任期が満了するたびに重任の登記が必要で、そのつど登録免許税がかかります。運営を続けるほど、手続きの回数に差が出ます。
税理士費用に差が出るのは、株式会社のほうが求められる書類がやや多いことによります。ただし、これは依頼する範囲と事務所の方針によるところが大きく、形態だけで一律に決まるものではありません。見積もりを取るときに、決算公告の対応が含まれるかどうかを確認しておくとよいでしょう。
サラリーマンとして本業を持ちながら法人を運営する場合、この維持コストは節税額から差し引かれる固定費として毎年効いてきます。会社設立の初年度は費用が先に出ていきますから、二年目以降に節税額がこれを上回るかどうかで判断することになります。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月21日確認)
信用の差は、どの場面で効くのか

合同会社のほうが費用も手間も軽いのであれば、なぜ株式会社を選ぶ人がいるのか。理由としてよく挙げられるのが、対外的な信用です。
ただ、この点は事業の内容によって重みがかなり変わります。

会社設立をする目的が、副業や投資の収入を法人で受けることであれば、取引の相手はある程度限られます。その相手が形態を気にするかどうかを、先に確認しておくのが確実です。
なお、金融機関からの借入れを予定している場合は、事前に相談しておくとよいでしょう。形態そのものより、事業の内容と実績が見られることが多いとされていますが、方針は金融機関によって異なります。
出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月21日確認)
会社員が見落としやすい違い

株式会社と合同会社の違いのうち、会社設立の時点では意識しにくいものがあります。役員の任期です。
株式会社の取締役には任期があり、原則として2年、非公開会社では定款で最長10年まで伸ばすことができます。任期が満了すると、同じ人が続ける場合でも重任の登記が必要になります。この登記にも登録免許税がかかります。
合同会社の業務執行社員には、こうした任期の定めがありません。したがって、重任の登記も不要です。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 役員の任期 | 原則2年(定款で最長10年まで) | 定めはありません |
| 任期満了時の登記 | 重任の登記が必要です | 不要です |
| 決算公告 | 義務があります | 義務はありません |
| 利益の配分 | 出資割合に応じるのが原則です | 定款で自由に定められます |
| 機関設計 | 株主総会・取締役などの規律があります | 比較的自由です |
※ 会社法の規定に基づく一般的な整理です。詳細は個別の定款の定めによります。
利益の配分についても違いがあります。株式会社では、剰余金の配当は原則として持株数に応じて行われます。合同会社では、定款で定めることにより出資の割合と異なる配分をすることが認められています。ただし、これは複数人で会社設立をする場合の論点であり、一人で設立する会社員にはあまり関係しません。
機関設計の自由度も合同会社のほうが高くなります。株主総会や取締役会といった機関に関する規律がないため、意思決定の手続きが簡素です。一人で運営する法人であれば、この違いが手間として現れることは多くありませんが、書面の整備という点では軽くなります。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月21日確認)
節税の設計は、形態を問わず同じ課題が残る

形態の違いを見てきましたが、会社設立による節税の設計という点では、株式会社でも合同会社でも同じ課題が残ります。
役員報酬をいくらに置くか。取るのか取らないのか。取る場合、本業の給与と合算されて所得税がかかり、法人でも社会保険の被保険者になります。二以上事業所勤務の届出が必要になり、保険料は合算した報酬をもとに按分されます。
この構造は形態によって変わりません。合同会社を選んだから社会保険が軽くなる、ということはありません。会社設立の形態選びで解決する問題ではないということです。
- 役員報酬の額は、事業年度の開始から一定期間内に決める必要があります
- 定期同額給与などの要件を満たさなければ、損金になりません
- 本業の給与所得控除は上限があり、すでに達している場合は追加の控除が生まれません
- 報酬を取れば社会保険の対象になり、取らなければ法人に利益が残ります
サラリーマンが会社設立で節税を図る場合、結果を左右するのはこの設計です。形態の選択に時間をかけるより、設立後にどう運用するかを先に決めておくほうが実益があります。
もう一点、形態を問わず共通することがあります。会社設立をすると、本業の年末調整とは別に、自分で確定申告をすることになります。法人から役員報酬を受け取れば二か所からの給与になるためです。役員報酬を取らない場合でも、法人の申告は別途必要です。手続きが二本立てになるという点は、株式会社でも合同会社でも変わりません。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月21日確認)
どちらを選ぶか、判断の順番

ここまでの内容を、判断できる形にまとめます。次の順番で確認してください。

サラリーマンが副業や投資の受け皿として会社設立をする場合、上の二つに該当しないことが多くなります。その場合は、費用と手間の軽い合同会社を選んで差し支えありません。
逆に、将来的に株式会社へ変更したくなった場合、組織変更という手続きで移ることができます。ただし手続きと費用がかかりますので、最初から必要性がはっきりしているなら株式会社を選ぶほうが無駄がありません。
- 費用を優先するなら
- 合同会社。設立費用と維持コストの両方で軽くなります
- 信用を優先するなら
- 株式会社。ただし相手が気にする場面かを確認してください
- 手間を優先するなら
- 合同会社。任期の登記と決算公告がありません
- 節税を優先するなら
- 形態では決まりません。役員報酬と社会保険の設計で決まります
判断がつかない場合、合同会社で会社設立をして様子を見るという進め方もあります。事業が育って株式会社であることが必要になった時点で、組織変更を検討すればよいからです。逆方向、つまり株式会社から合同会社への変更も制度上は可能ですが、いずれにせよ手続きと費用が発生します。
サラリーマンの場合、副業や投資の規模が読みにくい段階で会社設立をすることが多くなります。であれば、最初は軽いほうから始めて、必要になったら変えるという順番のほうが、無駄が少なくなります。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)
まとめ

サラリーマンが会社設立をするときの形態選びについて、この記事で整理したことをまとめます。
- 法人税と均等割の額は、株式会社か合同会社かでは変わりません
- 設立費用は合同会社のほうが10万円台軽くなります(2026年12月1日の改定でこの差は縮まります)
- 維持コストは、決算公告と役員の任期の登記の分だけ株式会社が重くなります
- 信用の差が効くかどうかは、取引先によって変わります
- 節税の設計、とくに役員報酬と社会保険の扱いは、形態を問わず同じ課題として残ります
会社設立の形態を選ぶことに時間をかけすぎると、本来もっと重要な設計の検討が後回しになります。会社員が法人を持つ場合、節税の成否を分けるのは形態ではなく設立後の運用です。
出典No.1410 給与所得控除 (国税庁/2026年8月21日確認)
迷ったら、続けやすいほうを
株式会社と合同会社のどちらを選んでも、会社設立によって得られる節税の仕組みはほぼ同じです。違うのは、最初にかかる費用と、毎年の手間の量です。
サラリーマンとして本業を持ちながら法人を運営する場合、続けられるかどうかが最も重要な基準になります。手続きが軽いほうが続きやすいのは確かです。一方で、取引先との関係で株式会社であることが求められる場合には、その必要性が優先します。
どちらを選ぶにせよ、設立後の役員報酬と社会保険の設計は共通の課題として残ります。そこは形態を問わず難しい部分ですので、税理士に相談しながら決めていただくのがよいと思います。
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