副業の所得は事業所得か雑所得か。会社設立の前に確かめておく区分
この記事を読む前に
副業の収入がある会社員が、会社設立の前に確かめておくべき所得区分の話です。事業所得なのか雑所得なのかによって、個人のままでできることが大きく変わります。
会社設立を考える段階で「個人のままでできることは全部やったか」を確認する必要があります。ところが、その「できること」の範囲が所得区分によって違うのです。ここを知らないまま法人化に進むと、順番を飛ばすことになります。
所得区分の判定は個別の事情によります。当サイトは一般的な考え方を示すにとどめますので、ご自身の副業がどちらに当たるかは税理士にご確認ください。
なぜ会社設立の前に区分を確かめるのか

副業をしている会社員が会社設立を考えるとき、多くの記事は「利益がいくらになったら」という話から始まります。しかし、その前に確かめておくべきことがあります。副業の所得が、税務上どの区分に当たるかです。
所得税では、所得を10種類に区分しています。副業の収入は、その内容によって事業所得になったり雑所得になったりします。区分が違えば、使える制度も違います。
会社設立を検討する段階で問われるのは、「個人のままでできることを全部やったか」という点です。ところが、その範囲が区分によって変わるのです。事業所得であれば使える制度が、雑所得では使えないということがあります。
つまり、区分を確かめないまま会社設立に進むと、個人のままで得られたはずの節税を試さずに、固定費のかかる法人へ移ることになりかねません。
サラリーマンの副業は、規模が小さいうちは雑所得として扱われることが多くなります。育ってくると事業所得と認められる余地が出てきます。どちらに当たるかで、次に取るべき行動が変わります。
では、区分によって何が変わるのか。次から具体的に見ていきます。
所得区分は、節税の出発点でもあります。区分によって使える節税の手段が変わるためです。
副業の規模が小さいうちは、収入の記録すら残していないという方もいます。しかし、区分の判定でも会社設立の判断でも、まず必要になるのは数字です。通帳とクレジットカードの明細を整理するところから始めてみてください。それだけでも、いまの利益がいくらかが見えてきます。
出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月21日確認)
違いその一:青色申告の特別控除

最初の違いが、青色申告の特別控除です。
事業所得として青色申告の承認を受けている場合、複式簿記による記帳などの要件を満たすことで、所得から一定額を控除できます。電子帳簿保存や電子申告といった要件によって控除額が変わる仕組みになっています。
この控除は、会社設立をしなくても使えます。固定費もかかりません。記帳の方法を整えるだけで、課税所得が減ります。
一方、雑所得にはこの制度がありません。青色申告そのものが、事業所得・不動産所得・山林所得を対象とした制度だからです。
サラリーマンが副業で会社設立を考える場合、まずこの控除が使える状況かを確認してください。使えるのに使っていないのであれば、会社設立より先にそちらを整えるほうが確実です。
記帳の負担はありますが、会計ソフトを使えば軽減できます。法人の決算と申告に比べれば、はるかに小さい手間です。
節税の効果という点でも、固定費がかからない分だけ確実に手元に残ります。会社設立の場合は年30万円前後の固定費を上回る必要がありますが、青色申告の控除にはそれがありません。
サラリーマンが会社設立を急ぐ前に、この控除が使えないかを確かめてください。固定費がかからないぶん、確実に手元に残ります。
この特別控除は、会社設立による節税と違って固定費を伴いません。節税の効果がそのまま手元に残る、数少ない制度です。
控除の額は要件によって変わります。複式簿記で記帳したうえで、電子帳簿保存または電子申告の要件を満たすかどうかで区分が設けられています。会計ソフトを使えば、これらの要件は満たしやすくなります。詳細は国税庁のページで最新の内容をご確認ください。
出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月21日確認)
違いその二:損失が出たときの扱い

二つめの違いが、損失が出たときの扱いです。
事業所得で損失が生じた場合、一定の範囲で他の所得と相殺することが認められています。会社員であれば、給与所得と相殺できる場面があります。これを損益通算と呼びます。
雑所得の場合、この扱いは限定的です。雑所得内での相殺はできても、給与所得との通算は原則としてできません。
副業を始めた最初の年は、設備投資などで赤字になることがあります。事業所得と認められていれば、その赤字を本業の給与所得と相殺できる可能性があります。サラリーマンにとっては小さくない違いです。
さらに、青色申告であれば損失を翌年以降に繰り越すこともできます。翌年に利益が出たときに相殺できるという仕組みです。
会社設立をすれば、法人としての欠損金の繰越しが使えるようになります。ただしそれは法人の所得の話であり、個人の給与所得とは通算できません。法人化すると、この点はむしろ使いにくくなるという見方もできます。
赤字の年の節税という観点では、個人のままのほうが有利な場面があります。会社設立をすると、この形の節税は使えなくなります。
損益通算には順序と範囲の定めがあります。すべての所得と自由に相殺できるわけではありません。給与所得との通算が認められるかどうかも、所得の種類によって異なります。ご自身のケースで使えるかは、税理士にご確認ください。
出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月21日確認)
違いその三:親族への給与

三つめが、家族に支払う給与の扱いです。
事業所得で青色申告の承認を受けている場合、生計を一にする親族に支払う給与について、事前の届出を行うことで必要経費に算入できる制度があります。青色事業専従者給与と呼ばれます。
ただし、この制度には要件があります。その親族が、その事業に専ら従事していることが求められます。他に本業を持っている家族には適用できません。
雑所得の場合、この制度はありません。
会社設立をすれば、家族を役員にして役員報酬を支払うという形が取れます。専従の要件がないため、他に仕事を持っている家族にも支払えます。この点は法人化の利点です。
ただし、家族に報酬を支払えば社会保険の負担が生じ、扶養から外れる可能性もあります。所得分散による節税額より、社会保険料の増加や扶養から外れることによる影響のほうが大きくなり、世帯全体では手取りが減ることもあります。
サラリーマンの世帯で会社設立を考える場合、この比較は必ず行ってください。税額だけでなく、世帯全体の手取りで比べる必要があります。
家族への給与は、所得を分散することで節税につながる形です。ただし社会保険の負担が伴いますので、世帯全体の手取りで確かめてください。
青色事業専従者給与を支払うには、事前に届出書を提出する必要があります。届出た金額の範囲内でしか経費にできませんので、金額の設定にも注意が要ります。届出の時期にも定めがありますので、確定申告の直前に思い立っても間に合わないことがあります。
出典No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分) (国税庁/2026年8月21日確認)
区分はどう判定されるのか

では、事業所得と雑所得はどう判定されるのか。
明確な金額の基準が一つだけあるわけではなく、実態に即して総合的に判断されるというのが基本です。考慮される要素として、次のようなものが挙げられます。
- 営利を目的として継続的・反復的に行われているか
- 帳簿書類を備え付けて記録し、保存しているか
- その活動に費やしている時間や労力
- 収入の規模と、生活を支える程度
- 事業として社会通念上認められる形態を備えているか
このうち、帳簿の備付けと保存は重視される要素とされています。記帳をしていないまま「事業所得です」と主張するのは難しいということです。
サラリーマンの副業の場合、本業に多くの時間を割いている以上、費やしている時間や労力という点では不利に働くことがあります。ただし、それだけで決まるわけではありません。

判定に迷う場合は、確定申告の前に税理士に相談してください。区分を誤ったまま申告を続けると、あとで修正が必要になることがあります。
記帳を整えることは、区分の判定にも節税にも効いてきます。
なお、収入金額が一定の規模に満たない場合の取り扱いについては、国税庁が考え方を示しています。帳簿書類の保存があるかどうかが判断に影響するとされていますので、記帳の有無は区分の面でも重要になります。
出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月21日確認)
会社設立を考えるのは、どの段階か

所得区分を踏まえて、会社設立を考える段階を整理します。
第一段階は、記帳を始めることです。区分の判定にも、利益の把握にも、これが土台になります。会計ソフトを使えば負担は軽くなります。
第二段階は、事業所得と認められる規模であれば、青色申告の承認を受けることです。承認申請には期限がありますので、確認してください。固定費がかからず、控除が使えます。
第三段階は、経費の計上漏れと按分を見直すことです。事業に必要な支出を正しく計上できているか。自宅の一部を使っているなら按分できているか。
第四段階が、会社設立の検討です。ここまでを済ませたうえで、なお節税額が固定費を上回るのであれば、法人化が選択肢になります。

会社員が副業で節税を考えるとき、いきなり第四段階から入ろうとすることがあります。しかし、前の三つは固定費がかからず、確実に効きます。順番を守るほうが結果的に有利です。
節税の手段は、固定費のかからないものから順に試すのが定石です。会社設立は最後の段階に置いてください。
第二段階の青色申告の承認申請には期限があります。新たに事業を開始した場合と、すでに事業を行っている場合とで、期限の定め方が異なります。会社設立を考える前に、まずこちらの期限を確認しておいてください。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月21日確認)
法人化すると区分の話はどうなるか

会社設立をして事業を法人に移した場合、所得区分の話はどうなるのか。
法人に移した事業から生じる利益は、法人の所得になります。個人の所得区分とは切り離されます。事業所得か雑所得かという議論は、その事業に関しては生じなくなります。
代わりに、あなたが法人から受け取る役員報酬が給与所得として扱われます。本業の給与と合算されて課税されます。
つまり、法人化によって「事業所得か雑所得か」という問題は解消しますが、代わりに「役員報酬をいくらにするか」という別の問題が生じます。難しさが移動するだけという見方もできます。
そして、法人化すると個人の給与所得との損益通算ができなくなります。副業が赤字になる可能性があるうちは、この点が不利に働きます。
会社設立を判断するときは、いま使えている制度と、法人化後に使える制度を並べて比べてください。必ずしも法人化のほうが有利とは限りません。
サラリーマンとして本業を持ちながらの判断ですから、手間の増加も考慮に入れる必要があります。法人の決算と申告は、個人の確定申告とは負担が違います。
サラリーマンとして本業の給与がある以上、副業が赤字の年には損益通算の意味が大きくなります。会社設立の時期を考えるうえで、この点は見落とせません。
法人化すると節税の手段そのものが入れ替わります。役員報酬の設計や社宅の仕組みが使えるようになる一方、損益通算のような個人向けの節税は使えなくなります。
法人に事業を移すときには、それまで個人で使っていた資産をどう扱うかという問題も生じます。引き継ぐのか、貸し付けるのか、譲渡するのか。処理の仕方によって税務上の扱いが変わりますので、会社設立の前に税理士と相談して決めておくほうが安全です。
出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月21日確認)
まとめ

副業の所得区分と会社設立の関係について、この記事で整理したことをまとめます。
- 副業の所得が事業所得か雑所得かで、使える制度が変わります
- 事業所得なら青色申告の特別控除が使えます。会社設立をしなくても、固定費なしで効きます
- 事業所得なら損失を給与所得と相殺できる場面があります。法人化するとこれはできなくなります
- 事業所得なら青色事業専従者給与を検討できますが、専従の要件があります
- 区分は実態で判定されます。帳簿の備付けと保存は重視される要素です
- 記帳→青色申告→経費の見直し→会社設立、という順番で検討してください
会社設立は、固定費がかかる選択です。その前に、固定費のかからない方法を使い切っているかを確認してください。所得区分は、その確認の出発点になります。
サラリーマンの副業は、規模が小さいうちは雑所得として扱われることが多くなります。育ってきて事業所得と認められる段階になったら、まず個人のままで使える制度を整える。会社設立はそのあとです。
出典No.1400 給与所得 (国税庁/2026年8月21日確認)
区分を確かめてから、順番を決めてください
副業の所得が事業所得と認められる規模であれば、青色申告の特別控除をはじめ、個人のままで使える制度があります。それらを使い切ってから会社設立を考えるという順番が、無駄が少なくなります。
雑所得にとどまる規模であれば、そもそも会社設立を検討する段階に達していない可能性があります。まず副業を育てることが先です。
所得区分の判定は、帳簿の有無や取引の継続性など複数の要素で判断されます。判断に迷う場合は、確定申告の前に税理士にご相談ください。会社設立の判断も、そこから始まります。
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