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会社設立 プライベートカンパニー

会社設立して資産を移すときのコスト。移す前に確かめること

この記事が扱う場面

すでに個人で資産を持っている方が、会社設立をしてその資産を法人に移すことを検討する場面を扱います。移すこと自体にかかる費用を中心に整理します。

会社設立をすれば法人が生まれますが、あなたの資産が自動的に法人のものになるわけではありません。別人格ですから、移すには手続きと費用が要ります。

この費用を回収できるかどうかが、判断の分かれ目になります。回収に何年かかるかを見積もる手順を示します。個別の判断は税理士にご相談ください。

会社設立をしても資産は自動では移りません

会社設立をしても資産は自動では移りませんを表したイラスト

最初に、基本的な構造を確認します。

会社設立をすると、法人という別人格が生まれます。しかし、あなたが持っている資産が自動的に法人のものになるわけではありません。

別人格である以上、資産を移すには譲渡や現物出資といった手続きが必要です。そして、その手続きには費用がかかります。

これは、会社設立を検討する段階で見落とされやすい点です。「法人をつくれば資産を法人で管理できる」という説明は、移す手続きと費用を省略していることがあります。

移す方法としては、主に次の二つがあります。

  • 譲渡:個人から法人へ売却する形。法人が対価を支払います
  • 現物出資:資産を出資して、その対価として持分や株式を受け取る形

いずれの場合も、資産の種類によって登録免許税などの費用が生じます。また、譲渡した個人の側で所得が発生することもあります。

会社設立の費用とは別に、この移転コストがかかるということです。合計すると、想定より大きな金額になることがあります。

サラリーマンが会社設立を検討する場合、まずこの構造を理解してください。そのうえで、移す資産ごとに費用を見積もることになります。

移さないという選択もありますすでに持っている資産は個人に残したまま、これから取得するものだけを法人名義にするという形も取れます。この場合、移転コストは生じません。会社設立の目的によっては、こちらのほうが合理的です。

サラリーマンが会社設立を考えるとき、資産を移す前提で計画を立てていることがあります。まず移転コストを確かめてください。

資産を法人に移す動機は、多くの場合、節税にあります。ただし移転コストを含めると結論が変わることがあります。

出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月22日確認)

不動産を移す場合の費用

不動産を移す場合の費用を表したイラスト

移転コストが最も大きくなるのが不動産です。三つの費用がかかります。

一つめが登録免許税です。所有権の移転登記に対してかかります。不動産の価額に応じて計算されますので、資産の規模が大きいほど金額も大きくなります。

二つめが不動産取得税です。不動産を取得した法人の側にかかります。こちらも不動産の価額に応じて計算されます。

三つめが、譲渡による所得税です。個人が法人に売却した形になりますので、譲渡益が生じれば個人の側で課税されます。

この三つを合計すると、不動産の価額に対して相応の割合になります。会社設立の費用が数万円から20万円程度であることを考えると、桁が違う金額になることもあります。

したがって、すでに持っている不動産を法人に移すかどうかは、慎重な検証が必要です。移転コストを何年で回収できるかを計算してください。

一方、これから取得する物件を法人名義にするのであれば、移転コストは生じません。取得の際の登録免許税や不動産取得税は個人で買っても法人で買ってもかかるためです。

会社設立を先に済ませ、その法人で取得するという順番であれば、無駄がありません。ただし、法人での取得には融資の問題が絡みます。

会社設立の直後は事業の実績がありませんので、借入れの審査で不利になることがあります。この点も含めて計画を立ててください。

具体的な税額の計算は個別の事情によりますので、税理士にご相談ください。

サラリーマンとして本業の収入があれば、移転コストを一時的に負担することはできるかもしれません。ただし、回収できるかは別の問題です。

不動産の節税効果は毎年生じますが、移転コストは一度きりです。この関係で回収年数が決まります。

出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

有価証券を移す場合

有価証券を移す場合を表したイラスト

次に、株式などの有価証券です。

有価証券には登録免許税や取得税はかかりませんので、不動産より移転の費用は小さくなります。ただし、譲渡による所得の問題は残ります。

個人が保有する有価証券を法人に売却すれば、譲渡益が生じた場合は個人の側で課税されます。含み益が大きい銘柄であれば、その分の税負担が発生します。

含み益がある資産を移すと、その時点で課税されるという点は、移転を検討する際に必ず確認してください。会社設立をした年に、想定外の納税が生じることがあります。

また、個人と法人では課税の仕組みが違います。個人の場合、上場株式の譲渡益や配当については分離課税などの仕組みがあります。法人の場合、有価証券の損益は他の所得と合算して法人税の対象になります。

さらに、個人で使える非課税の制度は法人では使えません。移すことで使える制度が減るという面もあります。

したがって、有価証券を法人に移すかどうかは、移転時の課税と、移した後の課税の仕組みの両方を比べて判断することになります。

会社設立をして新たに取得する分だけを法人で運用するという形であれば、移転時の課税は生じません。この形のほうが無駄が少なくなることが多いはずです。

サラリーマンとして本業の収入がある場合、法人に資金を出資して、その資金で新たに取得するという流れになります。

サラリーマンが保有する有価証券を法人に移す場合、含み益の大きさによっては会社設立の初年度に大きな納税が生じます。

有価証券については、節税になるかどうかが運用の内容によって変わります。移す前に確かめてください。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

回収できるかを計算する

回収できるかを計算するを表したイラスト

移転コストがかかるとして、それを回収できるかを計算する手順を示します。

計算は単純です。移転コストを、年あたりの節税額で割る。これが回収に必要な年数になります。

たとえば移転コストが200万円で、年あたりの節税額が30万円だとすれば、回収に約7年かかる計算です。

ただし、ここで使う節税額は、固定費を差し引いたあとの金額でなければなりません。会社設立をすれば法人住民税の均等割がかかり、決算と申告の費用も生じます。

総務省の資料で標準税率を確認すると、均等割は資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、年7万円です。これに税理士費用が加わり、年30万円前後になることが多くなります。

資産移転コストを回収する計算に使う項目を示した横棒グラフ
この例では、回収に約7年かかる計算になります。

回収に必要な年数が、資産を保有し続ける期間より長ければ、移す意味は薄くなります。

会社員が会社設立を検討する場合、本業の状況が変わる可能性もあります。10年、20年という単位で確実に続けられるかを考えてください。

この計算をしてみると、移さないほうがよいという結論になることも多いはずです。

サラリーマンの場合、本業の状況が変わる可能性もあります。回収年数が長いほど、途中で条件が変わるおそれが高まります。

節税額から固定費を差し引いた金額で、移転コストを割ってください。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月22日確認)

移さずに済ませる方法

移さずに済ませる方法を表したイラスト

移転コストを回収できないのであれば、移さずに済ませる方法を検討することになります。

最も単純なのが、これから取得するものだけを法人名義にするという形です。すでに持っている資産は個人に残し、新たに取得するものを法人で買います。

この形であれば移転コストは生じません。すでに持つ資産からの収益は個人の所得として、新たに取得するものからの収益は法人の所得として扱われます。

会社設立を先に済ませ、資金を出資したうえで、その法人で取得するという順番になります。

もう一つが、所有は個人のまま、管理を法人に委託するという形です。法人が管理料を受け取り、個人はその分を経費として計上します。

ただし、実体のない管理委託は否認される可能性があります。国税庁は役員給与について不相当に高額な部分は損金にならないとしていますが、管理料についても業務の実態と金額が釣り合っているかが問われます。

何もしていない法人に管理料を払っていれば、その支出が事業に必要だったことを説明できません。実際に管理業務を行い、その記録を残すことが前提になります。

会社設立をして管理を受託する形を取るのであれば、どんな業務を行うのかを具体的に決めておいてください。

サラリーマンとして本業を持ちながら管理業務を行う場合、時間の面での制約もあります。無理のない範囲で設計してください。

移さずに済ませれば、節税の効果は新規取得分に限られますが、移転コストはかかりません。

出典No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) (国税庁/2026年8月22日確認)

会社員が確認する順番

会社員が確認する順番を表したイラスト

会社員が資産管理のための会社設立を検討する場合、資産の話より前に確認することがあります。

一つめが就業規則です。会社設立をして代表者になることは役員兼務にあたります。資産の運用そのものは副業に該当しないと扱われることが多いのですが、法人をつくって代表者になることは別の論点です。

二つめが社会保険です。法人は役員一人でも適用事業所になります。役員報酬を受け取れば被保険者になり、本業ですでに加入している方は二つの事業所で被保険者となります。

日本年金機構の案内によれば、この場合は二以上事業所勤務の届出が必要で、保険料は両方の報酬を合算した標準報酬月額により決定され、按分されます。

この二つを確認したうえで、資産の移転コストと回収年数の計算に進むことになります。

会社員が資産管理のための会社設立を検討する際に確認する順番のチェックリスト
上の二つを飛ばさないでください。資産の話より先に来ます。

この順番で確認すれば、判断の材料が揃います。途中で条件を満たさないと分かれば、そこで止められます。

会社設立をしてから移転コストの大きさに気づくと、手戻りが生じます。設立前に見積もっておいてください。

サラリーマンとして本業を持ちながら、資産管理と法人運営を並行させることになります。時間の面も考慮してください。

節税の話に入る前に、この二つを確認してください。

出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)

移した後に続くこと

移した後に続くことを表したイラスト

資産を移したあとに続くことも確認しておきます。

会社設立をすれば、法人としての義務が生じます。資産を保有しているだけでも、毎年の決算と申告が必要です。

法人税の申告期限は、原則として事業年度の終了の日の翌日から2か月以内です。都道府県と市区町村への申告も必要になります。

そして、法人住民税の均等割は収益がなくてもかかります。資産から収益が上がらない年でも、この負担は続きます。

不動産であれば、固定資産税は法人が負担することになります。管理や修繕の判断も法人として行います。

有価証券であれば、期末の評価や損益の計上を法人の会計として処理することになります。個人の運用とは記録の仕方が変わります。

これらを毎年続けられるかが、会社設立を判断する現実的な条件になります。サラリーマンとして本業を持ちながら、資産の管理と法人の運営を並行させることになります。

税理士に依頼すれば手間は減りますが、費用がかかります。この費用も固定費として、節税額から差し引いてください。

そして、たたむときには解散と清算の手続きが必要です。法人が保有する資産をどうするかという問題も生じます。個人に戻すなら、そこでも課税の問題が出てきます。

入口だけでなく出口まで見通したうえで、会社設立を判断してください。

節税の効果が続くかどうかは、資産を保有し続けるかによります。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月22日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

会社設立をして資産を移す場合について、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 会社設立をしても、資産は自動的に法人のものにはなりません。別人格だからです
  2. 不動産:登録免許税・不動産取得税・譲渡による所得税の三つがかかります。金額が大きくなります
  3. 有価証券:含み益があると、移す時点で課税されます
  4. 回収に必要な年数は、移転コストを固定費差し引き後の年あたり効果で割って求めます
  5. 回収年数が保有期間より長ければ、移す意味は薄くなります
  6. 移さずに、これから取得するものだけを法人名義にする形もあります
  7. 会社員は就業規則と社会保険を、資産の話より先に確認してください

移転コストを回収できるかどうかが、判断の中心になります。計算してみると、移さないほうがよいという結論になることも多いはずです。

その場合は、これから取得するものだけを法人名義にするという形を検討してください。移転コストが生じず、無駄がありません。

そして、会社設立をすれば資産を持っているだけでも毎年の義務が生じます。入口だけでなく出口まで見通したうえで判断してください。

この記事の内容について制度の内容は2026年8月22日に国税庁・総務省・日本年金機構・法務省のページで確認したものです。資産の移転に伴う課税は個別の事情によって大きく変わります。制度は改正されますので、実際の判断にあたっては必ず税理士にご相談ください。当サイトは一般的な制度の解説であり、個別の税務相談ではありません。

節税額と移転コスト、そして固定費。三つを並べて判断してください。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月22日確認)

移さないという選択もあります

会社設立をしても、すでに持っている資産を必ず移す必要はありません。個人に残したまま、これから取得するものだけを法人名義にするという形もあります。

この形であれば移転コストは生じません。すでに持つ資産からの収益は個人の所得として、新たに取得するものからの収益は法人の所得として扱われます。

移転コストを回収できないのであれば、この形のほうが無駄がありません。判断に迷う部分は、資産の内訳を持って税理士にご相談ください。

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