会社設立で保険の入り方が変わる。国保・国民年金との違いを確かめる
この記事が扱うこと
会社設立を検討している、あるいは設立した会社員に向けて、社会保険の入り方がどう変わるかを整理する記事です。
個人事業であれば国民健康保険と国民年金でした。法人になると、厚生年金と健康保険の適用事業所になります。制度そのものが変わります。
ただし、会社員はすでに本業で加入しています。その場合にどうなるのかを含めて確かめます。手続きの詳細は年金事務所にご確認ください。
個人事業と法人で制度が違います

まず、個人事業と法人で加入する制度が違うことを確認します。
個人事業主は、原則として国民健康保険と国民年金に加入します。従業員が一定の人数を超える場合など、扱いが変わる場合もあります。
法人は違います。日本年金機構の案内によれば、法人の事業所は常時従業員を使用するものとして適用事業所になるとされています。
つまり、法人になれば厚生年金保険と健康保険の適用事業所になります。
これは義務であり、選べるものではありません。役員一人の法人でも同じです。
保険料は、法人と本人が分担して負担します。個人事業主が国民年金の保険料を全額負担するのとは、構造が違います。
会社設立を検討する際に「社会保険の負担が増える」と言われるのは、この制度の変化を指しています。
ただし、会社員の場合は事情が違います。すでに本業で厚生年金と健康保険に加入しているためです。
サラリーマンとして本業がある方は、次の節を確認してください。
会社設立をして節税を狙う場合、この社会保険の負担が節税額を削ることになります。負担の増える分を先に見積もっておかないと、手元に残る金額を見誤ります。サラリーマンとして本業がある方は、本業の保険料との関係も確認が必要です。
法人が負担する保険料は、法人の費用として計上されます。その意味では損金になりますが、支出であることに変わりはありません。節税額と並べて見てください。
個人事業主の場合、国民健康保険には扶養という考え方がなく、世帯の人数に応じて保険料が計算されます。健康保険では被扶養者という仕組みがあり、要件を満たせば保険料の負担なく加入できます。この違いも、法人化で変わる点の一つです。
出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月22日確認)
会社員はすでに加入しています

会社員の場合の扱いを確認します。
本業で厚生年金と健康保険に加入している方は、すでに被保険者です。
会社設立をして役員報酬を受け取ると、その法人でも被保険者になります。
日本年金機構の案内によれば、被保険者が同時に複数の適用事業所に使用されることになったときは、所定の届出を行う必要があります。
そして、保険料は各事業所の報酬月額を合算して決定した標準報酬月額にもとづき、それぞれの報酬月額に応じて按分されます。
つまり、二重に加入するのではなく、合算して計算されます。
この点が、個人事業主が法人化する場合との大きな違いです。個人事業主であれば国民年金から厚生年金への変化ですが、会社員は厚生年金のなかでの調整になります。
役員報酬をゼロにすれば、法人での被保険者にはなりません。本業だけの加入が続きます。
会社設立を検討するサラリーマンにとって、報酬をゼロにするかどうかが分かれ目になります。
節税の設計と社会保険の扱いは、この点でつながっています。
会社設立の設計として役員報酬をゼロにすれば、この論点そのものが生じません。節税を目的とするサラリーマンにとって、単純で確実な選択です。
報酬を出す設計にするなら、届出の手続きも自分で行うことになります。会社設立の直後は他の手続きも重なりますので、期限の管理が必要です。
合算して計算されるということは、法人からの報酬が少額であっても、本業の報酬と合わせた区分で保険料が決まるということです。区分が上がれば、本業の側で天引きされる金額も変わる可能性があります。給与明細の変化として現れますので、事前に理解しておいてください。
出典2-4:被保険者が複数の適用事業所に使用されることになったとき (日本年金機構/2026年8月22日確認)
保険料はどう決まるのか

保険料の決まり方を確認します。
保険料は、標準報酬月額と保険料率から計算されます。日本年金機構の案内によれば、厚生年金保険の保険料は標準報酬月額および標準賞与額に保険料率を乗じて計算され、事業主と被保険者が半分ずつ負担するとされています。
標準報酬月額は、受け取る報酬を一定の幅で区分したものです。実際の報酬額そのものではありません。
区分に当てはめるため、報酬が少し増えても保険料が変わらない場合と、区分をまたいで大きく変わる場合があります。
複数の事業所で被保険者になる場合は、合算した報酬月額で区分が決まります。
そして、決定された標準報酬月額にもとづく保険料が、それぞれの事業所の報酬月額に応じて按分されます。
つまり、法人が負担する保険料は、その法人が支払う報酬の割合に応じた金額になります。
会社員が役員報酬を設定する際は、この区分を確認しながら決めることになります。
区分の境目をまたぐと、保険料の負担が段階的に増えます。
サラリーマンとして本業の給与がある方は、合算した金額で区分が決まる点に注意してください。
会社設立の際に役員報酬を決めるとき、この区分の表を見ながら金額を決めると無駄が減ります。区分の境目のすぐ上に設定すると、保険料だけが増えて手取りが減ることがあります。節税の効果を測るときは、この点も含めて計算してください。
標準報酬月額には上限と下限が定められています。本業の給与だけですでに上限に近い方の場合、法人からの報酬を加えても区分がそれ以上は上がらないことになります。この場合、保険料の増加は限定的です。ご自身がどの位置にいるかを確認してください。
出典厚生年金保険の保険料 (日本年金機構/2026年8月22日確認)
保険料が見直される時期

標準報酬月額は、いったん決まればずっと同じではありません。
一つめが定時決定です。日本年金機構の案内によれば、事業主は7月1日現在で使用している被保険者について、4月から6月の報酬月額を届け出ることとされています。
この届出にもとづいて標準報酬月額が決定し直され、9月から翌年8月までの各月に適用されます。
二つめが随時改定です。報酬が大きく変わった場合に、定時決定を待たずに改定される仕組みです。
日本年金機構の案内によれば、固定的賃金の変動などにより報酬が著しく変わったときは、月額変更届による改定が行われます。

役員報酬は定期同額給与として毎月同額が原則ですので、変更は事業年度の始めに行うことになります。
その変更が、随時改定につながります。
会社員が本業のかたわらで運営する場合、これらの手続きの期限を管理する必要があります。
サラリーマンとして忙しくても、期限は動きません。社会保険労務士に依頼するという選択肢もあります。
会社設立をしたサラリーマンにとって、これらの手続きは本業の合間に行うことになります。年に一度の届出と、報酬を変えたときの届出。この二つを予定表に入れておいてください。
会社設立をして数年たつと、この手続きの時期を忘れがちになります。節税の効果を維持するためにも、届出は確実に行ってください。
出典定時決定(算定基礎届) (日本年金機構/2026年8月22日確認)
労働保険はどうなるか

社会保険とあわせて確認すべきものに、労働保険があります。
労働保険は、労災保険と雇用保険の総称です。厚生労働省の案内によれば、労働者を一人でも雇用する事業は原則として適用事業となり、所定の手続きが必要とされています。
社会保険とは別の制度で、届出先も異なります。
役員の扱いには注意が必要です。労働者としての性質を持つかどうかによって扱いが分かれ、原則として役員は労働者に該当しないものとされています。
つまり、役員一人だけの法人であれば、労働保険の適用がない場合があります。
従業員を雇えば、話が変わります。その時点で手続きが必要になります。
会社設立をして役員一人で運営する場合、当面は社会保険だけを考えればよいことが多いと考えられます。
ただし、家族を従業員として雇う場合の扱いは複雑です。同居の親族については別の考え方が適用される場合があります。
サラリーマンが会社設立をして家族を関与させる場合、この点も確認してください。
判断に迷う部分は、労働基準監督署やハローワークに確認するのが確実です。
会社設立をして家族に業務を手伝ってもらう場合、役員にするのか従業員にするのかで扱いが変わります。節税の設計としてどちらを選ぶかは、社会保険と労働保険の両方を見て決めることになります。
労働保険の保険料は、社会保険とは別に計算され、納付の時期も異なります。従業員を雇う予定があるなら、その分の負担も見込んでおいてください。年度ごとに申告と納付を行う仕組みです。
出典労働保険の適用・徴収 (厚生労働省/2026年8月22日確認)
報酬ゼロの場合の扱い

役員報酬をゼロにする場合の扱いを確認します。
報酬を受け取らなければ、被保険者にはなりません。保険料の負担も生じません。
ただし、法人としての届出が不要になるわけではありません。
日本年金機構の案内によれば、適用事業所となったときは新規適用の手続きが必要とされています。
被保険者がいない状態での扱いについては、年金事務所に確認してください。
決めつけずに、手続きの要否を確かめることが確実です。
そして、あとから報酬を出すことにした場合は、その時点で手続きが必要になります。
会社員にとって、報酬ゼロという選択は社会保険の負担を避ける手段になります。
ただし、法人に利益が残り、個人が自由に使えないという制約も生じます。
サラリーマンとして本業の収入がある方は、この制約を受け入れられるかどうかで判断してください。
節税の設計とあわせて、税理士に相談することをおすすめします。
会社設立の直後に報酬をゼロにしておき、法人の収益が安定してから報酬を出すという順序も取れます。サラリーマンとして本業の収入があるなら、急いで報酬を出す必要はありません。
節税の設計を急がないことが、結果として無理のない運営につながります。
報酬をゼロにする場合でも、法人と個人のあいだで資金のやり取りが生じることはあります。個人が立て替えた費用を法人が精算する場合などです。これは報酬ではありませんので、社会保険の対象にはなりません。ただし、記録を残して区別できるようにしておいてください。
出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)
会社設立の前に確認すること

ここまでの内容を、確認事項としてまとめます。

一つめの報酬の有無が起点です。ここが決まれば、二つめ以降の多くが決まります。
六つめは、そもそも会社設立ができるかどうかの確認です。役員兼務の可否を就業規則で確かめてください。
公務員の方は、国家公務員法および地方公務員法により営利企業の役員兼業が原則として禁止されています。
当サイトでは勤務先に知られない方法は扱いません。就業規則を確認し、必要なら勤務先に相談してください。
サラリーマンとして本業を続けながら法人を持つ以上、この確認は避けて通れません。
会社設立の前にこの六項目を確認しておけば、設立後の手続きで慌てずに済みます。節税の設計も、この確認と同時に進めてください。
確認の結果を書き出しておくと、税理士や社会保険労務士に相談するときに話が早く進みます。本業の給与額、想定する役員報酬、家族の関与の有無。この三つが揃っていれば、具体的な助言を受けられます。
出典複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き (日本年金機構/2026年8月22日確認)
まとめ

会社設立と社会保険について、この記事で整理したことをまとめます。
- 個人事業は国民健康保険と国民年金、法人は厚生年金と健康保険の適用事業所になります
- 適用事業所になることは義務です。役員一人の法人でも同じです
- 会社員はすでに本業で加入済み。報酬を取れば二つの事業所で被保険者になります
- 保険料は合算した標準報酬月額をもとに決定され、報酬月額に応じて按分されます
- 標準報酬月額は定時決定で年に一度見直され、報酬が大きく変われば随時改定されます
- 役員報酬をゼロにすれば被保険者になりません。ただし法人の届出の要否は確認してください
会社設立をすると、加入する制度そのものが変わります。これは義務であり、選べるものではありません。
ただし会社員は、すでに本業で加入しています。役員報酬を取るかどうかで扱いが分かれる、というのが実際のところです。
サラリーマンとして本業がある方は、報酬の設計と社会保険の扱いを一緒に考えてください。節税の設計とも直結します。
出典随時改定(月額変更届) (日本年金機構/2026年8月22日確認)
制度が変わることを理解してください
会社設立をすると、厚生年金と健康保険の適用事業所になります。これは義務であり、選べるものではありません。
ただし、会社員はすでに本業で加入しています。役員報酬をゼロにすれば、法人での被保険者にはなりません。
報酬を取るかどうかで扱いが変わりますので、設立の前に確認してください。手続きは年金事務所にご相談ください。
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