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サラリーマン 会社設立 メリット

会社設立のメリットは信用にもあるのか。サラリーマンの副業で法人が効く場面

この記事で扱うこと

会社設立を考えているものの、節税額を計算すると固定費を上回りそうにない。それでも法人にする理由があるのか、を知りたい会社員の方に向けた記事です。

節税以外のメリットとして挙げられるのが「信用」ですが、これは場面によって効き方がまったく違います。漠然と信用が上がると考えて会社設立をすると、期待した効果が得られないことがあります。具体的にどの場面で効くのかを分けます。

なお、信用のために会社設立をする場合でも、維持コストは同じようにかかります。節税額で回収できない分をどう考えるかという判断になりますので、そこも含めて整理します。

「信用が高まる」とは、具体的に何のことか

「信用が高まる」とは、具体的に何のことかを表したイラスト

会社設立のメリットとして「信用が高まる」と説明されることがあります。ただ、この言葉は漠然としています。何が、誰に対して、どう変わるのかを分けて考える必要があります。

実際に効く場面を整理すると、おおむね次の三つに分かれます。

  1. 取引先が、取引の相手として法人であることを求める場面
  2. 契約や口座の名義として、法人であることが必要になる場面
  3. 事業の継続性を示す必要がある場面

このうち、サラリーマンが副業の受け皿として会社設立をする場合に実際に効くのは、主に1と2です。3については、副業の規模ではあまり問われません。

そして重要なのは、登記をしただけで信用が生まれるわけではないということです。登記事項証明書に記載されるのは、商号、本店の所在地、事業目的、役員の氏名、資本金の額といった形式的な情報です。事業の中身や実績は、そこには表れません。

信用の中身は実績です法人であることは、取引を始める入口の条件になることはあっても、それ自体が信用の中身になるわけではありません。会社設立をしても、実績がなければ取引は進みません。入口を通れるようになるという程度に理解しておくのが実態に近いと思います。

では、その入口が実際に問題になるのはどういう場面か。次から具体的に見ていきます。

出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月21日確認)

場面その一:取引先が法人を条件にする

場面その一:取引先が法人を条件にするを表したイラスト

いちばん分かりやすいのが、取引先の側が法人であることを条件にしている場合です。

企業によっては、社内規程で取引相手の要件を定めていることがあります。反社会的勢力の排除に関する確認や、与信の審査の過程で、登記事項証明書の提出を求められることもあります。個人事業主とは取引しない方針を持つ会社も存在します。

サラリーマンが副業で仕事を受ける場合、相手が大企業であるほど、この条件に当たる可能性が高くなります。逆に、個人や小規模事業者が相手であれば、形態を問われないことがほとんどです。

取引先の性質によって法人であることが必要になるかを整理した図
右側に該当する取引を予定しているかが、判断の分かれ目になります。

会社設立を考える段階で、想定している取引先に確認してみるのがいちばん確実です。「個人事業主でも取引できますか」と聞けば済む話で、これを確かめずに会社設立をすると、必要のない固定費を負うことになります。

なお、法人であることを求められた場合でも、株式会社である必要があるかどうかは別の問題です。合同会社で足りることが多く、その場合は設立費用も維持コストも軽く済みます。

受注の窓口としての法人

サラリーマンが副業で仕事を受ける場合、発注側から見ると「本業を持っている個人」という位置づけになります。ここで法人であることは、事業として継続的に受注する意思の表れとして受け取られることがあります。ただし、それも実績が伴ってはじめて意味を持ちます。

また、業務委託の契約を結ぶ際、発注側が源泉徴収の要否を気にすることがあります。個人に支払う場合と法人に支払う場合とで、源泉徴収の取り扱いが異なる報酬があるためです。経理処理の簡便さから法人を選好する会社もありますが、これは信用というより事務上の都合です。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月21日確認)

場面その二:契約や口座の名義

場面その二:契約や口座の名義を表したイラスト

二つめが、契約や口座の名義です。

副業の規模が大きくなると、事業用の入出金を個人の口座で扱うことに不都合が生じてきます。生活費と事業の資金が混ざり、確定申告のときに整理が必要になります。会社設立をして法人名義の口座を持てば、この区別が明確になります。

契約についても同様です。事務所を借りる、システムを契約する、外注先と取引する。こうした場面で法人名義のほうが進めやすいことがあります。とくに、賃貸物件を事業用に借りる場合、個人名義では用途の制限にかかることがあります。

ただし、この点については会社設立をしなくても対応できる部分が多いという事実も押さえておいてください。個人事業主でも屋号付きの口座を開設できる金融機関がありますし、事業用の契約も個人名義で結べるものが大半です。

会社員が副業をしている段階で、どうしても法人でなければならない契約というのは、それほど多くありません。必要が生じてから会社設立を検討しても、間に合うことが多いはずです。

法人口座の開設には時間がかかることがあります会社設立をしても、法人名義の口座がすぐに開設できるとは限りません。事業の実態について確認を求められることがあり、手続きに時間がかかる場合があります。取引の予定がある場合は、余裕を持って準備してください。

サラリーマンの場合、本業の給与が振り込まれる口座と副業の入出金が同じだと、確定申告の際に取引を追うのに手間がかかります。会社設立をして法人口座を持てば、この区別は自然に生まれます。ただし、屋号付きの個人口座でも同じ効果は得られますので、そのためだけに法人をつくる必要はありません。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)

場面その三:事業の継続性を示す

場面その三:事業の継続性を示すを表したイラスト

三つめが、事業の継続性です。

法人は、代表者個人とは別の人格を持ちます。したがって、代表者が交代しても法人としての契約や権利義務は続きます。個人事業の場合、事業主が事業を続けられなくなれば、そこで終わります。

長期の契約を結ぶ場面や、事業の承継を考える場面では、この違いが意味を持ちます。取引先からすれば、担当者個人ではなく法人と取引しているほうが、継続性の面で安心という判断があり得ます。

ただし、サラリーマンが副業として行っている事業では、実質的に本人一人で回していることがほとんどです。法人であっても、本人が続けられなくなれば事業は止まります。形式的な継続性と、実際の継続性は別だということです。

この項目は、事業がある程度の規模になり、複数人で運営するようになってから効いてくるものです。会社設立を検討している段階では、判断材料としての重みは小さいと考えてよいと思います。

なお、将来的な事業承継や、資産の引き継ぎを見据えて法人を持つという考え方もあります。ただしそれは相続や事業承継の設計の話であり、副業の節税とは別の検討になります。

出典登記・供託オンライン申請システムによる登記事項の提出について (法務省/2026年8月21日確認)

信用のために会社設立をする場合の費用

信用のために会社設立をする場合の費用を表したイラスト

信用を理由に会社設立をする場合でも、費用は節税を目的とする場合と変わりません。

設立時の費用として、株式会社であれば登録免許税15万円と定款認証の手数料などがかかります。合同会社であれば登録免許税6万円で、定款認証は不要です。

そして毎年、法人住民税の均等割がかかります。総務省の資料で標準税率を確認すると、資本金等の額が1千万円以下で従業者数が50人以下の場合、都道府県民税2万円と市町村民税5万円で年7万円です。赤字でもかかります。

これに税理士費用が加わります。決算と法人税の申告は、会社員が本業のかたわらで独学で行うには負担が大きい部分です。

信用のために会社設立をした場合の年間コストを積み上げた棒グラフ
節税額がゼロなら、この全額が持ち出しになります。それに見合う取引が得られるかどうかが判断の基準です。

つまり、信用のために会社設立をするという判断は、「年間30万円前後を払ってでも取りたい取引があるか」という問いに置き換えられます。具体的な取引の見込みがあるなら合理的ですし、漠然とした期待だけなら、待ったほうがよいということになります。

サラリーマンの場合、本業の収入があるぶん、この持ち出しを吸収できてしまうという事情があります。だからこそ、費用に見合っているかを意識的に確認する必要があります。

サラリーマンが会社設立をする場合、この固定費を本業の給与から補填できてしまうという事情があります。事業が赤字でも生活は成り立つため、費用対効果の検証が甘くなりがちです。年に一度は、支払っている固定費に見合う効果が出ているかを確認してください。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月21日確認)

節税と信用、どちらを主な理由にするか

節税と信用、どちらを主な理由にするかを表したイラスト

会社設立の理由が節税なのか信用なのかで、設計が変わる部分があります。

節税を主な目的とするなら、役員報酬をどう置くか、どの所得を法人に移すかという設計が中心になります。社会保険との兼ね合いを含めて、手取りが最大になる点を探ることになります。

信用を主な目的とするなら、むしろ運営の体裁を整えることが優先されます。事業目的の書き方、決算書の見え方、取引の記録。取引先から見て説明できる形にすることが重要になります。

会社設立の目的と、重視すべき点
目的 重視すること 注意点
節税 役員報酬と社会保険の設計 効かないメリットを期待に含めないこと
信用 事業目的と運営の体裁 登記だけでは信用は生まれないこと
両方 目的ごとに分けて設計 一方の都合で他方が崩れることがあります

※ 実際には両方の要素が混じることが一般的です。優先順位をつけておくと判断しやすくなります。

両方を求めることも当然あり得ますが、その場合は優先順位を決めておいてください。たとえば、節税のために役員報酬をゼロに近づけると、法人としての活動実態が見えにくくなることがあります。目的が競合する場面が出てきます。

サラリーマンが会社設立をする場合、最初は節税を動機にしていても、運営していくうちに信用の側の必要が出てくることもあります。そのときに設計を見直せるよう、税理士と継続的に相談できる体制があると安心です。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)

いま設立するか、必要になってからか

いま設立するか、必要になってからかを表したイラスト

最後に、時期の問題を扱います。信用のために会社設立をするとして、いま必要なのかという点です。

会社設立の手続き自体は、書類が揃えば数週間で完了します。取引先から法人であることを求められてから動いても、多くの場合は間に合います。

一方、先に会社設立をしておくと、必要になるまでの期間も維持コストがかかります。年30万円前後を、まだ必要のない状態で払い続けることになります。

先回りが有利になるのは、時期が読めている場合だけです。来期から特定の取引が始まることが決まっている、といった具体的な予定があるなら、準備しておく意味があります。

いま会社設立をすべきかを判断するためのチェックリスト
上の三つのどれかに「はい」があれば、検討する意味があります。すべて「いいえ」なら、待つ判断も合理的です。

サラリーマンとして本業を持ちながらの判断ですから、時間の余裕も考慮に入れてください。手続きと運営に割ける時間が確保できないうちは、無理に会社設立を急ぐ必要はありません。

サラリーマンにとって、会社設立の準備そのものが時間の負担になります。平日に動く場面があり、書類を揃える手間もあります。必要が生じてから動くという判断は、その負担を後ろ倒しにできるという意味でも合理的です。

なお、会社設立を急ぐ理由として「今期の節税に間に合わせたい」という動機が出てくることがあります。ただし設立初年度は費用が先行し、節税の効果は限定的になることが多いため、期限に追われて判断しないほうが賢明です。

出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月21日確認)

まとめ

まとめを表したイラスト

会社設立の信用面のメリットについて、この記事で整理したことをまとめます。

  1. 「信用が高まる」は漠然とした表現です。取引先の条件、契約や口座の名義、事業の継続性という三つに分けて考えます
  2. サラリーマンの副業で実際に効くのは、主に取引先の条件と名義の問題です
  3. 登記をしただけで信用が生まれるわけではありません。入口を通れるようになる程度と理解してください
  4. 信用のための会社設立でも、固定費は節税目的の場合と同じくかかります
  5. 節税額で回収できない分は持ち出しになりますので、見合う取引があるかを確認してください
  6. 手続きは数週間で終わるため、必要になってから動いても間に合うことが多くあります

会社設立を検討するとき、節税額が固定費に届かないという結論になることがあります。そのときに「信用のため」という理由を持ち出す前に、具体的にどの場面で必要になるのかを確かめてください。

確かめた結果、必要な場面が見つかったなら、会社設立は合理的な判断になります。見つからなかったなら、その時点では待つという選択も十分にあり得ます。会社員として本業がある以上、急いで法人を持つ必要はありません。

この記事の内容について費用と制度の内容は2026年8月21日に法務局・法務省・総務省・国税庁などのページで確認したものです。制度は改正されます。実際の判断にあたっては、リンクした各ページで最新の内容をご確認いただき、個別の判断は税理士などの専門家にご相談ください。

出典No.1400 給与所得 (国税庁/2026年8月21日確認)

必要になってからでも遅くありません

信用のために会社設立をするという判断は、それ自体はあり得ます。ただし、いま必要なのかどうかは分けて考えてください。将来必要になるかもしれない、という理由で先に法人をつくると、その間の維持コストだけが積み上がります。

取引先から法人であることを求められた、口座や契約の名義で不都合が生じた。そうした具体的な必要が出てきてから会社設立をしても、手続きは数週間で終わります。先回りする必要は、実はそれほど多くありません。

節税と信用のどちらを主な理由にするにせよ、設立後の役員報酬と社会保険の設計は避けて通れません。ここは会社員にとって難しい部分ですので、税理士に相談しながら進めてください。

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